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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第9章 文化祭編
143/172

第124話 極められし蓮の力

蓮宮の歴代当主が暴れまくります(笑)


天音達呆然となります。

side千歳


天音の決死の攻撃でキメラから霊煌紋を解放し……そして絶体絶命のその時に十一人の歴代蓮宮当主が復活した。

私はとても信じられなかったが、少し遠くに離れた場所にいるアリスを見てその疑問が解決された。

アリス先生は疲れきった様子で蓮姫様に支えられながら私達に向かって笑顔でピースをする。

そっか……アリス先生が錬金術で蓮宮の先代達の肉体を作って蘇らせたんだ。

私は恐る恐る天音と一緒にいる詩音叔父様の元へ足を運んだ。

「やあ、千歳ちゃん。元気かな?」

「は、はい!お久しぶりです。詩音叔父様」

この優しい雰囲気は間違いなく詩音叔父様だ。

「久しぶりだね。千歳ちゃん、天音を頼めるかな?少し先代達と戦ってくるから」

既に疲労困憊で詩音叔父様に寄りかかっている天音を詩音叔父様から受け取るように後ろから優しく抱き締める。

「はい!任せてください!」

「頼むよ、千歳ちゃん」

詩音叔父様は璃音義兄様から借りた蓮牙を手に他の先代の方と一緒にキメラとクライシスの元へ向かった。

「天音、大丈夫?」

「俺は大丈夫。だけど、蓮煌が……」

天音は酷く悲しそうな表情で折れた蓮煌を見つめる。

「大丈夫、大丈夫だよ。天音……」

私は心と体が傷ついた天音を癒す為にギュッと抱きしめて頭を撫でてあげた。

「魅音、十三代目を」

「はい、母上」

十一人の当主の一人、二代目当主の乙音様が三代目の魅音様に指示を出すと、魅音様は天音の元に来て腰を下ろした。

「よく頑張りましたね、十三代目……天音」

「三代目……魅音様……」

「じっとして。今……あなたと皆さんを癒します」

魅音様は何だか天音のお母様の六花さんに似ていて、傷ついた天音の頬を手で包み込んだ。

そして魅音様の霊力が解放された。

「霊煌参式・治癒……癒しの演奏をここに、“治癒天奏”!!」

魅音様の霊力が天音、そしてこの場で傷ついたみんなの元へ行った。

霊力は傷ついた者を優しく包み込んで少しずつ傷が癒えていき、体力も回復した。

「もう、大丈夫ですよ」

「あ、ありがとうございます。魅音様」

「いいえ。さあ、天音。歴代当主の皆さんが戦います。その戦いを十三代目としてその目に焼きつかせるのです」

「そうだぞ。若いうちに強いもの達の力を見た方が良いぞ」

十一代目の織音様が煙管で煙をふかせながら天音の隣に座った。

「十一代目……」

「十一代目なんて言うなよ。私はお前からしたら曾祖母なんだからな」

「曾祖母……?」

「ああ。詩音と時音は私の孫、だからお前は私のひ孫なんだよな」

まさかここで自分の曽祖母に会えると思っていなかった天音は目を丸くしている。

「そうだったんですか……」

「それから天音よ、私と三代目と同じで戦闘向けじゃないからここで見学しているぞ。まあ、先代達の紹介ぐらいはしてやるからな」

織音様は天音の頭を撫でてその後に髪を乱暴にくしゃくしゃにする。



side天音


クライシスは更なるロボット兵を召喚して立ち向かう歴代蓮宮当主達と戦わせた。

そして、先陣を切ったのは筆架叉と呼ばれる十手に似た二本一組の武器を左右の手で構えた小柄な女性だ。

「まずは……二代目当主、乙音様だ」

「行きます、蓮叉……霊煌弐式・強化!」

乙音様は霊力を全身に纏いながら俺も良く使う霊煌弐式の強化で全身の身体能力を向上させて驚異的なスピードで走り出す。

そして、ロボット兵を次々と筆架叉の蓮叉で、心臓部分を貫いて破壊して行く。

「乙音様は強化で人より“弱い”身体能力を向上させて敵を凌駕する速度で動いて敵を倒す。そして、その強化を越える力が……」

「幾重に重なれ、更なる力を我が身に……“幾重強化”!!」

乙音様は強化した身体に更に霊力を纏わせて強化を施し、文字通り強化を重ね掛けをした。

その強化を重ね掛けした身体能力は凄まじく俺達の目では追えない程のスピード……神速と言えばいいだろうか、そのスピードでロボット兵を一気に瞬殺しながら破壊して行く。

あれが俺が好んで使っている霊煌弐式・強化の本当の凄さと見せつけられて俺は唖然とするしかなかった。

しかし、唖然とするのはまだまだ早かった。

「続いて四代目当主の初音様だ」

まだ他の当主達の戦いが残っていたからだ。

「行くぜ、蓮斬!」

初音様は鞘に収めた刀……蓮斬を抜刀術の構えをする。

霊力を蓮斬の中に込めながら鞘に収めた刃を解き放つ。

「霊煌肆式・斬撃!!」

そして放たれた刃の霊力が巨大な斬撃となるが、

「“斬撃変化”!!」

それが幾つにも分離をしてロボット百体近くを細切れに切り刻んだ。

「初音様は斬撃の達人と呼ばれていて、どんな形の斬撃を自由自在に操ることが出来るんだ」

ただ斬撃を大きくするだけのものだと思っていた霊煌肆式・斬撃にこんな使い方があるとは知らなかった。

「流石は母上だな!今度は俺様だ、霊煌伍式・刀剣!!」

「次が五代目の剣音様だ」

剣音様は周囲に霊力で生み出した大量の剣を召喚し、それを手に次々とロボット兵を斬り、貫き、叩き、問答無用に破壊して行く。

「オラオラオラァッ!この剣音様を止められるもんなら止めてみなぁっ!!」

「剣音様は歴代当主の中で最強の戦闘能力を持ち、一騎当千のその力から“剣王”と呼ばれている」

剣王……まさに今の剣音様に相応しい異名だった。

「喰らいな、“刀剣乱舞”!!」

剣が更に増加して剣音様の動きに合わせて剣舞を踊るかのような美しい剣筋でロボット兵を破壊して行った。

ロボット兵をものともしないその精神と力……同じ剣士として特にその姿を俺は瞬きをせずに目に刻ませたが、そんな剣音様にロボット兵のレーザービームが襲い掛かった。

しかし、そこに剣音様を守る蓮の花を模した盾が現れる。

「霊煌陸式・結界。父上、無茶しちゃだめだよ?」

「おお!朱音!!」

「六代目の朱音様。歴代当主で一番幼い時に当主を受け継いだお方だ。争いを好まず、攻撃する力ではなく守りの力を使っていた」

確かに歴代当主の中で一番幼く、争いを好まないような感じがしている。

「父上に向けた攻撃を返すよ、“反射結界”」

剣音様の周囲に展開した結界が輝き出すと、ロボット兵が撃ったレーザービームがそのまま鏡で光を反射するかのように返されて、レーザービームを撃ったロボット兵を倒した。

結界を鏡のように使って攻撃を反射させる……結界がただの守りの盾じゃなかったんだ。

「次は、俺だ……」

剣音様と朱音様の前に現れたのは仏頂面の男性、玲音様だった。

「七代目の玲音様。歴代当主の中で一番冷静沈着なお方だ。そして、誰よりも相手の動きを冷静に見極めることが出来る」

霊力を纏わせた手で襲ってくるロボット兵のボディに軽く触れた。

「霊煌漆式……封印……お前はもう動けない……」

霊力で触れたロボット兵はピタリと動かなくなり、そのまま機能停止をした。

「蓮筆……久しぶりの……出番だ」

そして、玲音様は蓮宮の紋が刻まれた筆を取り出し、大きな『封』の文字を描いた。

「ここに静まれ……大いなる禍モノ共よ……“絶禍封印”……!!」

封の文字が巨大化してたくさんのロボット兵を覆い被さると一瞬で力を封印されて機能停止した。

一度にこれだけのロボットを封印させるのは破壊するよりも難しく、俺は凄いと感嘆した。

「次は私の番ですね舞い踊れ、蓮針」

その次に十数本の針を霊力で宙に浮かせた男性、音夜様が眼鏡のブリッジを上げる。

「八代目の音夜様は頭脳明晰で、ある意味初音様と剣音様とは対をなしているお方だ」

音夜様は蓮針を弾丸のように飛ばしてロボット兵のボディに突き刺した。

他の当主の攻撃に比べるととても威力の弱い攻撃だと思ったが、

「霊煌捌式・憑依……そして……“憑依傀儡”!」

ロボットに刺した蓮針が光り輝くと、そのロボットに蓮宮の紋が浮かび上がると敵である音夜様に背を向けた。

「さあ、私の魂の一部を宿した分身達よ。向かいなさい」

クライシスのロボット兵が音夜様の命令に従って他のロボット兵を攻撃し始めた。

何が起きているのか理解出来ない俺達に織音様が説明してくれた。

「あれは自分の魂の極一部を込めた神器の針を相手に突き刺し、魂を体に流す事で一定の時間だけ相手を自分の分身として操ることが出来るんだよ」

「え、ええっ……?」

まだまだ知らない霊煌霊操術の使い方に唖然とする俺は口をあんぐりと大きく開けてしまった。

「ふぁ〜……さぁて、俺も動くかねぇ〜……」

大きなあくびをして起き上がったのは無精髭を生やした男性、玖音様だった。

「九代目当主、玖音様。蓮宮当主に似合わないめんどくさがりな性格だが……誰よりも優しく、慈愛の心を持つお方だよ」

誰よりも優しくて慈愛の心を持つお方か……人は見かけに寄らないって言うけど、そんな方には見えないけどな。

玖音様は炎を模した短剣を手に霊力から燃え上がらせた炎を灯しながら地面に刃を突き刺す。

「霊煌玖式・浄火……燃えろ、紅蓮」

炎は波のように一気に地面に広がり、ロボット兵の足元まで広がった。

「“炎清浄火”」

広がった炎はロボット兵を一気に包み込ませて火達磨にした。

火達磨になったロボット兵はボロボロになり、少しずつ燃やされていく。

「灰となって、母なる大地に帰るがいい……」

ロボット兵は灰となってそのまま倒されてしまい、玖音様は灰を一掴み掬い上げる。

「すまねぇな。燃やしちまって……心の無い絡繰達よ、安らかに眠りな」

掬い上げた灰を手から零して玖音様は紅蓮を構え直した。

そして、次に水色の槍を構えた紳士のような男性が歩き出す。

「今度は私の出番ですね。行きましょうか……水蓮」

「十代目当主、雷音様。当主の中で霊操術の扱いに長けていて、天才霊操術士と言われている」

天才霊操術士か……なるほど、天才と言われるだけあって霊煌霊操術で一番扱いが難しいあの術……強力な拾式が出来るわけだ。

織音様の説明に納得した俺はそのまま雷音様の戦いを見学する。

「霊煌拾式・夢幻」

織音様は周囲の空間を歪ませて幻の世界を作り出して行く。

だけど、生き物ならともかくロボット相手に幻が通用するのか疑問に思ったが、それは杞憂に終わる。

「幻と現……二つの交わりし世界をここに……“夢幻白夜”」

幻を映し出す夢幻の空間が更に歪んで力が大きくなっていく。

「絡繰の弱点はそうですね……水と電気ですかね?」

すると、突然何も無いところから海が現れてロボット兵を襲いかかり、更に雷雲が現れて落雷がロボットに落ちてくる。

海水を浴びたロボット兵は一発でショートし、更に落雷を受けて回線など色々な部品が焼き切れたりして完全に壊れてしまった。

「夢幻白夜は実態の無い幻を本物の現実にしてしまう力……術者の望んだ事柄を現実にしてしまう恐ろしい術だ」

幻を現実に……?

そんな凄い力が霊煌拾式・夢幻……夢幻白夜の本当の力なのか?

次々と霊煌霊操術の真の力に驚嘆する俺にトドメと言わんばかりに最後の当主がその力を見せつける。

「さあ、次はお待ちかねの十二代目……孫の詩音の出番だ」

「詩音叔父さん……!!」

俺の叔父で剣の師匠である詩音叔父さんの戦いが始まると聞いて俺の興奮は最高潮に高まって来た。

璃音兄さんから借りた神刀の蓮牙を手に、俺も良く使う詩音叔父さんの霊煌霊操術を発動させる。

「霊煌拾弐式・覚醒」

術者の持つ潜在能力を発現させて身体能力のみならず様々な力を跳ね上がらせる覚醒で詩音叔父さんのステータスが何倍にも跳ね上がり、その状態でロボット兵を蹴散らし、そのままキメラとクライシスの元へ向かった。

「お相手願いましょうか、混沌の使徒よ……」

「ほざけ!人間ごときが!!」

「マテ!キメラ!!」

再び傷を癒したキメラが詩音叔父さんに襲いかかるが、覚醒状態の詩音叔父さんは難なくキメラの攻撃を見切ってそれを避ける。

「詩音は己を犠牲にして他人を守るような性格で、当主で誰よりも蓮宮の未来の為に尽力を尽くしていた。特に次の世代である天音、璃音、花音、風音の為にな……」

「俺達の、為に……?」

詩音叔父さんが蓮宮を担う次世代の子である俺達の為に尽力を尽くしていたなんて知らなかった……。

「親父……」

「お父さん……」

「詩音おじさん……」

魅音様の治癒で復活した璃音兄さん、花音姉さん、風音は俺と同じく戦う詩音叔父さんをジッと見つめる。

キメラと互角の戦いをする詩音叔父さんはここで他の当主と同じように霊煌霊操術の真の力を発揮させる。

「己の限界を越えた、新たな極みの極地……」

覚醒状態で更に全身に霊力を纏い、青白い霊力が赤色に変色して霊力の性質が変化した。

「“天極覚醒”!!!」

まるで力を封じられた鎖が引き千切られて解き放たれたかのように詩音叔父さんの力が一気に爆発した。

先程とは比べものにならないくらいのキメラを越える圧倒的な動きで接近しながら蓮牙を振るう。

「蓮宮流、天凛蓮華!水蓮天昇!!紅蓮裂刃!!!」

「ぐぁあっ!??」

蓮宮流の基本である三大剣技を凄まじく速さで連続して繰り出し、キメラに大きな痛手を与える。

「ば、馬鹿な……人間ごときが、混沌の使徒を……」

「私達はただの人間ではありません」

詩音叔父さんは蓮牙を肩に担ぎ、キメラに向かって不敵な笑みを浮かべる。

「私達は古くより祭神・蓮霊之神のご加護の元、魔の力に苦しむ多くの人と聖獣を救い続け、護って来た一族です。たとえあなたが混沌の使徒だろうとも、そう簡単に負けるわけがありませんよ」

その詩音叔父さんの言葉に歴代当主が集まり、同じように不敵の笑みを浮かべた。

これが……蓮宮の本当の力……古来より襲いかかる数多の魔から人と聖獣を守り続けて来た破魔の力を持つ一族なのか……?

俺は歴代当主の姿を見て、蓮宮の十三代目当主である自分がまだまだ未熟者だと恐ろしく実感するのだった。




次回でバトルは終わりになります。


そろそろ天音のバンドが始まります。

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