第123話 蘇る蓮の煌めき
初めに言っておきます……キャラが大量に増えます(爆)
でも悔いはありません(笑)
俺の、いや、俺達の新しいアーティファクト・ギア……四霊天帝剣の誕生にキメラは目を丸くした。
「四体の聖獣による四重契約執行だと……!?しかも、あの伝説の四霊と!?」
流石のキメラも伝説の四霊との四重契約執行には驚いていた。
「すごい……本当に出来たんだ!」
「流石は俺の弟だ!」
「私の弟でもあるのよ!」
「頑張ってお兄ちゃん!」
俺が契約している間、璃音兄さん達はアーティファクト・ギアが無い中でキメラを食い止めてくれた。
そのせいで本当に疲れていて、今にも倒れそうだった。
黒蓮も冥覇獣王剣で必死に戦っていて、契約を解除すると汗をかいてとても疲れた顔をしていた。
「みんな。後は……俺に任せろ!!」
四霊天帝剣を構え、みんなと交代するようにキメラと戦う。
不思議と四霊天帝剣を持ってからは体がとても軽く感じ、霊煌弐式の強化を使ったように力が湧いて来た。
おそらく、契約した四人の四霊の力が俺に流れ込んでいるのだろう。
今なら、この四霊天帝剣なら、行ける!
「さあ、It's Show Timeだ!!!」
足に力を込めて思いっきり走りだし、キメラに斬りかかる。
「はぁあああああああっ!!」
「こうなったら、ビーストモード!!」
キメラの魔力が爆発すると姿が一瞬で変わり、ビーストモードと言われるスピードとパワーが大幅に上昇する姿となった。
「調子に乗るんじゃねぇぞ、小僧!!」
性格も大きく変わり、ここからがキメラとの本当の戦いだった。
「行くぞ、白蓮!轟牙!流星!鈴音!」
四霊天帝剣に宿る四人の聖獣の名を呼ぶと、刃から四つの光が出て来て俺の体に入り込んだ。
そして、背中から鳳凰の双翼、両腕に霊亀の甲羅から作られた手甲、両足には麒麟の姿を模した靴、そして体中の皮膚に竜鱗が浮かび上がった。
何が起きたのか一瞬理解出来なかったが、すぐに四霊達の思いが理解出来た。
「蓮宮流、天凛蓮華!!」
四霊天帝剣で乱撃を放ち、キメラの意識を拡散させた瞬間にキメラの背後に立ち、
「紅蓮裂刃!!!」
大きく振り上げた四霊天帝剣でキメラをぶった切ろうとする。
しかし、咄嗟に反応したキメラは大きな爪で四霊天帝剣の刃を受け止めた。
「は、速い!?何だこのスピードは!?」
キメラでも驚く俺のスピード……やっぱり四霊天帝剣から現れた四つの光が俺に四霊の力を宿したんだ。
鳳凰の白蓮からは空を飛ぶ為の飛翔力、霊亀の轟牙からは敵から身を守る為の防御力、麒麟の流星からは素早く動く為の速力、そして応龍の鈴音からはその全ての力を発揮する為の龍の原動力。
俺がキメラと戦う為に必要な力を四霊が補うように与えてくれた。
「ありがとう、みんな!」
みんなから与えてくれたこの力で必ずキメラに勝つ!
「白蓮!」
『うん!』
四霊天帝剣を持ってから気づいたけど、今なら四霊それぞれのアーティファクト・ギアによる必殺技を使える。
早速俺は白蓮とのギアーズ・ブレイクを使う。
「光り輝け、鳳凰の翼!!」
白銀の鳳凰の双翼が四霊天帝剣から生えて巨大な翼の剣となる。
「鳳凰光翼剣!!!」
本来なら鳳凰光翼剣は鳳凰剣零式と鳳凰剣百式が必要だが、四霊天帝剣で二本の剣が合わさった役割をしている。
鳳凰光翼剣を両手で持ち、キメラに向けて振り下ろす。
「破ぁあああああああっ!!」
「ワイルド・ハウリング!!オォオオオオオオオオオオオオオ!!!」
キメラはサクラとツバキに負けない衝撃波を生む怒声を放ち、振り下ろした鳳凰光翼剣を破壊し、光の羽根を散らした。
だけど、これで終わる鳳凰光翼剣じゃない。
散らした光の羽根から光の波動が幾重にも放たれ、キメラを攻撃して隙を作る。
次は鳳凰光翼剣よりも硬くて壊れない剣を作るだけだ!
「力を借りるよ、轟牙!」
『ゴォオオオオオオオオッ!!』
次は璃音兄さんと轟牙の必殺技だ。
四霊天帝剣から冷気が放たれ、周囲の気温が一気に下がって空気中の水分が凍っていく。
「天を衝け、霊亀の刃!!」
俺の周囲に無数の氷塊が現れ、それが四霊天帝剣と一つに合わさり、巨大な氷の剣となる。
「天衝氷帝剣!!!」
怒声では絶対に壊れない氷の大剣を振りかざすと、キメラはそれを破壊するために手で刃を受け止めたが、
「凍てつけ!!!」
「な、何!?」
天衝氷帝剣の刃に触れたキメラの手が一瞬で凍りつき、パリン!とガラスが割れたように凍りついた腕が砕け散ってしまった。
「ぐぉおおおおおっ!き、貴様!また俺の腕ぉおおおおおっ!!」
今のうちに花音姉さんと流星の必殺技を撃つ!
「行くよ、流星!!」
『ヒヒーン!!』
「光を超えろ、麒麟の輝き!!」
四霊天帝剣から流星の幻影が現れると、一本の黄金の矢となる。
それを右手で持つと、左手にある四霊天帝剣が蒼穹麒麟弓のような大きな弓の形へ変化した。
弓の射ち形は花音姉さんから教わったことがあり、それを思い出しながら黄金の矢を弓に変化した四霊天帝剣に添えて弦を引いてキメラを狙う。
「天壌光塵破!!!」
指を離した瞬間、黄金の矢が放たれる。
黄金の矢は麒麟の幻影を纏いながら駆け抜け、キメラが避ける間も無く体を貫いた。
最後を決めるのは風音と鈴音の必殺技、これで終わりだ!
「最後はお前だ、鈴音!」
『待ちくたびれぞ、天音!』
「全てを喰らえ、応龍の牙!!」
弓から大剣の姿に戻した四霊天帝剣を掲げると風が収束して巨大な風の龍となる。
光をも喰らう鋭い牙を携えた風の龍を四霊天帝剣を振り下ろすと同時に放つ。
「双蓮神龍破!!!」
風の龍は口いっぱいに開けて牙を向け、体を射抜かれてうずくまっていたキメラをそのまま喰らった。
「ぐぁあああああああああっ!!?」
体を牙で貫かれた後に来る凄まじい暴風にキメラは激痛からの絶叫をあげた。
キメラは四連続の必殺技でかなりダメージを受けた。
今なら俺の霊力と一緒にアリス先生から預かった魔法術式をキメラに直接打ち込む事が出来る。
「キメラ……覚悟しろ!!」
霊力と魔法術式を打ち込む為にダメージを受けて膝をついたキメラへ走り出して四霊天帝剣を振りかざした。
そして、四霊天帝剣を振り下ろした次の瞬間。
ピシッ、ピシッ……バリーン!!!
突然、前触れもなく嫌な音が鳴ると同時に四霊天帝剣の刃が二つに割れた。
「えっ……?」
呆然とする俺に折れた四霊天帝剣から膨大な力が溢れ出して俺の体を切り刻むように襲いかかった。
「うぁあああああっ!?」
「天音!!!」
千歳の悲痛の声が響く中、折れた四霊天帝剣が消えると四つの光が急に飛び出して地面に激突した。
その四つの光の正体は四霊天帝剣の中に入っていた白蓮達で、少しボロボロになって横たわっていた。
そして、膨大な力に体中を切り刻まれた俺はその場に倒れこむと契約媒体に使用していた蓮煌が目に映った。
しかし、その蓮煌は見るも無残に折れていて先の刃は地面に突き刺さっていて、根元から柄は俺の右手に握られていた。
「蓮、煌……」
体中に刻まれた痛みと蓮煌が折れたと言う信じられない現実が同時に襲いかかって何が起きたのか全く理解が出来なかった。
「……聞いたことがある」
キメラは新たな獣の肉体を作り出して立ち上がり、倒れた俺の元に歩む。
「契約した聖獣の大きな力に見合わない脆い契約媒体で無理な契約をした時、契約媒体が壊れて契約者と契約聖獣に大きな痛手を与えるとな……」
無理な契約で、契約媒体が壊れて契約者と聖獣に大きな痛手を……?
「通常の一対一の契約なら問題はない。だが貴様は四対一と言うあまりにもバランスの悪い四重契約を行った。その刀自体が神器らしいが、四霊の強大な力に耐えられなかったようだな」
「うぐっ……」
キメラは俺の首を掴んで持ち上げ、キリキリと力を強めて首を絞める。
「天音!!天音を離して!!」
千歳は炎帝九尾銃を構えるが、俺を盾にされて下手に撃つ事が出来なかった。
そして……。
「ちくしょう!起きろ、起きろよ轟牙!!」
「お願い!起きて、流星!!」
「鈴音!目を覚ましてよ鈴音!!」
璃音兄さん達は倒れてしまった契約聖獣達を呼びかけるが、全然起き上がる気配がない。
俺ほどダメージは受けてないみたいだが、起きるのに時間がかかるかもしれない。
白蓮、轟牙、流星、鈴音……ごめん、痛い思いをさせてしまって。
頑張ってくれたみんなに謝罪をしながら俺を殺そうとするキメラを見つめる。
「貴様はよくやった……だがここまでだな」
キメラは更に手の力を込めて俺の首を絞め、少しずつ意識が薄れて行く。
このままだと俺はキメラに殺されて死んでしまう。
キメラから霊煌紋を取り戻してないのにこんなところで……俺は、俺は……まだ……。
『天音、諦めてはいけませんよ』
死ぬわけにはいかない!!!
「氷蓮!!!」
左手の顕現陣から氷蓮を取り出してそのままキメラの右腕を斬る。
再び右腕を斬られたキメラは傷口を押さえながら悲鳴を上げる。
「ぐぁあああああああああっ!?ま、まだ剣を隠し持っていたのか!!」
「その通りだ!!」
そして、逃げられないように氷蓮でキメラの足元を凍らせて動けなくして、氷蓮を離して折れた蓮煌を両手で強く握り締める。
「返してもらうぞ、俺達蓮宮の宝を!!!」
折れた蓮煌の刃をキメラの胸に突き刺し、霊力を解放させる。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「ぐがぁっ!?き、貴様、な、何を……!?」
霊力と共にアリス先生から預かった魔法術式をキメラに流し込み、更に霊力を解放させて注ぎ込む。
キメラの体に浮かび上がった霊煌紋が俺の注いだ霊力に反応して青白い光を放った。
「今だ千歳!幻想絶界を解除するんだ!!」
「わ、わかったわ!!」
この幻想絶界の術者である千歳は指を鳴らすと空間が揺らいでクライシスのロボット兵と戦っていた元の世界に戻った。
「キ、キメラ!?」
クライシスは恭弥達が戦っていて、クライシスはキメラのボロボロな姿に驚愕していた。
そして、霊力をありったけ注ぎ込むとキメラの体に不思議な魔法術式が浮かび上がり、何ががキメラの中から飛んで行った。
「っ……いい加減にしろ!!」
キメラは腕を再生させて俺を殴り飛ばし、足元の氷を砕いて怒りの形相で俺に襲いかかる。
「死ねやクソガキがぁっ!!」
「くっ!?」
だめだ、今の俺じゃ回避が出来ない。
俺は両腕を顔の前で交差させて悪あがきの防御の体勢を取るが、このままだとキメラに……。
思わず目を強く瞑り、キメラからの攻撃を覚悟した。
キィン!!!
その時、金属音がぶつかる音が鳴った。
「私の甥をこれ以上傷つけさせませんよ……」
そして、幼い頃に聞いた優しい声が耳に聞こえて誰かがそっと俺の頭を撫でた。
「よく頑張りましたね、天音」
この優しい声とこの撫でられた感じは何処かで……。
俺は恐る恐る目をゆっくり開けて見た。
そこにいたのは璃音兄さんの剣である蓮牙を持ち、神子装束を纏った長い黒髪の男性だった。
「詩音、叔父さん……?」
俺の叔父で剣の師匠であり、璃音兄さんと花音姉さんの父さんで蓮宮十二代目当主の蓮宮詩音だった。
「お、親父!?」
「お父さん!?」
璃音兄さんと花音姉さんの呼び声に詩音叔父さんは小さく笑みを浮かべて頷いた。
そして、俺の元に十の影が近づいてきた。
「よくやった、十三代目!」
「もう大丈夫ですから安心してくださいね」
「よっしゃあ!久々に大暴れをしてやるぜ!!」
「それはこっちの台詞だ!ここにいる敵を一匹残らず全滅させてやる!!」
「暴れるのもいいけど、味方に被害を出さないでね」
「後は……俺達に、任せろ……」
「当主のみなさん、敵は強敵です。気をつけてください」
「そうだな、だが臆する事は無いな」
「十三代目が命をかけて私達を解放してくれたんですから、私達もその頑張りに見合う戦いをしないといけませんね」
「十三代目だけじゃなくここには蓮宮の子孫達がいるんだ。少しはかっこいい所を見せなくちゃな」
俺を十三代目と呼び、褒めてくれた十人の男女に俺は見覚えがあった。
十人全員が蓮宮の紋章がある神子装束を身に纏い、長い黒髪を持っていた。
あの十人は俺が霊煌紋を受け継ぐ時に出会っていた。
「貴様ら、何者だ!?」
キメラは十人の男女を睨みつけると、まず初めに蓮姫様に似た風貌の女性から名乗る。
「私は蓮宮二代目当主、蓮宮乙音」
その隣で母さんに良く似た雰囲気の女性が頭を下げて名乗る。
「私は蓮宮三代目当主、蓮宮魅音です」
その次に和服を大きく着崩した少しだらしない女性が力強く名乗る。
「私は蓮宮四代目当主!蓮宮初音だぜ!」
全身傷だらけの男性が負けじと地面を強く踏みしめながら名乗る。
「俺様は蓮宮五代目当主、蓮宮剣音!!」
その傷だらけの男性の背中に、風音くらいの歳の小さな女の子が乗って元気良く名乗る。
「私は蓮宮六代目当主!蓮宮朱音だよ!」
仏頂面の男性はやっと聞ける程度の小さな声でゆっくりと名乗る。
「蓮宮……七代目、当主……蓮宮玲音……」
古い型の眼鏡をかけた男性は眼鏡を掛け直しながら名乗る。
「私は蓮宮八代目当主、蓮宮音夜です」
今にも眠そうな表情をする男性は大きな欠伸をしながら名乗る。
「はぁ〜……俺か?俺は蓮宮九代目当主、蓮宮玖音だ」
顔の整った紳士のような男性は胸に手をおいて礼儀よく頭を下げながら名乗る。
「私は蓮宮十代目当主、蓮宮雷音と申します」
そして最後に煙管を持った妖艶な雰囲気の女性が紫煙を蒸かしながら名乗る。
「私は蓮宮十一代目当主、蓮宮織音よ」
詩音叔父さんを含めて二代目から十二代目の当主が一同に揃い、俺は夢を見ているのかと思うぐらいに目を疑っている。
しかし、そんなことは関係なく今ここに……俺を含む蓮宮の歴代当主十三人が全員いるのは間違いなかった。
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前半は怒涛の四霊天帝剣の大暴れっぷりに反して後半は遂に蓮宮歴代当主復活!
やっちまった感はありますが後悔はしていません。




