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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第9章 文化祭編
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第121話 奇跡を信じて

前回の続きからやっと天音サイドに移れます。



sideサクラ


姐さんと一緒に戦ってしばらくすると、明日奈とイチがいた半円球の光が消えると、扇子を持った明日奈の姿があった。

「明日奈!!」

「サクラ君、お待たせ。私も……戦うから!」

明日奈は扇子を上に持っていくと、一気にしたに振り下ろして仰いだ。

「切り裂け、無月繚乱!!」

振り下ろした扇子からイチが放つ以上の無数の真空の刃が現れてライラとグランに襲いかかる。

「なっ、何!?」

「ライラ!お前は先にあいつを始末しろ!」

グランは真空の刃を避けながらライラを魔法陣に通して姿を消した。

そして、明日奈の背後に転移させた。

「明日奈!避けろ!!」

「孤月円舞!!」

明日奈が身体を見事に横回転をしながら扇子を振り回し、ライラの首を狙った。

「危なっ!?」

「ソロモンナンバーズ7!アモン!我に仇なす敵を焼き尽くせ!!」

回転から降りてソロモンズブックを手元に持ってくると、ソロモン72柱の序列第7位の悪魔、炎を操るアモンを召喚し、口から炎を吐いて攻撃する。

「それくらいの炎、悪魔の私には意味を……」

「ファング・インパクト!」

「ぐあっ!?」

意識が明日奈に集中している隙にトライファング・ケルベロスで衝撃波を放ってライラをぶっ飛ばす。

「サクラ君!」

『このまま一気に攻めるぞ』

明日奈の持つ扇子からイチの声が響いた。

「この声……イチなのか!?」

『ああ。ソロモンの73体目の悪魔になって、明日奈の契約聖獣になった……』

「そうか……覚悟があるなら俺は何も言わない」

なるほど、イチが明日奈の契約聖獣に……そして、明日奈の新たな力、イチとおそらくいつも使っている扇子が契約したアーティファクト・ギアか。

「このアーティファクト・ギアの名前は魔刃斬月よ。いっちゃんの放つ斬撃を繰り出すことが出来るの」

「イチの斬撃を簡単に放てる扇子か……」

明日奈の主戦力となるソロモン72柱の悪魔を召喚しつつ、接近戦ではイチと契約したアーティファクト・ギアの魔刃斬月で鋭い斬撃を放って応戦しつつ、また新たなソロモン72柱を召喚か……。

接近戦が出来ず、明日奈にとって大きな弱点でもあったが、それを取り除いて新たに生み出した見事な戦法だった。

ソロモン72柱と魔刃斬月……この二つが揃った明日奈は最強と言ってもおかしくはなかった。

「サクラ。明日奈さんに見惚れるのはいいけど、戦いに集中しなさい」

グランと戦っていた姐さんはふふふと口元を手で押さえて笑いながらそう言う。

「なっ!?み、見惚れてない!!姐さん、変な事を言うな!!」

「あ、あの、改めてご挨拶を。私、霧夜明日奈と申します。サクラ君にはお世話になってます」

明日奈は姐さんに向かって少し緊張気味に挨拶をする。

俺に世話になっているって言うけど、むしろ世話になっているのは俺だけどな……。

「素直で礼儀正しくて、何よりも可愛い……明日奈さんなら任せられるわ……」

姐さんは明日奈を気に入ったのかうんうんと頷いて満足な表情をしている。

明日奈に俺の何を任せるのかとても気になるが聞くのがすごく怖い……。

「まあ、とにかく……明日奈とイチも来たんだ。反撃と行くか?」

「うん!任せて、サクラ君!」

『今の私達なら、混沌の使徒に後れを取ることはない……』

「魔の使徒はあなた達で、星の使徒は私が相手をするわ。でも、無茶はしないでね」

「「はい!!」」

『『『ワウッ!』』』

『了解……』

明日奈とイチが戻ってきたところで、俺たちの反撃の時……第三ラウンドの幕開けとなった。



sideセシリア


「はぁああああああっ!!」

「ふんっ!!」

俺はシャイニング・XX・カリバーの斬撃を放つが、龍の使徒・ジークは刀身に龍の文様が描かれた大剣で防いだ。

天音を助けに混沌の使徒と対峙したが不思議な魔法の所為で変な空間に閉じ込められてそこでジークとか言うやつと戦うことになった。

はっきり言うと、ジークはとても強かった。

こっちは戦えないアルティナ姉さんを除く俺と四大騎士達で戦っているが、

ジークの優れた剣技と、アルと同じく竜人の能力を持っているらしく、であるドラゴンブレスや鋭い爪や尻尾などの体躯で逆にこちらが攻められている状態だった。

流石は世界を混沌に導くとされる十二の選ばれし伝説の使徒……その力は強大だ。

でも、俺には一つ聞きたいこたがあった。

それは、イギリスでの反乱の後にアリス先生から聞いたことだった。

首謀者で哀れにも魔人となって最後は消滅したディルスト……そいつに竜を操る『竜繰の魔導書』を渡したのは混沌の使徒の誰かと言っていた。

つまり、ディルストを悪の道に走らせ、母さんを死に追いやった原因は混沌の使徒によるものだ。

「お前に一つ聞きたい」

「何だ?」

そして、俺の目の前には龍を司る混沌の使徒がいる……。

「十六年前……ディルストと言う男に竜繰の魔導書を渡したのはお前か?」

「ディルスト……?ああ、あの男か。そう言えばあいつなら世界を混沌に導く手助けが出来ると思って適当な魔導書を渡したな……それがどうした?」

私の推測は正しかった……こいつが私と姉さん、母さんとシスターの運命を歪ませた元凶……私達から母さんを……。

「お前が……お前が……」

体を大きく震わせて体全身に力を込め、シャイニング・XX・カリバーを強く握り締める。

『よせ、セシリア!憎しみで我を忘れては……』

「うぁああああああああああああああああああああああああっ!!!」

私は剣の中にいるアルの制止を聞かずに怒りを爆発させた。

私達の人生を歪ませたこいつを許せない!

絶対に、絶対にこいつを倒して罪を償わせてやる!!

体にアルと同じ竜人の力を発動し、全力を使って高速の剣撃を与えながらジークを追い詰める。

「おいおい、何があったが知らんが急にどうしたんだ?」

追い詰めているはずなのにジークは涼しい顔をして大剣で俺の剣を軽く捌く。

剣技は向こうの方が上、それならありったけの魔力をぶっ放す!

シャイニング・XX・カリバーに魔力を吸収させ、アルと聖剣の力を解放させて近距離で振り下ろした。

「喰らえ、シャイニング・セイヴァー!!!」

闇を切り裂く光の斬撃を放ち、ジークは光の斬撃の中に包まれた。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

一分にも満たない短い時間だったが、全力を出し尽くした所為で体力が一気に減って地面に膝を着く。

「セシリア!」

姉さん達が俺に駆け寄り、ヴァンがアーティファクト・ギアですぐに俺の体力を回復させる治癒魔法をかけてくれた。

「姉、さん。これで……奴を……」

倒した、そう思いたかったが、

「それはどうかな?」

どうやらそう上手くいかないみたいだ。

ジークはシャイニング・セイヴァーをまともに喰らいながらも平然とした顔で歩いてきた。

一応シャイニング・セイヴァーはダメージを与えていたらしく、体に傷が出来ていた。

「あれが怒りに任せて放ったお前の全力か?」

グランの目が大きく開くと、全身から魔力が解き放たれた。

その力はアリス先生かマーリンを彷彿させるほどの大きさだった。

仇にして強敵を目の前にし、みんなはこいつに勝てるのかと顔から汗を垂らす。

俺は姉さんの肩を借りて立ち上がり、大きく息を吸って今の気持ちを言葉にした。







「ふぅー!よし、色々と気持ちがスッキリしたぜ!!」







その言葉にこの場の空気が一気に凍りついた。

「……は?」

「「「「「……えっ!?」」」」」

そして、敵味方関係なく全員が一斉に俺を凝視する。

シャイニング・XX・カリバーを地面に突き刺し、肩を回したり腕を伸ばしたりして軽くストレッチをする。

「お前……さっきまでの怒りはどうした……?俺が憎いんじゃなかったのか……?」

「ああ、憎いさ。あんたの所為で私達から母さんを奪うきっかけを作ったんだからな」

「なら、何故そんなに晴れやかな顔をしている……?」

ジークはきょとんとしながら俺を見つめている。

そりゃあそうだよな、自分を憎んでいる人間がいきなり晴れやかな顔をしたら誰だって不思議に思うよな。

昔の俺だったらさっきのまま憎しみに取り憑かれていたかもしれないけど、俺には騎士王の大先輩が側にいる。

「……憎しみは悲劇しか生まない。そう相棒に教わったからな」

『セシリア……』

アルがアーサー王の時、色々な憎しみや悲しみなどの人の負の心によって国は滅んでしまった。

だからアルは二度とあんな事にならないように俺に憎しみを持つなと教えてくれた。

「だけど、どうしても気持ちが抑えきれなかったから全力を出して、憎しみの嫌な気持ち発散したんだよ。そのお陰で今は気持ちがスッキリしたぜ!!」

『全く……お前と言う奴は……』

「何だよ、アル。お前のお陰で冷静を取り戻したんだぜ?」

『いや、精神面だけなら私を越えたなと思ってな』

「へへへ、そのうち剣も越えてやるぜ!」

シャイニング・XX・セイヴァーを肩に担ぐと、心配していたみんなが破顔した。

「セシリアったら、心配かけないでくださいよ」

「だが、騎士王としてよく言ったぞ」

「流石は俺達の王様だな♪」

「ふっ、そうだな……」

「よーし!ここは騎士王様と姫様、そして四大騎士の力を結集して戦おう!」

気持ちを新たにし、晴れやかな気持ちでジークに刃を向ける。

そのジークは始めて笑みを浮かべ、右手で前髪を後ろに持って行く。

「面白い……貴様のような人間は初めてだ!その敬意を評して、俺の混沌の使徒の力を見せてやる!!」

ジークの体から魔力が爆発し、人間だったその姿を少しずつ変えて行った。

それはイギリスの戦いでディルストが竜操の魔導書を取り込んだ時と似たような光景で、ジークの体はみるみる竜の肉体に変化して行った。

そして、ジークはアルに似た剣を持つ竜の剣士へと姿を変えた。

混沌無限解放カオス・オーバー・ドライブ、竜王剣士・ジークフリーガー!!!」

「それがお前の本当の力か……」

ジークの口ぶりから察すると、どうやら混沌の使徒は人間の姿から魔人のような姿に変身することで本当の力を発揮できるらしい。

「よし……姉さんはヴァンとキュアリーと一緒に後方支援、シスターとヴァークベルは俺と一緒にジークを討つ!ただし、無茶だけはするなよ?」

「はい!」

「おうよ!」

「分かったわ!」

「任せろ!」

「ああ……!」

本気になったジークとの戦いはこれからが本番、さあ思いっきり派手に暴れてやるぜ!!!



side天音


蓮宮の当主の証である霊煌紋……それを混沌の使徒の一人、獣の使徒・キメラに奪われてしまった。

あの霊煌紋は蓮姫様から詩音叔父さんまで十二代も代々大切に受け継いで来た証なんだ。

それを他人に奪われたままには出来ない。

すぐにでも蓮姫様達と共に取り込んだキメラから取り返そうとしたが、それをもう一人の混沌の使徒、機の使徒・クライシスに阻まれている。

サイボーグ……と言えばいいと思うけど、霊力が強く他人の魂の形とかを見ることが出来る俺達一族はクライシスに人間の魂があることを知った。

つまり、クライシスは元人間で、全身を機械で改造されたサイボーグと言うことだ。

そのクライシスはサイボーグなのにたくさんの魔法陣を展開すると、何とそこから大量のロボットの兵隊を召喚した。

まるでロボットかSF映画を彷彿させるような光景で、銃を構えたロボット兵が一斉に攻撃し始めて来た。

本来なら対多数の戦いに使える霊煌伍式・刀剣を使いたいところだが、それは当然不可能でアーティファクト・ギアで破壊して行く。

しかし、クライシスはそれをあざ笑うかのような手を使う。

破壊したロボット兵のパーツが勝手に集まり、新たなロボット兵が生まれてしまった。

壊れたパーツで合体したものだから見た目は不恰好だが、壊してもまた新しいロボットが生まれるのだから面倒極まりない戦いだった。

千歳や雷花さんみたいにアーティファクト・ギアでパーツや回線を残さず灰にするぐらい破壊すればいいのだが、俺のアーティファクト・ギアの鳳凰剣零式と冥覇獣王剣ではそれを実行するのは難しい。

そして、キメラとクライシスは遥か先でのんびりと休んでいた。

「相変わらず凄いな、お前のロボット兵団は……」

「ライラノアーミーヨリハパワーはオチルガ、テキノセンリョクヲオトスニハジュウブンダ」

なるほど、俺達の戦力を分断させて体力を削減させる戦法か……何か手を打たないとジリ貧だな。

「天音、一点突破の正面突破をしようか!」

「千歳?」

「私達が天音をキメラの元まで頑張って行かせるから霊煌紋を取り戻して!」

千歳はそう言ってくれるが大きな問題があった。

一点突破の正面突破、みんなの力を借りれば確かにそれは可能かもしれないけど、問題は『どうやって』霊煌紋を取り戻すかだ。

キメラは相手の体に噛み付いて、噛み付いた相手の持つ能力を奪う力を持っている。

これは璃音兄さんから聞いた話だが、霊煌紋は蓮宮……蓮姫様の血筋を引いて当主に選ばれた人間にしか使えず、一度体に刻まれた霊煌紋の刻印はその当主が死ぬ、もしくは次の当主に受け継ぐまで体から離れる事は無い。

だから、霊煌紋が奪われると言う事は元々想定されてはいないのだ。

霊煌紋を創り出した蓮姫様とアリス先生もどうするか考えながら戦っている。

「霊煌紋を奪い返すとなると、こちらも相手の能力を奪う術を使うか?」

「いや、一応私は使えるけど、それだとキメラの持つと思われるたくさんの能力から霊煌紋を特定して奪うのは無理だわ」

「そうか……早くしないと乙音が、みんなの魂が……」

蓮姫様は僅かに焦りの表情が見え始める。

霊煌紋は蓮姫様にとって大切なものだから焦りたい気持ちはわかる。

だけど、みんなの魂ってどう言うことだろう?

「乙音、蓮宮歴代当主の魂……?あっ、そうだ!!!」

アリス先生は何かを思いついたらしく、パチン!といつも以上に大きく指を鳴らした。

「蓮姫、天音!霊煌紋を取り戻す方法が見つかったわ!」

「本当か、アリス!?」

「本当ですか!?」

「これは有る意味大きな一つの賭けだけど、それでも構わない?」

大きな賭け……それが例えどんな方法だろうとも俺と蓮姫様の答えは決まっている。

「ああ、もちろんだ!」

「霊煌紋が取り戻せるなら俺は何でもやります!!」

「それなら……天音、手を出して」

「はい!」

アリス先生に言われるがままに俺は右手を差し出すと、

「あなたのありったけの全ての霊力をキメラに直接注ぎながらその魔法術式を埋め込みなさい。そうすれば『蓮宮の奇跡』が起きるはずよ」

「蓮宮の奇跡……?」

霊力と共にアリス先生から預かった魔法術式を俺の霊力をキメラに全て注ぎ込んだらどうなるのか俺には分からず、予想すら出来なかった。

だが、アリス先生の言う『蓮宮の奇跡』を信じて俺は鳳凰剣零式と冥覇獣王剣を握り直した。

「さあ、行こうか!!」

キメラに奪われた霊煌紋を取り戻すために、一つの賭けの先にある奇跡を起こしに!




セシリアの所はサクッと仕上げました。


次回、もしくはその次には蓮宮の奇跡を見られるかな?



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