第14話 決着、タッグバトルトーナメント!
とりあえずこれでタッグバトル編はおしまいです。
天音がチート無双です(笑)
心を鬼にして放ったユニコーン・ザ・グングニールの攻撃は最後の最後で私の狙い通りで白蓮さんを覚醒へと促すことが出来ました。しかし、嬉しさも束の間で契約執行でまさか白蓮さんが天音さんの刀だけではなく、手甲や衣服にまで契約するとは驚きました。
本来ならアーティファクト・ギアは一つの道具にしか契約を執行することが出来ないはず。その理由は契約の際の魔法陣でそのように設定されているからで……あら?
ここで一つ何かに頭の中に引っかかりました。そう言えば、天音さんは契約の際に魔法陣の代わりで千歳さんとその契約聖獣の九尾の銀羅さんが描いた即席の魔法陣を利用していました……もしかした ら。
「契約か、覚醒した白蓮さんに異変が……もしかしたらその両方かもしれませんね……」
思わず口にしてしまいましたがそう考えるのが妥当だと考えます。しかし、それはこの戦いが終えるまで心の中にしまっておきます。
何故なら、今まさに真の力を発揮する天音さんと白蓮さんと戦えるのですから! 久々に感じる胸の高まり……これこそが私が最近求めていたものですわ!!
「ソフィー。少しの間、私の我儘に付き合ってくださいね。私のすべての力が使い切る瞬間まで」
私の無茶な願いにソフィーは鳴くことなく、代わりに自らの魔力を放出して応えてくれました。アーティファクト・ギアにて私の気力とソフィーの魔力が混ざり合い、アーティファクト・フォースの力が更に高まりました。
「ありがとう、ソフィー」
私の大切な一角獣さんにお礼を言うと、愛槍である神槍を右手の中で軽やかで華麗に振り回し、真の力を手に入れた天音さんと白蓮さんと対峙します。
さあ、いざ決戦の時です!
☆
とても不思議な気分だった。この三つのアーティファクト・ギアが体に活力を与えてくれるかのように体が軽かった。今ならどんな相手だろうと負ける気がしなかった。
「行くよ、白蓮……」
両足に力を込め、地面を強く蹴った。地面を蹴った瞬間、まるで体が突風になったように早く動き、あっという間に雫先輩の間合いに入った。
「早い!?」
相手に驚く隙さえ与えないよう、大剣へと進化した蓮煌を乱撃で放つ。
「天凛蓮華!!!」
連続に振り回し、乱撃として放たれた斬撃は刀の時と違ってスピードは落ちているが、大剣の重さが破壊力として斬撃に乗っている。
「くっ!?」
ユニコーン・ザ・グングニールの柄で大剣の刃を弾き、捌いているが雫先輩の顔に初めて焦りの表情が現れている。接近戦では分が悪いと判断し、雫先輩はアーティファクト・フォースで強化されている身体能力を駆使して俺から一気に遠くへ離れる。
「ユニコーン・シェイバー!!」
離れるとすぐに高速回転する槍で投擲するが、
「加速!!」
纏っている装束のお陰で今の俺は、通常より数倍も速く動ける事ができ、飛翔する槍を簡単に避けられる。加速したまま再び雫先輩に近づき、今度こそ一撃を与える為に大剣を担ぐように振り上げる。
その時、大剣から三つの力が放たれた。大剣の刃の色を表すような灼熱の炎が刃から溢れ出し、その炎の力を更に増すように突然刃から吹き出した風。そして、聖なる光が刃から輝きだした。大剣から三つの属性の力が現れたことに驚くが、これが白蓮の持つ力だと確信すると一気に振り下ろす。
「紅蓮裂刃!!!」
三つの力が一つになった刃は雫先輩の左肩から胴体を斬り、今まで無傷だった雫先輩の結界エネルギーを大量に削る。
「あっ……!?」
『雨月雫、結界エネルギー78パーセントダウン!エネルギー残量、22パーセント』
「よしっ!!」
このまま押し切れば、雫先輩に勝てる!勝利を確信した次の瞬間だった。
「“ギアーズ・オーバー・ドライブ”!!!」
ギアーズ・ブレイクとは違う別の単語が雫先輩の口から叫ばれ、体から溢れていた力の閃光が更に輝いた。
「オーバー・ドライブ……?」
「雫、止めろ!それを使ったら……」
迅先輩が焦った様子で雫先輩を止めようとする。雫先輩は一体何をするつもりだ?
「迅……黙ってやらせてください。私は、自分の限界を見てみたいんです……」
静かな口調で話す雫先輩はユニコーン・ザ・グングニールを手放し、再び宙に浮いた。
「作り出すは無限の幻影……」
空間が歪み、ユニコーン・ザ・グングニールの姿が消える。
「幻影は虚空、掴むことのない夢と幻……」
空間の歪みはアリーナ全体にまで及び、消えていたユニコーン・ザ・グングニールの姿が雫先輩の前に現れる。
「されど、我は望む……」
望む。その単語を口にした瞬間、たった一つしか存在しないユニコーン・ザ・グングニールが無数に増えていく。しかし、その無数の神槍は本体の姿形を写した幻想に過ぎなかった。だが、
「幻影の意志と虚空の想い、我が神槍の力を今ここに顕現させる……」
命ずるように幻想の神槍が器を手に入れ、幻から物体となった。そして、器を手に入れた幻想の神槍に力をそそぎ込む。
「“アンリミテッド・グングニール・ファンタジア”!!!」
無数のユニコーン・ザ・グングニールが俺を中心に巨大な半円形を描くように配置される。圧倒的な存在感がアリーナのフィールドに現れ、思わず周囲をきょろきょろと見渡してしまう。
「これが……私の奥の手……です」
両腕を上げている雫先輩は手に何も持っていないのにまるで巨大な何かを支えているように体が力んでいた。
「はぁ……はぁ……くっ……!?」
表情が激痛を受けたように歪んだ。すると、雫先輩の両腕から血が吹き出した。
「し、雫先輩!?」
「雫!!!」
俺と一緒に迅先輩が声を上げた。まさか、先輩はあのアンリミテッド・グングニール・ファンタジアって技をまだ完全に会得してないのか!? 強大すぎる力に体が耐え切れてない!?
無数のユニコーン・ザ・グングニールから流れる強大な力が両腕に張り巡らせている血管と両腕を覆う皮膚を破ったのだ。
「ふふふ……大丈夫ですよ。痛みには慣れていますから……」
歪んだ表情をいつもの笑顔で打ち消し、両腕で支えている無数のユニコーン・ザ・グングニールを操り、槍の先をすべて俺に向ける。
「天音さん、白蓮さん。この無限の神槍を打ち砕いてください……あなた達の可能性を見せてください!!」
本気を物語っている真剣な瞳が俺を凝視し、全てのユニコーン・ザ・グングニールを支えている両腕を解き放つように振り下ろした。
「貫けぇえええーーーっ!!!」
力が籠もった大声で叫ぶと同時に無数のユニコーン・ザ・グングニールが雨のように降り注いだ。こんな凄まじい攻撃を受けたら一溜まりもない。だからと言って、俺を中心に半円形に覆い囲んでいるユニコーン・ザ・グングニールから逃げられるような隙間など無い。ならば、どうやって攻略するか?
そこで雫先輩の言葉を思い出した。アーティファクト・フォースは契約者と契約聖獣同士の心を一つにし、シンクロ率が100パーセントを越え、契約者の人間の持つ霊力や気力と聖獣の持つ魔力や神力を一つにして発動する術だと。
気力はまだ扱うことができないが、俺にはたった一つだけ使える“力”がある。それは小さい頃から伸ばし続けていることで蓄えられる力。眼を閉じて、その力の扉を開くように言葉を紡いだ。
「霊力解放――」
ポニーテールに纏めた黒髪の長髪が上下に揺らぎ、体中に透明に近い青白い光の霊力を纏う。その霊力をアーティファクト・ギアへ伝えると白蓮が反応し、それに応えるために自身の持つ力を解放して天音の霊力と混ざり合う。
俺と白蓮のシンクロ率は100パーセントを超えている信じることで、人間と聖獣の二つの力がアーティファクト・ギアにて一つに混ざり合い、様々な能力を大幅に強化の秘技が発動する。
「発動、アーティファクト・フォース!!!」
体に真紅と黄金と白銀の光を纏い、体中に力が溢れてくる。初めてでしかも雫先輩が実演したのを見様見真似でやったのだが、上手くいってよかった。しかし、これだけではユニコーン・ザ・グングニールを防ぐことは難しい。さて、このようなピンチとも言える場面をどうすれば乗り越えられることができるか?
千歳なら必ず、
『アニメや漫画の主人公がピンチの時には必ず何かが起こるか起こすの! 例えば、秘められた真の力が解放されたり、ド派手な必殺技を出したりするのがお決まりの王道だね!』
と、こう言うだろう。アニメ好きの千歳なら自信を持ってこう言うのは間違いない。しかし、前者の秘められた真の力が解放するのは既に先ほど白蓮が実践してしまった。
となると残るはド派手な必殺技だ。必殺技なんてその場で決まるモノとは思えないが、以前アーティファクト・ギアを使った訓練で千歳が狐火で九体の竜を作り出す「九頭竜炎陣」を初めて使った時は驚いた。どうしてそんなカッコいい技を出せたのか聞いて見ると、千歳は得意げにこう言った。
『これはおじいちゃんから教わったんだけど、アーティファクト・ギアを使う技は必ず契約者の人間の想像力が必須だって。その想像力がアーティファクト・ギアの中にいる聖獣に新たな“可能性”を広げさせることができる。そして、その“想像”を“創造”させて技に出来るかどうかは契約した人間と聖獣を結ぶ“絆の力”次第だって。まあ、この九頭竜炎陣って技は私の想像力が明確で、銀羅との絆の力も意外に強かったから、私と銀羅はそんなに苦も無く出すことが出来たんだけどね』
この言葉を信じれば、狐火から作られた九頭竜炎陣のように先ほど大剣から出した三つの属性の力を具体的な形にして放てば多分必殺技になるだろう。しかし、そのためにはすぐそこまで迫っている大量の神槍をまず凪払う! まずは大剣に三つの属性の力を放出させながら、体を一回転させて大剣を上に向けて振り上げる。
「水蓮天昇!!」
回転して上に向けた大剣は天を穿つ螺旋の剣撃を描いた。幻想の神槍は螺旋の剣撃に全て弾き飛ばされて宙に散らばる。そして、螺旋の剣撃を一つに集めて球体を作り、俺は高く飛んだ。すると、俺の背中、正確に言えばアーティファクト・ギアと化した神子装束の背中のあたりから成長した白蓮の見事な翼を模した光の双翼が現れて俺は空を飛ぶことが出来た。
一つに集めた小さな力の球体に自分の左手を向け、俺と白蓮の力を混ぜたアーティファクト・フォースを流し込んで球体を何十倍にも巨大化させる。
見ていてくれ、千歳! 銀羅! これが俺と白蓮の最初の必殺技だ!!
「行くぞ、白蓮!」
『うん!がんばる!』
お互いの準備は万端、後はぶっ放すだけ!
「はああああああああああああああっ!!!」
大剣を両手で持ち、渾身の力で力の球体に向かって振り下ろす。
「喰らいやがれえぇっ!!!」
勢い良く振り下ろされた大剣の刃は巨大化した力の球体を斬り、中心でピタッと止まる。この力の球体を切り裂くのが目的ではない。大剣をケーブル代わりにして俺の明確なイメージを与えて具現化させるためだ。そして、狙い通りに俺のイメージはすぐに具現化された。
飛べば風を吹き出す巨大な双翼、敵を貫く鋭い嘴と眼光。そして、邪悪なる力を焼き尽くす真紅の炎を纏いしその体躯。それは俺と白蓮の力を一つにして生み出した巨大な鳥だ。成長した白蓮の姿をモチーフに想像し、それを力の球体から生み出した。
『――――――――――!!!』
真紅の鳥はとても高い声を上げて鳴き、敵である雫先輩に向かって飛翔する。しかし、雫先輩は動かなかった。傷ついた両腕をだらんと下げ、そのまま地面に崩れ落ちた。
「あはは……もう、動けません……」
秘技であるアーティファクト・フォース、ギアーズ・ブレイク。そして、ギアーズ・オーバー・ドライブの使用による雫先輩の体内にある気力を大幅に消費してしまった所為でもう動くことすら出来なくなっていた。
俺はとっさに真紅の鳥を雫先輩から軌道を外そう試みたが、もう既に起動修正が不可能な位置まで飛んでしまっている。
「バカが……無茶しやがって」
その時、今まで戦いを見守っていた迅先輩が体に鋼色の光を纏って雫先輩の前に出てきた。その光の正体は紛れもなくアーティファクト・フォースだった。イージス・オブ・ペガサスを構えて呪文の詠唱を始める。
「天馬の輝く翼よ、万物を狂わす竜巻を起こし、愚者を蹴散らせ!! ギアーズ・ブレイク……ウィング・ペガサス・ストリーム!!!」
イージス・オブ・ペガサスから天馬の翼が現れ、迅先輩は後ろにいる雫先輩を包み込むように巨大な竜巻を起こした。
そして、真紅の鳥と天馬の竜巻が激突し、炎と風が複雑に絡み合った直後、一瞬の閃光と衝撃波がアリーナとフィールドを襲った。
俺と白蓮はその衝撃波に吹き飛ばされた。アーティファクト・フォースと真紅の鳥を出した影響か、体に一気に疲労感が襲い掛かってしまい、俺は意識を手放してしまった……。
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次回は戦いの後の話になります。
よくある保健室での対話です。
その保健室でいろいろな事実が発覚します。