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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第9章 文化祭編
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第119話 魔の因縁

遂に本格的なバトルを行うにあたって役者が揃います。

side蓮姫


アリスと共に私は天音達が通う天聖学園の学園祭である天繚祭に参加し、生徒達が作った出し物を色々見て回った。

「楽しい?蓮姫」

「ああ。天聖学園の学園祭は面白いな。この面白さを是非蓮宮神社の祭りに活かしたいな」

蓮宮神社では年に数回祭りを行うので、こう言う生徒達が各々作る独創的で楽しい出し物はとても参考になる。

祭りは神に捧げるものでもあるけど、やはりこうやってみんなで騒いで楽しくなくちゃな。

『『『わうっ!わうっ!!』』』

「ん?」

その時、三つの重なった鳴き声が聞こえると、三つ首の黒犬が私に駆け寄って来た。

この三つ首の黒犬は天音のもう一人の契約聖獣の黒蓮だ。

何があったのか聞こうと黒蓮に触れようとすると。

ドクン……ドクン……。

私の体の中にあるモノ……魂が突然騒ぎ出した。

それは私の魂に“刻まれている”霊煌紋が何かを訴えていた。

霊煌紋は歴代蓮宮当主の体……今は天音の体に刻まれるが、私の場合はアリスの計らいで魂に霊煌紋が刻まれている。

元々霊煌紋はアリスと私、そして蓮宮の神・蓮霊之神で造ったものだからそれぐらいは可能だ。

その霊煌紋の訴えに私は目を閉じて聞くのを試みた。

そして、私の瞼に映ったのは天音ではない別の人間の体の中に囚われた十一の魂……私の子孫であり、歴代蓮宮当主だった。

その中には私の愛する娘、乙音も囚われていた。

「乙音!?アリス!」

「ええ、分かっているわ。黒蓮が天音の危機を伝えに来たのよ。この天聖学園に大きな闇がいる……すぐに戦力を集めて行くわよ!」

「ああ!」

アリスもこの事態に気付いたのか、無限神書の魔女として表情が鋭くなり、指を鳴らして魔法陣を展開する。

私は黒蓮を抱き上げてアリスと共に戦力を集め、天音達を救い、その闇と戦うためにその場から転移した。



side天音


獣の使徒・キメラに霊煌紋を奪われ、このままでは全滅になる事を恐れ、俺は黒蓮に援軍要請を頼んでその間に千歳と共にキメラ相手に時間稼ぎをしている。

しかし、正直な話、千歳と二人掛かりでもかなりキツイ戦いだ。

キメラは数多の人間と聖獣の能力や肉体の一部を奪って己の力にしているらしく、その身体能力や複数の属性の持つ攻撃はとても凄まじく、強烈だった。

千歳は奥の手のギアーズ・オーバー・ドライブの炎帝九尾銃を使おうとしたが、下手に今使うと無駄な力を消耗してキメラに銀羅と金羅の九尾の妖狐の力を奪われるかもしれない。

それを避けるためにも、援軍が来るまで回避とキメラの意識を撹乱させる攻撃に集中するしかない。

「Blast!!」

「蓮宮流、鳳凰炎刃羽!!」

全力で回避しながら千歳のダイナマイトと鳳凰剣零式から生える炎の羽でキメラを少しずつ攻撃していく。

「その程度でこの獣の使徒に適うと思っているのか?」

予想通りだが、キメラはこの程度の攻撃をものともせずに九尾の妖狐と契約している千歳を執着して狙い続ける。

千歳をキメラから守る為……千歳を襲おうとするキメラの前に立ち、炎を刃に纏わせた鳳凰剣零式をゼロ距離で解き放った。

「蓮宮流。鳳凰……紅蓮撃!!」

「ウゴォッ!?」

「うぐぅっ!?」

爆炎がまともに俺とキメラに直撃してお互いに吹き飛ばされた。

とっさに体から霊力を放って覆うようにして爆炎の熱から守ったが、体の所々に僅かな火傷が出来る。

「あちち……やっぱり白蓮の炎は熱いな」

『ち、ちちうえ!だいじょうぶ!?』

「ああ。何とかな……」

「天音!無茶しすぎよ!!」

千歳が倒れた俺を起き上がらせる。

「多少の無茶しないとお前を守れないだろ?それに……」

チラッとキメラの方を向くとすでにキメラは立ち上がっており、砂埃を軽く叩いていていた。

「あいつもまだまだやれるみたいだからな。だから、まだもう少しの無茶が必要みたいだ」

「天音……」

「心配するな、千歳。霊煌紋が無くても……必ずお前を守るから」

とても心配な表情で今にも泣きそうな千歳に俺は軽く頭を撫でた。

「無駄だ……力を失った者の前では、我のような巨大な力には勝てん……」

「俺は諦めない。希望が残されている限り!」

キメラに対し、臆することなく立ち向かい、再び鳳凰剣零式を構える。







「その心意気、流石は我らが蓮宮十三代目当主だ」







その時、俺達の周囲に数多の魔法陣が現れた。

それはこの状況において、俺と千歳の念願の時でもあった。

蓮姫様を筆頭に蓮宮一族、アリス先生を筆頭に冒険部、更にはセシリアを筆頭とする英国騎士団が一度に集結していた。

この頼れる援軍にキメラは顔を歪ませた。

「無限神書の魔女、アリスティーナ!?まさか、この援軍を呼ぶために今まで時間を稼いでいたのか!?」

「その通りだ……」

『『『わうっ!!』』』

「良くやったぞ、黒蓮。後でパンケーキをたくさん作ってやるからな」

『『『ばうっ!』』』

援軍を呼んでくれた黒蓮が俺に駆け寄って飛びつき、俺は三つの頭を撫でる。

「天音」

「蓮姫様……」

蓮姫様はいつになく真剣な表情で俺を見つめ、そっと体に触れる。

「霊煌紋を奪われたのか……?」

「はい……申し訳ありません……」

「謝らなくていい。だが、我ら蓮宮の宝を奪われたままにはしておけない。必ず奪い返すぞ!」

「はい!!」

俺は決意を込めた返事をすると、パチン!と指を鳴らした音がなり、アリス先生の魔法陣が俺の体を通過すると、キメラに負わされた首元の傷が癒えて体力が一気に回復した。

俺以外にも千歳や倒れているみんなにも魔法陣が通され、全員が回復して起き上がった。

「治癒魔法完了♪これで何時でも戦闘に復帰出来るわよ♪」

「アリス先生……ありがとうございます!」

「ええ。さあ、反撃よ!!」

アリス先生達がいればいかに混沌の使徒の一人だろうが充分に勝てる!

俺はそう確信していたが、事態は突然急変した。

「キメラちゃんはやらせないわよ〜?」

「ヨウヤク、ココニトウチャクチャクシタナ」

「流石はグランの星占い……見事に的中してるな。無限神書の魔女がいるぞ」

「星占いじゃなくて予言よ……」

キメラの前に星座が描かれた四つの魔法陣が現れ、その中から四人の男女が姿を現した。

その四人の姿を見るなり、アリス先生は目を見開いて驚愕した。

「まさか……混沌の使徒が更に四人も来るなんて……」

「あの四人も混沌の使徒!?」

キメラ以外にも四人の混沌の使徒が現れるなんて……一体何が起きているんだ!?

「一応自己紹介をしときましょうか?私は魔の使徒・ライラよ」

「オレハ機ノ使徒・クライシス」

「俺は龍の使徒・ジーク」

「私は……星の使徒・グラン」

獣以外に魔、機、龍、星の四人の使徒が名乗った……そう言えば、名乗る際、最初に一文字を言うけど、それは使徒それぞれの属性とかを現しているのか?

「どうして、お前達が……」

「それよりも、キメラちゃんがビーストモードになるなんて久しぶりね」

「ヤハリアノヨゲンハタダシカッタカ」

「予言?」

「グランがお前に危機が迫る予言をしたんだ」

「お前を救う為に私達がここまで来たんだ……」

何のことかイマイチ理解出来ないが、とにかくあの四人の使徒はキメラを助けに来たことは確かだった。

すると、グランと呼ばれた使徒の女は軽くここにいる俺達を見渡す。

「ふむ。どうやら色々因縁がありそうなのがチラホラあるな。よし……」

グランは星を象った杖を呼び出すと、コツンと柄で地面を突ついて再び星座が描かれた魔法陣を展開する。

何かをしかけるのかと俺達はとっさに身構えるが、それは攻撃する為の魔法ではなかった。

「星の導きのまま、この場にいる選ばれし者達同士で戦おう……」

星座の魔法陣がたくさん増え、それが俺達の周りをぐるぐると回って金色の光を放った。

「星霊魔法……星戦の導き」

グランがそう言うと、魔法陣の光に包まれた俺達は目の前が真っ白になった。

そして、これが俺達と混沌の使徒の本当の戦いの始まりとなるのだった。



sideサクラ


アリス先生のお陰で戦闘に復帰することができ、キメラに仕返しをしようと意気込んでいたがそこに混沌の使徒が四人も現れてしまった。

長いこと冥界の断罪者として色々な罪人と戦って来たが、ここまで強い力の気を放つ相手は始めてだった。

戦いが始まろうとしたその時、星の使徒と名乗るグランと言う女が無数の魔法陣を展開してこの場にいる俺達の周りを囲ってまばゆい光を放った。

まばゆい光から目に光が戻って視界が開けると、そこには不思議な空間が広がっていた。

地上にはドス黒い闇の煙が漂う冥界を思わせ、対して空には満天の美しい星空が輝くというあまりにもアンバランスな世界だった。

「何、この世界……」

「明日奈、気を付けて」

俺以外に明日奈とイチもこの世界に来ていた。

そして、その世界に連れてきた二人の使徒がいた。

「ふふふ。私の相手はあなた達ね?」

「闇の力と、魔の力を持つ人間か……」

それは魔の使徒・ライラと星の使徒・グランの二人の使徒だった。

おそらくキメラと同等の力を持つライラとグランを前にこの三人で勝てるかどうか不安だった。

「サクラ君、いっちゃん。さっきは召喚出来なかったけどソロモンの悪魔を総動員してでも二人を守るからね!」

明日奈はソロモンズブックを取り出してページを開いていく。

確かに明日奈のソロモンズブックでソロモン72柱の悪魔達を呼び出して戦力を増強出来ればなんとか……。

「あら!?あなた、ソロモン72柱を操っているのね!?」

すると突然、ライラは満面の笑みを浮かべて興奮し始めた。

「ねぇ、あなたのソロモン72柱、ちょーだい♪」

何と、ライラは明日奈のソロモン72柱を頂戴とわけのわからない事を言い始めた。

「なっ!?何を言うのですか!?ソロモン72柱は私の大切な仲間です!」

「あら残念。でもいいわ。今度は私の手で手に入れるから」

「今度は……?それはどう言う意味ですか?」

「あれは数年前だったかしら?たまたま私を召喚した人間が私に恋しちゃってね。でも、悪魔の私を手に入れるにはそれ相応の対価が必要だったの」

前に本で読んだことがある、黒魔術で召喚した悪魔を従わせる為には召喚者の魂とか相応の対価が必要になってくる。

要求する対価は悪魔によって様々だが、このライラは何を要求したんだ?






「それで、私が対価に要求したのは……その本、ソロモン72柱を従わせるソロモンズブックよ♪そしたら、その人間は喜んで取りに行ってくれたわ」







ライラの口から語られたその瞬間、雷に打たれたように俺達に大きな衝撃が走った。

特に明日奈は目を見開いてカタカタと体を震わせていた。

もし、ライラの言っていることが正しいなら、昨日の星界で話した明日奈の過去の話を照らし合わせると……。

「まあ、その召喚した人間は殺されちゃって、私は強制的に聖霊界に送還されちゃったけどね」

ライラの更なる一言に、推測が確信に変わった瞬間だった。

つまり、明日奈の持つソロモンズブックを狙わせ、明日奈の両親を殺した元凶は……。

「……え……か……」

「え?何々?」

明日奈は俯いて小さな声で何かを呟き、ソロモンズブックを持つ手の力が強くなる。

そして、明日奈は顔を上げるとそれは見たこともない憎しみに満ちた表情となっており、全身から魔力を放出していた。

「お前が、お母さんとお父さんを……許さない……絶対に許さない!!!」

普段の優しい明日奈からは想像も出来ない憎しみの表情と口調に俺とイチは驚いていたが、同時に納得出来る部分もあった。

俺とイチには今の明日奈の気持ちがよくわかる……両親を殺されたことによる悲しみ、苦しみ、そして憎しみ……様々な負の感情により理性が抑えられなくなってしまう。

目の前に両親の仇がいるなら尚更その負の感情が爆発してしまうのも無理はない。

「明日奈……」

俺は明日奈の前に立って名前を呼ぶと、明日奈はギロリと俺を睨みつけてくる。

「退いて!サクラ君!!」

明日奈、俺はお前のそんな顔を見たく無い……だから……。

「……スリーピング・シャドウ」

トライファング・ケルベロスの右手から闇のオーラを放ちながらそっと明日奈の顔に触れると、明日奈は一瞬で眠りについてそのまま俺に倒れかかった。

この技は闇の耐性がないものに一時的に眠らせる事が出来る。

俺が使う時は一般人を眠らせる時にしか無いが、まさかこんな時に使うとは思わなかった。

すると、明日奈のソロモンズブックが輝くと魔法陣が現れて中から妖艶な美女が現れた。

「お前は……?」

『私はソロモン72柱、序列32位のアスモデウスよ。主は私が預かるわ』

「頼む……」

アスモデウス……確か7つの大罪で色欲を司る悪魔だったな。

そんな悪魔に明日奈を任せるのは少し不安だがこの状況だ、今は頼るしか無い。

「あら?その子は戦わないのー?私楽しみにしていたんだけどなー」

「黙れ……」

原罪の邪眼を発動し、断罪者になりながらライラを睨みつける。

「貴様は……明日奈の代わりに、俺が殺す……」

「あらあら、怖い顔ね。あなたは何者?」

「冥界に選ばれし罪人を裁く者。桜花の断罪者、サクラ・ヴァレンティア」

そして、俺の隣に刀を構えたイチが立ち並ぶ。

「私は……首斬りの斬罪者、イチだ」

「まさか、お前と共闘する時が来るとはな……」

「私もだ。明日奈の為にこの力を振るおう」

「そうだな」

俺とイチは軽く拳をぶつけ合って互いの共闘の意志を高める。

「行くぞ!!」

「ああ!!」

そして、足に力を込めて二人一緒に走り出す。

対するライラは自分の魔の力を収束させて槍を作って手の中で回転させ、グランは星の杖の柄で地面を叩いて魔法陣を展開する。

「私達も行くわよ、グラン」

「前衛はお前、後衛は私で良いな?」

「任せてちょーだい♪」

俺とイチ、そして混沌の使徒……魔の使徒・ライラと星の使徒・グランとの戦いが始まった。




本格的なバトルは次回から始まります。


初めはサクラ&イチVSライラ&グランです。

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