第118話 奪われた力
お待たせしました。
久振りのバトルパートです。
side天音
「疲れた……」
俺はベンチに座り、大きなため息を吐きながら体の力を一気に抜いた。
「お疲れ様、天音」
「親方様、お疲れ様でござる」
「旦那様、こちら飲み物です」
「うん、ありがとう。麗奈……」
麗奈からスポーツドリンクをもらい、蓋を開けて一気にゴクゴクと喉に流し込んだ。
半分くらいまで飲むと、ぷはぁと声を上げて一息ついた。
ミスコンで千歳達が俺を巡って大乱闘を始めた直後、騒ぎを聞きつけた刹那達が暴走する四人を止める為に乱入し、数十分の時間をかけて何とか止めることが出来た。
一番心配だった璃音兄さんは花音姉さんの凄まじい脳天の一撃で元に戻り、正気に戻った璃音兄さんは付き物が落ちたように俺に土下座をして謝った。
どうやらあれは一時の迷いだったらしく、千歳曰く俺のウェディングドレス姿は恐ろしい魅力があるらしい。
全く、どうして俺の女装はいつも誰かをおかしくしてしまうのかもはや訳がわからなかった。
『ピィー!ピィー!』
『『『わうっ!』』』
ある意味あの大乱闘を起こした元凶とも言えるウェディングドレスを選んだ白蓮と黒蓮は俺の膝の上でお腹空いたと言っている。
「お前ら……でも確かに腹減ったな……」
「もうお昼だからね」
「親方様、拙者が何か買って来るでござる」
「では、私も行きます」
刹那と麗奈が俺達のお昼を買って来ると言い、すぐに向かおうとしたが、
「ちょっと待ちな。忍者コンビ!」
「みんなのお昼ならここにありますよ!」
「買って来た……」
それはサクラと明日奈委員長、そしてイチちゃんの三人だった。
三人の手には出店で買ったと思われる沢山の料理があった。
「サクラ!委員長!それにイチちゃん!」
「天音、お疲れさん。これは俺達からの差し入れだ」
「沢山買って来ましたからみんなで一緒に食べましょう」
「ジュースもあるよ……」
早速三人は近くのテーブルに料理とジュースを並べて全員が椅子に座り、手を合わせてすぐにいただきますをして食べ始めた。
食事中、みんなで楽しく話をするが話の内容はやはり先ほどのミスコンの話だった。
「天音、あのウェディングドレス姿はびっくりしたぞ。今度姐さんが着ているような黒のドレスを着てみないか?」
「勘弁してくれ……もうしばらく女装はこりごりだよ」
「千歳ちゃんのあの燕尾服はいいチョイスだったね」
「ありがとう。天音がウェディングドレスを着るから急いで迅先輩に借りて来たんだよ」
「あれ、迅先輩のだったんだ……」
迅先輩なら燕尾服を沢山持っても不思議じゃ無いから妙に納得出来た。
『ウェディングドレスか……本当に旦那、綺麗だったぞ』
「……一応ありがとうと言っておくよ、銀羅」
『もし旦那が女になってもその美しさなら問題ないな』
「誰が女になるか!?」
『いや、女になれる曰く付きの道具とかを使ったら……後はアリスの魔法とか……』
「絶対に使わせねぇよ!!?」
確かにこの世界には女体化の道具や魔法があってもおかしくない。
そんなので女体化にして女になってたまるか!!
もし女になったら絶対に俺は生きていけなくて死ぬ。
「天音君が女になったら今以上に人気が出るかもね……」
「下手したら芸能界にスカウトされるかもな」
「それどころか、どこかの国の王子様とかに結婚をお願いされるかも……」
好き勝手なことを言うみんなに俺のテンションがガタ落ちする。
「嫌だ……女には、女にはなりだくない……」
「大丈夫だって、天音」
「千歳……」
「もし天音が女になったら、私が男になって天音を全力で愛するから♪」
「何でそうなるんだぁあああああああああああっ!?」
「まあ、女の子は色々常日頃から体調がかなり変化して辛いことも沢山あるけど、天音なら大丈夫だよ♪」
「全然大丈夫じゃない!!むしろ大問題だよ!!!」
「天音、一日中愛してあげるわ!!!」
「うわぁああああああああああああっ!!もう嫌だぁああああああああああああっ!!」
俺は身勝手な事をいう千歳達に嫌気が差し、俺はこの場を飛び出して行く当てもなく走り去った。
『ピィイッ!?』
『わぅ!?』
「お、親方様ぁっ!?待つでござるよ!!」
「おい。何処に行くんだよ、天音!!」
『がぅ……』
走り去る俺に白蓮と黒蓮、刹那とサクラとツバキが追いかけてくる。
今の俺は少しだけだが涙を流していた。
その涙を見せない為に俺は全力で走るのだった。
☆
side千歳
天音が何処かに行ってしまい、私達は急いで食べ終えた紙皿とかのゴミを片付けて、天音の後を追った。
ちょっと言い過ぎたかなぁと少し後悔しながら天音を探す。
「天音……」
「大丈夫ですよ、奥様。旦那様ほすぐに見つかりますよ」
「そうだよ。現役忍者の刹那君と断罪者のサクラ君がいるんだからすぐに見つかるよ」
「ああ……大丈夫だな……」
ふと目線を下げると、イチちゃんは明日奈にくっついて歩いていた。
それはまるで本当の姉妹か親子のような感じだった。
「いいな、明日奈。イチちゃんみたいな子供がいて」
「大丈夫よ、千歳ちゃん。遅かれ早かれあなたにも子供が出来るでしょう?」
「そ、そうだけど……」
「奥様と旦那様の御子様ならきっと可愛らしいでしょうね」
「あ、ありがとう、れいちゃん……」
天音と私の子供か、何度も夢見て想像してきたけど実際に生まれたらどんな子が生まれるんだろう……。
ただ一つ言えることは、その子に蓮宮伝統の『音』の名前がついて、男女関係なく髪を長く伸ばすことは確かで、きっと可愛い容姿なのは確かね。
今すぐ天音との子供は欲しいけど、天音は私が二十歳になって私と結婚するまでは絶対にダメだと言っている。
本当に天音は真面目と言うか、凄い頑固と言うか……。
「ま、天音のそこも良いところなんだけどね……」
『何がだ?』
「ううん、何でも無いよ」
隣を歩いている銀羅の頭を撫でつつ、私は空を見上げた。
曇り空のない晴天の青空……本当に今日は学園祭日和だね。
あと半日を切ってしまった楽しい学園祭が終わりを感じながら視線を前に戻すと、そこにはマントを羽織っている誰かがいた。
一体誰だろうと思ったが、次の瞬間には銀羅とれいちゃん、そしてイチちゃんが瞬時に前に出た。
『妖炎弾!!』
「竜炎弾の術!!」
「孤月!!」
突然銀羅とれいちゃんは炎の弾を口から放出し、イチちゃんは布に巻きながら持っていたものを解いて中から刀を取り出して抜刀し、斬撃を飛ばした。
そして、三人の攻撃はマント姿の誰かに向かう。
「ふっ……」
マントの誰かは軽く手を振って三人の攻撃を打ち消した。
「銀羅、れいちゃん。何をーーっ!?」
「いっちゃん、どうしたーーっ!?」
一体何があったのかと聞こうとしたが、私と明日奈はようやく理解した。
あのマントの下から伝わる不気味な気配に、そして今まで感じたことのない大きな力に……。
「私の力を感じていきなり攻撃するとは、とても優秀ですね」
マントを脱ぎ捨てて現れたのは肌色の不思議な長い髪をした褐色の肌をした男だった。
一体何者なのか、その答えはイチちゃんがしてくれた。
「気をつけろ、こいつは混沌の使徒の一人だ!!!」
「「「えっ!?」」」
こ、混沌の使徒って、数十年前の大戦を起こした元凶で世界を破滅に導く十二人の選ばれし伝説の使徒の事よね!?
「おやおや、お久しぶりですね。首斬りの斬罪者、イチ。そちらのお嬢さん方は初めてですね。私は混沌の使徒が一人、獣の使徒・キメラでございます」
紳士のような挨拶をする混沌の使徒の一人で獣の使徒・キメラ……私達は無言で戦闘態勢に入った。
「銀羅、契約執行!」
『おう!』
銀羅と契約執行して無幻九尾銃を構えると、ミサイルランチャーの『フレイムミサイル』に超銃変化をして構える。
「ほう!あの有名な九尾の妖狐と銃で生み出したアーティファクト・ギアですか!これは面白い……」
「それはどうも。あなた、何が目的なの?」
「決まっているじゃ無いですか……我が主、“混沌の神王”の為……我ら混沌の使徒の力を神以上の極限まで高めること……」
混沌の神王……?
それが混沌の使徒のボスって事ね……つまり、大戦の元凶、黒幕って事ね。
「その為に……あなた方の獣の力を喰らうのです!!!」
キメラは目の眼光を輝かせてまっすぐ私の方へ走り出してきた。
狙いは銀羅なのは明確で、私はすぐさま追撃する。
「Fire!!」
発射されたミサイルはキメラを追いかけるが、鋭く強固な爪を伸ばしてミサイルを切り裂いた
「っ!?ブラストビット!!」
ビット兵器の『ブラストビット』を展開しながらフレイムミサイルを発射する。
しかし、フレイムミサイルとブラストビットの攻撃はキメラには届かず、一気に私の元に近づいてくる。
「奥様!!」
「いっちゃん!千歳ちゃんを!!」
「ああ!!」
れいちゃんといっちゃんが私を守る為にキメラの前に立ち向かうが、
「邪魔です!!」
キメラはれいちゃんといっちゃんを吹き飛ばし、私のすぐそばに接近した。
ま、まずい!このままだと銀羅が危ない!?
「銀羅、逃げて!!」
銀羅が宿る無幻九尾銃を投げ飛ばそうとするが、その前に両手を掴まれてしまった。
「九尾の妖狐、その力をいただきます!!」
キメラの口が開き、獲物を喰らうような肉食動物の牙が私の目の前に出た。
私は目の前に迫るその恐怖に目を強く瞑った。
「霊煌霊操術・天凛繚乱!!!」
無数の刀剣と共に斬撃が降り注ぎ、私を掴んでいたキメラの腕を切り落とした。
「ぐぎゃああああああっ!?」
キメラの悲鳴の後に私は誰かに抱き上げられてその場から離れた。
「無茶するな、阿呆が」
「あ、天音!?」
私を助けたのは天音で、切り裂いたキメラの腕を私から離して捨てた。
そして、天音の周りには色々な形の武器が舞っていた。
それは天音の霊煌霊操術、数多の武器を霊力で生み出す陸式の刀剣だった。
「よくも千歳と銀羅に手を出そうとしたな……喰らえ、無限の剣撃!!!」
右手で銃の形をしてキメラに向けると弾丸の如く一斉に発射した。
数百は越える刀剣の一斉発射にキメラは目を大きく開いたまま直撃を受けて大きな土煙が舞った。
『ちちうえ!ははうえ!』
『『『ガウッ!!』』』
「皆の衆、大丈夫でござるか!?」
「ったく、速すぎるぞ天音は!!」
そこに鳳凰化と冥界獣化した白蓮ちゃんと黒蓮ちゃん、せっちゃんとトライファング・ケルベロスを契約執行したサクラがやって来た。
「天音、どうして……」
「少し離れた場所でサクラがあいつの気配を察知してな。強化と覚醒の同時発動の最速スピードで急いで来たんだ」
霊煌弐式の強化と霊煌拾弐式の覚醒を同時に発動すれば、短時間だけだが天音は人間の限界を超えた神速のスピードで動く事が出来る。
天音ったら、その神速のスピードで駆けつけて来てくれたんだ……。
「そしたらあいつがお前を喰おうとしたから容赦無く刀剣に斬撃を乗せて腕を切り落とした」
「天音、容赦無いね……」
「何言ってるんだ?お前に手を出す奴がいたら、誰であろうと俺は容赦しないぞ?」
「ふぇっ!?あ、ありがとう……」
あ、天音ったら……たまにこうやって私をドキッとさせる事を平気で言うんだから……。
「立てるか?」
「う、うん!」
天音に立たせてもらうと、天音は顕現陣から蓮煌と銀蓮を呼び出して構える。
「白蓮!黒蓮!契約執行!!」
『ピィーッ!』
『『『ワウッ!!』』』
天音は白蓮ちゃんと黒蓮ちゃんと契約執行し、アーティファクト・ギアの鳳凰剣零式と冥覇獣王剣を構える。
「さあ、誰だか知らないけど千歳に手を出した罪は重いぞ。出てこい!さっきの攻撃は全く効いて無いんだろ!」
効いて無い!?
あの刀剣を一斉発射する無限の剣撃を!?
俄かに信じられなかったが、次の瞬間キメラに放たれた刀剣は爆弾が爆発したかのように派手に飛び散って粉々に破壊され、霊力に戻って空中に散った。
そして、煙の中から現れたのは先ほどの人間の男の姿だったキメラではなかった。
それは様々な生物の身体の一部を無理やりくっ付けて合体したような不気味な姿だった。
頭は肉食動物で背中には鳥類の大きな翼、両腕には悪魔のような大きな手と爪、そして両脚は牛か馬のような強靭な両脚だった。
「あれが、獣の使徒・キメラの本当の姿……」
「キメラ……合成獣の名に相応しい姿だな」
警戒心を高めてアーティファクト・ギアを構える私達。
幾ら獣の使徒と言えど、ここにいる私達で戦えば勝てる……そう確信していた。
「さあ、It's Show Timeよ!」
「ああ!!」
私は天音達と一緒に一斉攻撃で決めようとした。
「弱者は強者に喰われる運命にある……」
次の瞬間、瞼を閉じるよりも速い一瞬で私達は意識を失いかけた。
「がはっ……!?」
何が起きたのか全く理解できず、ここにいる全員が一瞬で倒された。
しかもどうやってやったのか不明だがアーティファクト・ギアにもダメージを与え、中にいる聖獣もしばらく戦闘不能になってしまった。
私は腹を一発受けてしまい、激痛が体に走って全く動けなくなってしまった。
「うっ、ぐうっ……千歳……」
隣にいた天音は全身に霊力を纏わせながら霊煌参式の治癒を発動させて身体の回復を試みながら私を守る為に無理矢理立ち上がった。
しかし、キメラは天音の首を握りながら持ち上げると興味深そうな目をした。
「うくっ……!?」
「貴様のその魔法のような力、どうやらその身体に刻まれている刻印が力の元らしいな……」
「だったら、どうした……」
キメラはニヤリと不気味な笑みを浮かべて再び口を開いた。
そして、
「貴様の力、食らってやる!!」
キメラは天音の首元に思いっきり噛み付いた。
「ぐぁあああああああああああああああっ!?」
「天音っ!?」
鋭い刃のようなキメラの歯が天音の首元に突き刺さり、天音の身体から血を流しながら吸血鬼のように何かを吸い取っていた。
「止めて、止めろぇええええええええええええええええっ!!!」
私は体から妖力を解放し、私の中にいる金羅に呼びかけて絢爛九尾を発動した。
体の痛みが治り、九魔之魔剣を取り出してキメラに九つの斬撃を放った。
「九魔之魔剣、九重の刃!!」
私の九つの斬撃に気付いたキメラは天音から歯を離してジュルリと天音の血を飲み干しながら口を手で拭ってその場から一瞬で離れた。
天音は噛まれた傷口を手で抑えて霊煌参式の治癒で傷を治そうとしたが……。
「あれ……治癒が、使えない……?」
「えっ!?」
「まさか……」
天音は上着の制服を脱いで上半身を裸にすると驚くべき光景を目にした。
蓮宮の当主の証であり、歴代当主の霊力と当主にしか使えない特別な十二の霊操術が刻まれた刻印・霊煌紋……それが天音の身体から消えていた。
「霊煌紋が……奪われた!?」
「霊煌紋が!?」
キメラの方を向くとキメラの体に薄っすらと青白く輝く蓮の刻印が刻まれていた。
あれは何度も天音の体を見て、この目に焼き付けた霊煌紋の刻印だった。
「霊煌紋を奪うなんて……これがキメラの能力!?」
「その通り。他人の力を喰らい、己の力にするのが獣の使途である我の力だ!!」
「許せない……天音の霊煌紋を返して!」
「待て、千歳……」
天音は私の肩を摑んでそのまま前に出た。
「天音!?」
キメラに噛まれた傷口は制服を破ってそれを包帯代わりにして巻いていた。
「一人で無茶するな……」
「でも、天音だって霊煌紋を……」
「霊煌紋が無くても、俺には白蓮がいる……それに、奴はまともに戦って勝てる相手じゃない。ここは時間を稼ぐんだ」
天音は私にだけ聞こえるよう耳元で小さな声で話す。
「時間を稼ぐ……?」
「少し他人任せになるけど……今黒蓮が援軍を呼びに行ってる」
そう言えば黒蓮ちゃんが契約している冥覇獣王剣の姿が無く、銀蓮が地面に転がっていた。
「援軍が来るまでの辛抱だ。決して無茶をするなよ?」
「分かった」
「よし、それじゃあ行くぞ」
「うん!」
私と天音は黒蓮ちゃんが援軍を呼ぶまでこの強敵であるキメラ相手に時間稼ぎをするために戦いを挑む。
どれくらい時間を稼げるか分からないけど、ここにいるみんなが助かるためにはとにかくやるしかなかった。
☆
side???
『……奪われて、しまいましたね』……』
お淑やかで礼儀正しそうな女性が困った表情を浮かべてその場に座る。
『まさか、蓮宮の血筋……それも選ばれた当主にしか使えない我らの霊煌紋を……』
その隣でもう一人の女性は自分の手を見てそれから強く握りしめてから悔しそうな表情を浮かべる。
『まさかなぁ、こんな日が来る事になるなんてなぁ……』
和服を着崩した少しだらしない女が面倒臭そうな表情をして頭を手でかく。
『ちくしょう!俺様だったら、あんな獣野郎を斬り殺してやるのによぉっ!!』
全身傷だらけの男が押さえきれない衝動を必死に押さえている。
『でもでもでも、父上がどうこう出来る問題じゃないよ!だって、私達は幽霊だから戦えないんだし……』
小さな女の子がその傷だらけの男の背中に乗ってそう言う。
『そう、だ……俺達、には、どうする、ことも、出来、ない……』
その二人の横に仏頂面の青年が立つ。
『それにしても……あれが先の大戦を引き起こした混沌の使徒と呼ばれる、異形の者達の実力って事か……』
古い型の眼鏡をかけた男性は眼鏡を掛け直してそう言う。
『しっかし、どうなっちまうのかねぇ、霊煌紋と俺達は……』
眠そうな表情をする男性は寝転がりながらぼぉっと上を見上げる。
『私達はともかく、十三代目が心配ですよ……』
顔の整った紳士のような男性は霊煌紋より天音を心配していた。
『このままだと我々はこの獣の男に喰われてしまい、下手をすれば十三代目を失ってしまうぞ……』
煙管を持った女性が紫煙を蒸かして心配そうな表情をする。
『御心配入りませんよ、先代当主の皆さん……あの子は、天音ならきっと道を切り開いてくれますよ』
そして、最後には……天音の叔父であり、璃音と花音の父である詩音が笑みを浮かべながらそう言った。
彼らは霊煌紋に宿りし十一の魂……初代当主の蓮姫を除いた二代目から十二代目の歴代蓮宮当主の魂だった。
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初っ端から天音達が大ピンチです。
これからどうなるか必見です。




