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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第9章 文化祭編
136/172

第117話 暴走するミスコン

ミスコン回の続きです。


色々なキャラが暴走します(笑)

side天音


何でこんな事になったんだろう……。

俺は今の自分の姿にそう感じざるを得なかった。

今の姿は着慣れた制服でも私服でもない、男性がまず着ることが無い全ての女性の憧れとも言える純白のウェディングドレスを着用していた。

更衣室でどの衣装を着用するか悩んでいる時、白蓮と黒蓮がこれが良いとあろうことかウェディングドレスを選んで来た。

流石にウェディングドレスはサイズが合わないだろうと思ったが、女性用なのに男である俺のサイズにピッタリだった。

疑問に思ったが、それはすぐに解決した。

このウェディングドレスのデザインが二学期の初めにサクラと決闘したその時に千歳が着用したものと同じだった。

つまり、このウェディングドレスを制作したのは雷花さんだ。

雷花さんなら俺のサイズを熟知しているし、あのプロ級の優れた裁縫技術なら俺用のウェディングドレスぐらい作れる。

このウェディングドレス姿は似合わないなと思いながらミスコンの舞台に出たのは良いが、俺の予想に反して会場のお客様の反応は……。

『『『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!』』』

『『『イヤッフゥウウウウウウウウウウウウウッ!!!』』』

超盛り上がってるぅうううっ!?

会場がこれでもかと言うぐらいにお客様のテンションがマックスと化し、最高潮に盛り上がっていた。

『女神だ!あそこに女神がいるぞぉっ!』

『天音!!俺と結婚してくれぇっ!!!』

『今すぐ結婚式を挙げよう!一生お前を幸せにする!!』

『キャアーッ!天音きゅん、可愛い!私と結婚してぇっ!!!』

『最高!素敵!ベリービューティフル!!』

『あの美しさは宝石にも変えられないわ!まさしく天から授かった絶世の美しさよ!!』

うわぁ、俺のウェディングドレス姿にみんなのテンションがマックスを通り越しておかしくなってるよ……。

「これは凄い!天音さんのウェディングドレス姿に会場の歓声が湧き上がっているぞ!流石は我らの天音さん!あ、後で私と写真撮影をお願いします!」

神楽坂先輩、何どさくさに紛れて俺との写真撮影をお願いしているんですか、絶対に嫌ですよ。

「天音!こっち向いてくれ!」

「天音、すっごく素敵よ!!」

「天音兄様!綺麗です〜!」

「こ、この声は……蒼氷さん!?雪兎さん!?小雪ちゃん!?」

俺に向けられた三つの声の主は俺の従兄姉妹の雪村三兄姉妹だった。

まさか雪村三兄姉妹がここにいるとは思わなかった……ってか今の俺を見ないでくれ!三人共!!

……あれ?

雪村三兄姉妹も見ているとなると、もしかして……。

「天音!!!」

聞き慣れた声と共に会場からジャンプして飛んで蒼い影は……。

「り、璃音兄さん!?」

それは俺がこの世で最も敬愛し、目標としている璃音兄さんだった。

「天音……」

今の璃音兄さんは戦いの時とは違う真剣な表情を浮かべて真っ直ぐ俺を見つめていた。

こんな真剣な表情をする璃音兄さんは始めてでこれから何を言うのか凄く緊張する。

「天音……」

璃音兄さんはもう一度俺の名前を呼ぶと、俺の前で跪き、俺の左手を取った。

「えっ?璃音、兄さん……?」

突然の行動に困惑する俺。

そして、璃音兄さんの口から告げられた言葉は……。







「天音、俺の花嫁になってくれ」







まさかの人生二度目のプロポーズだった。

「……はえっ!?」

あまりにも驚愕な事に頭が一瞬真っ白になり、思考停止から戻ると俺は顔を真っ赤にして璃音兄さんを見る。

璃音兄さんは相変わらず真剣な表情で俺を見つめていた。

「ななな、何と!?あの天音さんの従兄弟である蓮宮璃音さんが天音さんに大胆なプロポーズをしたぁっ!?」

神楽坂先輩がご丁寧な解説をしてくれるが、今はそんなことを気にしている暇はない!

「い、いや、あの、その……璃音兄さん、こんな所で冗談は止めてくれ……」

「冗談じゃない。俺は本気ーー」

「ちょっと、待ったぁああああああああああああーーっ!!!」

俺の背後の空間がぐにゃりと歪み、そこから現れた黒い影は俺をお姫様抱っこで抱き上げ、璃音兄さんから離すようにタッタッタと数歩下がった。

「わわっ!?だ、誰!?」

「貴様、何者だ!?」

「悪いけど、この美しい花嫁は私のモノよ」

俺を抱き上げたその人の口から凛とした声がし、黒い大きな帽子を被っていて顔があまり見えなかったが、俺を見つめるその黒い瞳には見覚えがあった。

「千歳……?」

「何!?千歳ちゃんか!?」

「フフフ……Yes.That's right!!」

その人が帽子を上に投げると、何時も見慣れている千歳の顔が間近にあった。

「天音、可愛い花嫁であるあなたのお相手は花婿である私よ♪」

よく見ると千歳の格好は男性の夜の最上級礼服の一つと言われ、裾が燕の尾のようなものでそう呼ばれる燕尾服だった。

燕尾服は結婚式の花婿の礼服としても使われているので問題ない。

千歳に降ろしてもらい、そのまま千歳の燕尾服姿をマジマジと見る。

千歳の男装は始めて見るけど、凛としていてとても似合っていていた。

「おおっと!?ここで花嫁の天音さんの危機に現れたのは花婿さんだ!では、ご紹介しましょう!エントリーナンバー5番!天音さんの為ならたとえ神だろうが世界だろうが敵に回す。大胆不敵にして最強無敵な天音さんの恋人、天堂千歳さんだあっ!!」

「璃音義兄様、天音は渡しません!」

千歳は顕現陣からレイジングを取り出して璃音兄さんに銃口を向ける。

「ふっ、天音を渡してもらおうか!」

対する璃音兄さんも顕現陣から蓮牙を取り出し、鞘から抜くとそのまま千歳に切っ先を向ける。

二人の間で火花が散り、一触即発の状態になったその時。

「天音お兄ちゃんは私のだよ!」

「「何っ!?」」

「まさか……」

幼く元気な声が聞こえると、そこに現れたのは鎧を着た戦国武将みたいな格好をした少女……言うまでもなく、俺の妹の風音だった。

「続いて登場したのは何と!天音さんの妹さんで若くして強大な聖獣と契約した天才剣士、エントリーナンバー6番!蓮宮風音さんだぁっ!」

「その花嫁は私が頂きます!」

風音は重そうな鎧をまるで何とも無いかのような雰囲気でいつもの感じで双蓮を構える。

よく見ればその鎧には所々蓮宮の蓮の紋章が刻まれていて、その背中にある二つの旗にも蓮の紋章があった。

何処かで見覚えがあると思ったら、あれは蓮宮神社の蔵にしまってあった数百年前の蓮宮の歴代当主の誰かが使っていた鎧か……?

「あらあら、天音ったら綺麗になって。お母さんは嬉しいわ」

「えっ!?」

後ろを振り向くとそこにはニコニコしながら立っている俺と風音の母さんがいた。

母さんは蓮宮の神楽舞を踊る時に使う舞姫の衣装を身に纏っており、とても綺麗だった。

ただ、俺と母さんはよく似ているから、少し神楽舞を踊る時の自分の姿を見ているようで不思議な気分だったが。

「うおおおおおっ!?あ、天音さんがもう一人!?誰なんだこの天音さんそっくりな美しい女性は!?」

驚いて目を見開いている神楽坂先輩にミスコンのスタッフが文書が書かれた紙を渡し、それを神楽坂先輩がすぐに読み上げる。

「え、えっと……か、彼女はエントリーナンバー7番!何と何と何とぉっ!?天音さんと風音さんのお母様、蓮宮六花さんです!ただいま入った情報によりますと、六花さんは約20年前のこの天聖学園で雪姫の異名を持ち、その美貌と聖女のような優しさで学園の男女関係無く虜にしてきたようです!世代を超えて天聖学園に数々の伝説を作るとは流石は天音さんのお母様です!!」

母さん、あなたもミスコンに参加していたのですか……。

しかも学生時代に数々の伝説を作っていたってマジですか?

「凄いぞ凄いぞ凄いぞ!今年のミスコンは歴代最高の出演者が揃っているぞ!えっ?追加ですか?えっと……えええええええええっ!?これ、本当ですか!?」

またスタッフから紙を渡された神楽坂先輩は目が飛び出るほど大きく開き、かなり興奮気味な感じで司会を続ける。

「うぉおおおおおっ!?まさかのまさか!ここでビッグでサプライズなゲストの登場だ!」

えっ?この上更にビングサプライズゲスト?

一体誰何だなんだ?







「生まれし日より、国とそこに住む全ての民のために、この身を捧げ……」

「生まれた日より、背負わされたこの呪われし運命を、聖なる剣で斬り裂き……」







その時、会場のすぐ近くにある建物から二つの声が響いた。

この声、何処かで聞いたような……。

隣にいる千歳も同じらしく、すぐさまその声の元に視線を向けた。

その建物の上には二人の少女が立っていて、その手には聖なる力を秘めた道具を持っていた。

その道具は古より伝わる英国王家の血を継ぐ者の証である聖なる杖と剣であり、交差する杖と剣に太陽の光に反射して光り輝く。

「再会せし妹と共に、国の未来と民の幸せを死する最後のその時まで守り続ける、聖なる王女!!!」

「数多の優れたる騎士を統べ、国と民を守り、古の竜の王からその志を受け継ぐ騎士の王!!!」

あの杖と剣を持っている人間はこの世に一人しかいない。

二人は杖と剣をこちらに向けて自らの名前を名乗る。

「聖王女!アルティナ・D・セイヴァー、ただいま降臨!!!」

「騎士王!セシリア・ペンドラゴン、ここに顕現!!!」

イギリスを収める二大王女様の登場に俺と千歳は口をあんぐりと大きく開けた。

「ア、アルティナ!?」

「セシリア!?」

「ご紹介致します!エントリーナンバー8番と9番!その聖女の如き慈愛の満ちた優しさと愛情で、英国の全国民を導き、国を守り続けて来た若き英国第一王女、アルティナ・D・セイヴァー王女殿下!そして、十六年間、ある者の陰謀によってその存在を隠され、自らの力でその運命を切り裂き、騎士の王としてアルティナ様と共に英国を守護する英国第二王女、セシリア・D・セイヴァー王女殿下だぁああああああああああああっ!!」

驚いているのは当然俺達だけではなく、会場にいる全員が驚愕していた。

そりゃあイギリスの二大王女様が突然こんなふざけたミスコンに参加するなんて思いもよらないだろう。

「行くわよ、セシリア!」

「ああ、アルティナ姉さん!」

アルティナ様は背後に待機していたラベンダー・ドラゴンのリーファの背に乗り、セシリアは同じく待機していたアルトリウスに抱えてもらって二人一緒に飛んできた。

「久しぶり、千歳!」

「アルティナ、よく来たわね!」

「それから、その格好、とても素敵ですよ」

「ありがとう」

親友同士である千歳とアルティナ様は久しぶりの再会を喜び合う。

「久しぶりだな、天音」

「来てくれたんだな、セシリア」

「忙しかったが、天音のライブなら来るぜ。それにしてと……」

セシリアは聖剣を鞘に納め、顎に手を添えて俺を上から下までジッと見つめて来た。

「最高に可愛いな、天音……アルティナ姉さん、今の天音をイギリスに連れて帰ってもいいかい!?」

まさかセシリアが俺をお持ち帰りしようとは思わなかった。

そんなにこのウェディングドレス姿の俺は魅力的なのか?

アルティナ様はそんな妹のセシリアに対して苦笑を浮かべる。

「……私は別に構いませんが、千歳はそんな事を許すとは思いませんよ?」

「当たり前よ!天音は私の花嫁なんだから!銀羅!」

『待ちかねたぞ!』

青い狐火と共に銀羅が千歳の側に現れる。

「天音は俺がいただく!轟牙!」

璃音兄さんはかなり俺が大きさを抑えた轟牙を召喚した。

「鈴音、お兄ちゃんを手に入れるために力を貸して!」

『任せろ。我が応龍の力で全てを薙ぎ払ってくれる!』

風音の声に鈴音が小さな龍から巨大な応龍の姿となった。

「はっ!騎士王に刃を向けるとは、いい度胸をしているな!行くぜ、アル!!」

『まあ、仕方ないか。力を貸してあげるよ』

アルトリウスはため息をつきながら竜人・ドラゴンメイドの力を解放させて竜の角、爪、翼、尻尾を体から生やして展開する。

一触即発。

まさにそんな言葉が似合うかのようにみんなの目が本気で今にも戦いを始めようとしていた。

「み、みんな……落ち着いて……」

「天音は私のモノよぉおおおおおおおおおおっ!!!」

「てめぇらに天音を渡さねぇええええええええっ!!!」

「お兄ちゃんは私のよぉおおおおおおおおおおっ!!!」

「天音は俺様が頂くぜぇええええええええええええっ!!!」

俺の制止も虚しく、四人は瞬時にアーティファクト・ギアを契約執行していきなりの大乱闘を繰り広げるのだった。

ああ、もう、どうしてこうなるんだよぉ……。

俺は自分の不幸な呪いに軽く涙を流すのだった。



side???


「ここですか……」

天聖学園の近くの高層ビルの頂上に一人の男が立っていた。

その男は聖霊界の黄昏の神都から人間界に来た、混沌の使徒の一人、獣の使徒・キメラである。

キメラは大きなマントを羽織り、懐から懐中時計を取り出して何かを確認すると、小さく笑みを浮かべて頷いた。

「私は運がいい。この天聖学園には私が求める強大な獣の力が集っている……それに、ライラ姉さんが求めるような悪魔もいそうだ」

キメラは懐中時計を懐にしまい、背中から蝙蝠のような大きな翼を広げて宙を浮いた。

そして、目的のものを手に入れるためにキメラは天聖学園に向かった。







混沌の使徒との戦いがすぐそこまで迫っていた。

それは天音とその仲間達の長きに渡る戦いの運命が始まろうとするのだった……。




次回、やっと久しぶりのバトル回です。


文化祭はこれで半分を過ぎたかなと思います。

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