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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第9章 文化祭編
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第108話 文化祭前日、近付く交差

文化祭前日の話です。


いろいろな思いが交差しそうになります。

side天音


文化祭が近づき、クラスの出し物のコスチューム喫茶の準備もほぼ完了し、バンド演奏も人前で演奏出来るまでに上達し、歌も問題ない。

そして、文化祭前日……。

「よし、とりあえず下ごしらえはこんな感じだな」

「天音、茶葉とコーヒー豆の準備、出来たよ」

「ありがとう、千歳」

『ちちうえ、おさらのじゅんびできたよ!』

『『『ばうっ!』』』

『千歳、旦那。こちらの準備も終わったぞ』

喫茶店のお菓子と茶葉とコーヒー豆、そしてお皿やカップなどの準備が完了し、首や肩を鳴らして腕や背中をグイッと伸ばす。

「ふぃー……喫茶店の食べ物関係の準備はこれでオッケーだな」

「そうだね。これを仕舞って教室に戻ろうか」

「ああ。みんな、行くぞー」

一旦お菓子の下ごしらえを冷蔵庫に、茶葉とコーヒー豆を箱に仕舞い、みんなと一緒にA組の教室に戻った。

A組に戻るとみんなは内装の飾り付けとテーブルと椅子の準備をしていた。

いつもは勉学の場である教室が喫茶店に変わっていた。

「おお、雰囲気出てるな」

「そうね。あれ……?ねえ、明日奈」

千歳は準備をしている明日奈委員長を呼んだ。

「ん?千歳ちゃん、何かな?」

「サクラは?全然見当たらないけど」

そう言えばこの忙しい時に朝からサクラの姿が見当たらない。

「サクラ君ならうじ虫を退治してくるって言ってツバキ君を連れて何処かに行っちゃったよ」

「「うじ虫?」」

うじ虫を退治……その言葉に俺と千歳はハッと気が付いた。

サクラにとってうじ虫は紛れもなく罪人だ。

このタイミングで罪人を対峙する理由はどういうことなんだろう?

「全く、忙しいのに困ったちゃんだよ、サクラ君は……」

「だったら明日奈がサクラに首輪を付けたらどう?」

「く、首輪って……」

そんなペットの犬に付けるんじゃないんだから……あ、でもサクラのアーティファクト・ギアはケルベロスの首になるから、あながち間違いではないな。

でも流石に明日奈委員長はそれをするわけが……。

「良いかも……」

「明日奈委員長ぉっ!!?」

予想外すぎる明日奈委員長の発言に俺は耳を疑った。

「サクラ君に首輪……ヤバイ、考えただけで鼻血が……」

「だったら私が良い首輪を用意してあげるよ!」

「本当に!?千歳ちゃん、お願い!」

「ちょっとちょっと!お二人さん!サクラが居ない時に何やばい話をしているのかなぁ!?」

まさか千歳の変態性質がクラスで数少ないまともな人間の明日奈委員長に伝染した!?

マズイ、このままだとサクラの断罪者としての道が閉ざされてしまう……!?

「おいーっす、ただいま……」

『『『わぅーっ!』』』

こんな最高で最悪のタイミングで帰ってくるんじゃねえ、桜花の断罪者!!!

断罪者の仕事から帰ってきたサクラは少し疲れた表情をして顔や髪が少し汚れていた。

「サクラ、今すぐ逃げろ!!今すぐ冥界に逃げるんだぁっ!!」

「は?何を言って……」

「サクラ君、君に首輪を付けていいかな!?」

「すまない、冥界に用事が出来た」

首輪を付けようとする明日奈に断罪者としての危機回避能力を発揮し、危機を感じたサクラはバッと教室から全力疾走して逃げ去った。

「待って、サクラ君〜!!」

「何があったか知らないが、待ってと言われて誰が待つか!!」

逃げるサクラを明日奈委員長も走って追いかけて行く。

「明日奈委員長……」

「あはは、明日奈の為に首輪を用意しなくちゃね♪」

「止めなさい」

「あ、天音も首輪をする?」

「やらないよ、阿呆が」

「痛っ」

俺は千歳の頭を軽く叩いて黙らせた。



天聖学園から少し遠く離れた街に大きな日本家屋の屋敷がある。

その屋敷の表札に『雪村』と書かれていた。

雪村……それは平安時代から続く和楽器演奏の名家である。

蓮宮神社に嫁いだ蓮宮六花……旧姓『雪村六花』の実家である。

その雪村家の血を継ぐ三人兄姉妹は畳のある和室で和楽器の演奏の練習をしていた。

「いよいよだな、天聖学園での演奏会は」

「そうね。文化祭100回記念式典で弾けるなんて、素晴らしいわ」

「天聖学園と言えば……“天音兄様”がいますよね!?」

一番末っ子の妹が従兄弟である天音の事を『天音兄様』と呼び、上の兄と姉はピクッと体を震わせた。

「天音……六花叔母様の息子で、俺達の従兄弟……」

「そう言えばもう何年も会ってないわね……」

天音と雪村家の現当主である祖母との間で起きたトラブルが原因で祖母は俺達に天音に会うことを禁じた。

三兄姉妹は天音の事が大好きで小さい頃はよく一緒に遊ぶほど仲が良かった。

「よし……今回の天聖学園の文化祭で、俺達は必ず天音と再会するぞ!」

「ええ。たとえお祖母様がなんと言おうとも!」

「天音兄様に再会して最高の思い出を作ります!」

この雪村家三兄姉妹は偶然か必然か……蓮宮の璃音、花音、そして風音と同じく天音を愛してやまないブラコン体質の持ち主なのである。

「蓮宮、天音……」

テンションの上がっている三兄姉妹の話をこっそり聞いている着物姿の老婆がいた。

「あれ以来ですか……私とあの子が一度決別したのは……」

天音との記憶を思い出し、自分の右手を見ながら老婆はその場から音も無く立ち去った。

この老婆こそ、三兄姉妹の祖母であり雪村家の頂点に立つ当主……『雪村雪乃』である。






『愛する誰かのために演奏をするのが愚かじゃない!愚かだと考えるお祖母様に……本当の和楽器演奏なんて出来るわけない!!』







そして、雪乃は天音と決別するきっかけとなった天音の言葉が脳裏に過った。



sideイチ


私は他人の聖獣を狩る聖霊狩りのアジトの一つに侵入し、聖霊狩り全ての首を斬り落とそうとしたが……それは無駄足となってしまった。

その理由は単純明快だった。

「桜花の断罪者か……」

アジトには桜花の断罪者、サクラが聖霊狩りを断罪するために使ったアーティファクト・ギアの闇の力……その痕跡が残っていた。

つまり、このアジトにいた聖霊狩りはサクラが冥界に送った事になる。

「ちっ……私の仕事が……」

罪人を葬れたのは嬉しいが、せっかくの獲物を横取りされた気分なので少し嫌な気分になってしまう。

そんな時、テーブルの下にグシャグシャに丸められた紙を見つけた。

気になった私はその紙を広げ、指でその紙に書かれた文字を読んだ。

目が見えない代わりに点字じゃなくても指でなぞった文字を感じて読み取る技法を手に入れている。

この紙はどうやらここにいた聖霊狩りのこれから行う予定だった狩りの計画書らしい。

そして、その狩りの場所は……。

「天聖学園関東校……その文化祭か……」

明日から行われる天聖学園関東校の文化祭は関東地方から多くの入場者が来る……聖霊狩りにとって格好の狩場だろう。

文化祭を狙い、ここにいた聖霊狩りは全てサクラが葬ったが、もしかしたら他に狙う聖霊狩りがいてとおかしくはない……となると。

「行くか……」

紙を畳んで懐に仕舞い、アジトを出た。

目的地は……天聖学園関東校。

そこにサクラがいることは間違いないが、私自身の進む道を貫くために構わず天聖学園に向かった。



side???


そこは聖霊界の果てにあると言われる幻にして伝説の聖地……始まりと終わりを司る都……『黄昏の神都』。

そこは廃墟のような都で、その中央に巨大な城が立ち聳えている。

その黄昏の神都には住人はほとんどいなく、僅か『十二人』しかいない。

その十二人は……かつて世界を混沌に陥れた伝説の使徒……混沌の十二使徒である。

その十二使徒の一人、獣の使徒・キメラは他の十二使徒に向かって挨拶をする。

「では……ちょっと行ってきますね」

「あらぁ?キメラちゃん、人間界に行くのぉ?」

キメラの背後に現れてそのまま抱きついたのは露出度の高いドレスのような服装をした紫色の髪をした妖艶の美女だった。

「ええ、ライラ姉さん。今回は日本に向かいます」

「日本ねぇ。キメラちゃん、いい悪魔使いがいたら私に頂戴ね?」

「もちろんです!」

妖艶な美女はキメラの同胞で混沌の十二使徒の一人、魔の使徒・ライラである。

そして更にもう一人……。

「ヒトリデ、ダイジョウブカ?」

全身が機械で出来た銀色のサイボーグの男がキメラとライラに近付く。

「心配いらないよ、クライシス」

「ふふっ、クライシスちゃんは相変わらず優しいわね」

こちらもキメラとライラの同胞で混沌の十二使徒の一人、機の使徒・クライシスである。

「ユダンスルナ、ムゲンシンショノマジョニキヲツケロ」

「無限神書の魔女、アリスティーナ・D・クレイプスコロ……私達十二使徒と同等以上の力を持つ世界最強の魔女ねぇ……」

「心配いりませんよ、魔女が来る前に早々と退散しますから。今魔女と戦うには“早すぎる”ので、今回は引き際が大切ですね」

そう言うとキメラは足元に魔法陣を展開する。

「気が向いたら私達も行くわぁ〜」

「オレハセイビヲオワリシダイダ」

「分かりました。では……行ってきます」

キメラはライラとクライシスに見送られながら黄昏の神都から人間界へ向かった。








幾つもの思いと力が交差する天聖学園関東校の文化祭……第100回『天繚祭てんりょうさい』の開幕の時である。





いよいよ次回、文化祭本番です。


気合を入れて執筆します!

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