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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第9章 文化祭編
126/172

第107話 近付く文化祭

今回は文化祭前の話となっております。

side天音


文化祭の日が少しずつ近づく中、クラスの出し物も決まり、着々お準備をして行く中……俺は奏から驚きの宣告を受けた。

「お、俺がボーカル!?」

「そうだ。天音がこのバンドのボーカルだ!」

奏からの宣告はバンド演奏の要であり、主役であるボーカル……つまり歌を歌う人が俺と言う事だ。

「いやいやいや!ここは奏でが歌うのが普通じゃないか!?」

「一応僕が歌う曲も用意しているけど、天音がメインの曲を用意したんだ!」

「マジで!?」

「うん、これだよ」

奏は直筆の楽譜を俺に渡した。

俺が歌う予定の曲のその楽譜のタイトルを俺は口に出した。

「“Infinty zero”……?」

無限と零……?

はて?何か色々とデジャブが……。

「天音と天音の契約聖獣のアーティファクト・ギアをイメージして作ったんだ」

なるほど……俺と白蓮のアーティファクト・ギア、鳳凰剣零式と鳳凰剣百式は始まりと無限の可能性の意味を込めて名前を付けたからな。

「かっこいいな……歌詞とか音とか」

「ありがとう。じゃあ、早速歌ってくれるかな?」

「うっ……でも俺はあまり歌わないし……」

「もしかして、音痴なのかな?」

「多分違うと思うけど……」

「じゃあ、とりあえず僕が演奏するので軽くInfinty zeroを歌って見てください」

「え、えっと……一時間ぐらい時間をくれ。千歳達に練習をお願いしてくるから」

「分かった。じゃあ、一時間後にまた」

「ああ、行ってくる」

俺は楽譜とギターを持って音楽室を出てA組にいる千歳達の元へ向かった。

A組に戻るとB組の人と一緒に学園祭の準備をしていた。

俺達の文化祭の出し物はA組にとB組の共同でやることになり、内容は『コスチューム喫茶』だ。

コスチューム喫茶は簡単に言えばコスプレ喫茶みたいなものだ。

このコスチューム喫茶は俺と白蓮のアーティファクト・ギア、鳳凰之羽衣がきっかけで決められた。

衣装型のアーティファクト・ギアは天聖学園に所属している生徒はあまり無く、そこで裁縫が得意な雷花さんがA組とB組の生徒達の契約聖獣をイメージした服をみんなで作って喫茶店をすると提案したのだ。

まあ俺は厨房だからコスチュームをする接客組とは特に関係……ないとは言えず、俺も神子装束と白蓮を契約させた鳳凰之羽衣で接客をすることになっている。

まあ、みんなから強要される嫌な女装より鳳凰之羽衣は気に入っているからいいけどね。

そうこうしているうちにA組の教室に辿り着き、中にいるはずの千歳を探した。

「おーい、千歳〜」

「んー?天音、どうしたの?」

千歳は雷花さんに裁縫を教わりながら銀羅と金羅をイメージした自分の衣装を縫っていた。

「忙しいところ申し訳ないんだけど、奏から俺が歌う曲の楽譜をもらっちゃってな……」

「えっ!?奏さんが作った天音の曲!?見せて見せて!!」

奏が作った曲ということもあってファンの千歳は目を輝かせた。

さっきもらった楽譜を渡して千歳に見せる。

「Infinty zero……確かに天音にピッタリの曲ね」

「それで俺は歌をあまり歌わないから千歳にレッスンしてもらいたいんだけど、いいかな?」

「もちろん!私に任せてちょうだい!」

「頼んだよ」

そこに話を聞きつけた恭弥と雷花さんが近づいて来た。

「おっ?天音の曲、出来たんか?」

「KANADEさん直筆の天音さんのテーマソング……!!」

「ダメダメ!これはバンドメンバー以外文化祭当日まで秘密だよ!」

千歳は楽譜を見ようとする恭弥と雷花さんから楽譜を隠した。

「「えー!?」」

「えー、じゃないよ。天音、ここじゃ練習出来ないから別の場所に行こう」

「あ、ああ!悪いな、二人共!」

千歳に手を握られて引っ張られ、そのまま教室を出る。

千歳に連れられ、近くの空き教室を借りて早速歌の練習が始まった。

「じゃあ私が一度歌って見るからね」

「えっ?もう歌えるのか?」

「はっはっはっ!この千歳ちゃんに任せなさい♪」

千歳は自分の胸を軽く叩くと、咳き込んで楽譜を見て大きく息を吸う。

「〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜♪」

そして千歳は楽譜に書かれた歌詞を歌う。

まだ見て数分しか楽譜を見てないが、千歳は音を外すことなく滑らかに歌っている。

千歳の歌は小さい頃から何度も聴いてきたけど、やっぱり千歳は歌が上手だ。

伊達に小さい頃からアニメソングやアメリカの歌を好んで歌ってはいないな。

そして、奏が俺をイメージして作り、これから歌うこの『Infinty zero』と言う曲のイメージがグッと湧いてきた。

「〜〜〜♪……ふぅ、こんな感じかな?」

「千歳、とっても上手だったよ」

「ありがとう。イメージ掴めたかな?」

「ああ。とりあえず俺も歌って見るから指導をお願い」

「うん、りょーかい」

千歳が俺の歌の先生になり、奏に聴いてもらうまで小一時間練習をした。



小一時間、千歳と歌の練習を行い、奏との約束の時間となり、音楽室に向かった。

その途中で白蓮、黒蓮、そして銀羅と合流し、みんなで音楽室に向かった。

音楽室には既に奏がギターを持って待っていた。

「待っていたよ、天音」

「お待たせ、奏。それじゃあ早速歌うよ」

「ああ。演奏は任せてくれ」

奏にスピーカーと繋がったマイクを投げ渡され、それを受け取ると電源を入れて軽く叩いたり「アー、アー」と言ってマイクの音量を確かめる。

「それじゃあ、行くよ?」

「ああ」

ジャラララーン……♪

奏のギター演奏が始まり、俺は楽譜を見ながら歌い始めのタイミングを見計らい、大きく息を吸って歌う。

「〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜♪」

演奏に合わせ、千歳に教えてもらった通りに歌っていく。

歌う事によってテンションが上がり、胸にそっと手を当て、気持ちを込めながら最後まで歌い続けた。

「おー!天音、とっても上手かったよ!」

『ピィョー!』

『『『ばう、わうっ!』』』

『旦那、とても良かったぞ!』

歌い終わると同時に千歳達は拍手をして俺の歌を褒めてくれた。

ギターを下ろした奏も拍手をしてくれた。

「天音、一時間でよくここまで歌えるようになったね」

「千歳のお陰だよ。とりあえず、歌のイメージが掴めたよ」

「じゃあ、後はみんなで演奏の練習をするだけだね」

「そうだな」

少しずつバンド演奏の完成が見えてきた。

歌はこのまま練習を続ければいいから、後はこの楽譜に描かれた曲のバンド演奏をとにかく練習し、みんなで合わせられるようにするだけだ。

「あっ、そうだ。天音、君に渡すものがあったんだ」

「渡すもの?」

「無事に歌も歌えるようになりましたし、これをようやく渡せます」

奏は音楽室の端に置いてあったダンボールに包まれた大きな荷物を持ってきた。

「天音、これを開けて見て」

「ああ」

俺は指先に霊力を込めて小さな刃を作り、カッター代わりにしてダンボールに封をしたガムテープを切り裂いた。

そして、ダンボールの中に入っていたのは……。

「エレキ、ギター……?」

それは炎をイメージした白と黒の二色を基調とした不思議だけど、何処かかっこよさが映えるエレキギターだった。

「前に言ったよね?エレキギターをプレゼントするって」

「あ、ああ。でもこんなに素晴らしいものだとは思わなくて……」

「ねぇ、奏さん。このエレキギター

……軽く十万以上はしますよね?」

「えっ?」

エレキギターを見つめる千歳の言葉に俺は耳を疑った。

何だって?

このエレキギターが十万以上……?

「はい。これは僕の知り合いの楽器職人に頼んで天音専用の特注エレキギターだからね」

あっけらかんと言う奏の一言に俺は血の気が引き、そっとエレキギターをダンボールの中に戻した。

「奏、このエレキギターは受け取れない……」

「えっ!?ど、どうして!?」

「学生の身分でこんな高級な物をタダで受け取れないよ……」

「これは天音が僕と一緒にバンドをやってくれるときに約束したお礼なんだから是非とも受け取ってくれ!あ、お金の事なら心配いらないよ!僕の歌のCDとかの印税をたくさん貰っているし、僕は普段からあまりお金を使わないからこういう時に使いたいんだ!!」

「いや、そういう問題じゃなくて……」

幾ら何でもこんな高級な物をそんな簡単には受け取ることはできない。

俺は丁重にこのエレキギターを奏に返そうとしたが、奏はエレキギターを俺に押し付けるように渡してきた。

「頼むから受け取ってくれ、天音!!」

「か、奏……?」

突然声を張り上げて言う奏に俺は目をパチクリさせた。

「は、初めてなんだ……誰かに何かをプレゼントするのは……」

「奏……」

どうしたらいいかわからないその時、ポンと誰かが俺の肩を優しく叩いてくれた。

「天音、受け取ってあげたら?」

「千歳……」

「せっかく奏さんが天音のために用意したんだよ?その気持ちを無下にしちゃダメだよ?」

千歳の言い分はもっともだ。

それに、奏は俺にこのエレキギターを贈ることに何か思い入れがあるようだ。

「……分かったよ。奏、このエレキギター……大切に使わせてもらうよ」

とりあえずこのエレキギターを今は受け取ることにしよう。

「本当か!?ありがとう、天音!」

「おいおい、それはこっちのセリフだよ。ありがとう、奏」

奏は俺にエレキギターを贈れたことが嬉しいのかすぐに笑顔になった。

「もしそのエレキギターが調子が悪かったり、壊れたりしたらすぐに僕に行ってください。すぐに修理をしてくれる楽器職人を紹介しますので」

「分かった。その時は頼むよ」

受け取ったエレキギターを見つめ、改めてそのかっこよさに惚れ惚れとする。

「それじゃあ、天音。早速白蓮ちゃんと黒蓮ちゃんと契約する?」

『ピィー!』

『『『がうっ!』』』

「そっか……そう言えばこいつを楽器型のアーティファクト・ギアにするんだったな……」

未体験のアーティファクト・ギアの契約に期待と不安を抱きながら俺はエレキギターを構える。

「さあ……Let’s go!白蓮!黒蓮

!」

エレキギターの弦を軽く弾き、白蓮と黒蓮と契約を執行した。

そして、戦闘用じゃない始めての楽器型アーティファクト・ギアのお披露目は文化祭ライブとなるのだった。



side千歳


天音の楽器型アーティファクト・ギアが無事に誕生し、文化祭ライブまでのバンドが着々と完成していったその日の夜……私は自室で顔を引きつらせていた。

「会場となっているこの特別教室の構造はこうなっています」

「特別教室だけあって面積は広く、扉は前後に二つ、そして壁際に窓がたくさんか……」

「一応この教室は三階にありますから余程のことがない限り、窓からは逃げられないと思いますが……」

「でも、いざとなったらアーティファクト・ギアを使って逃げられる恐れがありますからその対策もしないと……」

全身から黒いオーラを撒き散らしながら天音と翡翠は文化祭に天音ファンクラブが開催するマーケット、『AFCマーケット』の襲撃プランを考えていた。

「こちらの戦力を纏めると、まずは俺と翡翠さんに……」

「天音さん。その前に“敵勢力”の戦力を分析する方が先ですよ」

「なるほど、では雷花さんからもらったファンクラブメンバーの一覧表を元に……」

軍の特殊部隊みたいに敵勢力の戦力を分析し、どのタイミングで突入するか、そしてどう制圧するか等を話し合っている。

少なくとも生徒みんなが楽しみにしている文化祭の前に生徒がする話ではない事は確かだ。

まさかマーケットを潰すためにここまでやるとは思わなかった。

実は天音には内緒でこのマーケットで販売される天音関連の商品のサンプルを見させてもらったがどれも質の高い商品だった。

写真集から団扇にポスター、ぬいぐるみに抱き枕に同人誌……どれもこれも製作者の思いがこもった一級品の商品で私はとても欲しかった(同人誌以外)。

だけど、もし私がそれらの商品を購入したら天音が鳳凰剣零式とかで全て燃やしてしまう可能性がある。

そこで私は天音ファンクラブ会長の雷花に頼んでそれら商品を文化祭前に横流しをしてもらい、実家の自室に運んでもらうことにした。

天音は私の実家の自室に来ることはほとんどない……つまり、私にとってこれ以上ない最高の隠し場所となる!

「商品は……全て破壊しますか?」

「そうだね。特にBL同人誌は全て燃やしつくそう……何が悲しくて俺が男と交わる本が存在しなければならないんだよぉ……」

「心中お察しします……」

そりゃあ嫌だよね……天音が恭弥やせっちゃん、サクラに迅先輩との禁断の関係を描いた薄い本が売られるんだからね……。

「……あるかどうか分かりませんが、もし千歳さんとの18禁の同人誌があったらどうしますか?」

「「えっ!?」」

今まで黙っていた私も一緒に驚いてしまった。

アニメや漫画の主人公やヒロインが交わる18禁の同人誌は世の中にかなり出回っている。

確かに私は修学旅行の時にヤって……今では私が我慢出来なくなった時に結構ヤっているけど……。

ほ、本当に私と天音の同人誌があったら……。

「天音!私、その同人誌欲しい!!」

「千歳!?お前はまだ学生だよな!?18禁にはまだ少なくとも2年は早いぞ!!」

「だって私と天音の同人誌だよ!?これは永久保存にするしかないよ!!そして、天音と出来ない時の私のオカズにする!!」

「この変態千歳が!!絶対に同人誌は全部燃やしてやる!!」

「ダメー!天千同人誌だけは絶対に私が確保するんだからー!!」

「何だよ天千同人誌って!?勝手にジャンルを作るな!!」

私と天音は天千同人誌を巡ってあまりにも見苦しい言い争いをする。

「……すいません、僕は失礼しますね」

「えっ?ひ、翡翠さん!?」

「さようなら……」

翡翠さんは私達の変な言い争いに呆れてしまい、ささっと部屋を出て行った。

その後も私と天音の言い争いが続いたが、結局決着はつかなかった。

天音は何が何でも同人誌を全て燃やしつくそうとしていたが、私は何とかして天千同人誌を手に入れようと心に決めるのだった。

そして、みんなが待ちに待った文化祭……その日がすぐそこまで迫るのだった。







しかし、この文化祭に様々な思惑が交差し……私達の新たな戦いが巻き込まれてしまうのは今の私達に知る由もなかった……。





いよいよ次回は文化祭本番です。


さあ、祭りだ祭りだ!!

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