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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第9章 文化祭編
123/172

第105話 新たな出会いと再会

今回はオリキャラが三人登場します。


大丈夫か少し不安です。

梁山泊の充実した日々が終わり、再び天聖学園の日々に戻った。

一週間欠席した俺は担任の葛葉先生に何度も謝罪し、心配をかけたクラスメイト達にも謝罪した。

しかし、クラスメイト達は俺の気持ちを分かってくれて笑顔で「おかえりなさい!」と迎えてくれた。

そして、気になっていたA組の文化祭の出し物は取り敢えず厳密な内容は決まってないが、取り敢えず喫茶店になったらしい。

喫茶店なら俺のお菓子作りのスキルが発揮できるので喜んで腕を振るうつもりだ。

そして放課後、俺は千歳と一緒に文化祭の資料運びをする明日奈委員長とサクラの手伝いをしている。

「それにしても、大胆だな……天音は」

「そうですね。ちょっとビックリしましたよ」

「あはは……でも、もう逃げる必要はなくなったから、心配なく文化祭に参加できるよ」

「天音、文化祭を目いっぱい楽しもうね!」

「ああ、そうだな。ありがとう、千歳」

千歳の頭を軽く撫でて文化祭に参加できるようにしてくれた事を感謝する。

資料を持って今まであまり通った事の無い教室の前を通った。




〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜♪




すると、不思議な音が耳に伝わった。

その音に俺達の足が止まり、その音がする方に足を向けた。

そこは俺もあまり訪れない音楽室で、そこに灰色の髪で眼鏡をかけた少年がいた。

椅子に座り、足を組んでエレクトリック・ギターの弦をピックで弾いて演奏をしていた。

ギターを演奏していることは多分天聖学園文科系の『芸術科』の生徒だろう。

芸術科の生徒は俺達戦技科とは受ける授業とか違うからあまり関わりはない。

俺達は資料を運ぶのを止め、しばらくの間その少年の演奏を聴く事にした。

最初は穏やかな感じで演奏していたが、急に激しい演奏になった。

その演奏に心が踊り、俺達はすぐに魅了されてしまった。

そして数分間の魅力的な演奏が終わると……。

「ふぅ……どうでしたか?僕の演奏は?」

少年は俺達の存在に気付いていたらしく、微笑みながらそう言ってきた。

「この声、もしかして……」

すると千歳はその少年に何か気付いたらしい。

「もしかして……あなた、“KANADE”さんですか?」

「KANADE?」

すると、少年はニッコリと笑いながら答えた。

「ええ。そうですよ」

「やっぱり!その声に、そのギターテクニックはそうなんじゃないかなと思ってたの!」

「ち、千歳ちゃん!本当にあのKANADEなの!?」

何故か千歳と明日奈委員長が目の前の少年にテンションが上がっていた。

「千歳、KANADEって……誰?」

「同じく」

俺とサクラは何の事かわからずに首を傾げていた。

「天音!KANADEさんの事を知らないの!?」

「数年前にデビューした七色の声を持つと言われるアーティストだよ!」

七色の声を持つアーティスト、KANADEね……彼がそうだと言うのか?

「はい。僕は1年E組所属、芸術科の轟鬼奏とどろきかなで……彼女の言う通り、僕はKANADEと言うアーティストです」

「KANADEさん!後でサインをください!私、ファンなんです!」

「あ、私もお願いします!」

相変わらずテンションが上がりまくっている千歳と明日奈は目を輝かせながら奏さんにサインを頼んだ。

「分かりました、良いですよ」

「ありがとうございます!私、1年A組の天堂千歳です!」

「私はA組クラス委員長の霧夜明日奈です!」

「どうも。それで、あなた達は……」

「俺は蓮宮天音だ」

「サクラ・ヴァレンティア……」

「やっぱり!数ヶ月前のバトル、僕も観戦しました!胸が高鳴る熱いバトルでした!」

そっか、数ヶ月前のサクラとのAGバトルを奏さんは見ていたのか。

「ところで、KANADEさん」

「はい?」

「何か悩んでいるのですか?」

「えっ?」

千歳は奏さんにいきなり何を言うんだと思ったが……。

「いつも私が聴いている演奏とは何か微妙に違う気がして……」

なるほど、ファンの一人として奏さんのさっきの演奏に微妙な違和感を感じたのか。

「演奏で僕の心を分かってしまうなんて……実はちょっと悩みがありまして」

「悩み?」

「ええ。実は今度の文化祭で僕と一緒にバンドを組んでくれる人を探しているんですよ」

「「「「バンド?」」」」

その後、奏さんが話してくれた纏めると内容はこうだ。

奏さんがアーティストのKANADEとして活動している時は事務所の意向でソロで演奏する事になっており、髪型を変え、変装の為に普段から眼鏡をしている。

今まで自ら作詞作曲を書いて歌ってきたが、最近刺激があまりなく、スランプになっているらしい。

そこで奏さんは今度の文化祭で他の生徒とバンドを組んで演奏をしても良いと事務所から許可を貰って今バンドメンバーを探しているが、なかなか奏さんの望むメンバーが見つからないらしい。

「バンドメンバーか……だったら、うちの天音はどうですか?」

千歳は何と奏さんのバンドメンバーに俺を推薦してきた。

「天音さん、ですか?」

「お、おい!千歳!?」

「天音さん、バンドの経験は?」

「な、無いですけど……」

「大丈夫です!ギターの演奏なら出来ますよ!」

「ではこっちにある予備のエレキギターを使ってください」

「本人を無視して勝手に話を進めるな!!」

千歳と奏さんで勝手にバンドメンバーのオーディションが始まってしまった。

奏さんは音響装置のアンプに繋いだ予備のエレキギターとピックを俺に渡してきた。

「さあ、好きなように奏でてください」

「天音、頑張って〜!」

「不快感のない演奏をしろよー」

「天音君、頑張ってくださーい!」

お前ら……ったく、仕方ないな。

俺はため息を吐きながら指で弦を軽く弾いて音を聴きながら糸巻きを回して音を調整する。

そして、音の調整が終わって準備を終えると、椅子に座ってエレキギターを構える。

楽器を演奏するのは『久振り』だけど、まあ適当に弾けばいいか。

ピックを軽く握り、ギターの弦を軽く弾いた。

ジャララァーン……!

そして……これから俺が演奏する曲は蓮宮ではない、とある家の当主から学んだ曲だ。







「“雪村流演奏術一之型”……雪月花!」







幼き日の記憶に刻まれた『雪月花』という題名の曲の楽譜を思い出してギターで演奏した。

冷たくも白くて美しい雪、夜を淡く照らす金色の光を放つ月、そして……春を告げる大輪の桜。

そんな情景を連想するかのような演奏をしていく。

時折左手でコードを押さえて弦の響く音を変え、ピックを弾く際の強弱をつけて音に色を付けて鮮やかにしていく。

たまに演奏をミスって音が外れてしまうが、そのまま演奏を止めずにそのまま最後まで続ける。

そして、四分近い演奏を終え、最後に軽くピックで弦を弾いた。

「ふぅ……終わった」

ギターを下ろして大きく息を吐いた。

パチパチパチパチ!!!

「うおっ!?」

演奏が終わった途端千歳達は俺に向けて大きな拍手をしてきた。

「天音!とっても素敵な演奏だったわ!」

「まさか天音君に料理以外に素敵な特技があるなんて驚いたよ!」

「天音、やるじゃねえか!」

千歳、明日奈委員長、サクラの順で俺の演奏を褒めてくれた。

そして、奏さんは目を大きく開いてとても驚いた様子で近づいた。

「驚きました……これほどの演奏をするとは……天音さん、ギター演奏の経験があったんですか?」

「ギターを触ったのは中学の音楽の授業以来です。演奏は……ギター以外の楽器を幼い頃に少しやっていました」

「しかし、あの演奏で少しとは……」

これは納得のいく説明をするしかないな。

あまり自慢じゃないし言いたくもなかったけど……。

「実は……うちの母の実家が日本最大の和楽器演奏の名家……『雪村家』の娘なので……」

「ええっ!?雪村って、あの雪村ですか!?」

明日奈委員長は真っ先に驚く反応を見せた。

「明日奈、雪村って?」

一応日本人のハーフだが深く日本の知識がないサクラに明日奈委員長は雪村家について説明する。

「雪村家は日本伝統の楽器、和楽器の演奏において特に群を抜くほどの腕前を持ち、独特の演奏技術を生み出している平安時代から続く家元なのよ。よくテレビにも出ているし、日本の重大なイベントや海外交流の時に呼ばれるのよ」

「そ、そんなに凄い家の娘が天音の母さんなのか!?」

「ああ。母さんは現在いる雪村家の一族の中でも特に優秀な演奏家だったけど、親父と結婚する時に家出に近い形で出て行ってな……一時期雪村家とは絶縁の中だったんだ」

六花母さんは本来なら雪村家を支える当主になるべき存在だったけど、親父と結婚して蓮宮に嫁いでしまった為に雪村家は大激怒。

一時期は絶縁状態だったけど、親父が説得して今は何とか母さんは雪村家とは繋がっている。

でも、雪村家の当主はまだ母さんを許してないけど。

「まあ、その後色々あって母さんの息子である俺は小さい頃によく雪村家の人から和楽器演奏を習っていたんだ」

「どんな和楽器を習っていたんだ?」

「そうだな……弦楽器の琴に琵琶に三味線。管楽器の竜笛とかの横笛。後は太鼓かな?でも、雪村家の人に比べたらまだまだだけどね」

「でも、私は天音の演奏は大好きだよ?」

千歳は俺が使ったギターを触りながらそう言った。

そう言えば、昔雪村で習った曲を千歳に何度も演奏してあげたな。

十歳を過ぎた頃から蓮宮で色々あってあまり演奏をしなくなったけど。

「雪村家の演奏技術……そして、心に響くこの音色……よし、決めました!」

「えっ?奏さん、決めたって何がです?」

奏さんは眼鏡を外し、キラキラした目で俺を見つめて肩をガシッと掴んだ。

「天音さん!是非とも僕のバンドメンバーになってください!!」

「は……はぁっ!?俺が奏さんのバンドメンバー!?」

「もちろんタダでとは言いません。天音さんだけの特注のエレキギターをプレゼントしますから!」

「特注のエレキギター!?」

エレキギターって結構高いんじゃ……それに特注だと余計に値段が高くなるし……。

「い、いや、でもそんな……」

「じゃあ、私ベースをやりまーす!」

「千歳!?」

「千歳さんはベースを弾けるのですか?」

「うん!アメリカのバンドを真似して色々引いたことがあるから出来ますよー」

「……千歳は天才で大抵のことは何でも出来るからベースぐらいお手の物ですよ」

千歳は何だかんだで天堂家の人間だから色々そつなくこなすことが出来るのだ。

「これでギターとベースが揃いましたね。後はキーボードとドラムですが……」

「それなら私はキーボードをやります!」

「もし良いなら俺はドラムをやるぞ?」

えええええっ!?明日奈委員長とサクラまでぇっ!??

明日奈委員長ならまだしもサクラがドラムが出来るなんてあまりにも意外だった。

「おお……これで、僕のバンドメンバーが揃いましたね!では、みなさんが使う楽器は全て僕が用意します!後で練習をしましょう!!」

何か俺の答えを聞く前にバンドメンバーが決まってしまったようだ。

これは雰囲気的に断れないだろうな……こうなったらやるしかないか。

「分かった、やりましょうか。奏さん」

「奏で良いですよ。呼び捨て呼んでください」

「じゃあ……俺の事は天音と呼んでくれ」

「はい!では、よろしくお願いします!天音!!」

「ああ、奏」

俺と奏は握手を交わして後で演奏の練習をする約束をし、音楽室を出て教室に戻った。



放課後の文化祭の準備が終わり、俺は白蓮達を迎えに聖霊樹のところまで来たが……。

「うーむ、何処に行ったんだ?」

今日は聖霊樹の周りでのんびり過ごすといっていたが何処に行ったんだろうか……白蓮達どころか他の聖獣の姿すら見えない。

『ムォ〜ッ!』

「ん?」

背後から牛のような声が響きとっさに振り向いた。

そこには茶色の毛皮の牛がおり、桃色の眼が真っ直ぐ俺に向けられた。

しかし、その眼を見た瞬間、

「うぐぅっ!?」

突然体に異変が起きた。

か、体が……動かない!?

目を下に向けると、何と足や手先が少しずつ灰色の石になってきていた。

まさか……見た相手を石にして殺してしまう石化の魔眼!?

このままだと体全身が石になって死んでしまう……そうは、させるか!!

霊煌紋が輝き、あらゆる魔の力を破壊する蓮姫様の霊煌霊操術を発動する。

「霊煌壱式……破魔!!!」

破魔の力を体全身に行き渡らせると、石化の呪いが解けて石から元の体となる。

『ブオッ!?』

茶色の牛は石化の呪いを破られて驚いていた。

「悪いな……俺にお前の石化の魔眼は通用しないよ……」

本来なら破魔は人に仇をなす魔のモノを完全に葬るためなどに使われるが、こうやって人体に巣食う呪いや魔の力を破壊したりすることが出来る。

「突然魔眼を使ってきたということは……お前は聖霊狩りの手先か?」

目の前の牛を警戒すると、牛は口を開けて息を吐いた。

しかし、その息は濃い緑色をしていてすぐにそれの正体が分かった。

「毒か!?」

石化の魔眼に毒の息……恐ろしくも、危険な聖獣だが!

「顕現招来、蓮煌!」

顕現陣から蓮煌を取り出して鞘から抜くと、蓮煌の刃から炎が現れる。

蓮煌は始めて白蓮と契約した時に刃に白蓮の鳳凰の力が宿り、炎の力を少し使えるようになっている。

そして、この炎に一工夫を加えてこの毒の息を消滅させる。

「霊煌玖式・浄火!!」

九代目当主・蓮宮玖音様が生みだしたこの霊煌霊操術で蓮煌の炎を倍増させて横に振るう。

炎は毒の息を全て燃やし、塵すら残さないほど完全に燃え尽きた。

「お前の力は俺には通用しない。今すぐこの場から立ち去れ!でないと……」

蓮煌を構えて切っ先を牛に向ける。

「お前を倒させてもらう!!」

「待ってぇっ!!」

「えっ?」

牛を倒そうとした矢先に俺と牛の間に誰かが降り立った。

それは天聖学園の制服を着て藍色の髪をした少女がいた。

中性的な顔で妙に少年みたいに見え、気のせいか何か俺と同じ感じに思えた。

「僕は小野宮翡翠。その子は僕の契約聖獣なんです」

「えっ?聖霊狩りの手先じゃなくて……?」

「ち、違いますよ!僕はただの生徒ですよ!」

「でも石化の魔眼と毒の吐息で……」

「ごめんなさい!この子は自分の力を抑えることは出来ないので……」

頭を下げて申し訳なさそうに誤ってきた。

見た感じ、この子が嘘をついているようには見えないな……。

「分かった。君を信じるよ」

「ありがとうございます、天音さん!」

「俺を知っているのか?」

「天音さんはこの学園の有名人だから」

「なるほどね……」

おそらく女装が特に似合う大和撫子風の男の娘って意味での有名人だろう。

嫌な有名人になったものだなぁ……。

「あ、申し遅れました。僕は1年C組の小野宮翡翠です。この子はカトブレパスのカトブです」

『モォー!』

「普段は特別な場所に住んでいるんですが、勝手に天聖学園に来ちゃって……ご迷惑をおかけしました」

「いえいえ。こちらこそ、カトブですか?その子を聖霊狩りの手先って勘違いをしてしまいましたし……」

「では……仲直りの握手をしませんか?」

「喜んで」

俺と翡翠さんは仲直りの握手を交わしてこの件をお互いに許した。

「僕はそろそろ失礼します。カトブを連れて行かなければならないので」

「そうだ、俺も契約聖獣を探さないと……」

暗くなる前に早く白蓮達を探さないと。

そして、翡翠さんは最後に俺にこう言い残してカトブと共に立ち去った。

「天音さん、何か困ったことがあったら言ってくださいね。こう見えても僕は探偵なので」

「探偵か……分かりました。その時になったらお願いしますね」

「はい!」

探偵か……まあ俺は結構色々なトラブルに巻き込まれやすいから、意外にも翡翠さんの力を借りる時は近いかな?

そう思いながら俺は引き続き白蓮達を探しに向かった。



sideサクラ


真夜中、昼間の学生から一転して断罪者となった俺はツバキと共に夜の街を駆け抜ける。

そして、断罪するべく今夜のターゲットの元に向かったが……。

『『『がうっ……?』』』

「死んでる……?」

そのターゲットは既に死んでおり、辺りが血の海になっていた。

死んだターゲットの元に行き、死因を確かめた。

「……首を一太刀か」

死因は首を真っ二つに切られた事による即死だった。

しかもその切り口はとても綺麗で、首を一太刀で切れるのは並の腕じゃない。

しかも、死体に残った体温はまだ温かく、切られてから時間はあまり経過していない。

「ツバキ……契約執行」

俺はツバキと契約執行をし、自らの体を契約媒体にしたアーティファクト・ギア、トライファング・ケルベロスを発動させる。

そして……。

「……ダークネス・フレイム!!!」

俺は近くの物陰に隠れている『それ』に向かってトライファング・ケルベロスから闇の炎弾を放った。

斬!!!

闇の炎弾は真っ二つに斬られ、『それ』の姿がはっきりと現れた。

「やはり……お前だったか、『イチ』」

闇の炎弾を斬ったのは布帯で目を隠し、赤い髪をした少女だった。

その手には髪と同じく赤い刃の刀が逆手で握られていた。

この少女の名は『イチ』。

裏世界では悪人のみならず悪の聖獣すらも容赦無く斬り捨てることで恐れられており……断罪者の俺とは似て非なる存在である。

「イチ、お前……まだこんな事をしていたのか?」

「それはお互い様だろ?お前も私と同じじゃないか」

「違う!俺は罪人の所為で悲しい目に遭う人をいなくさせたいだけだ。だから俺は冥界の王と契約して断罪者になったんだ!だがお前は自分の身勝手だけで人を斬っているだけだ!!」

「だが私が斬っているお陰で救われている人間はいるのは事実だ」

「お前みたいな小さな女の子がそんなことをしちゃダメだ!すぐに止めろ!!」

「私が復讐を止める時……それは私が死ぬ時だ!!」

イチは刀に塗られた血を振り払うと鞘に納め、地を蹴って俺に一気に近づいた。

「居合い……孤月!」

鞘から抜かれた刃は真っ直ぐ俺の首を狙う。

そのスピードに危うく俺の首が斬られそうになったが、トライファング・ケルベロスの左手で刃を殴り飛ばして刀の軌道をズラした。

「こぉっ、はぁあ……ハウリング・インパクト!!」

すぐに呼吸を整え、トライファング・ケルベロスから轟音の衝撃波を放ってイチを吹き飛ばす。

吹き飛ばされたイチは地面に着地すると刀を再び鞘に納めた。

危なかった……イチは日本刀特有の必殺剣技の『居合い』の使い手だ。

居合いは鞘から刀を抜く際、剣術では最速を誇る。

特にイチの居合いはとにかく速く、達人クラスとも言われている。

そんなイチと戦うのだ……これは一瞬の気も許さない戦いになりそうだ。

すると、イチは突然居合いの構えを解いた。

「……お前、変わったな」

「何?」

「以前のお前は断罪者として、ただ純粋に罪人を葬っていた……だが今のお前は何かが違う……何かあったのか?」

「何かあった……そうだな、確かにあった。掛け替えのない大切な奴らと巡り会えた。今は断罪者として戦いながら天聖学園に通っている」

「……地に堕ちたな、桜花の断罪者。貴様と戦う気が失せた……」

イチはそう言うと後ろに下がり、一瞬でその場から消えてしまった。

「イチ……」

俺はイチの姿が見えなくなるとツバキとの契約を解除した。

すると、懐に入れた携帯が鳴った。

「ん……?明日奈か?」

電話の相手は明日奈だった。

「はい、もしもし」

『あっ、サクラ君!今何処にいるの!?』

「何処にって……」

『ご飯まだでしょう?早く学園に帰ってきなさい!』

「いや、あの、明日奈さん……?」

『サクラ君とツバキ君の為にご飯を用意してあげたんだよ!冷めちゃうから今すぐ帰りなさい!』

「お前は俺のお母さんか!?」

明日奈は俺が断罪者の仕事とかで学園を出ている時にしょっちゅうこうして電話を掛けて来る。

まるでベルセポネの姐さんのようにお節介だった。

『そんなのはいいから!早くしないと許さないからね!!』

「分かった……帰るぞ、ツバキ」

『『『がうっ!!』』』

携帯を切り、俺はツバキを抱き上げて天聖学園に戻った。






次回は……どうなるかまだ未定です。


その前にバレンタイン特別小説の投稿が先になると思います。

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