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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第9章 文化祭編
121/172

第103話 継承された思い

天音VS狂魔の戦いです。


文化祭が動くのはまだちょっと先になります。

天星導志のアジトである梁山泊に入った俺だが、メンバーの一人である不良風の男性・狂魔さんと戦うことになった。

戦いの舞台となる修練場に案内されたが……。

「これが、修練場……?」

案内された『修練之部屋』と書かれた扉の中に入った瞬間、そこは大きな山々と幅が広い河川が広がる世界だった。

「この部屋は色々な術で作られた世界だ。ここなら思いっきり暴れられるぜぇ」

俺が今から戦う狂魔さんは暴走族が着用する長いコートに色々な刺繍が施されている特攻服を着用していた。

狂魔さんの特攻服は燃え盛る炎をイメージした物だった。

あれが狂魔さんの戦闘装束か……なんか凄いな。

狂魔さんの特攻服に感心しながら俺も戦闘装束である天装衣を顕現陣から取り出して身に纏い、私服から鎧を装着する。

「それが璃音と花音が前に作ってもらった特注の魔法衣か……そして、二体の契約聖獣、鳳凰とケルベロス……それじゃあ俺様の契約聖獣を呼ぼうか!」

狂魔さんは地面を強く叩くと炎が燃え上がり、中から契約聖獣を呼び出した。

その聖獣の炎の体を持つ女性でアリス先生の体に宿る火の精霊・サラマンダーによく似た感じだった。

「紹介す るぜ。炎の魔女、“イフリータ”のブレイズだ!」

『ご主人様、今日の相手は……あら?随分可愛らしい子ですね』

「ブレイズ、ああ見えても男だからな」

『分かりました』

ここでも言われるのかと軽くため息を吐きながら顕現陣から蓮煌を取り出す。

「やっぱり璃音と同じ剣だな」

「そう言う狂魔さんはどんな契約媒体ですか?」

「俺様の契約媒体?ふっ……こいつだ!!」

狂魔さんは特攻服の下に着た服を豪快に破くと、左胸に大きな顕現陣が刻まれていた。

顕現陣が輝くと、中から大型の赤いバイクが現れた。

しかもそのバイクは市販のものをカスタマイズしたようで、シルバーの髑髏の飾りや炎の模様が描かれていてかなりカッコいいバイクだった。

「こいつは俺様の愛車、ヘルバーニングだ。さあ……行くぜ、契約執行!イフリータ、ブレイズ!!」

ブレイズの体が赤い粒子となり、バイクの中に入り込んだ。

ドゴォオオオオオン!!

すると、バイクが突然大爆発を起こして炎が立ち上った。

一瞬契約の失敗か?と思ったがそれは違った。

立ち上った炎が小さくなって圧縮し、狂魔さんとブレイズのアーティファクト・ギアの姿が現れた。

「アーティファクト・ギア、“イフリータ・エクスプロージョン”!!」

それはバイク全体と飾られた髑髏の飾りがメラメラと燃えている、いわゆる燃え盛るバイクと化したバイク型のアーティファクト・ギアだった。

アーティファクト・ギアは契約者の道具を契約媒体にするのがほとんどだが、バイクのような乗り物を契約媒体にするマシンタイプのアーティファクト・ギアも存在する。

マシンタイプのアーティファクト・ギアは戦車や戦闘機よりも性能の次元があまりにも違うハイスペックなマシンとなる。

狂魔さんはイフリータ・エクスプロージョンに跨り、エンジンを吹かせる。

エンジンの轟音が鳴ると同時に後ろにある排気口から炎が吹き、いつでも走れる状態だ。

「相手がバイクなら……黒蓮はケルベロスになって俺を乗せてくれ」

『『『バウッ!』』』

ケルベロスフォームで大きくなった黒蓮の背中に跨り、鞘から抜いた蓮煌の刃に雛から鳳凰化した白蓮が乗る。

「行くぞ、白蓮!契約執行!!」

『うん!』

「アーティファクト・ギア、鳳凰剣零式!!」

白蓮と蓮煌を契約させ、愛用の大剣型アーティファクト・ギアを肩に担ぐ。

『天音、狂魔。二人共準備は良いな?』

互いの準備が完了した所で空から璃音兄さんの声が響き渡った。

「ああ、準備オッケーだよ!」

「早く始めろ!」

『分かった。ではこれより、蓮宮天音と大文字狂魔の決闘を開始する!決闘……始め!!!』

ブォオオオオオン!!!

決闘が始まると同時に狂魔さんはイフリータ・エクスプロージョンのアクセルを目一杯踏んで走り出した。

「オラオラオラ!行くぜ行くぜ行くぜぇっ!!」

「いきなり全速力か!?黒蓮!!!」

『『『ガウッ!!』』』

全速力で走り出す炎のバイクにケルベロスフォームで身体能力が格段に上がった黒蓮も走り出す。

平行に走り出す黒蓮と炎のバイク、スピードはどっちも負けてない。

「スピードはまあまあだな。さあ、ハイスピードバトルの幕開けだぁっ!」

炎のバイクから炎を灯した長い鎖が現れ、狂魔さんはそれを平然と持って鞭のように投げてきた。

鳳凰剣零式を振るいながら刃に炎を纏わせ、俺は向かってくる鎖が当たる直前を狙った。

「蓮宮流、紅蓮爆炎波!!」

鎖を爆撃で吹き飛ばし、更に炎を羽の形にしてお返しに発射する。

「鳳凰炎刃羽!!」

鎖を吹き飛ばされた狂魔さんは鎖をそのまま腕に巻きつかせてハンドルを握り締めた。

「はっ!俺様のバイクテクに酔いしれな!!」

ハンドルを握り、そのままバイクの前半分を持ち上げて方向転換し、更に体を左右に倒して炎の羽を回避して行く。

バイクという乗り物は一歩運転操作を間違えると大きな事故を引き起こす。

しかし、狂魔さんの運転はそれを承知で危険なバイクスタンドで避けたのは命知らずと言うべきか、何と言うか……。

「まだ驚くのは早いぜぇ……炎の魔女、ブレイズが宿ったイフリータ・エクスプロージョンの力はこんなもんじゃねえぜ!!」

エンジンを更に熱くしてアクセルを踏んで加速すると、何と炎のバイクが地面から空中を走って行った。

「なっ!?」

「俺の走りについてこれるか?このまま空からお前らを蹂躙してやるぜ!!」

「空を駆けるバイク……だけど、こっちにも空を翔ける力はある。黒蓮!」

『『『バウッ!』』』

顕現陣から魔法剣・銀蓮を呼び出して黒蓮と契約させる。

「契約執行!冥界獣、黒蓮!!」

跨っていた黒蓮の背中の上に立ち、高くジャンプして銀蓮を黒蓮に向けて投げた。

黒蓮の体が黒い粒子になって銀蓮と一つになり、縦横無尽に空を翔ける大剣となる。

「アーティファクト・ギア、冥覇獣王剣!!行くぜ、黒蓮!!!」

冥覇獣王剣に宿る黒蓮に呼びかけると、冥覇獣王剣は高速で飛び、俺の足元に来てそのまま大きな刃の上に乗る。

俺が乗ったのを確認した冥覇獣王剣は一気に狂魔さん達のいるところまで飛んだ。

「確かに噂通りだな。近年稀に見る複数のアーティファクト・ギア使い……だが、これはどうだ!?」

狂魔さんが炎のバイクにあるスイッチを入れると、ガコン!と謎の音が鳴った。

そして飾りの髑髏の口からジャキン!とガトリングガンが現れた。

「えー……?ガ、ガトリングですか……?」

「オラオラオラァッ!」

髑髏のガトリングガンから炎の弾丸が次々と発射される。

「き、緊急旋回!!」

腰を低くして冥覇獣王剣を旋回して操り、ガトリングガンの銃撃から逃れる。

あのガトリングガンは千歳と銀羅の無幻九尾銃のストームガトリング並みの威力があるなと思いつつ、どう対処するか考えた。

「こんな時はこれに限るな。霊煌拾式・夢幻!!」

霊煌紋を輝かせて霊力を解放し、俺と狂魔さんとの間の空間に幻を作り出す。

「ちっ!?幻術か!?」

「飛べ、黒蓮!!」

怯んだ一瞬の隙を突き、一気に冥覇獣王剣を飛ばせる。

更に夢幻の力で俺と同じ姿の幻をたくさん生み出し、狂魔さんの目を騙す。

そして、そのまま狂魔さんの所まで飛び、鳳凰剣零式を肩に担いだ。

「蓮宮流、夢幻裂刃!!」

夢幻を発動しながらの紅蓮裂刃を使おうとしたその時だった。

「そこだぁっ!!」

狂魔さんの鋭い拳の一撃が俺の腹に直撃した。

「ごふっ!?」

「俺はちょいとばかし頭が悪いからよ……そんな俺でも使える感だけは人一倍鍛えてんだよ!!」

「うぐっ、がぁっ……」

拳がモロに腹にめり込んでいる……ヤバイ、内臓にかなりのダメージが……。

「ぶっ飛びな!!」

炎のバイクが燃え上がり、真正面から激突してきた。

「うがぁっ!?」

激突された俺は後ろにぶっ飛ばされて修練場の山に激突した。

ぶっ飛ばされた衝撃で鳳凰剣零式と冥覇獣王剣も色々なところに飛んで行ってしまった。

乗り物関連の交通事故でぶっ飛ばされた人間の痛みはこんな感じかなと思いながら全身に大きな激痛が走り出す。

「れ、霊煌、参式……治癒……」

このままだと戦闘不能になってしまうので急いで体全身に治癒をかけて痛みや傷を癒して行く。

「チェーンバインド!!」

「なっ!?」

突然燃える鎖が現れて俺の体を縛り付けた。

これはさっき狂魔さんが鞭のように使った鎖!?

「そのまま大人しくして貰うぜ!」

狂魔さんはアーティファクト・フォースを発動させて炎のバイクと一緒に大きな炎を纏い、そのまま空をあちこち走らせてスピードを上げて行く。

「喰らえぇええっ!俺様必殺の特攻!!バーニング・ヘルドライブ!!」

特攻技……流石にあれを喰らったらシャレにならないぞ。

でもまだ体があまり動けない……どうしたら……。

俺は朦朧とする意識の中、必死に打開策を考えた。



side璃音


俺達は別室で天音と狂魔の戦いを見物していた。

狂魔の大人気ない戦いにみんながざわざわしていたが、俺はそんな事を気にしないで茶を飲んでいた。

「璃音、天音君を心配してないのですか?」

ボスがそう言っており、俺は喋るために唇から茶器を離す。

「心配しなくても天音は勝つさ」

「自信がありますね。狂魔の実力はあなたが分かっているでしょ?」

「だからさ」

狂魔はバイクタイプの特殊なアーティファクト・ギアを使いこなしていて正直に言うとかなり強い。

俺も何度も戦ったことはあるがその実力は俺と同等かそれ以上だ。

だけど、俺は天音が勝つことを信じている。

「天音は狂魔に勝つ。それからボス、忘れたのか?」

「忘れたって、何をですか……?」

俺は不敵な笑みを浮かべてその理由を教えた。

「あいつには俺と、親父たちから受け継いだ蓮宮の力があるんだからな」

だから……負けるなよ、天音。

お前なら狂魔に必ず勝てる!!



武器の鳳凰剣零式と冥覇獣王剣が手元に無く、特攻してくる狂魔さんにどうしたらいいか分からなかった。

腹を殴られた痛みやバイクに引かれたり山にぶっ飛ばされた激痛の衝撃、更に俺の体を縛り付けている炎の鎖で思考が低下している。

その時、霊煌紋から光が溢れて天装衣の服の間から光が漏れ出した。

『天音。負けないでくれよ……』

「詩音、叔父さん……?」

それは霊煌紋に秘められた十二人の蓮宮当主の魂の一部……十二代目当主・蓮宮詩音の声だった。

『危機を好機に変える力……私の霊煌紋を使いなさい』

「危機を、好機に……」

『私の古巣である天星導志のみんなが集まっているんだ……天音の……私達の力を見せてあげなさい』

「詩音叔父さん……はい!」

目を閉じて霊力を全身に駆け巡らせ、霊煌紋を輝かせて詩音叔父さんが生み出した霊操術を発動させる。

「霊煌拾弐式……」

こんなところで負けたりしない。

蓮宮十三代目当主として、天星導志だった詩音叔父さんから受け継いだ誇りに賭けて!

「覚醒!!!」

全身から霊力が爆発し、俺を縛り付けた炎の鎖が粉々に吹き飛んだ。

「何ぃ!?」

特攻してくる狂魔さんは俺が発動した覚醒に驚いていた。

爆発させて解放した霊力を武器の形にして大量に作り出す。

「霊煌伍式・刀剣!」

作り出した武器を宙に浮かせ、全てを狂魔さんの方に向けて右手で銃の形を作る。

「舞え、刀剣よ。斬り裂き、射抜き、砕き、貫け……無限の剣撃!!!」

一斉に武器が弾丸の如く発射される。

「何だこれはぁあああああっ!?」

突然現れた無数の武器に驚いた狂魔さんは特攻していた炎のバイクを急旋回させて回避した。

治癒で体が動けるまでに回復すると、次の霊煌霊操術を発動する。

「霊煌弐式・強化!!」

身体能力を向上させると、発射させた武器のところまでジャンプし、飛んでいる武器を足場にして回避している狂魔さんの所まで飛んだ。

狂魔さんの近くまで飛ぶと、飛ばした武器のうち刀や剣を選んで両手に持ち、刃に霊力を纏わせる。

「霊煌肆式・斬撃……天凛繚乱てんりんりょうらん!!!」

京都で蓮姫様が使った『斬刀繚乱』を改良し、乱撃を放つ天凛蓮華の剣術で霊力のこもった無数の斬撃を放つ。

「やるじゃねえか!俺様もそろそろ本気を出さなきゃならないなぁ!!ブレイズ、アーマーモード!」

『はい!!』

炎のバイクが突然バラバラに分解されて、それが狂魔さんの体に装着されて全身を包む鎧となった。

まるでその姿はバイクがロボットに変形したようで、狂魔さんは空を疾走しながら俺の放った斬撃を避けていく。

「バイクが鎧になった!?」

「蓮宮天音!タイマンはらせてもらうぜ!!」

『そうはいかないよ!』

『『『ガウッ!!』』』

「何だと!?」

その時、白蓮と黒蓮の声が響くと鳳凰剣零式と冥覇獣王剣が飛んできて狂魔さんの行く手を阻んだ。

そして、鳳凰剣零式は俺の手の中に戻り、冥覇獣王剣は再び俺を乗せて飛ぶ。

「よし……行くぞ、白蓮!」

『うん!』

「顕現!氷蓮!!」

顕現陣から璃音兄さんから受け継いだ神剣・氷蓮を取り出して構える。

「契約執行!更にアーティファクト・フォース!!」

白蓮と氷蓮を契約執行しながらアーティファクト・フォースを発動する。

炎の大剣である鳳凰剣零式と対をなす氷の大剣が姿を現す。

「アーティファクト・ギア、鳳凰剣百式!」

双翼鳳凰剣を構えてアーティファクト・フォースの力を刃に纏わせながら一つに重ねて光の力を結集させる。

「光り輝け、鳳凰の翼!!」

一つに重ねた双翼鳳凰剣を掲げると、聖なる光が鳳凰の翼を模した巨大な剣へと変化する。

「蓮宮流剣術奥義、鳳凰光翼剣!!」

「ちぃっ!ぬぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!?」

避けられないと判断した狂魔さんは腕を交差させて鳳凰光翼剣を真正面から受け止めた。

鳳凰光翼剣から光の波動が次々と解き放たれ、今度は狂魔さんがぶっ飛ばされて山に激突した。

「いてて……いい攻撃だ。だが、今の攻撃は奥義……これ以上の攻撃は無いと見た!!」

鳳凰光翼剣を受け止め切れた狂魔さんはニヤリと笑みを浮かべた。

「……誰がこれ以上の攻撃は無いって?」

「な、何だと!?」

鳳凰光翼剣を解除して再び双翼鳳凰剣を構え直し、白蓮と黒蓮に呼びかける。

「さあ……白蓮、黒蓮。Climax Show Timeだ!」

俺の足元に魔法陣が浮かび上がり、双翼鳳凰剣と冥覇獣王剣が宙に浮き、契約が解除されて白蓮と黒蓮の姿が現れ、共に契約媒体の蓮煌と氷蓮と銀蓮が現れる。

「白蓮、黒蓮……二重契約執行!!」

『うん!いくよ〜、こくれん!!』

『『『バウッ、ワォオオオオオン!!』』』

白蓮と黒蓮が黒白の粒子となって混ざり合い、三つの契約媒体と一つになり、俺達三人の力を一つにした絆の神器をここに顕現させる。

「アーティファクト・ギア、冥覇鳳凰剣!!!」

黒白の大剣を右手で持ち、切っ先を狂魔さんに向ける。

「に、二重契約執行……!?本当に……お前は面白い奴だな!はっはっは!!」

狂魔さんは俺の二重契約執行に大笑いを上げる。

そして、全身から今まで以上の炎を放出させて膨大な熱を帯びる。

「俺様の全身全霊、本気の特攻を見せてやる!!喰らえ、バーニング・ヘルドライブ!!!」

バイクの時には不発に終わった特攻を今度は鎧形態で再び仕掛けた。

俺は冥覇鳳凰剣を霊力で宙に浮かせてアーティファクト・フォースの力を込める。

今から使う技は冥覇鳳凰剣で放つ『黒白之終焉』とは異なるもう一つの蓮宮流剣術奥義。

「鳳凰と冥界獣……異なる二つの聖なる力、我と共に一つになりて、闇を滅する断罪の巨刃となれ……」

冥覇鳳凰剣が徐々に巨大化して行き、刃の形も変化していく。

「蓮宮流剣術奥義……」

そして、冥覇鳳凰剣は数十メートルまで巨大化し、刃が闇を滅する為の凶悪な形に変化した。







冥凰断罪刃めいおうだんざいは!!!」







手を思いっきり振り下ろすと同時に冥覇鳳凰剣を隕石のように上空から一気に落下させる。

急速に落下して行く冥覇鳳凰剣は白蓮と黒蓮のオーラを纏いながらまるで狂魔さんを獲物にして襲いかかるようだった。

「うぉおおおおおっ!負けるか……負けてたまるかぁあぁあああああっ!!」

特攻をしかけている狂魔さんは無謀にも冥凰断罪刃に真正面から立ち向かって突撃した。

しかし、冥凰断罪刃は簡単に破られる技じゃない。

「……Brake The Fate!!!」

再び腕を振り下ろすと、冥凰断罪刃の落下するスピードが上がり、特攻する狂魔さんを思いっきり叩き落とした。

そして、冥凰断罪刃が地面に突き刺さった瞬間、黒白の光の波動が解き放たれながら周囲を覆い、俺達の勝利となった。



side璃音


天音が狂魔に勝利した直後、天音は疲労困憊で倒れてしまった。

すぐに俺と花音は修練場に入って倒れた天音に駆け寄った。

倒れた天音を俺は背中に背負い、花音は疲れた白蓮と黒蓮を抱き上げて一緒に運ぶ。

ずっしりと背中に掛かる重みに俺は思わず小さく笑みを浮かべた。

「ん?璃音、何ニヤニヤしているの?」

「いや……ただ、天音の成長を感じてな……」

俺は天音が生まれてから、かなりの長い時間を見守ってきた。

花音と双子の弟だった俺は一緒にいてくれる弟が欲しかった。

そんな時に叔母の六花さんに男の子が生まれ、俺にとって従兄弟の弟分が出来るのは本当に嬉しかった。

『りおんおにいちゃん!けんをおしえて!』

『いっしょにあそぼう、りおんおにいちゃん!』

『ありがとう!りおんおにいちゃん!』

脳裏に思い浮かぶのは幼き日の天音との思い出……全く、本当に可愛い弟だよ、天音は。

兄貴として大切な弟をずっと甘やかしたいぐらいだったけど……時折、天音の成長に驚く事が何度もあった。

それは、親父とお袋が死んで次期蓮宮当主の座を捨てて天星導志に入ることを決めた時だった。

『俺が……俺が璃音兄さんの代わりに、蓮宮を統べる当主になる!!』

まだ十歳だったあの時の天音は誰よりも輝いて見えた。

そして、天音は俺の代わりに蓮宮の当主を継ぐことになり、俺は申し訳ない気持ちで天音に謝罪をしようとしたが、

『夢がない俺にとって、蓮宮を継ぐ事は何かを自分にとって大切な道を掴めそうな気がするんだ。だから……璃音兄さんは安心して自分の道を歩んでくれ』

そう言って天音は笑顔で俺を送り出してくれた。

そして……それから色々なことがありながらも天音は無事に蓮宮十三代目当主となり、仲間と共に数々の強敵を打ち破ってきた。

いつだったか、俺と天音で約束を交わした決闘をする日も近いのかもしれないな……。

俺はその日を楽しみにしながら天音を運ぶのだった。





新技、冥凰断罪刃、如何でした?


次回は天音の梁山泊での暮らしとかを書こうと思います。

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