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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第1章 召喚と契約編
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第12話 神槍の出陣と動き出す運命の歯車

今回はAGでまるでゲームみたいな能力がいくつか明かされます。

バトル物だからありかなと思って書いてみました。

 学園長の愛孫である天堂千歳がまさかこんな強力な攻撃を繰り出すとは正直予想外だった。契約聖獣の妖狐の最強形態と言われる九尾の妖力は恐ろしいまでに強大だった。

クラウドのお陰で何とか結界エネルギーを消費せずにすんだが、それでも俺の周りは地獄と見間違えてもおかしくない火の海と化している。

 このままではシールドを張っているクラウドの負担も大きくなるばかりだ。ここは一気に火を吹き飛ばすしかない。

「クラウド……この火を全て吹き飛ばすぞ!」

『ヒヒィン……』

 イージス・オブ・ペガサスの中のクラウドから「わかった……」と声が耳に聞こえる。この火の海を吹き飛ばす強烈な嵐を今ここに呼び起こす。

「……吹き荒れろ、天の嵐! 地に蔓延る邪悪なる意志を打ち払え!!」

 詠唱によってイージス・オブ・ペガサスに力が宿り、俺を中心に巨大な嵐が作られていく。

「吹っ飛べ……!」

 両腕を胸の前で強く抱きしめ、力を解放するかのように勢い良く両腕を大きく広げる。

「ヘブンズ・テンペスト!!!」

 天の風から生まれた巨大な竜巻が発生して俺を包み込もうとした火の海を吹き飛ばし、全て鎮火させた。

 しかし、火の海を鎮火させると目の前に信じられない人物がいた。

「ハロー♪ 迅先輩♪」

「て、天堂……千歳……!?」

 馬鹿な、俺が火を吹き消す今までにあの火の海の中に居たというのか!? しかも、結界エネルギーを消費せずに……はっ!? 

 天堂千歳の体には結界とは違う何か別の物を纏っていた。淡く輝く青い炎のオーラ――紛れもなくそれは天堂千歳の契約聖獣の九尾が持つ独特な炎である狐火だった。そして、手には溢れんばかりの大量のダイナマイトが握られていて既に導火線に火が付けられていた。とっさにイージス・オブ・ペガサスを構えたが、何の反応も起きなかった。その時に俺は気付いた。

 しまった……さっきのヘブンズ・テンペストでクラウドの力をかなり使ってしまい、10秒はシールドを張ることができなくなってしまっていた。まさか……全てはこの時を狙って!?

「パァン……!」

 導火線に火を付けられた大量のダイナマイトは防御する事の出来ない俺の前に投げられた……。




 ドガァァアアアアン!!!




 大量のダイナマイトの直撃を体中にまともに受けてしまい、体を大きく吹き飛ばされてしまった。

「くっ……」

『御剣迅。結界エネルギー、47パーセント低下。エネルギー残量、53パーセント』

 まさか……楯型AGのイージス・オブ・ペガサスを持っていながら、一度に半分近くも結界エネルギーを奪われるとはな……恐ろしい娘だ。本当に幼いころに虚弱体質だったのか疑問に思うほどだ。

「……迅」

「雫……?」

 執事として主の声を聞き逃さないように聴力を鍛えられているため、耳に届く微かな雫の声が聞こえる。

「そろそろ……私の出番かもしれません」

 いよいよ俺の主である生徒会長様の出陣らしい。声音も静かだ……。

「わかった……だが、あまり後輩をいじめるなよ?」

 雫も聴力を鍛えられているため、俺の声も耳に届いている。

「わかってます。ですが……この場は心を鬼にして戦います」

「そうか……」

 これはかなり大変なことになった……蓮宮天音と天堂千歳、本気になった雫は俺よりも恐ろしいぞ。少しでも気を抜いたらすぐに倒されるから気を付けろ……!


   ☆


「うにゅ~……」

「千歳、大丈夫か!?」

 9体の炎の竜を放って後に迅先輩に近付いてからの至近距離のダイナマイトは俺でも予想外だった。お陰で普段慣れているダイナマイトの爆発に慣れている千歳でも爆発と爆音で目を回して倒れている。

『天堂千歳。結界エネルギー、14パーセント低下。エネルギー残量、86パーセント』

 迅先輩のダメージに比べれば千歳の結界エネルギーのはかなり軽いが、目を回しては逆に危ない。

「おい、起きろって!」

「う~ん。天音が王子様のキスをしてくれたら起きるよ~」

「起きんかい、このバカ娘」

 バシッ!!

「フギャア!?」

 ふざけている千歳の頭に強烈なチョップを食らわせて強制的に起こす。AGバトル中にもふざけるなんて相変わらず図太い神経をしてるな。

「いったぁーい!? もう! 絶世の美少女お姫様をチョップで起こすなんて、王子様のすることじゃないよ!」

「やかましいわ。俺は王子様じゃないし、目の前にいるのはお姫様じゃなくてただの幼なじみの女の子だ」

「天音は私の王子様だよー!」

「神に仕える人間が王子様の訳あるか」

「天音さん、千歳さん」

「「えっ!?」」

 突然呼ばれて二人同時に振り向くと、今まで静観していた雫先輩が前に出てきた。そして、雫先輩は今まで戦ってくれた迅先輩を労わるように肩に手を置いた。

「迅は休んでいてください。後は……私に任せてください」

「……わかった」

 迅先輩は後ろに下がり、雫先輩は肩に担いでいたユニコーン・ザ・グングニールを右手で持ち、指で巧みに柄を操りながら軽く回転させる。

「さあ、天音さん、千歳さん。今度は私がお相手しますわ」

「やっと、真打ち登場ってわけですか……」

「でも、私たちは負けません!」

 そうだ。せっかく雫先輩を引きずり出したんだ。ここまで来たらそう簡単に負けるわけにはいかない!

「ふふふ……勇ましいですね。ですが……」

 雫先輩の目が突然鋭くなり、全身からゆらゆらと陽炎のように藍色のオーラが溢れてくる。

「これを見ても、それが言えますか?」

 不敵な笑みを浮かべる雫先輩。先輩の持つユニコーン・ザ・グングニールからも同じような藍色のオーラを放っている。

「いざ、参ります!!」

 己の肉体に秘められて力を開放するかのように声を強く発し、全身から強烈な藍色の閃光を放った。

「体が、光った!?」

「あれは……あの光はもしかして……“アーティファクト・フォース”!?」

「アーティファクト……フォース?」

 千歳の言うアーティファクト・フォースという単語に聞き覚えがなく、疑問符を浮かべて首を傾げた。その疑問に対する答えを雫先輩が答えてくれた。

「アーティファクト・フォースとは、ごく一部のアーティファクト・ギアの使い手が使える秘技の一つですわ」

「秘技……?」

「アーティファクト・フォースは契約者と契約聖獣同士の心を一つにし、シンクロ率が100パーセントを越えないと発動できません。契約者である人間の肉体に秘められた力である霊力や気力、聖獣は魔力や神力。それぞれの持つ特殊な力を、アーティファクト・ギアを経由して一つに混ざり合わせることによって、契約者には身体能力や特殊能力の向上、アーティファクト・ギアには秘められた能力を解放することが可能となります」

「そのアーティファクト・フォースは大体100人に1人の割合でしか発動しないから、普通の学生はその力の存在を余り知らないわ。私はおじいちゃんから話だけを聞いたことがあるから知っていたけど、まさか先輩が使えるなんて……」

 100人に1人という割合しか発動できない人間と聖獣の心を一つにした秘技、アーティファクト・フォース。その力を雫先輩が使っているということは、契約聖獣であるユニコーンのソフィーとそこまでお互い信頼し合っているという事を意味していた。

「天聖学園生徒会長の名は伊達じゃないということですわ」

 ニッコリと微笑む雫先輩は右手に持ったユニコーン・ザ・グングニールをゆっくり手から離した。すると、ユニコーン・ザ・グングニールは地面に落ちることなく勝手に宙に浮いた。

そして、宙に浮いたユニコーン・ザ・グングニールに向けて力を与えるように言葉を紡いでいった。

「奔れ、天と地を自由自在に駆け抜ける高速の神脚。穿て、全てを貫く強靭なる螺旋の一角……その二つの力を持って、我に勝利をもたらせ!」

 雫先輩の手から離れたユニコーン・ザ・グングニールはドリルのように高速で回転し、竜巻のような風を起こしている。竜巻を発生させるほどの回転をするユニコーン・ザ・グングニールを雫先輩は手で触れずにまるで糸に吊った人形のように指で軽やかに動かし、自分の後ろに持っていく。

「行きますわよ、天音さん、雫さん……」

 とても静かな声で話す雫先輩の言葉に迅先輩の時と違った寒気が体に走る。

「ちなみに、この槍の速さは“神速”と言われていますから……」

 その言葉は今から放たれる一撃の警告だとすぐに理解した。

「っ!? 千歳!! 左に避けろ!!」

「う、うん!!」

 千歳はその場から左に、俺は右に大きく避けた。そして、雫先輩は、

神槍一閃(しんそういっせん)、ユニコーン・シェイバー!!!」

 右腕を全力で振り下ろすと同時に高速回転する槍が一直線に飛んできた。一瞬だけ、ソフィーのユニコーンの幻影が見え、次の瞬間には左右に回避した俺と千歳の間を通り抜けてアリーナの壁に激突した。

 その壁の上にいる観客席の学生たちは騒いだりして非常に驚いたが、一切の被害はなかった。AGアリーナ全体に強力な結界を作り出す魔法陣が展開されているため、フィールドで戦っている選手のAGの攻撃やその余波が観客に降りかかりことはない。しかし、今の雫先輩とユニコーン・ザ・グングニールの攻撃の威力が高すぎてAGアリーナの強固な結界にヒビが入ってしまった。幸いにも結界の入ったヒビはすぐに元通りとなったが、それでも結界にヒビを与えるほどのAGを持った人間なんてこの学園には指で数えるぐらいしかいないだろう。

『ピ、ピィー……』

 ユニコーン・ザ・グングニールのスピードとパワーに白蓮は怖くなってしまったのか、体を震わせて俺の髪の毛を嘴で咥えている。少し痛かったが、怖がっている白蓮に髪を咥えるなとは言えなかった。

 すると、雫先輩は俺ではなく白蓮を睨み付けた。

「……いつまで、そうしているつもりですか?」

『ピィ?』

「雫先輩……?」

 壁に激突したユニコーン・ザ・グングニールは独りでに雫先輩の手の中へと戻り、軽く振るって付着した砂埃などを払った。

「白蓮さん。あなた、いつまで天音さんと千歳さんに守ってもらうつもりですか? いい加減……あなたも覚悟を決めてください」

 普段の優しい表情から想像できないとても厳しい表情をした雫先輩が白蓮に向かって厳しい言葉を投げかける。

『ピ、ピピィ……?』

 白蓮は訳が分からずにおろおろとして戸惑っている。雫先輩は右手にあるユニコーン・ザ・グングニールを両手で持つ。

「……この攻撃に私の全てを込めます。ソフィー!」

『ヒヒィーン!!!』

 雫先輩とソフィーの思いが一つに重なり、ユニコーン・ザ・グングニールからアーティファクト・フォースとはまた違う光りが輝いた。

「“ギアーズ・ブレイク”……」

 雫先輩がまた聞いたことのない単語を口にした。もしかして、そのギアーズ・ブレイクもアーティファクト・ギアの秘技なのか!?

 そう考えていると、右手にユニコーン・ザ・グングニールを持ち替えて、さっきとは違って自分の手で投げる準備をする。そして、ユニコーン・ザ・グングニールに輝く光が最高潮にまで煌めいた。

神槍閃嵐(しんそうせんらん)……セイント・オーバー・グングニール!!!」

 雫先輩は光り輝くユニコーン・ザ・グングニールを全力で俺と白蓮に向かって投げ飛ばした。

 この槍の攻撃……雫先輩の思いが込められて放った全力の投擲が、俺と白蓮の止まりかけていた運命の歯車を動かす、最後の歯車となった……。



.

次回、いよいよ第1話の始めに書いたあのシーンに繋がる話となります。

長かった……ここまで来るのにかなり時間はかかりましたが、遂に白蓮の覚醒の時です!

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