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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第8章 日常編
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第96話 体育祭前の喜劇

前から話していた体育祭がようやく始まります。

秋から冬に近づくにつれ、気温が一気に寒くなっていく。

そんな中、天聖学園の花のお祭り期間のイベントの一つである体育祭が始まろうとしている。

体育祭には生徒だけでなく聖獣達も参加することが出来る。

俺は体育祭で白蓮と黒蓮と一緒に参加できるのを心から楽しみにしていたが、今は全く楽しめなくなった。

「くっ……何で、何で、こんな事に……!

今は授業中だが、俺はそんな事を御構い無しに逃げていた。

何から逃げていると言うと、それは……。







「天音きゅん、どこー!?」

「天音様〜!どうかこの服を着てください〜!」

「天音ちゃん、出ておいで!」

「蓮宮!!頼むから俺達のために出て来てくれ!!」

「観念するんだ!お前はもう逃げられないぞ!!」

「蓮宮君!このまま逃げても運命は変わりませんよ!」







俺のファンクラブ(非公認)の過激派達で手にはチアガールの衣装を持っていた。

どうしてチアガールの衣装を持って追いかけているのかと言うと、それはかれこれ三十分以上前の話である。



1−A教室のホームルームで体育祭の種目決めたりしている。

また天聖学園の体育祭は普通の体育祭とは少し違う。

小学生や中学生の時と違って、今の俺たちには相棒の契約聖獣がいるため、体育祭は聖獣と一緒に競技を行う。

例えば、聖獣と一緒の徒競走とか玉転がしとかメジャーなものからアーティファクト・ギアを使ったかなりマイナーなものまで色々ある。

白蓮は鳥型で黒蓮は犬型だから徒競走とか長距離走とか良いなぁと考えながら二人と相談して競技を考える。

そしてこれまたマイナーな競技と言うか、クラス対抗のイベントみたいなもので『応援合戦』がある。

応援合戦はクラス対抗でBGMに併せて歌う、踊る、組体操等、多様なパフォーマンスをして、クラスを応援するものである。

応援合戦だから……男子なら学ラン着て熱い熱血の応援、女子ならチアガールの服を着た可愛らしい応援とかある。

俺は応援合戦には興味ないからボーッとしていると、クラスメイトの一人がとんでもない発言をする。

「はいはい!私、天音君のチアガール姿を見たいでーす!」

「は……?」

何を言っている……?

俺のチアガール姿?

おいおい、チアガールは『ガール』だから女の子がやるものだろ?

俺は呆れながら無いなとみんなの反応を伺う。

しかし、この時俺は忘れていた……。




みんなが阿呆ばかりだと言う事を……。




「賛成賛成!大賛成で〜す!!」

「天音君!私達と一緒にチアガールしようね!」

「チアのやり方は手取り足取り教えるよ!」

「よっしゃあああああ!蓮宮のチアガール姿は眼福じゃあああああ!!」

「うぉおおおおおっ!生きてて良かったぁあああああっ!!」

「写真とビデオ撮影なら任せろ!可愛く撮影してやるからな!」

クラスメイト達の半分以上が立ち上がって歓喜の雄叫びを上げていた。

待て待て待てぇいっ!!

お前ら、俺はやると一言も言って無いぞ!?

「ちょっと待った!!俺は絶対にチアガールなんてやらないからな!!」

「「「えぇ〜っ!?」」」

「えぇ〜っ、じゃない!俺は絶対にチア服なんか着ないからな!!」

俺はチアガールを断固拒否するが、クラスメイト達は不服そうに俺を見つめる。

すると、ガラッと教室の扉が開いて全員の視線が集中する。

そして、俺は血の気が一気に引いて顔が真っ青になった気がした。

「天音さん……チアガールやるなら、これを使ってください……!!」

「ら、雷花さん!?」

雷花さんの手にはおそらく俺の体型に合わせて作ったであろうヒラヒラの可愛らしいチアガールの服だった。

「ら、雷花さん、それは一体……」

「いつか、天音さんに着てもらおうと思って……」

「今すぐ処分していただけるとありがたいです……ん?」

周りを見渡すと、いつの間にかクラスメイト達が集まっていた、

否、ただ集まってはいなあ。

目をギラギラと輝かせて、「ハァハァ」と息をして俺を見つめていた。

「あ、あの、皆さん……?」

『ピィ……?』

『『『がぅ……?』』』

あまりの不気味の悪さに白蓮と黒蓮が俺にしがみつく。

この瞬間、俺は二人を抱きかかえて思った。







これ、絶対に逃げなくちゃダメだ。







「刹那ぁっ!!」

「はっ!」

俺はこの場で一番頼りになれるであろう、俺の忍の刹那を呼んだ。

刹那は瞬時に俺の元に向かうと同時に制服を脱ぎ去って忍装束の格好となる。

「忍法・煙玉!!」

ボォン!

刹那は煙玉を床に叩きつけ、教室を白い煙に包んだ。

「ゴホッ、ゴホッ!?天音!?せっちゃん!?」

「けほっ、けほっ!せ、刹那!?」

千歳と麗奈の声が聞こえたが次の瞬間、その声が遠くなっていく……刹那が俺たちを教室から連れ出してくれたのだ。

「追えーっ!天音きゅんを追うのだー!!」

「逃がすな!者共、出合え出合え!!」

「天音君を何としても絶対に捕らえるのだ!!」

「逃さねぇぞ、蓮宮!絶対に激萌えのチアガール姿にしてやるぞぉおおおおおっ!!」

「俺たちの願望を叶えるためにぃいいいいいっ!!」

「天音ファンクラブの悲願を達成してやるぜぇえええええっ!!」

クラスメイト達のおぞましい叫びの数々が聞こえてくる……に、逃げなくちゃ俺の貞操が危ない……!!

「刹那!俺を奴らから逃がしてくれ!!」

「しょ、承知したでござる!!」

俺をチアガール姿にしようとする暴走したクラスメイト達から全力で逃げるのだった。



「蓮宮流、鳳凰紅蓮撃!!」

「影分身の術!」

『『『バァアアアアウ!!』』』

俺達は次々と襲いかかってくるクラスメイト達を薙ぎ払っていた。

否、クラスメイト達だけではない騒ぎを聞きつけた他のクラスの生徒達もたくさんいた。

そんなに俺をチアガールの姿にしたいのかと、その恐ろしい執着心に引いてしまう。

しかも、倒しても倒してもゾンビのように蘇るように立ち上がってきて俺を何としてでも捕らえようとする。

「ああ、もう!こいつらは化け物かよ!?」

「に、人間の欲望とはなんと果てしないものでござるな……」

本当に刹那の言う通り人間の欲望は凄いよな。

「見つけましたよ、旦那様!刹那!」

「「麗奈!?」」

そこに麗奈がバッと俺達の前に現れる。

麗奈が現れたということは俺達の加勢に来たと思ったが……。

「旦那様、大人しく私達に投降してください!」

「な、何!?麗奈!どういうことだ!?」

「どういうことでござるか!?」

味方だと思っていた麗奈が敵になると言う事は……まさか!?

「……奥様が旦那様のチアガール姿を見たいとおっしゃるので……」

「やっぱりか……」

千歳……恋人の危機に加勢するなんてお前は鬼が悪魔か!?

「親方様!麗奈は拙者が対応するでござる。親方様は逃げるでござるよ!」

「刹那!?くっ……頼む!行くぞ、黒蓮!契約執行!!」

『『『バウッ!!』』』

顕現陣から銀蓮を取り出して黒蓮と契約を執行する。

「冥覇獣王剣!!はっ!!!」

宙に浮く冥覇獣王剣の刃の上に乗り、麗奈を刹那に任せてこの場から退散した。

「麗奈、行くでござる!」

「お互いの、主のために!」

刹那と麗奈はお互いの主の為に忍の戦いを始めた。



冥覇獣王剣でしばらく飛ぶと……。

「おりゃあ!!」

「なっ!?」

何かが俺に向かって振り下ろされ、冥覇獣王剣を急停止させて降りた。

「如意棒……恭弥か!?」

「悪いな、天音……」

「天音さん……」

そこには如意棒を地面を叩きつけた恭弥とライトニング・トール・ハンマーを持った雷花さんがいた。

「雷花さんはともかく、恭弥……お前もなのか!?」

「天音……俺は雷花の恋人として協力してやりたいんだ。そして……」

恭弥は手を強く握って俺を凝視した。

「お前のチアガール姿を見たいんだよぉおおおおおっ!!」

「お前もかぁあああああっ!?」

恋人のみならず親友にまで俺のチアガール姿を見たいのかと俺はもう呆れて仕方が無かった。

そう言えば恭弥の初恋は俺だったな……雷花さんを恋人にしてもまだその余韻が残っているのか?

「ええい……この二人を相手にするのは辛いがやるしか……えっ?」

鳳凰剣零式と冥覇獣王剣を構えると、突然目の前に魔法陣が現れた。

「ソロモンナンバーズ16!ゼパル!」

魔法陣は赤く輝くと中から赤い甲冑に身を包んだ兵士のような姿をした聖獣が現れた。

「行きなさい、蓮宮君。ここは私が食い止めるわ」

「明日奈委員長!」

ソロモン王の生まれ変わりと言われる我らが頼れる委員長の明日奈委員長が加勢してくれた。

「サクラ君は断罪者の仕事で学園にはいないし、クラスメイト達の暴走は委員長である私が止めます。蓮宮君は早く安全な所に逃げてください!」

「ありがとうございます!明日奈委員長!!」

「ゼパル!あなたの力で雷花さんをやっちゃって!」

『……もう一つの力を使うか?』

「それは絶対にダメよ!ってか、女性にそれは屈辱的だから禁止ね!」

『分かった……』

赤い甲冑に身を包んだゼパルは右手を雷花さんに向けた次の瞬間。

「あっ……あっ、ひゃあ……あん!」

「雷花?」

突然、奇声を発してライトニング・トール・ハンマーを手放して自分の身体を強く抱きしめながら膝をついた。

「お、おい!どうしたんだよ、雷花!?」

『どうしたんだ、雷花!?』

恭弥と契約解除したトールが異変が起きた雷花さんに駆け寄る。

「だ、だめ……」

「何が!?」

恭弥が腰を下ろし、雷花さんの肩を掴むと……。

「恭弥!」

「はっ?んむっ!?」

雷花さんは恭弥の唇を塞いでキスをした。

だが、ただのキスじゃない。

普段の雷花さんからは考えられない情熱的なディープキスだった。

嫌な予感が……。

「ぷはぁ、恭弥ぁ……」

「ら、雷花……急にどうしたんだよ……」

「ねぇ、恭弥……私、私ね……」

「な、何だよ……?」

トロンとした目に赤くなる頬、あの色っぽい表情には見覚えがあった。

「私……恭弥の赤ちゃんが欲しい……子作りしたい……」

ほら、やっぱり。

今の雷花さんは千歳が俺に求めている時と全く同じ感じだったから。

「ちょっ、まっ、えぇえええええっ!?ら、雷花!雷花ちゃん!?どうしたんだよ!?」

「はっはっは!さあ、浅木君。どうするかなぁ?」

明日奈委員長はドヤ顔で扇を開いて扇ぐ。

「ま、まさか……明日奈委員長!あんたの仕業か!?」

「その通り♪ゼパルは人の情欲を操作することが出来る悪魔なのよ♪」

「な、何だと!?」

流石は七十二体もいる悪魔だ……人間の情欲を操る奴もいるのか。

明日奈委員長が味方で本当に良かった。

「それじゃあ、浅木君。雷花ちゃんを目いっぱい可愛がってね♪」

「恭弥、“出来たら”ちゃんと責任取れよ」

「委員長!?天音!?」

俺と明日奈委員長は二人の邪魔にぬらないようにその場からすぐに退散する。

『なあ、トール。ちょっくら酒飲みに行かねえか?』

『乗った!ちょうど今飲みたいと思ったところだ!』

「悟空!?トール!?」

契約を解除した悟空とトールが邪魔者は消えると言わんばかりにささっと消えていく。

「ま、待ってくれ!みんな、俺を置いて行くなぁ!!」

「恭弥ぁ……早くぅ〜……」

「うわぁあああああっ!?!」

その後恭弥と雷花さんがどうなったか分からないけど、多分二人はイチャイチャしたんだろうなと思いながら俺は引き続き逃げるのだった。



明日奈委員長は暴走するクラスメイト達を制裁すると言い、悪魔達と一緒に走って行った。

俺はひとまずこの時間にみんなが来なそうな建物にしばらくの間、隠れることにした。

その場所は……。

「流石にここには来ないだろう」

『ここって、ぷーる?』

『『『ガーオ?』』』

そこは天聖学園の室内プール場だ。

主に水泳の授業や水泳部が使用する場所だが、今は秋で水泳の授業はないし、まだ放課後の部活動の時間でもないから必然的にこの場所は無人となる。

「疲れた……しばらく休むか」

走り回って疲れた体を休ませようとしたが、

『ねえねえ、ぷーるであそんでいい?』

『『『ガウ、ワウッ!』』』

白蓮と黒蓮は余程プールで遊びたいのか目を輝かせている。

「……いいよ。でも、ちょっとだけだからね」

『わーい!』

『『『ガウッ!』』』

白蓮と黒蓮はプールに飛び込んで泳ぎだした。

だけどそのままだとプールが大変な事になるので、白蓮は擬人化で子供になってから夏に教えたクロールで泳ぎ、黒蓮はケルベロスフォームから子犬フォームになってから犬掻きで泳いでいる。

俺は無邪気にプールで遊ぶ二人を子供を見守る父親のように眺めていた。




バシャアアアアン!!




すると、プールの水中から突然何かが出てきて上に飛び上がった。

「何だ!?」

飛び上がった何かを見つめると、俺は一瞬時を忘れたかのように見惚れてしまった。

何故なら水を纏ったそれは多くの男性を魅了する何かを持っていた。

「人魚……?」

それは大昔から海で多くの男性を魅了し続けてきた魅惑の聖獣……人魚だからだ。

人魚とは上半身が人間で下半身が魚の聖獣で、大半が女性だ。

そして、人魚はとても美しく、綺麗な歌声を出すと言われている。

飛び上がった人魚は再びプールの中に入ると、プールの中を自由自在に泳ぎ回り、俺の近くへ上がった。

その人魚は水のような青い瞳と海のような色が徐々に変わる不思議な髪を持つ可愛らしい女の子だった。

すると、人魚の最大の特徴とも言える魚の下半身がスッと消えて人間の脚となって立ち上がった。

「始めまして、蓮宮天音さん。私は七海瑠璃華です」

「は、始めまして……」

七海さんは笑顔で挨拶をすると、近くにあったバスタオルで身体を包んで俺の隣に座ってきた。

「七海さん……あなたは人魚なのですか?」

「ええ。ですが、私は人魚の母上と人間の父上の間に生まれた混血です」

「なるほど……混血でしたか……」

「ところで、蓮宮さんはどうしてここに?」

「えっと……話すと少し長いのですが……」

俺は体育祭の応援合戦でチアガールの服を着させようとするクラスメイト達やファンクラブのみんなから逃げてきたことを七海さんに説明した。

「まあ、そんな事が……随分大変な目に遭われたのですね」

「はい……それで、七海さんはどうしてここに?」

「私のクラスは早く体育祭の種目決めが終わって自習になったので泳ぎに来たのです。人魚は水の中で泳いでこそ、本能ですから。あれ……そう言えば天堂千歳さんは?」

「千歳は……あいつも俺をチアガールにしようとしています……」

いつものことだと笑いながら答えると、何故か七海さんは不機嫌な表情を浮かべて、まるで怒っているようだった。

「恋人の蓮宮さんが大変な目に遭っているのに、天堂さんは酷いお方ですね……」

「七海さん……?」

「やはり……千歳さんに蓮宮さんは相応しくありませんね……」

「何を、言っているんですか……?」

七海さんの様子が変だ……何を考えているんだ?

「ここであなたと会ったのも縁……今ここで私の想いを伝えましょう」

「想い……?」

あれ?なんか前にもこんな事が……確かイギリスでセシリアに……。

「天音さん……私は、あなたの事をーー」

「天音!大丈夫!?無事!?」

「えっ!?千歳!?」

七海さんが何かを言いかけたその時、千歳が銀羅と共にプール場に入り込んできた。

直接俺を捕まえに来たのかと警戒したが、千歳は深く頭を下げた。

「ごめんなさい!私どうかしていたわ。どんな時でも天音の味方にならなくちゃならないのに……」

「千歳……」

「本当にごめんなさい……これからは何が何でも天音を守るわ」

「……後で詫びをしてもらうぞ」

「うん!もちろんだよ!ところで……その子は誰?」

千歳の視線が俺から七海さんに向けられた。

すると千歳は無言で俺を引っ張って後ろに持って行き、顕現陣からレイジングとストリームを取り出した。

「ち、千歳?何でレイジングとストリームを……?」

「気を付けて、天音。その子は天音を狙っているわ」

「何でわかるの?」

「匂いよ。セシリアと同じ感じの匂いがするし、後は乙女の感よ」

「何ですか、そのスキル?」

いつの間にか身につけた謎のスキルに驚いていると、七海さんは突然立ち上がって体に巻いていたバスタオルを捨てると、指先から光が出てきてそれで線を結んで何かの絵を描いた。

「来たれ、双魚宮!ピスケス!!」

「「双魚宮!?」」

その絵は星座の二つの魚を意味する双魚宮を示し、魔法陣となってそれが現れた。

『イヤッホー!』

『ホー』

現れたのは双子の人魚だった。

先ほどの人魚の姿をした七海さんと似たような感じで、胸には貝殻の水着を着ていた。

「クー、ルー。戦闘準備よ」

『えー!?いきなり呼び出してそれー!?相手は……ゲッ!?』

『天堂千歳……遂にこの時が来た……』

クーとルーと呼ばれた双子の人魚は千歳を見るなり警戒態勢を取る。

「失礼な子達ね……銀羅!」

『ああ。旦那、白蓮と黒蓮だ』

『もっとあそびたかったよ……』

『『『がぅ……』』』

「また今度な」

銀羅はプールで遊んでいたら白蓮と黒蓮を回収していたらしく、尻尾で巻いた二人を俺に渡した。

「行くわよ、銀羅!」

『ああ。ちょうど魚を食べたいところだったからな……』

「クー、ルー。全力で行きますわよ……」

『おう!久々に大暴れしてやる!』

『ここはプール……水のフィールドなら勝機は私達にある……』

何故かいつの間にか戦闘に発展し、お互いがアーティファクト・ギアを契約しようとしていた。

何でこうなった……?

そう思った俺はとっさに俺は二人の間に割りこんで戦いを始める前に止めさせた。

「二人共止めろ!こんな事をして何になるんだ!」

「だってその子が天音を狙っているんだもん!」

「天堂さん。あなたに天音さんは相応しくありません。今すぐ別れてください」

「ふざけないで!天音は私の大事な恋人で旦那様なんだから!」

「ふざけてなどいません。私はあなた以上に天音さんを慕っております!」

「えっ……?」

まさかまだ出会って10分にも満たない時間なのに七海さんにこんな場面で告白されるとは思わなかった。

呆然とする俺に千歳はレイジングとストリームの代わりにダイナマイトを手にする。

「今回は天音に免じて戦わないであげるわ。Blast!!」

千歳はダイナマイトを投げ飛ばし、銀羅が狐火で導火線を付けて爆炎と煙を広げた。

「銀羅!」

『任せろ!行くぞ、白蓮!黒蓮!』

「ちょっ、千歳!?銀羅!?」

『うん!』

『『『ガウッ!!』』』

あたふたする俺を銀羅は尻尾で体を掴み、千歳と白蓮と黒蓮と一緒にプール場から退散する。

そして、残された七海さんはこんな言葉を残した。

「負けませんからね。天堂千歳さん……!」

俺にはその言葉が新たな騒動を告げる開戦の言葉のように聞こえてしまった。

さて、問題になっていた俺のチアガールの件だが……結果的にはやることになってしまった。

教室に戻ると明日奈委員長がソロモン72柱でボコボコにしたみんながいて、強制する代わりに何と俺に土下座をしてお願いしてきた。

そこまでして俺のチアガール姿を見たいのかと、ため息をついた俺は頷いて承諾してしまった。

ただし、あまり恥ずかしくなく露出度が低いチアガールの服と簡単な踊りを条件にした。

だがそれでもみんなにとっては嬉しいらしく、発狂したかのように大喜びをした。

「天音。お人好しすぎるよ……」

「自分でも自覚している……」

俺は大きなため息を吐いて千歳に寄り添った。

今年の天聖学園の体育祭……何だが穏やかじゃない気がしたが、一方では俺を巡って千歳と七海さんの戦いが始まろうとしていたなんて、今の俺に知る由がなかった。




新キャラ、七海瑠璃華さんと人魚の双子、クーとルーは水晶皇帝さんのオリキャラです。

皆さんも出してほしいオリキャラがいたらキャラ設定などを詳しく書いてメッセージボックスに送ってください。

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