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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第8章 日常編
113/172

番外編 第6話 新年早々大騒動!?

新年あけましておめでとうございます。


今年もアーティファクト・ギアをよろしくお願いします。


今回も天音×千歳の小説となっています。

side天音


一年で一番初めの日、元日に大仕事……それは俺と白蓮と黒蓮の三人で行った。

「行くぞ、白蓮!黒蓮!」

『うん!』

『『『バウッ!』』』

「契約執行!!鳳凰白蓮!冥界獣黒蓮!!」

三人の絆の証である光と闇の大剣……冥覇鳳凰剣を契約執行し、神楽舞用の神子装束と飾りを身に纏い、神に捧げる神楽舞を踊る。

蓮宮十三代目当主として新年の初めに神楽舞をすることになっており、今回から白蓮だけじゃなくて黒蓮も一緒にアーティファクト・ギアで踊ることになった。

蓮宮神社に訪れた多くの参拝客が見る中で踊るのはやっぱり緊張するが、それでも緊張を乗り越えて必死に舞い踊った。

そして、神楽舞が無事に終わり、仕事を親父や母さん達に任せて部屋に戻ると、白蓮と黒蓮は疲れからすぐに俺のベッドで眠りについた。

「ふぅ……少し休んだら手伝いに行かないとな」

新年の神社は仕事がとてつもなく多い。

小さい頃から蓮宮神社の仕事の手伝いをしているけど、この忙しさは慣れない。

特に今年からは当主になったからまた新しい仕事が増えてきているのでさらに大変だ。

ピピピピ!ピピピピ!!

「ん?千歳からのメール?」

携帯が鳴り、画面を開くと千歳からのお正月メールが届いた。

『私の愛しの天音様。あけましておめでとうございます。神社のお仕事、お疲れ様です。お正月は色々大変だと思いますけど、頑張ってね。家の用事が終わったらすぐに挨拶に行くからね』

いつもなら千歳は俺と一緒にいるけど、大晦日からお正月にかけて千歳と銀羅は天堂家の本家に行ってしまった。

お正月に天堂家の人間を集めた盛大なパーティーがあるらしく、さすがの千歳も無視できなかったみたいだ。

『千歳、あけましておめでとう。本家でいつもみたいに暴れるなよ?まあ、羽を伸ばすつもりでパーティーを楽しめよ』

素早くお正月メールを書いて千歳に返信し、親父と母さん達の仕事の手伝いに向かった。



side千歳


日本有数の良家で日本政府と連携をとって天聖学園を運営し、世界人獣協会の幹部などがいる、天堂家。

その天堂家の本家である巨大な屋敷で私は部屋で寝そべっていた。

ピロリロリン!ピロリロリン!

「あ、天音からのメールだ!」

私は携帯をすぐに開いてメールを見る。

「えっと……天音、暴れるなって私をなんだと思っているのよー!?」

『日頃の行いの理由じゃないか?』

銀羅は大きな欠伸をしながらお正月のテレビを見ていた。

「酷いよ、銀羅!」

『確かにな。お前は暴走しがちだからな』

「って、金羅までぇ!?」

私の体から呆れたような金羅の声が響いた。

「何騒いでおるのじゃ、千歳よ」

「あ、お祖父ちゃん」

お祖父ちゃんが襖を開けて部屋に入り、私はすぐに起き上がった。

「千歳、先程宗主……親父に聞いたが、今夜お前に対して何か発表があるそうじゃ」

「曽祖父様が?」

天堂家の現宗主でお祖父ちゃんのお父さんの曽祖父様がひ孫の私に何か発表があるなんて。

「何の発表なの?」

「さあ?分からんが、今夜のパーティーで発表するらしいぞ」

「ふーん……」

曽祖父様が何を言うのか知らないけど、面倒な事じゃなければいいけどね。

「まあ、それよりも早く用事を終わらせて天音に会いたいわ。天音の御節料理やお雑煮を食べたいし」

「千歳よ、高級ホテルの御節料理が食べられるぞ?」

「それより天音のが食べたいの!」

「ハッハッハ!天音君に既に胃袋を掴まれていたか!」

「とっくの昔に胃袋を掴まれているよー!天音の料理は最高なんだから!」

だから一刻も早く天音の料理を食べたいの。

『私も食べたいぞー』

『私もお前の体を通じて天音の料理を食べたい』

私だけじゃなく、銀羅と金羅も天音の料理を食べたがっている。

後は、天音にいっぱい甘えて、あ、明日の一月二日には、そ、その……夫婦の営みの『姫始め』……をしたいからね。

そのためにも、早く蓮宮神社に帰らなくては!







だけど、この時の私はそのパーティーの発表で自分の人生が大きく左右されるとは思いもよらなかった。



天堂家の本家から少し離れた場所にある超一流の高級ホテルで、天堂家の新年お正月パーティーが行われる。

日本の見ならず世界中にいる天堂家の血を継ぐ人間や天堂家と間接的に繋がりのある人間がたくさんいる。

そして、パーティーということなのでたくさんの高級料理がテーブルに並べられている。

『凄い人の数だな……それに見たことない聖獣がたくさんいるな』

「うん、そうだね」

「「千歳!!」」

「あっ!?ママ!パパ!!」

アメリカで暮らしているママとパパが契約聖獣の理香と朧と一緒に帰国してやって来た。

「お帰り、ママ、パパ」

「ただいま、千歳」

「元気で良かったよ」

二人は私の頭を撫で撫でしながらギュッと強く抱きしめる。

「おお、来たか。千聖、悠斗君よ。元気そうで何よりだ!」

「お父さん!」

「お義父さん、お久しぶりです」

お祖父ちゃんが、娘のママと義理の息子のパパに挨拶をして再会を喜ぶと……遂にお正月パーティーが始まる時が来た。

壇上に一人の老人が上がり、マイクを持って話し始める。

その老人は長い髭を生やした威圧的な外見をしており、顔には戦いでつけられたと言われる幾つもの傷が刻まれていた。

「みんな、久しぶりだな。まずは新年の挨拶から、あけましておめでとう!」

彼こそ、私達天堂家を統べる現宗主で、私の曽祖父様……『天堂厳座衛門てんどうげんざえもん』だ。

「こうしてわしら天堂一族が一同に集まれるこの日をわしはいつも楽しみにしている。今日も心行くまで楽しむのだ!」

天堂一族一同が拍手をし、お正月パーティーが始まった。

『あれが天堂家の宗主か……一体幾つなんだ?』

「確か、お祖父ちゃん曰く百歳をゆうに超えているはずよ?」

『……百歳を超えていてあんなに元気?何らかの力で聖獣化でもしているのか?』

「かもね。曽祖父様は一部では『妖怪爺ちゃん』、『不死の天堂』、『日本の魔王』なんて呼ばれているからね」

『それもはや人間じゃなくて私達妖怪以上の化け物だろ……』

「がははっ!まさか九尾の妖狐に化け物と言われるとはな!!」

「えっ!?」

『なっ!?』

銀羅と他愛のない話をしていると、背後に曽祖父様が立っていた。

「ひ、曽祖父様ぁ!?」

『くっ!まさか今の話を聞かれていたとは……千歳には手を出すな!やるなら私をやれ!』

「これこれ。わしは別に何もしないからそう構えるな」

そう言うと曽祖父様は大きな手で銀羅の頭を撫でてすぐに落ち着かせた。

「千歳よ、後でわしと一緒に壇上に上がってくれないか?重大発表があるからな」

「は、はい」

お祖父ちゃんにも言われたけど……曽祖父様から私への重大発表って何だろう?

とりあえず私はその時が来るまで適当に料理を食べ、いとこや親戚の人に挨拶や話をしたり、銀羅を紹介したりする。

『ふむ……モグモグ。言ってはいけないが、天音の料理の方が断然美味いな』

「銀羅もそう思う?私も早く天音の御節を食べたいよ〜」

しかし、この言葉がきっかけでいとこのみんなから天音とは誰かと聞き始めるのだった。

ちょっと恥ずかしかったけど天音は私の恋人と言おうとしたその時。

「千歳、壇上に来なさい」

「曽祖父様?はい!」

曽祖父様に呼ばれて私は壇上に上がって隣に立つと、曽祖父様は誰かを手招きする。

それは私と同い年かそれ以上の男性だった。

スーツをキチンと着用し、けっこう顔がカッコよく普通の女の子ならすぐに目が惹かれるような男性だった。

まあ、私は普通の女の子じゃないから「ふーん」と思う程度だけどね。

何せ好きになった男の子が女の子みたいな人だからね。

「始めまして、大園雅浩です」

その男性、大園さんは笑顔で私に自己紹介する。

「は、はい。天堂千歳です……」

一体この人は誰なの?と思いながら自分の名を名乗る。

曽祖父様に視線を送ると、咳払いをして今まで気になっていた発表する。

そして、曽祖父はとんでもない事を口にするのだった。







「千歳……この雅浩君は、お前の許婚だ」







はい……?

「許婚……?」

曽祖父様が何を言っているのか分からなかった。

許婚?この大園さんが私の?何かの冗談でしょ?

私は呆然としながら大園さんを見つめると、大園さんはニコッと笑みを浮かべた。

私は息をするのを忘れ、天音に今すぐ会いたくなった。



side銀羅


天堂の当主がふざけたことを言った瞬間、私は会場を出て千歳の荷物から境界輪廻を持ち出してその辺の扉の鍵穴に境界輪廻を差し込む。

待っていろ、千歳。

今……お前を救う王子様を呼んでくるからな……!

私が境界輪廻を使って向かった場所はその王子様がいる神社……蓮宮神社だ!



元旦の蓮宮神社は蓮宮の親戚の人間が集まり、蓮宮神社の創立記念日の時と同じような盛大な宴会が行われる。

酔っ払うわけにはいかないので、お酒を飲まないよう気をつけながら親戚の人と話をする。

その際、去年の創立記念日に出てきた千歳の話が出てきた。

「天音君、千歳ちゃんはどうしたんだい?」

「千歳は天堂家の本家に向かいました」

「流石は天下の天堂家だな!」

「天音君、絶対に手放すなよ!」

「は、はい……」

親戚のみんなに千歳との仲を認められていて少し恥ずかしかったけど嬉しかった。

この話を千歳に聞かせれば絶対に喜んでもらえるだろう。

そんな事を考えながら炭酸ジュースをグイッと喉に流し込むと……。

『旦那ぁああああああああっ!!大変だ!緊急事態だ!!エマージェンシーだぁあああああああっ!!!』

「ごふぅ!?ぎ、銀羅ぁ!?」

突然宴会場に乱入してきた銀羅にジュースが吐きそうになるのを抑えながら飲み込んで銀羅を凝視する。

「ど、どうしたんだよ、銀羅!?」

『千歳が大変なんだ!いいから来い!!』

「ちょっ、ええっ!?」

銀羅の九尾で俺の体を巻きついて持ち上げてそのまま連れてかれた。

『ピィー!?』

『『『がおぅ!?』』』

「お、お兄ちゃん!?」

『リン?』

「「天音ぇ!?」」

「親方様!?」

「旦那様!?」

同じく宴会に参加していた白蓮と黒蓮、風音とりん璃音兄さんと花音姉さん、刹那と麗奈が連れて行かれた俺を追いかける。

「えっ!?ここは何処!?」

そして、銀羅に無理やり連れて行かれた場所は何処か分からないホテルみたいなところだった。

『ここは天堂家が貸し切っている高級ホテルだ』

「マジすか!?でも何で俺をここに?」

『簡潔に言うと、天堂家の宗主の爺さんが千歳の許婚を発表したんだ』

「はぁ!?千歳の許婚!?どういうことだよ!?」

千歳の婚約者は俺のはずなのに、許婚ってどういうことだ!?

『私も突然の事で驚いているんだ。多分、当主の爺さんが天音の事を知らないで勝手に決めたんだろう』

「そんな……」

『とにかく、千歳を救えるのは旦那だけだ!頼む!』

「……相手は天堂家の宗主と千歳の許婚か。蓮宮十三代目当主として、千歳を取り戻す!!」

顕現陣から蓮煌と天装衣を取り出して身につける。

『よーし!ははうえをとりもどそう!』

『『『バウッ!!』』』

「千歳さんを取り戻そう!」

『一丁派手に暴れてやろうかな!』

「千歳姫、救出作戦の開始だな!」

「新年早々の相手が天堂家とはね!」

「奥方様を助けるでござる!」

「奥様、今から参ります。少しお待ちください!」

聖獣達は元の姿となり、風音達は顕現陣から武器と戦闘装束を取り出して戦闘態勢を取り、千歳を助けに向かう。

その前にパーティー会場の扉の前に立ち、扉を少し開けて中を見る。

中にはたくさんの人と聖獣がおり、その壇上に千歳と天堂家の宗主と思われる老人と千歳の許婚と思われる男がいた。

「ちょっと待ってください、曽祖父様!どうして彼が私の許婚なのですか!?」

「彼は大園財団の御曹司でわしが認めた好青年じゃ。千歳に相応しいと思ってな、お前の許婚にしたのじゃ」

「千歳さん……僕はあなたを一目見た時から惚れました。是非結婚を、前提にお付き合いをお願いします」

オイコラァ……公然と千歳に求婚しているんじゃねえよ!

千歳は俺の女なのに……。

プルプルと体を震わせながら霊煌紋を輝かせて霊力を纏う。

「みんな、行くぞ……!!」

全員が頷き、俺は霊煌弐式・強化を使って体……特に右脚の力を強化させて、

「オラァッ!!!」

扉を思いっきり蹴り飛ばした。

バァン!!!

蹴り飛ばした扉は壊れるんじゃないかと思う程派手に開き、パーティー会場にいた全員がこちらを向いた。

扉が開くと同時に俺達は威風堂々とパーティー会場に乗り込み、俺はすぐさま壇上へ飛んで千歳の前に降り立つ。

「えっ……?あ、天音……?」

「よっ、千歳」

「どうして、ここに……?」

「銀羅に呼ばれてな。お前を迎えにーー」

「誰じゃ、お前は!?」

「ん?」

後ろを振り向くと宗主がとても怖い表情で俺を睨みつけていた。

そりゃあ、突然パーティー会場に殴りこむように現れたら誰だって警戒されるな。

「お初にお目に掛かります、天堂家の宗主。俺は蓮宮十三代目当主、蓮宮天音です」

俺は宗主に向かって軽く頭を下げながら名を名乗る。

「蓮宮だと?あの破魔の一族の蓮宮か。しかも、その歳で当主だとは驚きだな……それで、何故この場所に来た?」

「千歳を連れ戻しに来ました」

「何?お主、千歳とはどういう関係じゃ!?」

「千歳」

「うん!」

俺と千歳は顕現陣からペリドットの婚約指輪を取り出してお互いの左手の薬指に填める。

「俺と千歳は将来を誓い合った婚約者同士です!」

「だから……その人とは結婚出来ません!」

俺達の告白に天堂一族の皆さんはザワザワと騒ぎ出した。

「な、何だと!?厳武、聞いてないぞ!!」

「……まだ親父に言う必要が無いと思ったからじゃ。千歳がもう少し成長してから報告しようとしたんじゃ。まさか親父が千歳の許婚を決めているとは思っていなかった……」

「……だとしても、わしは認めるわけにはいかない!」

「どうしてですか……?」

宗主は俺を睨みながら俺の事を認めていなかった。

「いくら蓮宮の当主と言ってもらお主のような女みたいな男に大切なひ孫を渡すわけにはいかない!」

宗主の放ったその言葉に俺の堪忍袋の緒が切れかかった。

この顔は俺を産んでくれた母さんから譲り受けたもの。

今の言葉は母さんを侮辱したように聞こえたからだ。

「そんな理由で……?はっ!話にならない人だな」

「何じゃと?」

俺は宗主に近付いて鋭い眼光で睨み返した。

「宗主って言ってもただの石頭の頑固ジジイみたいだな。人を見かけで判断する人が天堂家の宗主だなんて笑わせるよ。今すぐに宗主を止めて隠居したらどうですか?」

「小僧……口の聞き方に気をつけろ」

「千歳は俺の女だ……あんた何かの勝手な決断に運命を振り回させたりはしない!!」

千歳の運命を……こんな頑固ジジイに奪わせたりはしない。

千歳は、俺が守る!!!

「どうやら、一度叩き潰さないといけないようだな……!!」

「望むところだ……!!」

宗主は懐から刀を取り出し、俺は腰にある蓮煌を鞘から抜いた。

その際、天堂一族の数人の人間が武器を構え、風音達もそれに対峙するように武器を構える。

パァン!!!

銃声音が鳴り、全員の動きがピタッと止まった。

「みんな、止めて……」

それはレイジングを上に構えて発砲した千歳だった。

「天音、曽祖父様。二人で無益な戦いをしないでください」

俺の後ろにいた千歳は凛とした振る舞いを見せて俺の前に立った。

「天音、私に任せて」

「……わかった」

千歳は自分から宗主に話して決着をつけるつもりらしい。

俺は蓮煌を鞘に納めて千歳の話を聞く。

「それと、霊煌紋の記憶を映像にする霊操術を使って」

「……霊煌拾壱式・記憶」

千歳の肩に手を置いて霊力を流した。

すると、千歳の記憶が映像として空中に映し出され、千歳は自分の思いを打ち明ける。

「曽祖父様……あなた様がなんと言おうと、私は彼を……蓮宮天音様を心の底から愛しております」

俺の事を「天音様」と呼び、みんなの前で愛していると言うので俺は顔を真っ赤にした。

そして、千歳の記憶から十年くらい昔の幼い頃の小さな俺や千歳の姿が映し出された。

「私が幼い頃、虚弱体質で苦しんでいる時……天音様は夜遅くまで一緒に遊んでくれて、学校で習った勉強を教えてくれて、自ら作ってきたお菓子をプレゼントしてくれて……天音様は自分自身の多くの時間を犠牲にして、少なくとも人生の半分以上は私の側にいてくれました」

ベッドで寝ている千歳にトランプやボードゲームで遊んだり、小学校で先生に習った授業を千歳にそのまま教えたり、母さんに教えてもらった料理でお菓子を作ってそれをプレゼントした。

俺は別に千歳のために自分の時間を犠牲にしていたとは思ってない無いけど、千歳はそう思っているんだな。

「生まれつきの虚弱体質で何度も重い病気に掛かり、友達すら出来ず遊ぶことができない、暗闇だった私の人生に希望の光を照らしてくれたのは紛れもない天音様なのです!!」

うーむ、何回も千歳はそう言ってくれるけど、やっぱり恥ずかしいな。

俺自身にとっても……千歳は希望の光だしな。

「私は、天音様の側にいて彼をずっと愛したい、笑顔にしたい、幸せにしたい。そして……死ぬ最後の時まで、天音様とずっと、ずっと一緒に居たいんです!!!」

「千歳……」

千歳がそんなにも俺の事を大切に想っているとは思わなかった。

そんな千歳に愛されている俺は幸せ者だなぁと、改めて感じた。

そして、千歳の想いを聞いた宗主は落ち着いた感じとなり、俺に質問してきた。

「……天音君と言ったか?君はどうして幼い頃に千歳の側にいてくれたのじゃ?」

どうしてと聞かれても小さい頃の記憶は曖昧だからはっきりとした答えを言うことはできない。

ただ、千歳の為にずっと一緒に居たかった理由の一つはすぐに言えた。

「……俺は、千歳に暗い顔じゃなくて、いつも明るい笑顔でいて欲しかった。千歳に幸せになって欲しかったんです。千歳の幸せは、俺の幸せでもあったから……」

深く考えて昔の事を思い出せばまだ理由は他にもあると思うけど今言える理由はこれだけだ。

「千歳の幸せがお主の幸せか……ここまで献身的な愛があったからこそ、千歳の死の運命さだめを切り裂いてあげたのか……」

「頑張ったのは千歳自身です。俺はその手伝いをしただけです」

そう答えると、宗主は深く目を閉じて何かを考え、目を開くと後ろにいた千歳の許嫁と決めた男に目を向けた。

「雅浩君、すまないが……」

「ええ、分かっています。千歳さんに相応しいのは私ではなく、天音さんです」

雅浩は一つ頷いて笑顔でそう言ってくれた。

「ありがとう……天音君……先程の非礼の数々、すまなかった」

「いえ……こちらこそ、申し訳ありませんでした」

俺と宗主はお互いに非礼を詫びて頭を下げる。

そして、宗主は頭を下げると俺達や天堂一族のみんなにあることを発表する。

それは俺と千歳の望んでいた言葉だった。

「天音君と千歳のお互いを思いやる気持ちはわしは深く痛感した……天堂家二十三代目宗主、天堂厳座衛門がここに天堂千歳と蓮宮天音の結婚を認めることを宣言する!!」

「ひ、曽祖父様!!?」

「宗主……」

ようやく俺と千歳の仲を認めてくれてホッと一安心する。

そして、風音達や天堂一族のみんなが大きな拍手をして俺達を祝福してくれた。

「ふん……もうわしから言うことはない。天音君よ、千歳を連れて行け!!」

「分かりました。では……遠慮なく。よいしょっと!」

俺は千歳を抱き上げてお姫様抱っこをしてそのまま連れ出す。

「えっ?えぇえええええっ!?あ、天音!私を何処に連れて行くのぉ!?」

千歳、お前は何を言っているんだ?

「決まっているだろ?蓮宮神社に帰るんだよ。俺の作った御節料理やお雑煮を食べたいって言ってただろ?」

千歳や銀羅のためにいつもより少し多めに御節料理とお雑煮を作ってあるからな。

「た、確かに言ったけど……」

「天音君、千歳のことを任せたぞ!」

「天音君、明日にはそちらにご挨拶に行きますからね〜」

「千歳、あまり天音君達に迷惑をかけるかよ」

「お、おじいちゃん!?ママ!?パパ!?」

さて、学園長と千聖さんと悠斗さんの了解も得たことだし……。

「よし。みんな、蓮宮神社に帰ろう!」

『ピィ、ピィー♪』

『『『がぅー♪』』』

『旦那、よくやったぞ!』

「お兄ちゃんサイコー!」

『リンリーン!』

「天堂の宗主にあそこまで言えるとは流石は俺の弟だぜ!!」

「あら?私の弟でもあるのよー?」

みんなで蓮宮神社に帰り、新年の宴会の仕切り直しだ。

今度は俺達だけで楽しくワイワイ過ごそう。

「あ、あの、天音……」

「ん?何だ、千歳」

「その、来てくれてありがとう……」

「別にいいさ。お前は天堂家の人間だからいつかは通る道だからな」

「うん。それから……あけましておめでとう!」

「ああ。あけましておめでとう、千歳」

俺達のまた新しい一年が始まった。

新年早々一悶着があったが、今年こそは去年みたいな騒動がなくみんなと一緒に平和に過ごせれば良いなと願うのだった。





どうでしたか?


まあ、結構ありがちな話でもありましたが天音と千歳の関係を再認識した話です。


次は本編の体育祭編を書きます。


最初の内容は……天音が追いかけられますので。

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