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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第8章 日常編
110/172

番外編 第3話 サンタクロースの謎に迫れ!

クリスマス特別小説です!


話が長いので23、24、25の三日連続投稿になります。


ストーリーはこんなもんかと思いますが温かく見てほしいです……。

12月23日。

冬真っ只中の蓮宮神社で俺は二人の少女に挟まれていた。

「天音、クリスマスは私とラブラブデートをしましょう!」

「お兄ちゃん!私とクリスマスデートをしてください!」

「二人共、頼むから落ち着いて……」

明後日のクリスマスに俺とデートするかどうかで千歳と風音が争っている。

俺としてはみんなで楽しくクリスマスパーティーをやりたいけど、女の子にとってはクリスマスデートは聖戦らしく、千歳と風音は何がなんでも俺とデートをしたいらしい。

『ピィー!』

『『『がおっ!』』』

『幼馴染と義妹にモテモテだな』

『リンリーン!』

『ニャー、天音は本当にモテモテだニャー!』

『流石は六花の息子。昔の六花にそっくりね……』

白蓮達はのんびりコタツに入ってミカンを食べながら俺達の話し合いを楽しむように見ていた。

ってか、深雪……あんたは雪女なのに何でコタツに入ってヌクヌクして温まっているんだ?

それからタマは相変わらずコタツとよく似合うな……ネコにコタツは切っても切ることができないセットみたいなものだからな。

「天音〜、お客様よ〜」

「お客様?」

母さんの呼び声に俺は立ち上がって出迎えようとすると……。

ドドドドド!!

「アマネ、会いにきたぜェ!!」

「セ、セシリア!?」

家に上がってきたのはセシリアだった。

何しに来たんだと問う前にセシリアは俺に抱きついて言った。

「早速だが、クリスマスに私とデートしろ♪」

「お前もかよ!?」

遥々イギリスからデートのお誘いを言いに来るとは思わなかった。

まあ、アリス先生から貰った境界輪廻があるからすぐに来られるんだけどな。

すると、千歳と風音がギランとセシリアを睨みつけて相手がイギリス王女であることを御構い無しに討論する。

「何ドサクサに紛れて天音を独占しようとしているのよ、この寝取り騎士王!!天音は婚約者の私とラブラブデートするのよ!!」

「違ーう!天音お兄ちゃんは愛しの妹とデートするのぉ!」

「何言ってるんだ!アマネはイギリス王女と優雅なデートをするんだよ!邪魔するんじゃねえ!」

バチバチと俺を挟んで激しい火花を散らす三人の少女。

あのね、皆さん……俺は平和に楽しくクリスマスを過ごしたいんだけど……。

思わず泣きたい気持ちになり、平和は訪れないのかと誰でもいいからすがりたい気持ちだった。

そんな時、俺にとっての救い主が現れた。

「親方様ー!」

「アリス様が緊急のお呼びです!」

ナイス、刹那!麗奈!

「あれー?アリス先生の緊急のお呼びじゃすぐに行かないとなー!」

出来るだけ棒読みにならないように気をつけながらいうと、三人はお互いを睨みつけながら言う。

「一時休戦ね……」

「でもお兄ちゃんは……」

「渡さねぇ……」

どうやらただ睨みと討論を先延ばしにしただけだった。

俺のクリスマスに平和は来ないのかな……。

大きなため息を吐き、取り敢えず俺達は蓮宮神社を出て境界輪廻でアリス先生の地下室に向かった。

「待ってたぞ、天音!」

地下室には一足先に恭弥、雷花さん、雫先輩、迅先輩、サクラ、明日奈委員長とそれぞれの契約聖獣達が待っていた。

すると、地下室の奥の部屋からアリス先生が出て来る。

「あら?セシリア王女までいるのかしら?」

「ちょっとアマネにデートのお誘いをな」

「ふふふ。天音を巡るトラブルがあったのかしら?」

アリス先生は笑みを浮かべると、奥の部屋から誰かが出てきた。

「アリスティーナ殿、彼らがあなたの教え子ですか?」

それは綺麗な金髪と金色の瞳をした美形の少年だった。

大きな汚れのない綺麗な白い布で服のように身を包み、背中に布に包まれた槍と思われる長いものを背負っていた。

「ええそうよ。みんな、紹介するね。彼は“ゼクス”。いきなりぶっちゃけるけど、ゼクスはキリストの生まれ変わりの聖人よ」

「へぇー。キリストの生まれ変わり……えっ?」

「「「えぇええええええええええええええええーーーっ!?」」」

ゼクスの正体にみんな絶叫して驚愕した。

キリスト……『イエス・キリスト』と言えば人間界に広く普及されている宗教の『キリスト教』の開祖で、世界の文化や生活など多大な影響を与えているあまりにも有名な神様の事だ。

そのキリストの生まれ変わりが目の前にいる少年だとはにわかに信じ難いが、ゼクスから発せられる聖なる光のようなオーラは人間界で数世紀に何人か現れると言われる生まれつき聖なる力を持つという人間……まさに『聖人』そのものだった。

その力は人々を導き、闇を祓う聖なる光で時代への道を切り開く、らしい。

「アリス先生。ゼクス様は……」

俺が代表して尋ねようとすると、ゼクス様は苦笑を浮かべて俺に近づいて来る。

「ゼクス様なんて止めてくれ。俺は確かにキリストの生まれ変わりだが、所詮ただの人間だ。それに、あなた達と同じぐらいの年代だから俺の事は呼び捨てで構わない。それで、君の名前は?」

「俺は……蓮宮天音。俺の肩に居るのは鳳凰の白蓮で、こっちがケルベロスの黒蓮だ」

『ピィー!』

『『『がうっ!』』』

俺の肩に乗った白蓮と抱き上げた黒蓮が軽く吠えて挨拶をする。

「二つの性質の異なる聖獣と契約しているのか……面白い奴だな」

「よく言われるよ。ところでゼクスはどうしてここに……?」

「天音はクリスマスを知っているか?」

「え?クリスマス?知っているも何も……キリストの誕生日で……」

「そうだ。クリスマスはキリストの誕生を祝う日だが、その日に世界に不思議な老人が現れる……“サンタクロース”。俺はその正体を知りたいのだ」

「サンタクロース?」

サンタクロースは真紅の衣装を身に纏い、白い髭を生やした小太りの老人で、クリスマスにトナカイとソリを操り空を飛びクリスマスに子供達にプレゼントを配って廻る謎の存在だ。

「俺はサンタクロースの正体を知るために無限神書の魔女と言われ、豊富な知識を持つアリスティーナ殿から話を聞こうと訪れたのだ」

「なるほど……でもアリス先生、サンタクロースは存在するんですか?」

正直な話、俺も一度は会って見たいが残念だが会ったことない。

「いるわよ。だってサンタクロースは私の弟子だもん」

あっけらかんとアリス先生は言う。

「はあっ!?」

「何だと……!?」

あの有名なサンタクロースがアリス先生の弟子!?

師匠は伝説の魔法使いのマーリンで、弟子はサンタクロース……どこまで凄いんですか、アリス先生!?

みんなも空いた口が閉じらず驚愕を通り越して唖然としている。

キリストの生まれ変わりのゼクス、サンタクロースの師匠がアリス先生……短い時間で色々な事実を知り、整理する時間が欲しかったが、アリス先生はそんな事を御構い無しに笑顔で腕を上げた。

「それじゃあ、早速行くわよ!」

「え?行くってアリス先生、何処に?」

「決まっているじゃない。サンタクロースが住むクリスマスの聖地、“クリスマスタウン”よ!」

サンタクロースが住む街、クリスマスタウンか……子供にとって何とも素晴らしい響きだろう。

「ク、クリスマスタウン……!!」

実際に最年少の風音が目を輝かせて行きたそうな表情を浮かべていた。

他のみんなもクリスマスタウンに行って見たいと目を輝かせている。

「天音!クリスマスタウンに行こう!」

「お兄ちゃん!私、クリスマスタウンでデートしたい!」

「アマネ!協会のみんなに配るクリスマスのプレゼントを選ぼうぜ!」

千歳、風音、セシリアの三人が俺にくっついてクリスマスタウンをデート地にしようとしている。

はぁ……俺に平穏は訪れないのかな……。

俺は大きなため息を吐き、落胆しながらクリスマスタウンに行くことになった。

クリスマスタウンに行くことになり、みんなは楽しみだったが一人だけ違っていた。

「ふん……行くぞ、ツバキ」

『『『ばうっ』』』

サクラはツバキを連れて地下室から抜け出そうとした。

「ちょっと待った!サクラ君、何処に行くのー?」

「……俺は断罪者で冥界で育った人間だ。そんな穢れた人間が聖地であるクリスマスタウンに行くなんてダメだ……」

クリスマスタウンに自分が行くべきでない存在だと言うサクラ。

「穢れたって……でもサクラ君は弱き誰かのために戦って……」

「関係ねえよ。罪人がサンタクロースに会う資格は無えよ……」

寂しい事を口にするサクラに俺は引き止めようとするが、それよりも早く明日奈委員長が動いた。

「ツバキ、サクラ君を甘噛みして捕らえて」

『『『わうっ!』』』

「は?」

サクラの足元にいたツバキは明日奈委員長の言うことを聞くと、ケルベロスフォームになってサクラに襲いかかる。

「ちょっ、ツバキィ!?」

『『『バウワウッ!』』』

完全に反応が遅れたサクラにツバキは三首でそれぞれサクラの頭と胴体と脚を噛んで咥えて主であるサクラを捕獲した。

しかし、噛んだと言っても甘噛みでサクラの体を傷つけていない。

でもツバキの吐息や唾液を直接受けているけどね……。

「ツバキ!離せ!!今すぐ俺を解放しろ!!」

「よくやったわね、ツバキ。後で大好物のパンケーキを作ってあげるからね♪」

『『『ワゥウッ!』』』

「何ぃ!?あ、明日奈!お前いつの間にツバキを懐柔した!?」

「懐柔したなんて人聞きの悪い。この前ツバキがパンケーキを作ってくれって頼まれたから特大サイズのパンケーキを作ってあげたのよ」

「畜生っ!黒蓮に続いてツバキまで他人に奪われるのかぁあああああああああああっ!」

どうやら俺に黒蓮を奪われたことがよほどショックでサクラのトラウマになっていたらしい。

「心配しないでよ、私はあなたからツバキを奪うつもりはないわ。攻略しているの」

「何を!?一体何を攻略するつもりだ!?」

「次は冥界にいるサクラのご両親を……」

「ご両親……ハッ!?まさか、親父と姐さんの事か!?本当に何をするつもりなんだ明日奈は!!?」

委員長の考えがわからないサクラは頭を悩ませるが周りから見れば一目瞭然だった。

この微笑ましい二人の光景を見たゼクスは笑みを浮かべて頷いた。

「愛はやはり素晴らしい……」

キリストの生まれ変わりらしくゼクスは二人を祝福するように笑みを浮かべて拍手をしていた。

「さーて、みんな。そろそろ行くわよー」

アリス先生は指を鳴らして俺たちの足元に魔法陣を浮かび上がらせる。

魔法陣から溢れ出る光の粒子に包まれ、俺達は地下室から消えた。



地下室から消えた俺達は空間転移魔法で違う場所に飛ばされた。

しかし、その飛ばされた場所がキツかった。

「さ、寒いぃいいっ!?ゆ、雪ぃっ!?」

転移された場所は一面銀世界の雪景色で気温はおそらく氷点下だろう。

『キュピィイーッ!!?』

『『『がぉおおおっ!!?』』』

あまりの寒さに驚いた白蓮と黒蓮はすぐさま俺の服に潜り込んで寒さから逃れる。

白蓮や黒蓮にとっては初めて感じる寒さに驚くのは仕方ない。

俺は顕現陣から天装衣を取り出して羽織り、戦闘じゃないから今の服と軽装の鎧には交換せずにそのまま体温を高める。

すると、足元で風音と鈴音がくっつきながら震えていた。

「寒いよ……」

『リ、リーン……』

そう言えば風音は昔から寒いのが苦手だったな。

「風音、おいで」

俺は震えている風音を抱き上げた。

「お兄ちゃん?ふわぁっ……!?」抱き上げた風音をそのまま天装衣で包んで温めてあげる。

「これで寒いのは大丈夫か?」

「お兄ちゃん……うん、ありがとう!」

風音は俺にギュッと抱きついて温まる。

「ああ。鈴音も来いよ、一緒に暖まろう」

『リーン!!』

鈴音は風音の首にマフラーのように巻きついて一緒に温まる。

白蓮と黒蓮、風音と鈴音が温まりながら俺にくっついていて、とても重かったがそこは契約者として、そして兄として気合いを入れて頑張る。

「いいなー……」

「羨ましいぜ……」

千歳とセシリアは羨ましそうに見つめていた。

二人は空気を読んで俺に抱きつかなかったが、本当に羨ましそうに見ていて思わず苦笑を浮かべた。

「みんなゴメン!今暖かい格好にしてあげるからね!」

アリス先生は指を鳴らすとみんなにコート、手袋、帽子などの暖かい防寒着を着させた。

「アリス先生は着ないんですか?」

みんなが防寒着を着る中、アリス先生だけはいつもと同じドレスみたいな格好だった。

「私の中には氷の精霊のエヴァがいるから寒さは問題無いのよ。それに、火の精霊のサラマンダーがいるから暖かいのよ」

なるほど、十三の精霊が体内にいるアリス先生はその十三の属性を魔力を使わなくてもその身に十三の力の恩恵を受けられるのか。

「みんな、クリスマスタウンはこの先よ。ついて来て」

納得してみんなの体が暖まるとアリス先生は目的地であるクリスマスタウンに案内する。

雪道を歩いて行くと楽しそうな音がだんだん聞こえてきて行く先に明るい光が見えてくる。

「着いたわ。ここがクリスマスタウンよ!」

俺達の目に映った光景はまさに夢の世界だった。

西洋風の小さな建物が並び、色鮮やかな電灯で街全体が明るく、そして綺麗にイルミネーションが施されていた。

「凄い……これがクリスマスタウンか!」

更にイルミネーションと一緒にクリスマスの可愛い飾り付けが施され、街の中心には巨大なモミの木で作られたクリスマスツリーが聳え立っていた。

「美しい……そして、何と神秘的な場所なんだ……」

そして、ゼクスはクリスマスタウンの美しさに心を打たれて感動していた。

クリスマスタウンの美しさに感動しながら俺達は街に足を踏み入れると、可愛らしい夢の世界のような街の風景に心が踊る。

「サクラ君、どう?クリスマスタウンに来た感想は?」

明日奈委員長は手を握って逃げられないようにしたサクラに問うた。

「……遠い記憶を思い出すよ。まだ小さかった頃の幼い記憶を……」

サクラも少し楽しそうな表情だが何処か悲しそうな表情でもあった。

「……今日は断罪者の事は忘れて楽しく過ごそうよ!せっかくのクリスマスだからね。楽しまなかったらソロモンの悪魔達でサクラを襲っちゃうぞ〜?」

「おい、それは楽しまなかったら死亡確定じゃないか……」

様々な力を持つ七十二体の悪魔であるソロモン72柱が襲ってくるなんて考えるだけでもあまりにも恐ろしいだろう。

「分かった……楽しめば良いんだろう?」

「そうそう、それで良いのです!ツバキも楽しもうね!」

『『『がおぅ!!』』』

とりあえず来るのを躊躇っていたサクラの心配は無くなった。

サクラの抱えている罪を知ってなおあそこまで素直に言えるのは冥界にいるハデス夫妻以外では明日奈委員長ぐらいだろう。

しばらく歩いていると、街の奥に大きな建物が見えてくる。

「あれはプレゼントを作る工場よ。そろそろ……あら?」

工場から誰か小さな人影が見えるとアリス先生は駆け寄って腰を下ろして話しかける。

「こんばんは。みんな、元気でやっているかしら?」

アリス先生が話しかけた相手はアリス先生よりも背の小さな子供のような人で、可愛い服を着ていた。

もしかして彼らは……。

『アリス様!』

『本当だ、アリス様だ!』

『おーい、みんな!アリス様が来たぞ!』

工場からぞろぞろと同じぐらいの身長をした人がアリス先生の周りに集まってきた。

「天音、彼らはもしかして……」

「ああ、間違いない。彼らは“小人”だ」

小人は俺達人間と同じ人の姿をしているが、成人しても体は小さく、妖精の一種と言われている聖獣だ。

初めは小さな子供かと思ったが、工場から出て来た小人全員から魔力が感じられた。

「今日は私の生徒達を連れてきたんだけど、サンタはいるかしら?」

『サンタ様なら子供達からのお手紙を読んでいます!』

『すぐにお呼びします。アリス様が来たと言ったら大喜びで来ますよ!』

『サンタ様が来るまで工場で少しお待ちください!』

「ええ、そうさせてもらうわ。みんな、工場見学をしましょう!」

俺達に興味津々の小人達に案内されながらクリスマスタウンの工場を見学する。

どんな工場なのかとドキドキしながら入ると、そこもまたクリスマスタウンの名に恥じない素敵な工場だった。

明るい光に包まれた工場内で魔力が込めらた不思議な機械でサンタが子供達へのクリスマスプレゼントだと思われるたくさんの色とりどりのオモチャ。

更には美味しそうな料理やお菓子を大量生産していた。

しかし、ただ機械で作られているだけではなく小人達が一生懸命働いており、プレゼントや料理に愛情が込めらているのがよく分かった。

そして、工場の奥から遂に目的の人物が姿を現す。

「ほっほっほ!ようこそ、クリスマスタウンへ!!」

陽気な声で俺達を迎えたのは真紅の衣装を身に纏い、白い髭を生やした小太りの老人……間違いない、彼がクリスマスに子供達にプレゼントを配るサンタクロース……サンタさんだ。

サンタさんの師であるアリス先生は早速挨拶をする。

「久しぶり。元気そうね、サンタ」

「お久しぶりです、アリス様。相変わらずお綺麗ですな」

「ありがとう。今日はちょっとあなたのお話を聞きたい人がいるのよ」

「ほっほ!何でもお聞きくださいな!」

サンタクロースについて一番聞きたかったゼクスは前に出てまずは自己紹介から始める。

「始めまして、俺はゼクス。キリストの生まれ変わりです」

自分がキリストの生まれ変わりと知ると、サンタは酷く驚いた。

「何と!?イエス・キリスト様の生まれ変わりとな!?」

「はい。今日はあなたが何故クリスマスに子供達にプレゼントを配るのか知るために訪れたのです」

「そうですか。では、お教えしましょう。ここでは何ですからお茶でも飲みながらお話ししましょう」

サンタさんの案内で応接室のような場所に案内され、そこで小人に淹れてもらった特製の紅茶と茶菓子をもらった。

紅茶と茶菓子はとても美味しく、紅茶が名産のイギリス出身のセシリアは茶葉について聞き、俺はこの茶菓子のレシピを思わず聞いてしまった。

気を取り直し、サンタさんは話をし始めた。

クリスマスに子供達にプレゼントを配る事になったきっかけからアリス先生に出会い、現在に至るまでの物語を……。


それは数百年も昔の話。

とある国に一人の魔法使いがいた。

その魔法使いは自分の為に魔法をあまり使わない性格で周りの人間に魔法使いと告げず、一人の人間としてその国で平穏に暮らしていた。

ある日、その魔法使いは貧しさのあまり、子供達に食べ物を与えることができない出来ない家の存在を知った。

可哀想だと思った魔法使いは真夜中にその家を訪れ、屋根の上にある煙突から金貨を投げ入れた。

暖炉には靴下が下げられていたので、魔法使いは魔法で投げ入れた金貨を靴下の中に入れた。

この金貨のお陰で子供達は食べ物を食べることが出来、飢えを凌ぐことが出来た。

その金貨を与えた日がちょうどキリストの誕生日であった。

これがきっかけで魔法使いは恵まれない子供達に金貨などをこっそり与えた。

そんな時に出会ったのが世界を放浪している無限神書の魔女、アリス先生だった。

二人はすぐに意気投合して話が合い、しばらく話していると二人にある考えが浮かんだ。

それは一年に一度、キリストの誕生日に世界中の子供達にオモチャや料理などのプレゼントを配り、幸せになってもらう事だった。

そして、魔法使いはアリス先生から様々な魔法を教わり、その魔法を使ってこのクリスマスタウンを創設した。

更に聖霊界にいる小人をクリスマスタウンの住人兼従業員として招き入れ、今日まで数百年間クリスマスの日に世界中の子供達にプレゼントを配っているのだ。

「なるほど、それがあなたのクリスマスにおける起源ですか……」

サンタさんの話を聞いたゼクスは顎に手を添えて頷きながら考えた。

「分かっていただけたかな?」

「ですが、それであなたに得るものはあるのですか?」

「もちろんありますとも。子供達の喜んでもらえた時の笑顔!それが私の活力や魔力の源なのです!子供達がいる限り、私はクリスマスに現れる不思議な老人……サンタクロースとして働けるのですよ!」

得るものが子供達の笑顔か……サンタクロースの行動を考えると妙に納得出来る。

すると、セシリアは恐る恐るサンタクロースに近づいてあることを尋ねた。

「なあ、サンタクロースさん……もしかして、イギリスの田舎町にあるペンドラゴン教会に毎年プレゼントを置いてくれたのはあんたなのか?」

「イギリスのペンドラゴン教会?ああ、そうだ。あそこには毎年プレゼントを配っているよ。もしかして君は……セシリアちゃんかな?」

「知っているのか!?」

「もちろんだとも。君は私に向けた手紙に自分のプレゼントはいらないから育ての親のシスターや教会に住む子供達にたくさんのプレゼントをお願いしますと書いてくれた優しい女の子だからね」

セシリアがまだペンドラゴン教会に住んでいた頃のクリスマスの話にみんなは感心していた。

自分よりシルヴィアさんや教会の子供達にプレゼントをサンタさんにお願いするなんてセシリアは本当に優しいんだなと思った。

「な、なんか恥ずかしいぜ……」

「恥ずかしがることはないよ。セシリアは本当に優しくて、とても偉いと思うよ」

「そ、そうか?アマネに言われると嬉しいぜ……」

セシリアは恥ずかしさと嬉しさが混ざった表情をして頬を指で軽く引っ掻いた。

「……ねえ、天音」

「何だ?千歳」

「今のサンタさんの話を聞いて思ったんだけど、少しジャックと似ていない?」

「……あ、そう言えば」

一応俺の契約聖獣で、ハロウィン限定に現れ、ハロウィンキングの異名を持つジャック・オー・ランタン。

ジャックはハロウィンの日に世界中の子供達にお菓子を配っていたりしている。

経緯や季節はかなり異なるがジャックとサンタさんには子供達を笑顔にするという共通するものがあった。

「秋のハロウィンのジャックに、冬のクリスマスのサンタさんか……何か不思議だよな」

「会って話をしたいけど、難しいよね」

「ああ」

顕現陣からジャックから貰った指輪を取り出す。

ジャックはハロウィン限定故に今何処にいるか分からない気まぐれな奴だ。

指輪を左手の中指に填めながらジャックの事を思う。

そして……ゼクスはサンタさんと向き合い、自分の気持ちを話し始めた。

「俺はキリストの生まれ変わりとして何故キリストの誕生日にあなたが現れるのかずっと疑問に思っていた。だが、直接あなたから話を聞き、その疑問の答えと意味を知ることが出来た。サンタクロースさん、是非ともこれからも子供達を喜ばして笑顔にし……“希望”を与えてやってください!」

「希望、ですか?」

「子供達にとってあなたは希望の象徴です。本来なら……キリストの生まれ変わりである俺が与えるべきなのかもしれないけど、俺にそんな力はない。だから、俺の代わりに子供達に笑顔と希望を与えてやってください!!」

ゼクスはサンタさんに向けて深く頭を下げた。

「顔を上げてください。あなたの気持ちはよく分かりましたぞ」

「サンタクロースさん……」

「キリスト様の生まれ変わりであるあなたからのお願い、聞き入れましょう。これからも私はクリスマスに子供達に笑顔と希望をプレゼントしましょう!」

「はい!ありがとうございます!」

ゼクスとサンタさんは握手を交わし、二人は笑顔になった。

これでゼクスがずっと疑問に抱いていたサンタさんとクリスマスの謎が分かり、俺達がクリスマスに来た目的が達成された。

この後をどうしょうか考えていたその時……事件が起きた。



ドガァアアアアアアン!!!




突然、大きな爆発音がなり、俺達のいる応接室が一瞬大きく揺れた。

「な、何だ!?」

『ピイッ!?』

『『『がうっ!?』』』

「ば、爆発!?」

『工場で何かあったのか!?』

すぐに爆発音の発生源と思われる工場に向かった。

そこで俺達が見たものは酷いものだった。

一生懸命働いていた小人達が倒れ、プレゼントを作る機械が無残に破壊されていた。

「みんな、何があった!?」

『サンタ様……や、奴が……現れました』

「奴?はっ!?もしかして、またあいつが……」

「ホゥホゥホゥ!!!メェリィー、クリスマスゥッ!!!」

工場の外からサンタさんによく似た笑い声が響き渡った。

外に出て上を見上げると信じられない光景があった。

「黒いサンタクロース……!?」

真っ黒な衣装に身を包んだサンタさんと風貌が良く似た老人が数匹の鹿の骸骨のお化けが引いている黒いソリに乗っており、そのソリは中に浮いていた。

サンタさんを知っている人からしたらなんて悪質なコスプレだと思うだろう。

「やはりお前か!“ブラックサンタ”よ!!」

「ホゥホゥホゥ!サンタクロースよ、貴様がガキ共に送るプレゼントは全て頂いたぞ!」

「何と!?」

「今年のクリスマスはワシの力で世界中の全てのガキ共に悪夢を与えてやるぞ!!」

余りにも衝撃的な宣言にサンタさんのみならず俺達も驚愕した。

しかし、それと同時に俺達は怒りを露わにして契約媒体を取り出した。

誰だか知らないけど、世界中の子供達が楽しみにしているクリスマスをあんな悪趣味のサンタさんもどきに壊されてたまるか!





次回は24日の午前0時投稿になります。


甘々な内容は25日の投稿になりますので。

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