表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーティファクト・ギア  作者: 天道
第7章 千年京都編
102/172

第88話 魂の縁

天音たちが金羅とバトルをします。


後半は千歳の重要なイベントが発生します。

蓮姫様が四天王を倒し、その魂と繋がっていた扉が開くとそこは今までの階層とは違う部屋が広がっていた。

思わず入るのを拒んでしまいそうな部屋で、最年少の風音が俺にしがみついていた。

部屋の中には無数の骨が至るところに散らばっていた。

その骨の独特な形からして間違いなく人間のものだった……。

数百……否、数千の人間の骨に相当する量だった。

『よく来たな、天音よ……』

床に散らばっている骨をバキバキとわざと踏みつけて歩いてきたのはもちろん……。

「金羅……」

千歳の体を契約して乗っ取った金羅だった。

その体から溢れ出る妖気は昨日とは比べ物にならないほどに強力だった。

『ふふふ……本当に妖魔城に来るとはな。そんなに我が恋しかったか?そんな洒落た格好までして』

「ふざけるな。千歳を返してもらいに来ただけだ」

『ふふふ、一途だな……』

金羅は笑みを浮かべると蓮姫様は一歩前に出て床にある骨を見つめながら尋ねた。

「金羅とか、言ったな?この部屋の骨……全て人間の骨だな?」

魔から人間を守ってきた蓮姫からすると気分が悪いことこの上ないものだった。

『当たり。だが勘違いするな。これは全て救いようのない“悪い人間”の骨だ』

「悪い人間……?」

『そう……罪もない妖怪やその血を受け継いだ混血を迫害し、死に追いやった愚かな人間共のな!!』

金羅の表情が一瞬で怒りに変わり、俺達はすぐに武器を構えて戦闘態勢に入る。

だけど、俺は乗っ取っている千歳の瞳の奥に悲しみが浮かんでいるのが見えた。

『貴様から闇を祓う力を感じるな……』

「私は五百年前、人に仇なす魔を祓ってきた。お前が嫌う人間の一人かもしれない」

『現世に蘇った昔の人間か。貴様は罪無き妖怪を殺したことがあるか?』

「無い」

きっぱりと答えた蓮姫様に金羅は目を少し見開いて驚いた。

「私は妖怪にも善と悪の心があると知っている。私が祓ったのはあくまで人を喰うため、殺しを楽しむために殺した奴だけだ。何も悪いことをしてない、無害な妖怪を祓うつもりなんて私はしない」

『……もう一つ問う。貴様は人間をどう思う?』

「それについて私は長年考えてみたが、人間は聖獣とあまり変わらない存在だと考える」

『何……?』

「単純に人間も聖獣も善い奴がいれば、同時に悪い奴もいる。姿形は違うが、同じ生きるもので、心を持っているからな。見たところ、お前は……私達人間の悪を怨んでいるのだな?」

『……ああ。だが、これ以上話すつもりはない。私は、人間達を滅ぼして日本を妖怪だけの世界にする。この決意を変えるつもりはない!!』

金羅から妖力が解放されると、その手に銀羅と二丁拳銃のレイジングとストリームが契約したアーティファクト・ギア、無幻九尾銃が姿を現す。

『私を止めたければ、千歳と銀羅を救いたければ……五人で私を倒すがいい!!』

「言われなくても最初からそのつもりだ!白蓮、黒蓮!!」

『うんっ!』

『『『バウッ!』』』

蓮煌と白蓮、銀蓮と黒蓮を契約させる。

俺の身に纏う天装衣は守護力と防御力が初めから高いので敢えて白蓮を蓮煌だけに契約を集中させることにした。

「アーティファクト・ギア、鳳凰剣零式!!」

契約を集中させたことで普段よりも鳳凰としての力が増幅されている。

そして、黒蓮は蓮煌、氷蓮、銀蓮の三つの刀剣を契約させる代わりに……銀蓮だけ契約を集中させた。

「アーティファクト・ギア、“冥覇獣王剣”!!」

冥覇獣神剣よりも少し小振りな黒い大剣だが、銀蓮だけに契約を集中させた分、冥覇獣神剣に負けず劣らずの能力を持っている。

鳳凰剣零式と冥覇獣王剣を両手に持つと、璃音兄さんと花音姉さんと風音はアーティファクト・ギアを構える。

「アーティファクト・ギア、霊皇氷帝剣!!」

「アーティファクト・ギア、蒼穹麒麟弓!!」

「アーティファクト・ギア、神龍双覇!!」

そして、蓮姫様は蓮音を構えると俺達のアーティファクト・ギアを見て呟く。

「私も、聖獣との契約を考えてみるかな……?」

アリス先生と同様に契約聖獣を持たない蓮姫様も契約を考え始めていた。

「花音姉さんは矢で援護をお願い!」

「任せなさい!みんなは私の矢に当たらないように注意してね!」

花音姉さんは蒼穹麒麟弓の弦を指で引いて矢を作り、金羅を狙い撃つ。

しかし、金羅の体は千歳自身だから威力を弱めて人体の急所以外の場所を狙う。

しかし、金羅は体に纏う強力な妖力で蒼穹麒麟弓の矢を弾いて受け流していくが、金羅を引きつけることはできる。

そして、剣士である俺達四人は金羅を攪乱させるために四方向から攻撃する。

「超銃変化、ブラストビット!!」

金羅は無幻九尾銃で遠隔操作型の九つの小型銃器を出現させて、レーザーの妖炎弾を発射する。

「ふっ……はっ!!」

レーザーを回避、または大剣で防御しながら金羅に近付いていく。

風音、璃音兄さん、蓮姫様も同様にレーザーを避けながら金羅に近付き、真っ先に接近したのは……。

「私の、お、お、お姉ちゃんを……返してもらう!!」

当代一の蓮宮天才、風音だった。

「蓮宮流、百花双蓮刃!!」

神龍双覇から放たれる乱撃が数多の斬撃となって金羅に向かった。

金羅は特に焦った様子はなく、無幻九尾銃を回転させる。

「超銃変化、ストームガトリング!!」

ブラストビットを展開しながらガトリングガンを発砲して数多の斬撃を撃ち落としながら次々と発砲される妖炎弾を風音に向ける。

「風音!」

「大丈夫!!」

とっさに風音の元へ行こうとしたが、それは杞憂に終わった。

「はぁあああああああああああああっ!!」

高速で神龍双覇を振るいながら妖炎弾の弾道を見極め、全てを切り落としている。

『何!?』

「流石だな、風音ちゃん!」

驚いた金羅の背後に璃音兄さんが現れる。

霊皇氷帝剣から白銀に輝く冷気が零れ出て、白刃の一閃が金羅に襲いかかる。

「蓮宮流、氷蓮霊封結界!!」

金羅の周囲の空間ごと一瞬で氷結し、巨大な氷塊となって閉じこめた。

「どうだ!!」

「天音よ、今のうちに早く!」

「はい!!」

氷塊に閉じこめられた金羅に向けて一直線で飛んだ。

千歳に取り憑いた金羅を引き離すための『秘策』を使うために右手の鳳凰剣零式を背中に携え、右手に霊力を込める。

ピシッ……!!

氷塊に大きな亀裂が入り、亀裂から妖炎が噴き出した。

「なっ!?」

氷塊が粉々に砕かれ、中に閉じこめられた金羅は姿を消した。

そして、背中から色っぽい声が響いた。

『捕まえた……♪』

金羅の声だとすぐに気が付くと、何かに体中が締め付けられた。

「うぐぅっ!?」

手足や胴体を縛っていたのは金羅の九本の尻尾だった。

尻尾は少しずつ伸び続けて俺の体を侵蝕するように強く縛り続けている。

それは夏休みに海でクラーケンの触手に捕まった時と同じ感覚で、あの時の屈辱的な記憶が鮮明に蘇るものだった。

「あっ、がっ、ぐぁっ……」

『ふふふ……このまま、お前を私のものに――』

「「「「させるかぁっ!!」」」」

捕らわれた俺を救い出すために必殺技を繰り出す。

「大紅蓮氷塊烈波!!!」

「聳弧水蓮波!!!」

「応龍神空斬!!!」

「斬刀繚乱!!!」

氷塊と水を纏う麒麟に巨大な二つの斬撃が同時に金羅に襲いかかる。

『む?ちっ……』

金羅の姿がまたしても消え、四人が放った技は俺の背後で通り抜けた。

「はっ、くっ、はぁ……」

金羅から解放された俺は床に降り、体を縛り付けられた感覚を抑えるために空いた手で腕を強く抓った。

「天音、無事か!?」

みんなが駆け寄り、俺の無事を確かめる。

「何とか……でも……」

抓るのを止めて前を向くと、消えた金羅が再び姿を現した。

『ふん……もう少しで天音を我がものに出来るはずだったのに……』

「お前、何で……?」

金羅が俺を欲しがる理由が分からなかった。

人間を滅ぼそうとしているのに、何故俺を欲しているのか……。

『理由を知りたいか?なら教えてやる。天音……貴様との子を孕むためだ』

「「「「「…………はぁ???」」」」」

金羅は……何を言っているんだ?

俺は訳が分からず呆然としてしまい、璃音兄さん達も同じ反応をした。

すると金羅は妖艶な笑みを浮かべて右手で腹を撫でた。

『九尾の妖狐である私が支配している小娘……千歳を母胎にして、霊力の高い貴様の子種を一つにして子を孕めば、必ず強大な力を秘めた妖狐が産まれるからな!』

あまりの衝撃的過ぎる金羅の思惑に俺達の開いた口が閉じることはなかった。

つまり、俺と千歳、そして金羅の血を継いだ強大な妖力と霊力を持ち合わせた妖狐の子を産むのが目的なのか……?

えっと……喜べないのは確実だが、どう反応したら良いか分からない。

だけど、これだけは言える。

「悪いけど……絶対にお前のものになるつもりはない」

『何?』

「俺の全ては既に千歳だけのものだ。だから……」

璃音兄さんの肩を借りて立ち上がり、再び鳳凰剣零式と冥覇獣王剣を両手に構える。

「金羅、お前のものには絶対にならない!必ずお前から千歳を救い出す!!」

俺には金羅を千歳から引き離すための術を持っている。

その術を使うためには……。



妖魔城に向かう前の作戦会議で今回の戦の首謀者である金羅をどうやって千歳から引き離すか考えている時だった。

「霊煌捌式……憑依???」

今まで使った事がないと言うか、使い方が全く分からなかった霊操術の全貌を蓮姫様が教えてくれた。

「そう、蓮宮八代目当主の『蓮宮音夜』が作り出した霊操術よ」

「それで、その霊操術の能力は?」

「憑依は使用する術者の魂の一部を他のものに移し替える能力よ」

「術者の魂を移し替える……そうか!」

蓮姫様の考える策にすぐに気付き、霊煌紋を見つめる。

千歳の体には契約により、金羅の魂と肉体が入っている。

霊煌捌式・憑依で俺の魂を千歳の体の中に入れて、中から金羅を追い出す……そう言う事か。

「だが、憑依を使うには一つ問題がある」

「問題?」

「魂を移動させて対象に憑依させるには、その対象に直接手で触れなければならないの」

「手で触れなければならない……」

「しかも、今回は千歳の魂に金羅が宿っている……そうなると、魂が宿るとされる人間の“心臓”の部分に送るしかない」

そうなると、千歳の胸か背中に手を置いて俺の魂を送るしかないのか……それを戦いの中でやるとなるとかなり難しい。

「相手は金羅と言っても体は千歳。いくら俺達蓮宮一族の手練れが揃っているとはいえ、厳しい戦いになりそうですね……」

金羅は今まで戦ってきた聖獣の中でも特に強大な力を持っている。

総詞や晴香を無傷でいとも簡単に退けたぐらいだしな。

それに何より、金羅には俺達みたいな魔を滅する力を持つ術士を殺すために生み出した『降魔殺しの剣』の『九魔之魔剣』を持っている。

「でも……やるしかないんだ!!」

今は八代目が作り出した霊操術を信じるしかない。

これが俺にとって千歳と銀羅を救う唯一の希望だから。

「頑張れ……私達一族が全力でお前を支援する」

「はい……!」

一筋の希望の光を携えて俺は妖魔城の金羅に挑むのだった。



千歳side


肉体を支配されてから、精神世界で私は銀羅と金羅のお母さんである『天羅』と出会った後……。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

私は全力で精神世界を走った。

『何を、している……?』

天羅は呆れ顔で私に尋ねた。

私は走るのを止めて緊急停止をすると足を動かしながら答える。

「いやー、このまま何もしないのは勿体ないから鍛えておこうと思って。私、人より体が弱いからね」

『だがここはお前の精神世界。ここで走り続けても肉体が鍛えられるわけではないぞ?』

「はぅっ!?し、しまったぁ〜!そうだったぁっ!」

私は一番大事な事を思い出され、頭を抱えて嘆いた。

『お前はと言う奴は……どうしてそんな風になったのだ……?』

「元気で正直の、天真爛漫が私の取り柄だから。それに、天音に猛烈アタックするには大胆が良いと思ってね!」

『……結局のところ、お前の行動起源は全て蓮宮天音か。それほど良い男なのか?』

「うん!天羅も一度会ってみたら?絶対に気に入るから!」

『会えるかどうか分からないが、期待しておこう……ん?』

私に向けられた天羅の視線が全く違う方を向いた。

「どうしたの?」

『どうやら、この精神世界に私達の大切な狐(子)が来たようだな……』

天羅の視線の先にはポツンと座ってキョロキョロしている私の契約聖獣である銀羅の姿があった。

「ぎ、銀羅!」

『千歳……?ここは何処なのだ?』

「ここは私の精神世界よ……」

『精神、世界?私は確か、金羅に無幻九尾銃にされて意識がなくなって……』

金羅は私の肉体を使って本当に好き勝手やっているわね。

まさか銀羅を契約執行させて無幻九尾銃にするとは……。

『どうやら契約が不安定になり、魂が千歳の体の中に流れ込んでしまったようだな……』

天羅は状況を冷静に分析すると、銀羅は首を傾げて天羅を見つめた。

『お前、誰だ……?何故千歳と同じ姿をしているんだ?』

『誰だと……?まあ、流石に千年も経過してしまったら、私の匂いを忘れてしまったか……』

『千年?何のことだ?』

そっか、今の天羅は私とほとんど同じ姿をしているから気が付いてないんだ……。

『流石に……この姿になれば分かるよな?』

天羅は苦笑を浮かべて一回転をすると、金と銀の粒子を纏いながら本当の姿――九尾の妖狐に戻る。

『えっ……?は、母上……?』

天羅が九尾の妖狐になった瞬間、銀羅は目を見開き、口を大きく開けて驚いた。

『そんな……う、嘘だ!母上は千年前に人間達に殺されて……』

『ああ。私は確かに殺された……』

『ここは千歳の精神世界のはず……どうして、どうしてここにいるんだ!!?』

千年振りにお母さんの天羅に再会した銀羅だが、体を震わせて珍しく動揺しまくっている。

天羅は銀羅に向かってゆっくりと歩き出し、一歩ずつ近付いていく。

そして、私にも説明した私自身にも関わる衝撃的な事実を教えていく。

『私は……死んでから魂となった後、銀羅と金羅の二人をずっと見守ってきた。だが、黄泉の使者によって魂を黄泉へ連れてかれてしまった。そして、輪廻と千年の時を越え……私は一人の少女に転生した』

『転生……?』

『その少女に転生したのは良いが、私自身の魂の力と肉体の釣り合いが崩れてしまい、少女の肉体は産まれながらに弱っていた……』

『ま、待て……それは……』

『そして、その少女が召喚したのは私の大切な娘の片割れ、銀羅だった……』

私があの時、銀羅を召喚したのは偶然ではない、必然だったのだ。

そして、京都で金羅と出会ったのもまた必然だった。

何故なら……。




『私は九尾の妖狐である天羅から、人間の少女である天堂千歳へ転生したのよ』




つまり、私の魂は天羅自身のものだ。

私は天羅、天羅は私……銀羅と金羅のお母さんみたいな不思議な存在なのよね。

銀羅を召喚して初めて会った時、他人にはどうしても思えなかったあの愛しい気持ちはそれが理由なのかもしれない。

『銀羅……私の宝……私の大切な娘……』

天羅は銀羅を尻尾で抱き寄せて頬ずりをする。

『母、上……ははうえぇっ……』

千年の時を越えて天羅に再会した銀羅は今までの悲しみを解放するかのように大粒の涙を流した。

「お母さんか……」

そう言えばお父さんと一緒に仕事で海外にいるから最近全く会っていない。

多分元気だと思うけど、少し寂しいから今度会いに行こうかな?

私には境界輪廻があるし……でも、その前に。

「金羅を何とかしなくちゃね……」

金羅から私の肉体を奪い返さないことには何も始まらない。

「愛しの天音が何とかしてくれるかもしれないけど、それじゃあダメよね」

幸い今ここには銀羅と天羅がいる。

何か自分達に出来る事があるかもしれない。

私はそう考え、取りあえずまずは銀羅と天羅の感動の再会のハグが終わるのを待った。




.



だいたいの人はお気づきだったかもしれませんが、千歳の前世が天羅ということでした。


千歳にとって銀羅と金羅は娘みたいな存在なのです。


次回は展開を更に上げてこうと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ