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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第7章 千年京都編
101/172

番外編 第2話 ハロウィンの夜

Happy Halloween!!!


でも、ハロウィンをやったことないんですよね(爆)


天音はある聖獣によってまたもやトラブルに巻き込まれます。

千歳とセシリアの戦争を何とか収まった後、俺は千歳にベッタリとくっつかれながら日本に戻ることにした。

ちなみにセシリアに激しいキスをされた俺はその後に千歳から上書きをするようにまた激しいキスをされて気を失いかけるほどだった……。

「ほら、天音。早く日本に帰るわよ!」

「わ、分かったからそう急かすな」

「早くしないとセシリアがまた天音にキスしちゃうのよ!」

「あのな……そうホイホイとキスをするわけ無いだろ」

「何よ、この寝取り騎士王!」

「あぁん?どうやらまた戦争したいらしいなぁ……」

二人はまたしても愛用の獲物である銃と聖剣を取り出して戦争を行おうとする。

「うわぁあああっ!止めてくれ!二人共!ほら、千歳!早く行くよ!!」

俺は千歳を抱き上げて無理矢理連れて行く。

「あぁん!もう、離してよ、天音!」

「離したらセシリアと戦争になるだろ!?みんな、行くよ!」

『ピィー!』

『『『ワンッ!』』』

『おー!』

白蓮、黒蓮、銀羅は俺と千歳の後を付いて来て一緒に日本へ帰る。

「じゃあな、アマネ。またなー」

「今度は誘拐しないでくれよな」

「わかってるって!それじゃあ、別れのキスを……」

「失礼します!!」

境界輪廻を使ってイギリスと日本の空間を一時的に繋ぎ、近くの扉から逃げるように天聖学園へ帰った。

あのままだったらセシリアにもう一度キスをされていたかもしれないのであれが一番適切な判断だと思う。




『キヒヒ、ヒャハハハ……』

「えっ?」




境界輪廻で扉を開いてイギリスから出ようとしたその時、不気味な笑い声と共に一瞬だけ濃い黄色の光が見えた気がしたけどそれが何なのか分からずそのまま白蓮達と一緒に扉をくぐって日本の天聖学園にある学生寮の俺と千歳の部屋に入った。

部屋に入ると千歳を下ろすと、俺はキョロキョロと周りを見渡した。

「どうしたの?」

「今さっき、変な笑い声が聞こえて……」

『旦那、ポケットに何か入っているぞ?』

「ポケット?」

銀羅に指摘されて制服のポケットに手を入れると、普段は何も入ってないポケットの中には確かに何かが入っていた。

「何だ、これ?」

それをポケットから取り出すと見たこと無い物が目に映った。

「指輪?」

「だよなぁ……」

千歳の言うとおり確かに指輪だが、俺が所持してないものだった。

俺が持っている指輪と言えば誕生日に千歳に贈ったペアの婚約指輪だけで、この指輪は全く別物だった。

そして何故かその指輪のデザインはこの季節……と言うか、明日にピッタリだった。

「ジャック・ランタンの指輪か……」

それはカボチャの提灯であるジャック・ランタンの形を模したシルバーリングの指輪で、まるでお店に売ってるかのように傷が一つもない綺麗な銀色の輝きを放っていた。

「何でこんな物が……?」

「セシリアがこっそり入れたのかも……天音、すぐにそれを渡しなさい」

「千歳、処分するつもりだろ……?ダメだ、せっかく良いデザインなんだから勿体ないよ」

即刻処分しようとする千歳から離すために俺はすぐにその指輪を左手の中指に填めた。




しかし、それが俺へ降りかかる災難に繋がった。




『ヒヒヒ!ハハハハハ!!』




指輪を填めた瞬間、指輪から魔力が溢れ出してモクモクと煙のように立ち上った。

不気味な笑い声が響き渡り、煙が圧縮されて固体となって現れたのは……。

「「カボチャ……?」」

それはカボチャのジャックランタンを頭に被った人の形をした何かで、目や口のくり抜きから不気味な火が溢れ出していて、頭以外は紫色のコートを着用して体を隠していた。

『よーし、俺様の指輪を填めたな。小僧、明日一日、俺と一緒に――』

ジャキッ!!

『――来い……ジャキッ???』

「てめぇ……一体何者だ?まずは名を名乗れ。そして、俺に何をするつもりだぁ?カボチャのお化けさんよぉ……」

「正直に吐かないと、その不気味な頭をぶち抜いて明日に出すカボチャのスープの受け皿にするわよ……?」

俺と千歳はカボチャのお化けが出現する直前に白蓮達とアーティファクト・ギアを契約して切っ先と銃口をカボチャの頭に向けて脅した。

『ヒィイイイイイッ!?あ、悪魔だ!!人の皮を被った悪魔がここにいるぅううううううっ!?』

失礼な、俺達はれっきとした人間だ!

カボチャのお化けはガタガタ震えながら土下座をして謝ってくる。

取りあえずこの正体不明なカボチャのお化けをアリス先生のところに連れて行こう。

何かこいつについて分かるかもしれないからな。



案の定、このカボチャのお化けをアリス先生の元に連れて行ったら目を見開いて地下室にある本で調べるほど驚かれた。

「あなた達、凄いのを連れてきたわね……この子は人間界や聖霊界でもなかなかお目にかかれない幻の聖獣よ……」

「「幻の聖獣!?」」

俺と千歳は連れてきたカボチャのお化けを凝視した。

そのカボチャのお化けは明日のハロウィンパーティーのお菓子を作った時に余った材料で作った焼き菓子を白蓮達と一緒に食べている。

「ハロウィンの王と言われる幻の聖獣……“ジャック・オー・ランタン”よ」

「「ジャック・オー・ランタン?」」

アリス先生が探し出した本のページを俺達に見せた。

その開いたページの内容はこうだった……『ジャック・オー・ランタン。一年に一度、人間界の10月31日のハロウィンの一日だけ現れると言われる幻の聖獣。ハロウィンを楽しんでいる子供達の前に現れ、たくさん驚かしてから美味しいお菓子をプレゼントすると言う不思議だけど優しい心を持つ聖獣』……そのページには絵が載せられていて、そこにいるジャック・ランタンのお化けとそっくりの聖獣だった。

「へぇー、こんな聖獣がいるんだなぁ……」

「ハロウィン限定の聖獣ねぇ……」

『ああ!その通りだ!』

「おわぁ!?」

俺の前に現れてビックリして思わず数歩下がってしまった。

「それで、ジャック・オー・ランタン。あなたの目的は何?」

千歳が目的を尋ねるとジャック・オー・ランタンは腕組みをして説明をする。

『目的はただ一つ。お前に俺様のハロウィンを手伝ってもらいたいんだ!』

「「ハロウィンを手伝う?」」

何をどうすればいいのか分からず頭に疑問符を浮かべる俺と千歳だった。

「その必要は無いんじゃないかしら?だって、あなたには魔法があるじゃない」

「えっ?そうなの?」

ページを開きながら言うアリス先生に俺はジャック・オー・ランタンに確認をすると、本人は顔のくり抜きを渋い表情を浮かべてため息の火花を吐いた。

『……確かに俺はとある魔法使いから魔力を貰ってハロウィン限定の魔法を使えるようになった。だけど、年を重ねるごとにお菓子を生み出す魔力が限界なんだよ……』

ハロウィン限定の魔法か……本に記載されていた子供にお菓子をあげる魔法の事だな。

でも、魔法が使えないことと俺にどんな関係があるんだ?

「それで、俺に何をさせたいんだ?」

『魔力が無くなりつつあるが、亡霊として世界中色々な場所に空間転移できる能力はまだ使える……だから、お前にハロウィンで子供達に配るお菓子を作って貰いたい!』

「……どうして俺なんだ?俺はプロのパティシエじゃないし、それこそ世界各地にあるお菓子を作っている人達に頼めばいいじゃないか」

世界には俺よりも腕のいいパティシエがたくさんいる。俺なんかよりその人達に頼んだ方がよっぽどいい。

だがしかし、ジャック・オー・ランタンは最初から俺じゃないとダメみたいだった。

『イギリスで遠くからお前の作るお菓子を見た。お前の作るお菓子の一つ一つに食べて貰う人への愛情が込められていた……一目で気に入ったお前に頼みたいんだ!!』

「むぅ……」

ジャック・オー・ランタンはさっきとは違うお願いをする土下座をした。

ハロウィンの王にここまでお願いされたら断ろうにも断ることは出来なかった。

「……分かりました。お受けしましょう」

『本当か!?』

悲しそうな表情を浮かべていたジャック・オー・ランタンが徐々に笑顔になっていく。

面倒だけど、何かほっとけないから受けることにした。

すると、千歳とアリス先生がジト目で睨んできた。

「……天音のお人好し、呪われ体質、一級フラグ建築士……」

「どんだけあなたはトラブルに巻き込まれれば気が済むのよ……蓮姫や波音でも、そこまで酷くなかったわよ?」

あのね……好きでトラブルに巻き込まれているつもりはないんですが。

まあ、それはさて置き、ジャック・オー・ランタンと話し合いをする。

「それで、ジャック・オー・ラン――ジャックで良いか?一々長い名前を全部言うのは舌を噛みそうだから」

『もちろん。じゃあ、俺もアマネと呼ばせてもらうぜ』

「うん。それで、お菓子を作って配るにしてもあまりにも量や数が足らないんだが……」

「それなら良い方法があるわよ」

そんな悩みを一発で解決してくれるように我らがアリス先生は指を鳴らして小さな魔法陣を展開すると、何かを取りだした。

それは少し大きな鏡で後ろには木や花などが刻まれた見事な細工が施されていた。

「これは一つの物を二つにする魔法具、“双子の鏡”よ」

「双子の鏡?」

「これを使えば天音の作ったお菓子を二倍の数にする事が出来るわ。つまり、二倍を繰り返すことで……」

「俺のお菓子が莫大な数になるって訳ですか?」

「もちろん、双子の鏡で複製した物の味や触感は完全にそのままよ」

「これを使えば……ジャック!」

『ああ!これなら出来る!』

突破口を見つけ、ジャックも満足そうに頷いた。

双子の鏡を使ってハロウィンパーティー用に作ったお菓子を二乗にたくさん複製し、そして運命の10月31日となったその日に一日限りのジャックの仕事が始まった。

だが、始まる前にジャックはとんでもないことを言い出した。

『さあ、アマネ!俺と契約だ!』

「はぁ!?契約って、アーティファクト・ギアか!?」

『違う!この俺様自身をアマネが“纏う”のだ!!』

「はいぃっ!?」

そう言うとジャックの頭のランタンや紫色のコートが分離して勢い良く俺に向かってきた。

俺はとっさに逃げようとしたが目の前に現れたランタンによって防がれ、そして俺の頭にそのランタンがすっぽりと被らされてしまった。

不思議とランタンの中は息苦しくなく、居心地がとてもよく、被り物にしては視界は良好だった。

紫色のコートは俺の肩に掛かると、着ていた天聖学園の制服が消えて代わりに骸骨の装飾が異様に多い不気味なタキシードを着させられた。

そして、手にはジャック・ランタンが付いた紫色のステッキが握られていた。

『これが、俺様の真の姿……ハロウィン・キングの異名を持つ“ジャック・オー・ランタン”様だ!!!』

「わぁお……まさか俺自身がジャックになるなんてな……」

『さあ、天音よ……行くぞ!』

「ああ、分かったよ」

ジャックと共に世界中の子供達にお菓子を届けるために出発しようとしたその時だった。

「Stop!!天音、誰かをお忘れじゃありませんか?」

「えっ?千歳――って、何だその格好は!?」

俺は突然現れた千歳の格好に驚いた。

「何って、キュートな魔女さんだよ?」

クルッと一回転する千歳は西洋の魔女みたいな格好をしていた。

まずは魔女のイメージにピッタリの大きな帽子にマント、ここまでは良い。

だが問題なのは着ている服だ。

露出度がかなり高く、ミニスカートで西洋の魔女だが、根本的に何かが違う魔女の姿だった。

「天音、この可愛い魔女さんでお嫁さんの私がお手伝いしますよ♪」

『何?チトセはお前の嫁だったのか!?リア充よ……花火の如く爆発するのだ!!』

「ハロウィン・キングが何を言っている!?それより、千歳……手伝ってくれるのか?」

「もちろん!天音となら何処までも付いて行くよ!それに、私達の可愛い子供達もね♪」

千歳がウィンクすると、三つの影が近づいてくる。

『ピィー♪』

『『『がうっ♪』』』

『旦那、はっぴーはろうぃんだぞ!』

ジャックと一つになった俺のことが分かるのか、白蓮と黒蓮は俺に抱きついてきた。

「ははっ、ずいぶん可愛いデコレーションをされたな〜」

十中八九千歳の仕業だろうが、白蓮と黒蓮の体にはハロウィンの飾り付けがされていてとてもキラキラしていた。

「銀羅は……その巫女装束はどうした?」

銀羅は擬人化しており、その身には見覚えがある蓮宮の巫女装束を着ていた。

『これか?夏休みに蓮宮神社に行ったときに六花に貰った』

なるほど、全て母さんの仕業か……。

母さんなら娘が増えて嬉しいとか言ってあげたんだろう。

まあ、似合っているから良いんだけどな。

狐娘+巫女装束は昔から何故か魅力的な組み合わせと言われているから問題ない。

「みんなも手伝ってくれるか……よし、それじゃあ世界中に楽しいハロウィンを届けよう!!」

「ええ!」

『ピキュー!』

『『『がうっ!』』』

『ああ!』

みんなで腕を上げて気合いを入れ、俺達のハロウィンが始まり、ジャックの力で色々な場所へ飛んだ。

まずは日本の片っ端からハロウィンパーティーをやってる子供達やお腹を空かせている子供達を驚かせてから俺が作ったお菓子をプレゼントした。その際、ジャックはその子供達に幸せが訪れるように魔法をかけてあけた。

そして、立ち去る時には……。




『「Happy Halloween!!!」』




ハロウィンの合い言葉の一つを言い残して立ち去り、子供達の幸せを願った。

日本を回った後はとにかく色々な国を回った。

中国、ロシア、オーストラリア、アメリカなどなど……とにかく色々な国へ訪れて子供達にお菓子を配りまくった。

次の場所に向かうとき、俺はジャックに尋ねた。

どうしてハロウィンの日に子供達にお菓子を配っているのかと。

そしたらジャックはすぐにその理由を答えてくれた。

ジャックは初めから聖獣ではなく、以前は普通の人間の男だった。

怠け者で狡賢く、それでいて嘘吐きというどうしょうもない人間だった。

ふとある時、地獄から悪魔が訪れてジャックの魂を奪おうとしたが、ジャックの狡賢い知恵を使って二度も悪魔を退いた。

その後、天寿を全うしたジャックは死亡したが、生前の行いから魂が天国にも地獄にも行けなくなってしまった。

せめて灯りが欲しいと悪魔に頼み、地獄の炎を貰い、それを近くにあったカボチャに灯してランタンにしたが……実はそのカボチャは不思議な力を持つ魔法のカボチャだった。

カボチャに地獄の炎が灯されると、おかしくなったかのようにジャックの魂を取り込んで一つとなり……その場にいた悪魔さえ想像もしなかった、魔法のカボチャに地獄の炎を灯した頭を持つ人型の聖獣として転生してしまった。

しかし、あの世にもこの世も行く宛てがないジャックは何の理由も意味も無くさまよっていた。

そんな時、ジャックに一つの転機があった。

10月31日の夜、さまよっているジャックは一人の迷子を見つけた。

その迷子は泣きながらジャックにお家へ返してとお願いした。

ジャックは一瞬戸惑ったが、暇だしやることもないので迷子を人里へ案内した。

そして、ジャックはたまたま持っていた果物を迷子に渡して無事に人里に送り届けた。

その時、迷子は笑顔でこう言った。

「ありがとう!カボチャさん!!」

その一言がジャックの中で何かを変えた。

初めて言われた感謝の言葉……それがジャックの心に響いた。

それからジャックは生前の行いに対する罪滅ぼしという訳ではないが、こっそり人助けをし、毎年ハロウィンの日には子供達を驚かしてからお菓子をプレゼントするようになった。

このお菓子はジャックが生前持っていた余りある財産を使って買ったものだ。

しかし、いつしかその財産も全て無くなり、お菓子をどうしようと悩んでいた時だった。

一人の魔法使いが現れてジャックの行いに感動し、魔力を分け与えてもらい、その魔力で魔法を使ってお菓子を生み出し再び子供達に配り……現在に至る。

『俺様はハロウィン・キングと呼ばれているが、その実態は哀れでどうしょうもない男の魂が行き着いた末路さ……もしかしたら俺様は自分の自己満足の為にしか動いているかもしれないな……』

「でも、それはちょっと違うんじゃないかな?」

『何だと?』

ジャックの今までの波乱万丈に近い話を聞いた俺の考えを言う。

「ジャックがその姿になってから誰も不幸にしていない。代わりに、誰を救って幸せにしているじゃないか。少なくとも、自己満足だけじゃ誰かを幸せには出来ないよ」

「それもそうね。だって、お菓子を貰った子供達はみんな幸せそうだったもの。まぁ、天音が作ったお菓子っていうのもあるけどね♪」

後半は俺に対する褒めだったが、千歳も俺の考えに同意した。

ジャックは夜空に輝く月を見ながらそっと呟いた。

『……俺様はいつも願うんだ。お菓子をあげた子供達が幸せになれるようにな……』

「大丈夫。きっと幸せになれるよ」

「ええ」

『ありがとうな……アマネ、チトセ』

その後、何とか頑張って世界中の子供達にハロウィンのお菓子を配って天聖学園に戻ると、既に真夜中でハロウィンの10月31日も過ぎようとしていた。

『今日は感謝する、アマネ、チトセ……それから、聖獣のみんなよ』

ジャックは纏っていた俺から離れて俺達に感謝すると、その姿が透明になっていく。

「ジャック!!?」

『気にするな。ハロウィンの為に溜めてきた力を全て使ったから、またしばらく眠りにつくだけだ』

「また、会えるのか?」

『俺様はハロウィン限定の聖獣だ。来年になれば必ず会える。だから……アマネよ、その指輪を受け取って貰えないか?俺様の感謝の気持ちと、お前への友としての証として……』

「ああ。大切にするよ、ジャック……」

俺は手を差し伸べると、ジャックは一つ頷いて手を握り、握手を交わす。

『また会おう……俺様の、契約者……』

そう言い残すと、ジャックの姿は透明となって完全に消えてしまった。

「契約、者……?」

「なるほどね。これはイレギュラーだけど、ジャック・オー・ランタンにとって天音は契約者と契約聖獣の関係になったのね」

「そうなのか?」

もしかしたら、このジャックの指輪を填めたときから既に契約が完了していたのかもしれない。

でも今はさっきまで外せなかった指輪が普通の指輪として中指から外すことが出来る。

「鳳凰の白蓮、ケルベロスの黒蓮に続いて、ハロウィン・キングのジャック・オー・ランタンか……」

「本当に天音は女性や聖獣に見境なくフラグを建てまくる一級フラグ建築士ね」

『ピィ、ピィー』

『『『ばう、がうっ』』』

『確かにな』

「何だよそれ……」

ジト目で睨みつけてくるみんなに俺は苦笑を浮かべながら俺達は学生寮の部屋に戻った。

部屋に戻るとすぐに白蓮達は眠りにつき、俺はベッドに寝ころんだ。

「疲れたぁー」

「天音、お疲れのところ悪いけど、まだハロウィンは終わってないよ」

「えっ?まさか……」

いやな予感が頭に過ぎり、千歳は笑顔でこう言った。




「Trick or Treat!!お菓子をくれなきゃ、悪戯しちゃうぞ♪」




やっぱり……。

ハロウィンの二大合い言葉で特に有名な『Trick or Treat』は子供がお菓子をもらう時に言う言葉だ。

お菓子をくれなきゃ悪戯するという可愛らしいものだが、千歳の場合は身の危険を感じる。

「お菓子なら冷蔵庫に入っているよ」

「ですよねー。まあ、分かっていたわ。天音に悪戯したかったけど、また次にするわ」

「それが狙いか……」

相変わらず俺に何かをしたい気持ちでいっぱいの千歳だった。

いつもは軽くスルーして受け流すが、今日ばかりは違う。

ハロウィン・キングとして一日中行動していた訳だから、今日の俺はなんとなくいつもより強くいられる気がした。

冷蔵庫に向かおうとした千歳を引き止めて俺は笑顔で言い放った。

「千歳、Trick or Treat♪」

「えっ……?」

「えっ?じゃないよ。千歳、お菓子はあるのかな?」

「お、お菓子?な、無いけど……」

千歳は一応料理は出来るが俺ほどの腕はないし、日頃からお菓子を作らない。

特に天聖学園に入学してからお菓子作りは俺に頼りっぱなしだ。

だからハロウィンでもお菓子を用意してないのは既に分かっていることだ。

「そっかー。お菓子が無いなら、千歳に悪戯をしなくちゃね♪」

わざとらしく言う俺に千歳は焦りを見せる。

「ま、待って!悪戯って言ってもそんな大したことはしないよね……?」

そして、千歳の顔が少しずつ血の気が引いたように真っ青になっていく。

そんな千歳に対して俺は……。




「大丈夫。俺も千歳も気持ちよくなる悪戯だから……心配しないでね♪」




日頃の仕返しを込めた黒い笑みを浮かべた。

「ひぃっ……ま、待って、天――」

逃げようとする千歳をベッドに押し倒し、俺は千歳の口を唇で塞いだ。

次の日、俺の悪戯によって終日大人しい千歳の姿を見られた。

初めて参加したハロウィンだったが、ハロウィンも悪くないなと思う俺だった。




.



如何でしたか?


私なりに考えたハロウィンでしたが。


そして、天音に第三の契約聖獣が……。


次出る予定はわかりません!!


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