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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第7章 千年京都編
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番外編 第1話 ハロウィンの王

京都編はまだ途中ですが、ハロウィンの特別小説です。


今日は前夜祭みたいなもので、明日が本番です。

10月30日、朝から俺はアリス先生の地下室でお菓子作りに励んでいた。

ただいつもと違うのは初めて使う食材が多かった。

「よし!カボチャと紫イモの下拵えはオッケーだな。さあ、ここからが勝負だ!」

「あの、天音……」

「何ですか?アリス先生」

「取り敢えず状況が理解できずにここを使わせているから、せめて何をしているのか教えてくれるかなぁ?」

「あ、はい。明日のハロウィンの為に特製のお菓子を作っているんです」

天聖学園では毎年10月31日に人間と聖獣の交流を深めるパーティーとして、ハロウィンパーティーが行われている。

ハロウィンは元々イギリスやアイルランドなどで秋の収穫を祝い、悪霊を追い払うためのお祭りであるが人獣契約システムが確立されてからハロウィンは人間と聖獣の為のお祭りとして世界中に広まった。

「あー、ハロウィンのお菓子ね。なら、千歳とかは何処に行ったのかしら?白蓮と黒蓮も見あたらないし……」

「千歳達は白蓮と黒蓮を連れて明日の仮装の準備をしています」

ハロウィンパーティーでは人間と聖獣は色々な仮装をすることになっている。

「天音は仮装しないのかしら?」

「うーん。仮装にはあまり興味ないし、俺はお菓子作りに励みます」

現在俺はカボチャや紫イモなど秋に収穫できる材料でハロウィンパーティーで出すためのお菓子作りをしている。

千歳を初めとする天聖学園のみんなが俺のお菓子を食べたいと言ってきたので俺の持てる全てのお菓子製造スキルで大量にハロウィンパーティー用のお菓子を作っている。

「そう言うアリス先生はハロウィンに参加しないんですか?」

「あはは、魔女の私がハロウィンには参加出来るわけ……」

「そう言えば蓮姫様が風音と鈴音と一緒にハロウィンに参加するって言ってましたけど?」

「よし!すぐに蓮姫を魅了する仮装をするわ!」

意外に単純な思考をしているアリス先生は自分の部屋に閉じこもって仮装の準備をした。

本当に蓮姫様が好きなんだなとしみじみ思いながら中身の身を取りだしたカボチャを見つめる。

「これは後で飾り付けのジャックランタンにでもしようか」

ジャックランタンはハロウィンの伝統的なシンボルの飾り付けの一つである、黄色のカボチャに目や口をくり抜いて怖い顔にした提灯だ。

「まずはカボチャタルトかカボチャプリンでも作るか」

ハロウィンと言えばカボチャがメインだ。

そのカボチャをふんだんに使ったお菓子を作り始め、明日のハロウィンに臨んだ。



セシリアside


イギリスの王宮で俺は紙束を持って執務室に訪れていた。

「姉さん、ちょっと良いかー?」

「セシリア、どうしたのですか?」

みんなから愛されている英国第一王女で俺の生き別れた姉さんのアルティナ姉さんは執務室で書類に判子を押していた。

「明日のハロウィンパーティー、取りあえず飾り付けやお菓子の用意が完了したぜ」

「ありがとうございます。書類はそこに置いてください」

「おう」

テーブルに持ってきた書類を置き、俺は適当なイスに座った。

明日の10月31日には俺の提案でイギリス王家主催のハロウィンパーティーがある。

イギリス中の施設や教会に住む恵まれない子供達を集めて楽しんで貰うためだ。

元教会育ちの俺が第二王女として騎士王になった後は姉さんに頼んでこういうイベントを開いて貰っている。

このハロウィンパーティーにはもちろん俺の母さんみたいな存在であるシルヴィアが運営している、俺の育ったペンドラゴン教会の子供達も来ることになっている。

「楽しみだな。子供達と一緒のハロウィンパーティー」

「そうですね、私も楽しみです。ハロウィンと言えば……“彼”が来ますかね?」

「彼?ああ、ハロウィンの日に現れると言う伝説の聖獣だな?」

一年に一度、10月31日のハロウィンの一日だけ世界のどこかに現れる伝説の聖獣が存在する。

その聖獣はハロウィンを楽しんでいる子供の前に現れ、たくさん驚かしてから美味しいお菓子を上げるという不思議な聖獣だ。

「ハロウィンの王と言われる不思議な聖獣、“ジャック・オー・ランタン”か……是非とも会ってみたいな」

子供達を喜ばせるためにも、是非ともジャック・オー・ランタンに会ってみたい。

「ジャック・オー・ランタンも良いですけど、セシリアは愛しの彼に会いたいのじゃないですか?」

「ね、姉さん。確かにアマネに会いたいけど、流石に迷惑なんじゃ……」

『だったら日本から王宮へ連れてくればいい話だ!!』

「アルトリウス!?」

突然扉からズカズカと俺の契約聖獣のアルトリウスが入ってきた。

『セシリア、恋はいつの時代も戦……たとえアマネにチトセという恋人がいても諦めたら終わり。拉致するぐらいの気持ちで行くんだ!』

意味が不明な暴論みたいなアルトリウスの持論に唖然とする私と姉さんだったが、私はそれのお陰で決心が付いた。

私はポケットから古びた鍵を持ってイスから立ち上がる。

「……姉さん、行ってくる!」

「はい、行ってらっしゃーい!」

「行くぞ、アルトリウス!」

『それでこそ、私の跡を継ぐ騎士王だ!』

私はアルトリウスと忠実な騎士達を連れて世界の色々な場所へ繋ぐ魔法の鍵・境界輪廻を使ってイギリスから日本に向かった。



天音side。


かなりの時間をかけ、既に夕方を過ぎてカボチャや紫イモなどを使ったハロウィンパーティー用のお菓子を完成させて冷蔵庫に入れた俺は地下室にあるソファーで寝転がっていた。

『ピィー』

『『『『がおっ』』』

白蓮と黒蓮は俺のお腹の上で一緒に横になって眠っていた。

このまま気持ちよくお昼寝をしようと思い、瞼がウトウトし始めて重くなっていく……。




ドバァン!!

「愛してるぜ、アマネェー!!」




扉が勢いよく開かれると同時に、聞き覚えのある声で俺に対する愛の言葉に思わず俺は起きあがってしまった。

「な、何だ何だ!?」

『ピィー!?』

『『『ばうっ!?』』』

突然開いた近くの扉にはイギリスの騎士王コンビのセシリアとアルトリウスがいた。

「よし!お前ら、俺のアマネを捕獲しろ!!」

「「「はっ!!」」」

数人の見慣れない騎士が俺の回りを囲むと縄であっという間に俺を縛り上げた。

『お前たち二人にも来て貰うぞ』

『ピヒィ!?』

『『『ばううっ!?』』』

アルトリウスは白蓮と黒蓮を抱えてから竜人としてなのか、騎士王としての力か分からないけど、不可視な力で二人を押さえながら抱きしめた。

「そのままアマネ達を王宮に連れて行くぞ!!!」

「「「はっ!」」」

「えっ?えっ??えぇーっ!???」

何も出来ないまま俺達は地下室から連れ去られ――否、拉致されてしまった。




そして……。




「……最初から普通に言ってくれればいいのに」

「あはは、すまんすまん。つい思いが爆発しちゃって……」

イギリスの王宮のキッチンでセシリア、更に王宮に勤める料理人と一緒にハロウィンパーティーの料理を作っていた。

俺に会いたかったためと、ハロウィンパーティーで是非とも俺の作ったお菓子を子供達に食べてもらいたいという公私混同の欲望が混ざって俺を拉致したらしい。

断ろうにも相手はイギリス第二王女だし、俺に好意を抱いている大切な仲間だから断る気になれず、少しの間だけ滞在することにした。

取りあえず、料理上手なセシリアと王宮の料理人と一緒にハロウィンパーティー用の料理をだいたい作り上げると、俺は一緒に連れてこられた白蓮と黒蓮の元へ向かった。




『ピィ、ピィー!』

『『『ばう、わうっ!』』』

「まあ、そうなのですか?」

『それは楽しそうですね……』

『日本はやっぱり面白いなぁ!』




白蓮と黒蓮は王宮のテラスでアルティナ様とラベンダー・ドラゴンのリーファ、そしてアルトリウスと優雅なティータイムをしながら楽しいお喋りをしていた。

「お前ら……楽しそうにティータイムを過ごしてますな」

「ははは!まあ、良いじゃねえか。ところで、アマネ。ここに来てくれた対価をまだ支払ってないな?」

「対価?別にいいよ」

「そう言わずに……貰っておけ!」

セシリアは俺を無理やり抱き寄せて顎に手を添えた。

「えっ――んむぅっ!?」

「んっ、くんっ……」

セシリアは俺の唇にまた自分の唇を重ねてキスをした。

前にキスされた時はただ唇を重ねるだけだったが、今回は舌を絡み合わせる大胆なディープキスだった。

先ほどお菓子作りで味見などをしていた所為か、セシリアの舌はとても甘く感じられた。

あまりにも突然で驚いてしまい、セシリアから離れようとしたが、

「んむぅ、んんーっ!?」

「んちゅ……くちゅん……」

セシリアは俺の体を強く抱きしめてホールドし、ますます離れなくしてしまった。

『ピ、ピィー!?』

『『『わうっ!?』』』

「あらあら♪」

『おや、まぁ……』

『ふっ、流石だ……』

白蓮と黒蓮は口をあんぐりと開けて呆然とし、アルティナ様とリーファとアルトリウスはニヤニヤしながら見ていた。

み、見るな!見ないでくれ、白蓮!黒蓮!!

セシリアとのキスは千歳のとは全く違う感じの気持ち良さがあったが、俺は大切な千歳を裏切りたくない気持ちが溢れ出した。

だ、ダメだ……これ以上は、戻れなくなる。

霊煌紋を輝かせて霊力を解放し、霊煌弐式を発動させて全身の身体能力を強化する。

「んっ、くっ……ぷはぁっ!!はっ、はっ……」

抱きしめるセシリアを押し返すように引き離し、ディープキスの余韻で体から力が抜けてしまい、腰を下ろしてしまった。

「んはっ……むぅ……もっとやりたかったのにな……」

セシリアはキスをした唇を舌で舐めてから指で軽くなぞった。

「な、何を考えているんだよ……」

「何って、お前を愛しているからキスをした。それだけだ」

「だからって、あんな激しいキスを……」

「やっぱり天音の唇は軟らかいし癖になるな。ご馳走様♪」

「セシリア……」

妖艶な笑みを浮かべてウィンクをするセシリアに俺は顔を真っ赤にした。




しかし、このキスが王宮に悲劇の戦いを引き起こすことになる。




「天音……何をやっているのかなぁ……?」




背後から死神からの死刑宣告の声を聞いたような気持ちとなった。

その声の主の姿を見た白蓮と黒蓮は珍しく恐怖の表情を浮かべ、体をガタガタと震わせていた。

アルティナ様達も同じような様子で脅えていた。

俺とセシリアはその正体を知るためにゆっくりと振り向いた。




「ち、千歳……!?」

「どうして、チトセがここにいるんだ……!?」




振り向いた先には日本にいるはずの千歳がにっこりと笑みを浮かべながら立っており、手には無幻九尾銃が握られていた。

笑みを浮かべているのは良いが、その笑顔は黒い何かを感じた。

「天音、婚約者の私がいながら浮気はダメだよ……?」

「いや、あの、浮気じゃなくて……」

「そうだぜ。あれは俺が勝手にキスしたんだからアマネの浮気じゃねえぞ」

セシリアは俺を庇うように前に立ち、エクスセイヴァーを構える。

「セシリア……あなた、天音が好きなの?」

「ああ。俺は――私はアマネを愛している」

「そう……分かったわ。それなら、容赦しないわ!!」

千歳の体から妖力が解放され、無幻九尾銃の銃口をセシリアに向ける。

「天音は私の旦那様よ!いくら騎士王とは言え、容赦しない!!」

「面白い……これはアマネの愛を賭けた、私とチトセの戦争だぁっ!!」

セシリアはエクスセイヴァーの切っ先を千歳に向けると、アルトリウスはエクスセイヴァーと契約してシャイニング・XX・カリバーとなる。

「ちょ、ちょっと二人共ぉーーーっ!?」

王宮にて千歳とセシリアの戦争が勃発してしまった。

それを抑えるのに俺や英国騎士団が総動員し、約一時間をかけてようやく収まるほどの激しい戦いだった……。

これが俺をきっかけに起きたって事は、やっぱり俺って呪われているのかなぁ……?

そう思わずにいられなかった。

そして、このハロウィンパーティーで俺に狙いを定める存在がいた。




『キヒヒ、ヒャハハ……いい依り代を見つけたぞ……さあ、今年も恐ろしくも楽しいハロウィンの幕開けだぞ!!』




それは、カボチャのジャックランタンを頭に被っていた人型の聖獣で、目や口のくり抜きから不気味な火を溢れ出し、紫色のコートを着用していた。

そして、俺はその聖獣と共にハロウィンの奇跡を見ることとなった。




.

明日の夜ぐらいに本番のハロウィン小説を投稿します。


天音にまたしても不穏なフラグが(笑)

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