0-4
突如鳴り響いた鳥の鳴き声に、俺はトランプを使ったピラミッド(36段からなる超大作…になる予定)を作る手を止めて、視線を上げた。
その先には壁掛け時計の小鳥が、能天気な鳴き声で18時をお知らせしている。
この時期の完全下校時刻は18時30分なのでまだ時間はあるが、殆どの生徒はもう校舎に残っていないだろう。
上げていた視線を前に戻してみる。
そこには手を付けられる事の無かった資料の山と、何処に隠していたのかと驚くほどのお菓子が、これまた手を付けられずに並べられている。
そしてその先には…こちらに背を向けて、椅子に体育座りをしている会長。
「…来ませんでしたね」
「っ……」
俺が発した言葉を拒絶するかのように、会長はその小さな身体をビクリと震るわせた。
…予想できた事だ。
入学前ならともかく、学園で生活していれば噂話などは自然と耳にするものだ。
その噂の中に、生徒会の事が入っていてもおかしくはないだろう。
「ゴメンね…ユウ君、こんな時間まで付き合わせちゃって…」
いつの間にかこちらへ振り向いた会長が苦笑していた。
「もう遅いし、後は私に任せてユウ君は先に帰ってて…」
「会長は、どうするんですか?」
「私は…もう少しだけ待ってみるわ。」
そう言った会長の表情は、いつもの輝くような活き活きとした表情ではなく、どこか陰りがあった。
…………っ
「…どうして」
「え…?」
「どうしてですか…もう誰も来るわけ無いじゃないですかっ!それなのにどうしてそんな事が言えるんですか!?」
突然の事に会長が目を丸くしている。
当然だ、怒りたいのは会長の方なのに…
「…そうね」
その声に伏せていた顔を上げると、目を丸くしていた筈の会長が笑っていた。
「確かに、ユウ君の言うとおりにもう誰も来ないかもしれない…でも、もしかしたら誰か来てくれるかもしれないわ。
その子が生徒会室に来たときに、誰もいなかったらきっと悲しむと思うの。
…それに」
「私って、負けず嫌いだから」
そう言って微笑む会長は、
いつものように輝いていた。
強き願いが必ずしも叶うなんて程、世界は綺麗ではない。
差し出した手が全て救われる程、世界は優しくは無い。
それでも…
それでも…っ!
「あ、あの…」
差し伸べられた声は、何処か間が抜けていた。