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女神の食堂 ―どうやら神の末裔の私ですが、ここが私の居場所です―  作者: 瀬戸


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第十五話 す、すごい……これがヴァルディア公爵家!?

「さあ行くぞ」

アルヴィンはそう言った。 


リリアを馬の前側に乗せ、後ろからリリアを抱きかかえるような形で、

アルヴィンが乗り、手綱を持つ。


リリアに負担がかからないように、ゆっくりとしたペースで

馬に乗り、進む。


やがて、城下町から少し離れ、王都の貴族街を抜け、さらに奥へ進んだ先。

ヴァルディア家の領地へと入ったところで、彼らを待っていた人物がいた。


黒塗りの立派な馬車の横に、背筋の伸びた老人が立っている。

「アルヴィン様、お待ちしておりました」


老人は深々と頭を下げた。

「さあ、こちらの馬車にお乗りください」


そして、穏やかな目でリリアを見る。

「そちらが、リリアお嬢様ですね。初めまして。私はヴァルディア家の執事でございます」


丁寧な所作で扉を開ける。

「どうぞ、こちらへ」


アルヴィンと共に、リリアはその馬車へと乗り換えた。

馬車はゆっくりと進み始める。


やがて視界に広がった景色に、リリアは思わず声を漏らした。

「すごく……広い……」


その様子を見て、執事が穏やかに説明する。

「ヴァルディア家は王国でも屈指の大貴族。一般の貴族の屋敷とは格が違います」


静かに続ける。

「敷地は小さな村に匹敵する広さ。屋敷というより城に近いとも言われております」


「本館、別館、騎士棟、客館、そして庭園。使用人は百名以上。私兵と護衛騎士も数十名おります」


リリアは呆然とした。

「アルヴィン……本当に公爵様なのね……」


馬車はさらに奥へと進む。

遠くに、ひときわ大きな建物が見えてきた。


三階建ての巨大な本館。

その横には高い塔がそびえ、見張りの騎士が立っている。


装飾も豪華で、まるで城のようだ。

正門をくぐってからも、馬車はしばらく庭園を進み続ける。


リリアは呆気に取られていた。

(す、すごい……これがヴァルディア公爵家!?)


庭園には、


噴水広場

薔薇園

果樹園

小さな湖

温室


と、どこまでも広がる景色。


思わずつぶやく。

「こんな広いスペース……何に使うのかしら……」


アルヴィンが淡々と言う。

「王都の貴族がお茶会や夜会を開く場所だ」


「中級貴族たちと親睦を図ったり、情報交換をしたりな」


そして一言。

「俺は興味がないが」


リリアは思った。

(アルヴィンは……本当に貴族なんだ……)


そして。

(この広大な領地を治める、公爵家のトップ……)


やがて馬車は、本館の前で止まった。


リリアは心の中でつぶやく。

(なんか……すごすぎて、もう疲れてきたかも……)


「さあ、降りて」

アルヴィンが言う。


執事が案内する。

「こちらでございます」


本館の扉が開かれる。


その瞬間。

リリアは固まった。


天井は三階まで吹き抜け。

巨大なシャンデリア。

赤い絨毯。

壁には先祖たちの巨大な肖像画。


(す、すごすぎる……)

リリアは少しおどおどしながら歩く。


隣にはアルヴィン。

そして気づいた。

(あれ……?)


(なんか……普段よりアルヴィンの表情が硬い気がする……)


使用人たちが次々と頭を下げる。

「アルヴィン様、お帰りなさいませ!」


そして――

リリアを見る。


ちらり。


ちらり。


(わ、私……場違いなんじゃ……)


リリアはどんどん恐縮していく。


一方アルヴィンは、本館に入ってから一言も話さない。

ただ、厳しい表情のままだ。


数分歩いた後、一室へ通された。


「こちらでございます」


扉が開かれる。


「リリア様、こちらをご利用くださいませ」


部屋を見た瞬間――


「ひ、広すぎる!!」

リリアは思わず声が出た。

(私の店の十倍はある!!)


高級ベッド。

個人用の風呂。

暖炉。


完全に王都の高級宿レベル。

テーブルには高級フルーツの山。


リリアは慌てて言った。

「私こんなところにはいられません!!」


するとアルヴィンが言う。

「なんだ、広すぎるのか?」


そして真顔で続けた。

「なら、俺が一緒にいてやろう」


すると執事がぴしっと言う。

「アルヴィン様」


「嫁入り前のお嬢様にそのようなことをおっしゃってはいけません」


アルヴィンが肩をすくめる。

「ジイは厳しいな」


「厳しくありません、ぼっちゃん」


リリアが反応した。

「ジイ……と、ぼっちゃん……?」


次の瞬間。

二人が同時に笑った。


「フッ、変わってないな、ジイは……」


「ぼっちゃんもです」


「リリアの前でぼっちゃんはやめてもらえるか」


「かしこまりました、アルヴィン様」


リリアはぽかんとする。

そして、ふっと笑った。


「お二人……仲良しなんですね」


執事は少し照れながら言う。

「ええ……と言えば、使用人として問題がありますが」


「子供の頃からアルヴィン様のお側におりますゆえ」


リリアは思った。

(この人……アルヴィンを小さい頃から知ってるんだ……)


そして言った。

「アルヴィン、この部屋に来るまで……なんだか硬い表情だった気がするけど」


執事が答える。

「それは当然でございます」


「公爵家の当主ですから」


「そのように振る舞う必要があるのです」


リリアは小さくつぶやいた。

「公爵家のトップ……」

(重圧すごそう……)

「そっか……」


アルヴィンが言う。

「リリアは何も気にするな」


「店の修理が終わるまでここに滞在すればいい」


「足りないものがあればジイに言ってくれ」


リリアが聞く。

「あの……執事様のお名前は?」


執事は微笑んだ。

「ジイとお呼びくださいませ」


「そんな……呼べません!」

恐縮するリリア。


アルヴィンが言う。

「呼んでやれ」


「ジイがそんなこと言うのは珍しい」


「お前のこと気に入ったんだよ」


リリアは思う。

(まだ会って数分よ!?)


(私のどこに気に入る要素が……)


執事は言う。

「ジイとお呼び頂ければ、それが私の幸せでございます」


リリアは少し困りながら言った。

「そこまでおっしゃるなら……」


するとアルヴィンが言う。

「じゃあ俺は騎士団の仕事があるから、これで失礼する」


「えっ」

リリアが言った。

「アルヴィン行っちゃうの……?」


アルヴィンの顔がぱっと明るくなる。

「何だ」


「俺に居て欲しいのか?」


「なら、いよう」


「い、いや大丈夫!」

リリアは慌てる。

(ダメだこの人……)

(私が止めたら絶対居座る……)

(騎士団の人に迷惑かかるよね……カイルとか……)


アルヴィンは少し残念そうに言う。

「分かった」

「ジイ、後のことは頼んだ」


「はい、ぼっちゃん」


アルヴィンは歩き出す。

だが。


一メートル進むごとに振り返る。


リリアは笑った。

「早く行ってください」


三人は笑った。


こうして――

リリアのヴァルディア公爵家での生活が始まった。


ジイは思っていた。

(リリア様がぼっちゃんの救世主になってくれたら…)

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