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女神の食堂 ―どうやら神の末裔の私ですが、ここが私の居場所です―  作者: 瀬戸


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第十三話 浄化

リリアは静かに一階へ降りた。

裏口から外へ出る。


壁に沿って、息を殺しながら表へ回り込む。 

慎重に。


ほんの少しずつ、通りが視界に入ってくる。

――いた。


離れた場所で、巨大なゴブリンが別の店を叩き壊している。

木材が砕け、瓦礫が飛ぶ。


あたりの民家は無残に潰されていた。

足が、すくむ。


それでも、リリアは自分の店を確認する。

……ドアが壊れている。


窓も。

そして。


窓から頭を突っ込んでいる、四メートルの巨体。

店の中を物色している。


(大丈夫……裏口には気づいてない……)


(まだ、二階には……)


窓の高さは四メートル五十。

ゴブリンは四メートル。

ギリギリ届かない。


(窓から覗かれない限り……みんなは――)


そのとき。


ゴブリンの鼻先が、鍋に近づく。

コトコト煮込んでいたシチュー。

匂いに惹かれている。


(よかった……それだけ見てて……)


祈るように願う。

だが。


ガタン!!


無情にも二階から大きな音。

商人が痛みに耐えきれず倒れ、金属の洗面器が転がったのだ。


ゴブリンが、ピクリと動く。

ゆっくりと、店の一階の窓から頭を抜く。


(ダメダメダメダメ……!!)


(気づかないで……!)


だが無情にも、ゴブリンは上を見た。


窓に気づく。

二階。


子どもたちは息を殺して伏せている。

商人も布を噛み、声を押し殺す。


ゴブリンは背伸びする。

ギリギリ届かない。


苛立ち、唸る。

「グルゥゥゥ……」


そして。


足元の木樽に気づいた。

それを踏み台に、ぐっと身体を伸ばす。


二階を窓の中から視認したのだ。


「ゴォォォオオオッ!!」


見つけた。

見つけてはいけない存在を。


棍棒が、振り上げられる。

二階へ向けて。


その瞬間。


「待って!!」


声が響いた。

気づけば、リリアはゴブリンの目の前に立っていた。


足は震えている。

けれど、逃げない。


ゴブリンがリリアを捉える。

棍棒が振り下ろされる。


リリアは目を閉じた。


(神様……)


ザシュッ。

鈍い裂音。


ゆっくり目を開く。

そこにいたのは――


「間に合った……!」


カイルだった。


剣がゴブリンの腹を深く裂いている。

ゴブリンが絶叫する。


腹に刺さった剣を残したまま、カイルを睨む。

棍棒を振り上げる。


「こ、こいつマジかよ!?」


次の瞬間。

ゴブリンは振り上げた棍棒の勢いのまま、斜め後ろへ倒れた。


ドシンッ!!


「ふゅい~……た、助かった……

 焦ったぜ…」


カイルは腰が抜けそうになりながらも、無理に姿勢を整える。


「リリアさん。俺は副団長の部下、小隊長カイルです。あなたをお守りします」


だが。

その背後。


もう一体。


「カイルさん! 後ろ!!」


「!?」

振り向きざま、剣で受け流そうとする。


しかし。


四メートルの怪力。

棍棒が直撃。


ドゴォン!!


カイルは隣家の壁に叩きつけられ、崩れ落ちた。


「カイルさん!!」


反応がない。

額から血が滲む。


ゴブリンがリリアへ向く。

フレアとエアリスが前に出る。


ゴブリンは精霊の姿を“視認”していた。

二体の精霊が周囲を飛び回り、ゴブリンを錯乱させる。


「ありがとう……!フレア、エアリス!」


リリアはカイルのもとへ駆け寄る。

そして、両手でカイルの手を握った。


(私に神様の力があるかなんて、分からない……)


(でも……もし本当に祈りで治るなら……)


リリアは目をつぶって必死にカイルの回復を祈った。


必死に。


音が消える。


意識が、深く沈む。


そして…自身で体感したことのない瞑想状態に入った。




ゴブリンをかく乱していたフレアが、ふとリリアを見て焦る。

『エアリス、やばいよ! リリア動かない!』


エアリスも叫ぶ。

『リリア! 起きて!』


だがリリアは動かない。


フレアとエアリスの視線の先にいるリリアとカイルに、

ゴブリンが気づく。


すぐさま、二人のもとにゴブリンは進むと、

棍棒を振り上げる。


無防備な二人へ。


絶対絶命の状態。

フレアもエアリスも精一杯、叫んだ。

『リリアァァァァァァァァァ!!!』


そのとき。


ふわり、と。

リリアの周囲に白い光が広がった。


澄み切った、静かな光。

そこには聖域が生まれた。


ゴブリンはその聖域の中にいた。


棍棒を落とす。

目を押さえ、絶叫。


「ゴォォォオオオッ!!」


光は強まる。

リリアの半径三メートル。


はっきりとした強い光。


次の瞬間。

ひと際強い閃光が放たれた。


ジュッ。

一瞬そんな音がした気がした。


二体の精霊フレアとエアリスは見た。

ゴブリンが黒い霧となって、消えたのを。


一瞬で。


フレアがその様子を見つめ、一言。

『あれって……』


エアリスが静かに続けた。

『あれは――浄化!?リリア……』


白い光はもう消えていた。


カイルの額の傷は消えていた。


リリアはまだ、目を閉じていた。

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