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【第二章】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!  作者: カナタカエデ
第二章

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二十二話 会いたかった

氷狼騎士団が王都の門を通過した――

その知らせがアメリアの元に届いたのは、シンシアの報告から数時間後のことだった。


アメリアはようやく重い腰を上げ、部屋を後にする。

肌の露出が多い白のドレスは涼しげで、人々の視線を奪う。


二年の時を経て、彼女の顔つきも体つきも大人びていた。

それでも、あえてこのドレスを選んだ――情けないと思いながらも、選ばずにはいられなかった。


ヴァルク・ストーンは、それほどまでにアメリアを待たせ続けていた。


互いに“永遠の服従”を誓ったというのに、彼がアメリアに会うためだけに王都を訪れたことは一度もない。

あの激しい口付けを最後に、まともな触れ合いすらなかった。


彼はいったい、何を考えているのだろう。


沸き上がる怒りを今日こそぶつけてやる――

その決意とともに踏み出す一歩一歩は、怒りの熱で押し上げられる階段のように、アメリアを前へ運んだ。


***


ヴァルクが城門をくぐり、正面階段へ降り立ったとき、アメリアはすでに階上に立ち、まるで見下ろすように彼を見つめていた。


「お久しぶりですね、ヴァルク」


馬を預けたヴァルクは、彼女を見上げる。


「アメリア! 元気そうだな!」


次の瞬間、彼は階段を駆け上がり、アメリアをふわりと抱き上げた。

軽々と持ち上げられ、視界が一気に高くなる。アメリアは思わず彼の頭にしがみついた。


「な、なにを……!」


「まさか出迎えてくれるとは思わなかった。今日は運がいいな」


子どものように嬉しそうな声に、怒っていた心が一瞬だけ揺らぐ。


「あ、あの! わたし……怒っているんですけど!」


叫ぶと、ヴァルクはきょとんとした顔を向けた。


「そうなのか? 何かあったか?」


(え……その認識なの……?)


睨みつけても、まるで心当たりがない顔。

二年の空白を気にも留めていないような様子に、胸が締めつけられる。


「いやぁ、殿下、お久しぶりです! 団長の突然の来訪に驚かれたとは思いますが、どうかお許しを」


後ろから届いた声に、アメリアは目を丸くした。


「エインハルト卿!」


氷狼騎士団第三部隊隊長、ガルド・エインハルト。

彼と顔を合わせるのは、アメリアがノルディアを去って以来だった。


ヴァルクは軽く舌打ちし、アメリアを下ろすと、手を取って向き合う。


「何を怒っているかは知らないが、後で話を聞こう。先に国王陛下へ挨拶しなければ」


「……今日も、そのままどこかへ行ってしまわれるのでは?」


「そんなことはしない。謁見が終わったら必ず会いに行こう」


「……わかりました。

エインハルト卿、ぜひあなたもお越しくださいませ。シンシアも心待ちにしておりますわ」


アメリアはガルドに柔らかな笑みを向け、ヴァルクに握られた手をそっと引き戻した。


**



「信じられる? 二年間もほったらかしにしたくせに、『何かあったか?』って言ったのよ!?」


怒りの収まらないアメリアは、自室でシンシアに捲し立てる。


「うーん、ジオ、どう思う?」


「俺に聞くな……あの馬鹿の考えていることなど知らん」


王宮でアメリアの護衛を務めるのは、氷狼騎士団ではない“山の民”の首領ジオだ。

隠密任務の多いシンシアの相棒として、彼はこの二年、ほとんどの時間を王宮で過ごしていた。


ノルディアへの道中での狼の襲撃を、二人はまるでなかったことのように振る舞うが、アメリアは忘れていない。

依頼主を聞き出そうとするも、ジオは口を割らず、シンシアも「依頼だから当然だろう」と取り合わなかった。

結局、あの襲撃の真相は闇の中のままだ。


それでも、二人がそばにいてくれることは心強かった。

シンシアとジオは、相棒であり、恋人であり、親友のようでもある――特別な絆を感じさせる。


その姿を見るたび、胸の奥が温かくなり、そして少しだけ切なくなる。


ふたりの仲睦まじい様子は微笑ましく、嫌な気持ちを和らげてくれた。


「アメリアも、ヴァルクに会いたくなかったのか?」


「えっ?!」


ジオのストレートな言葉に、アメリアの動きが止まる。


「俺はまったく会いたくなかった」


「ははっ、アメリアは会いたかった!に決まってるだろ?」


シンシアが笑い転げ、アメリアは黙り込む。

ジオは深いため息をついた。


「なら、そう言えば良い。無意味に怒っても仕方ない」


(ジオってば…正論を吐くわね……)


そんなこと、わかっている。


――届かない手紙を何度も書いたこと。

――返事のない夜をいくつも越えたこと。

――会えると期待したのに“すでに出立した”と告げられた日の落胆。


全部、言葉にできるほど単純じゃない。


子どもじみた感情だと分かっている。

何年生きてきたのかと、自分に呆れるほどだ。

遠くにいる間は誤魔化せたはずなのに、こうして姿を目にすれば――胸の奥で、抑えていたものがどうしようもなく溢れてくる。


この渦巻く気持ちを、どこへ置けばいいのだろう。


アメリアはそっと息を吐き、胸元をぎゅっと握りしめた。


――会いたかった。

それだけは、紛れもない本心なのに。


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