表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第二章】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!  作者: カナタカエデ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/23

十九話 駆け引き

祝宴には国内の有力者たちが招待されていた。

政治家、貴族、商人――皆が列をなし、アメリアとヴァルクへ祝いの言葉を述べに来た。

しかしその多くは、ノルディアが手に入れた幸運にあやかろうとする者ばかりだった。


あからさまに下心を隠そうともしない者も多く、アメリアは思わず気分を害した。

だがヴァルクはそんな相手に対しても表情を崩さず、淡々と応対していく。

時には相手をたしなめるような言葉も添えながら、その振る舞いは王女の婚約者として申し分なかった。


来訪客がひと段落すると、ようやくアメリアたちにも食事が運ばれた。


「驚きました。ああいう人たちの相手が得意なのね」


「なんだそれは。意外だったか」


ヴァルクは眉をひそめながらも、どこか嬉しそうに笑った。


「伯爵位を賜った直後はもっと酷かったからな。若かったし、腹も立ったから色々とやらかしたが……まあ、もういい年だ。あの程度の者たちは相手にもならん」


「そうですか……。皆、ノルディアの鉱山を狙っていますね」


「なんらかの恩恵を得ようと、どこも必死だ。

だが、我々もあれだけのものを独り占めしても仕方ない。ノルディアがさらに豊かになるには、周りとの協力も不可欠だ。

要は――使いようだ」


ヴァルクが嬉しそうに語るのは、ノルディアの未来を明るく見据えているからなのだろう。

前世の未来を知らなければ、アメリアも同じように笑えたはずだ。

そう思いながらも、彼女は精いっぱいの笑顔を返した。


「やあ! アメリア! ストーン伯爵! このたびは婚約おめでとう!」


意気揚々と現れたのは、フィリップ・モリスだった。


「あら……フィリップ。モリス公爵はいらっしゃらないの?」


「ああ、父は体調を崩していてね。それよりアメリア、大変だったらしいね。大丈夫かい?」


何を指しているのか言わずとも、それが誘拐の件であることは明らかだった。

ヴァルクはすぐに立ち上がり、フィリップの手を取る。


「ご心配感謝いたします。モリス公爵にもよろしくお伝えください。

それと……どこでそのことをお聞きに?」


「ダリオンだよ。僕は彼の相談役だからね。

でも安心してくれ、僕から外へ漏れることはない」


冷たい青い目。

吸い込まれるように美しく、同時に感情の読めない瞳だった。


「ダリオンはあなたになんでも話すのね……」


そう告げると、フィリップはゆっくりと口元を緩めた。


「そうだね。どんなことを話してくれるか、教えてあげようか?」


そしてアメリアの前へ静かに手を差し出す。


「ダンスの間に……どうだい?」


アメリアは差し出されたフィリップの手を静かに取った。

その瞬間、隣で控えていたヴァルクが、ほんのわずかに目を見開く。

驚き――そして、止めるべきか一瞬迷う気配。


だがアメリアはフィリップの背に隠れる角度で、ヴァルクへそっと視線を送った。


(ごめんね……大丈夫だから)


ヴァルクは苦く息を吐く。

その表情には混乱が見え隠れしていた。


「行こう、アメリア」


フィリップが軽く腰に手を添え、ダンスの円へと導く。

触れた指先は礼儀を守ってはいるものの、どこか冷たい。

その温度に、アメリアは胸の奥からわずかな警戒心がせり上がるのを感じた。


(フィリップには何かある……彼の本性を暴いてみせる)


フィリップの横顔を盗み見る。

彼は微笑んでいる。柔らかく、社交的で――

誰もを魅了する美しさを持った人。


やがて音楽が流れ出し、ふたりのステップが始まった。

アメリアはドレスの裾を翻しながら、静かに覚悟を固める。


これはただの祝宴のダンスではない。

彼の口から少しでも“本音”を引き出すための――危うい駆け引き。


(必ず……聞き出してみせる)


煌めく宴の中央で、アメリアとフィリップの舞踏が始まった。


アメリアはステップを合わせながら、できるだけ何気ない調子で口を開いた。


「それで……いつもお兄様とはどんなお話をされているのかしら?」


フィリップは視線を合わせず、軽やかに彼女を回しながら答えた。


「大したことじゃないよ。彼とマリアの――将来のことがほとんどだ」


「……将来?」


「うん。彼はいつもマリアに相応しい未来を見据えてるからね」


「ダリオンお兄様はずいぶんマリアを大切にしてるのね」


「当たり前じゃないか。伯爵だって、君を誰よりも大切にしているだろう」


ようやく彼はアメリアを見た。

微笑んでいる。

だが、その奥の青い瞳は、氷のように静かで冷たい。


「カリオンお兄様のことは? お二人の関係はどうかしら」


「カリオン王子? どうって……普通じゃないか」


アメリアは胸のざわつきを悟られぬよう、表情を保つ。


「ほんとう?」


「どういう意味だい?」


フィリップはアメリアの指を引き、深くステップを踏ませた。

まるで彼女の反応を楽しむように。


「ふたりの間に溝ができてるって知っているんじゃない?」


「……ダリオンはいつだって家族のために行動する男だ」


その言い方には確かな意図があった。

だが、真意は読ませない。


アメリアの心臓がわずかに強く跳ねる。


(もう少しで何か掴めそうなのに……)


「では、あなたはどうして私があなたを嫌っているか……覚えている?」


フィリップは目を見開いた。

驚き――そして、その瞳に喜びが宿る。


口を開きかけた、その瞬間。


祝宴会場の舞踏会場の扉が大きく開かれ、数人の護衛たちが入ってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ