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StoryCode:“taikou”#1 『恍惚のランクタイトルマッチ』

本心は⋯

StoryCode:“taikou”#1 『恍惚のランクタイトルマッチ』


「あ、お兄ちゃんおかえり〜」

「ただいま」

高校から家へ直帰した俺。今日はバイトも入れていないので、思う存分、オンラインゲームに励もうと意気込んでいるところだ。

「お兄ちゃん今日さ、一緒に夜ご飯食べに行かない?」

「あー、今日か?」

「うん!」

「今日は、無理だな」

「ええー、、、なんでよ」

「いや、今日はランクタイトル戦なんだよ」

「『ランクタイトル戦なんだヨぉ』って簡単に言われても分かんないよ!えなに?可愛い可愛い妹のおねがいを聞けないぐらいお兄ちゃんって偉かったッケ?」

妹はほんと調子の良い奴だ。そこがいいところでもあるが悪いところでもある。まぁ、高校1年の女番長的な立ち位置を維持している女だ。兄の俺にもそのぐらいの感情で立ち向かうのは当然と言えば当然だ。

「聞けないな。今日は大事なランクタイトル戦なんだ。すまないがこればっかりは譲れない」

「おねがい!」

「⋯⋯!」

妹が制服を脱ぎ掛けた俺へ目掛けて、タックルとは名ばかりの“癒着”を開始してきた。はぁ⋯もうまったく⋯こんな事ばっかりだ。兄貴だぞ?お前の肉親だぞ?そんな妹の制服姿で接触されても興奮する訳ないのに。

「てか、お前早く制服着替えろ。シワ付くだろ」

「お兄ちゃんと一緒に制服デートしたいから、このまま着て待ってたの⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯」

⋯⋯⋯⋯いやいやいや、俺はこんなものには踊らされない。

「だからお兄ちゃんも、その制服のままでいて。ね?」

ブレザー、ネクタイ、そしてワイシャツ⋯と、上から順番に脱ぎ捨てていた制服を、妹は手に取っていく。決して、汗が拭われている⋯という訳では無いワイシャツも。妹は何の迷いも無く拾い上げた。


─────────

「私と、ランクタイトル戦。どっちが大事なの?」

─────────


「⋯⋯⋯⋯⋯お前だよ」

「やったー!!じゃあ行こー!」

負けてしまった。本当は、めっちゃくちゃにランクタイトル戦なんだが⋯。いやでも、それは本当にそうなのか?俺は⋯ただただ妹に強がっているだけなんじゃないか⋯?どうなんだよ俺。今こうして、妹に『はぁ⋯分かったよ⋯』と、妹からの強気な誘いに負けた感じを演出しているけど、本当は⋯妹とメシ、食いたかったんじゃ無いのか?

、、、、恥ず。やば俺。ぜんぜん正直になれねぇや。


「ゲームなんていつでも出来るもんね〜」

「お前とも別に、いつでも遊べんだろうが」

「女は毎日変化を求める人間なの。だから、今日の私は今日だけ。明日には違う私がお兄ちゃんの前には居るんだよ?」

「なんだそれ。どっかの小説の台詞かよ」

「ンヒヒ⋯おもしろい??」

「あーおもしろいおもしろいすっごいおもしろい」

「何それお兄ちゃん。去勢してやろうか??あぁん?」

「女がそんなこと言うんじゃねえよ⋯」

「可愛い可愛い妹にそんなこと言ったお兄ちゃんには罰を執行します!」

「うわーまじかよー」

「私を⋯⋯ビュッフェに連れてって!」

玄関で靴に履き替えながらそう言った妹。言葉だけでは無理な願い⋯?と判断したのか、俺の身体に密着も実行。妹の胸が当たり、更には妖艶な香りが漂う髪の毛も目の前に。

あらあら、いつの間にか、妹も良い女になってきたんだな。

何だこの感想、クソジジイじゃねえか。


「分かったよ。ビュッフェ、行こうか」

「やったー☆!あ、私、お金出さないからね」

「当たり前だろ。妹に出させるほど、俺は弱い男じゃない」

「お兄ちゃん大好き」

「財布としか思ってねぇクセに」

「そんなことないもーん!大好きだよ、“本当に”」

「⋯⋯!」

「さっ!行こー行こー!」

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