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StoryCode:“izon”#1 『無言の羨望』

StoryCode:“izon”#1 『無言の羨望』


はぁ⋯終わった。今日も、仕事が終わった⋯。

今日任せられていたプラントでの作業を全て終了させ、俺は本部に戻る。だが、本部に戻っても直ぐに帰れるということでは無い。

あーあ、こういう17時キッチリに仕事が終わった日に限って、本部会議が発生してしまったのだ。

元々、これは予定されていたもの。というか、恐らくら18時から始まる会議があるから定時通りに帰れるよう調整されていたのかもしれない。

うわぁーマジでだるい。今、車を飛ばしている。

憂鬱だよホント。このままだと直行で本部に着いてしまう。本部へ着くまでまだ1時間はあるし、どっかコンビニで買い食いでもするか。会議もきっと長くなるから⋯。間食というやつだな。


本部に帰還。

俺は完全に忘れてしまっていた⋯。

そうだ。

17時以降、会社の規約による残業の場合になると菓子パン等の軽食がケータリングとして提供される。今日は18時から会議。これは紛れも無く、会社の規約に則った残業。

こちらから金を払わなくても、会社がお金を払った無料で俺は腹を満たす事が出来る。

⋯⋯⋯⋯最悪だわ。ちょっと我慢したら、無料で菓子パンが食えたじゃねえか。うわぁ⋯もう最悪。

無駄な金払っちゃった⋯⋯⋯あーーーアアアアアア!!!



18時、会議開始。

19時、会議終了。


俺の担当しているプラントの現状報告。それに加えて、他の社員が担当しているプラント。それが計13人連続して行われる。これがもう⋯疲れたってもんじゃ済まされないやつだ。


「お疲れ様です。良かったらコレどうぞ」

「⋯ああ⋯ありがとうございます」

ウチの会社の女性スタッフが、菓子パンを差し出した。しかも1個じゃない。女性スタッフがボックスを両手で持ち20個以上はある菓子パンを支えている。

「あ、でも俺⋯さっき貰いましたから」

「良いんですよ。ちょっと買いすぎちゃったんで⋯なんなら全部貰ってもいいくらいですよ!」

「そう、ですか⋯」

マジかよ。やったーーー!これ、全部貰ってもいいんすか!?うれちぃ。これはうれちぃ案件デスねー!

食費が浮くのはもちろん。この菓子パン、俺の好きなコンビニのやつなんだよ。よくワンコインで購入出来る菓子パンがあるけど、俺はそれにはまったく目が光らない。俺は一つの菓子パンに“100円と50円近辺の数字”を払いたいのだ。

中途半端に安い菓子パンは、正味、美味しくない。ただの腹を満たすだけの食物に過ぎない。

ここは、甘える事にしよう。言われたんだ。

“全部貰っちゃおう!”。


「じゃあ!もら、、、い、、、まー⋯⋯」

ボックス内にある全ての菓子パンを貰おうとしたその時、女性スタッフの後ろから、羨望の眼差しを向けるデブがいた。


え、、、、マジで。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

何も言ってこない。ただ、間違いなく俺の動向を気にしている。

⋯⋯欲しいんだな。この菓子パンが、欲しいんだな。

俺が全部取ってしまう⋯と思って、必死なんだな。

だが残念。この女性スタッフは俺を選んだ。

俺が菓子パンを貰う権利がある。

全てを、な。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


すげぇ、見てくるな⋯⋯⋯。なんなんだよ⋯コイツ。


あげねぇからな。俺は絶対、あげねぇからな!!

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