StoryCode:“syukusei”#1 『俺は彼女の元へ歩むべきだったのか』
足が動こうとしなかった。
StoryCode:“syukusei”#1 『俺は彼女の元へ歩むべきだったのか』
「ヨシャア!!」
また一人。それにプラスして、流れ弾が他のクラスメイトにぶち当たった。これで9人目の撃破だ。
「もう強過ぎだよ⋯⋯」
「さぁほら!来いよ!来い来い来い!」
流れ弾のボールが相手陣地に渡り、俺は防御or回避に徹するしか無くなる。ただそのボールをキャッチすればいいだけ。しかし相手チームはそのボールを易々と渡してはくれない。
「おーい、お前らぁー、何逃げてんだよ!」
「ほら!こっちだこっち!」
外野のプレイヤーが内野のプレイヤーに対して、ボールを要求する。結構分かりやすいアピールをしてくれるんだな。おもろい。⋯と言っても、これが作戦の可能性だって有り得る。外野からボールを求めるプレイヤーをマンマークしていると、隙を突かれて、他のプレイヤーにボールが渡った瞬間、俺は撃破の的に下ってしまう。しかしこれには相手チームのテクニカルな部分が重要視される所がある。まぁ、無理だろうな。
俺みたいなドッジボール天才プレイヤーがいなければな。
俺のAチームは一人。俺だけだ。対する相手Bチームは6人。男と女が混在している。しかしまぁそれにしても、Aチーム⋯俺以外全員使い物にならねぇ連中だな。どうしてこんなにもドッジボールへの知識が欠落しているのに、『ドッジボールやりたい!』なんて馬鹿な意見が飛び交ったんだよ。
「スキやり!」
「おっと⋯⋯」
外野からのボールをキャッチ。
そっちを見ていないからと言って、俺が一つの物事に意識を向けている訳じゃない。俺は全方位への意識を持って、常に行動を遂げている。
俺が思考にだけ意識を巡らせるような単細胞な人間じゃない事を今から見せてやるよ。
俺は先程カマしてやった二連同時撃破を狙い、凄まじい回転力を秘めたスマッシュボールをカチ込む。
見事、俺のボールは最初、男にクリーンヒット。肩部に直撃。その肩に直撃したボールは俺の思惑通り、地面へ叩き付けられる事なく、そのまま相手陣地のプレイヤーに狙いを定める。もちろん、ボールに誘導ミサイルのようなホーミング性能は搭載されていない。
そんな事が出来るなら、やってみてぇよ⋯⋯⋯。
ボールは2人目を狙う。球速は衰え知らずだ。一回プレイヤーに直撃したのに、まるで加速板にでも通過したかのようなスピードを維持。
そんな撃破性の高いボールが2人目のターゲットに直撃!またも俺は喜ぶ。しかし、周りは女にボールが直撃した瞬間を見て、一斉に女の元へ集まる。
2人目のターゲットに指定された女の“顔面”にボールが命中したのだ。
直撃音は相当なもの。10階から1階のコンクリート床へ水風船を落としたような非常に鈍く通る音が響いた。とても、女が痛さを覚えるような音では無いだろう。
寄って集って集まるクラスメイト。
みんなの視線は、ボールを放った元凶である俺に集約された。




