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水海村ダンジョン⑤まさかのアイテム発見

「六階層、来た」


 氷織の警戒レベルが一段高くなる。

 水海村ダンジョンは最初からい最後まで洞窟タイプのダンジョンとなっている。見た目はこれまでの五階層までと六階層以降の大きな違いはない。

 だが、出現するモンスターは大きく違う。格段にモンスターのレベルが高くなる。

 氷織が単独でダンジョンを攻略するのなら、大きな問題はない。警戒して、安全を確保しながら進めばいい。

 しかし、現在は護衛という名の足手まといがいる。蘇鳥を守りながらダンジョンを進むとなると一気に難易度が跳ね上がる。油断するとモンスターに囲まれたり、大怪我を負うことになる。


「氷織、六階層を調べたら、すぐに引き返すぞ。さすがに準備もなしに挑んでいい階層じゃない」

「わかった」


 氷織の視線はずっとダンジョンの奥に向いている。警戒を外した瞬間にモンスターに狙われる可能性がある以上、悠長に蘇鳥に構っていられない。

 蘇鳥も危険を承知しているので、無駄話はせずに調査に入る。


「マジか。やっぱりこのダンジョン、お宝が眠っているな。想像以上かもしれん」


 六階層の壁は濁った白色のような、くすんだ銀色のような色に見えなくもない。

 もし、蘇鳥の考えが正しいのなら、水海村ダンジョンはお宝の宝庫だ。効率が悪くて見向きもされないダンジョンから、多くの冒険者で賑わう大人気ダンジョンになる可能性が秘められている。


「氷織、すまん」

「何?」

「入念に調査したい。悪いが、ちょっと進もう」


 六階層の入口付近で分かることは少ない。詳細に調べるのなら、ある程度中に入らないと分からない。蘇鳥は無茶を承知で頼み込む。


「アイス、食べたい」

「分かった。ダンジョンから出たら、いくらでもアイスを奢ってやる」

「やったー」


 確認終了。護衛はアイスで釣られました。

 二人は最大限の警戒をしながらダンジョンを進む。中盤まで進んだところで、ダンジョン調査を再開する。


「これから調査に入る。完全に集中するから、守りの一切は頼んだ」

「りょーかい」


 蘇鳥は早速ダンジョンに向かってスキルを使う。

 使用するスキルは【百里眼】。ダンジョンを透視できるスキルだ。これを使って、ダンジョンの壁に何が隠されているのか調べる。

 ダンジョンのどこに何が隠されているのか分からないので、普通とは違うものがあれば一つ一つ確認する必要がある。しかも、スキルを通して物体を見るので、肉眼で見るのと違ってはっきり見えない。

 確認作業は時間を要する。

 とはいえ、ずっとスキルを使っていると魔力を消費する。魔力がなくなれば、ダンジョンでは何もできなくなる。魔力がなくなれば切り上げる必要がある。

 魔力が切れるのが先か、ダンジョンのお宝を探すのが先か。


「あれは、ただの骨か。あっちは、鉄? いや土塊か。で、次のは……ちっ、ゴミか」


 ダンジョンの壁の中は均一ではない。複数の素材で構成されている。砂や土などの柔らかい素材が大半だが、金属が含まれていたりもする。

 壁の中を凝視すること数分。蘇鳥は確証を得られずにいた。

 これ以上スキル【百里眼】を使っていると、魔力が心もとない。貴重な素材がある確証がなければ、担当者に説明する際は、お宝が眠っている可能性があるという情報に留めておく必要がある。証拠もなしに断言することはできない。


「ん! あれは、やはり、あったか、深淵銀!」


 蘇鳥の眼はしかと深淵銀を確認した。確認できた量はわずかだが、存在が確認できれば十分だ。スクショでも撮れれば確実な証拠になるのだが、そんな便利なスキルは持っていない。仕方ないが言葉で説明するしかない。

 スキルの行使をやめて、調査から戻ってくる。


「わぁーお」


 蘇鳥がダンジョンに目を向けると、そこは氷の世界だった。

 あたり一面、氷で覆われている。スキルを使って熱くなっていた体に冷気が心地いいと感じるのは一瞬で、急速に冷えていく。


「アイスワールドを使ったのか?」

「そう。オオカミさん、多かったから」


 水海村ダンジョンの六階層に出現するモンスターはゲイルウルフ。風を操るオオカミのモンスターだ。

 常に複数体で行動しており、戦闘する際は囲まれないように気を付けなければならない。攻撃力、防御力、素早さ、連携力、すべてが高水準の強力なモンスターだ。

 五階層までのモンスターを楽に倒せる冒険者でも、ゲイルウルフは簡単には倒せない。五階層と六階層には大きな壁が存在する。


「多くたって、アイスワールドを使うほどじゃないだろうに?」

「24匹だった」

「一集団で?」

「そう」

「それは、多いな。というか、多すぎる。このダンジョン、実は他にもなにかーーいや、それを考えるのは俺の仕事じゃないな」


 通常、ゲイルウルフは5匹から6匹の集団で行動している。モンスターの集団は時折、合流して大きな集団になることがある。24匹という数は前例がないわけではないが、超絶に珍しい大合流だ。世界でも数例だ。

 大集団に対抗するため、氷織が大技のアイスワールドを使うのも仕方ない。

 アイスワールドとは、周囲一帯を氷で覆うスキル。大量の魔力を消費する大技。その分、大技に見合った効果がある。

 まず、気温の低下だ。気温を下げることで、モンスターの活動を低下させることができる。寒さに適応できないモンスターなら、それだけで動きが鈍くなる。変温動物ならぬ変温モンスターには厳しいのだ。

 次に地形の変化だ。地面並びに壁を氷で覆うことで、滑りやすくする。地面を移動するタイプのモンスターはつるつるの地面で走れなくなったり、転んだりする。

 最後に、アイスワールド空間では氷系のスキルの威力が向上する。使用者の技量にもよるが、威力が2倍や3倍になることもある。氷系のスキルを多用する氷織のとっておきのスキルだ。

 ただし、強力無比な【アイスワールド】にも弱点がある。

 普通に炎系のスキルで氷が溶ける。氷が溶けると、せっかくの効果が半減する。全部溶けてしまえば、何も残らない。無駄に魔力を消費するだけ。

 しかし、相手は風を操るゲイルウルフ。氷を溶かすようなスキルは使えない。

 おそらく、アイスワールドを発動した後は、一方的な蹂躙が展開されたのだろう。寒さでブルブル震えるオオカミ、つるつる滑る地面ですってんころりんするオオカミ、アイスランスで串刺しにされるオオカミがいたに違いない。

 六階層からモンスターの強さが格段に上がるが、本物の実力者からすると五階層までと大差なかったみたいだ。

 蘇鳥は油断ならないと思っていたが、どうやら杞憂だったらしい。


「魔石、うまうま」

「そうか。もう、このダンジョンに用はない、帰るぞ」

「はーい」


 調べるものを調べた以上、もう水海村ダンジョンに用はない。

 二人はダンジョンの入口に向かって引き返すのだった。


TIPS

ゲイルウルフ

風を操り、常に複数で行動するオオカミのモンスター。

風は攻撃にも防御にもなる。

そこそこ価値のある魔石を落とすが、常に複数体と戦わないといけないので、ソロの冒険者では厳しい。パーティを組むと楽に倒せるが、報酬を頭割りにすると微妙な報酬となる。

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