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六畳一間ダンジョン③新しい素材ですか?

新素材の発見は確かにすばらしい功績だが、名前が知られるかどうかは難しい。素材だって千差万別、玉石混交だ。価値があるものを発見したら名前が残るが、価値のないものだったら誰にも知られず終わる。

 ただ、ダンジョン再生屋の仕事にプラスになることは間違いないだろう。


「にしても、力を吸い取るって、何を吸い取るん…………いや待て、さっきの氷織のスキルの違和感、もしかして魔力を吸われたのか? 氷織、壁に向かってもう一度スキルを使ってくれ」

「ん、わかった。【アイスランス】」


 氷の槍が再度壁に向かって射出される。特に変わりがないように思えるが、蘇鳥は先ほど感じた違和感の正体に気づいた。


「【アイスランス】が消えるのがわずかに早い」

「ん、違いがわからない」


 ほんの少しだが、氷の槍が消えるのが早い。些細な違いでしかないので、つぶさに観察しなければ分からない。だが、そんな些細な違いに気づけるのはダンジョンなりスキルに詳しい者だけだ。現にスキルの使用者は違いを認識していない。


「壁が魔力を吸収するから、スキルが消えるのが早くなったのか。面白い効果だけど、これだけか? もっと他にないのか? もう少し調べてみるか」


 蘇鳥はもう一度電脳龍製小型汎用計算機を取り出して、四苦八苦しながら素材を調べる。

 うんうん唸りながら調べた結果、新しいことが判明した。


「どうやら、魔力をたくさん吸収すると性質が変質するみたいだ。壁に向かってスキルをたくさん使うといいのか? 二人とも、壁にスキルを使ってもらってもいいか?」

「わかったね」

「ん、了解。でも、私たちがいなかったら、どうしてたの?」


 それは、と言葉に詰まる蘇鳥。もし一人で調査に来ていたら、この壁の性質に気づくことはあっても、実際の効果を確認できたかは怪しい。


「私たちがいて、よかったでしょ」

「そうだな、いてくれて助かった。ありがとう」


 勝手についてきたんだろ、というのは野暮な話だ。


(二人にはアイスでも奢るか。もう秋も終わり、冬の訪れを感じるが、大丈夫だろう)


 二人がスキルを使うこと数分、ダンジョンの壁に変化が見られた。


「気をつけろ、何が起こるか分からない。警戒は忘れるな」


 上級に足を踏み込んでいる冒険者には釈迦に説法かもしれないが、注意喚起するに越したことはない。

 電脳龍製小型汎用計算機で調べた範囲では、ダンジョンの壁がたくさんの魔力を吸収すると性質が変化するという情報まで。どのように変化するかは謎だ。

 絵似熊市ダンジョンのように壁から突如モンスターが出現する可能性は否定できない。

 もし、強敵のモンスターが出現したら、この狭い部屋で戦うことになる。危なくなればすぐにダンジョンから脱出できる。救いがあるのは嬉しい。


「ん。終わったっぽい」

「どうなったのか気になるね」


 警戒は徒労に終わった。危ないことが一切起きることなく、ダンジョンの壁の変化は終わった。心配は杞憂でした。


「二人ともありがとう。これから調べるから、休んでてくれ」

「ん、わかった」

「何かわかったら教えてね」

「おう、任せとけ」


 蘇鳥はダンジョンの壁に向かって、変化した部分を観察する。


(色が大きく変わっているな、明らかに隣の壁と色が違う。手触りは……あまり変わりないな。匂いは……変化なしか)


 次に、壁から素材を削り取って、手に乗せる。見た目はただの砂。

 観察してみるが、特に何か違いがあるようには見えない。スキルも使って調べてみるが、特に情報は得られない。


(普通のスキルじゃ調べられない素材、一体どうなっているんだ? 電脳龍製小型汎用計算機があって助かったな。他のダンジョンにもスキルじゃ分からない素材が眠っている可能性があるな。もしかして、全ダンジョン調べ直しか。まあ、それはおいおい考えればいいか。一人でできることでもないし)


 スキルレベルが低いと思った情報を得られないことがある。六畳一間ダンジョンの壁の素材は相当高いレベルの解析スキルが必要になるのかもしれない。

 蘇鳥のスキルレベルは決して低くない。それでも足りないとなると、素材を見つけられる人材はほとんどいない可能性がある。

 電脳龍製小型汎用計算機がダンジョン専用というのは伊達ではないらしい。上級の冒険者のスキルレベル以上の解析能力を秘めているいるようだ。


(ともかく、もう一度、電脳龍製小型汎用計算機を使って調べてみますか)


 蘇鳥はスマホを取り出して、もう一度電脳龍製小型汎用計算機を扱う。さっき使ったが、一度で覚えられるほど直感的な使い方はできない。アプリを駆使して四苦八苦しながら、ダンジョンの壁を調べる。


「えーと何々、祝いの泥、名前は変わらず、か。で、性質は、エネルギーを吸い取る、か。……さっきまでは力を吸い取るだったよな。力ってのは魔力のことだとして、エネルギーって何だ?」


 エネルギーにも色々ある。運動エネルギー、位置エネルギー、電気エネルギー、熱エネルギーなどを吸収できるのだろうか?

 蘇鳥は手に泥を手に取って、色々と思いを巡らすが、結論は出せない。


TIPS

電脳龍製小型汎用計算機

データサイエンスゲーミングドラゴンを討伐するとたまにドロップする魔道具。

センサーを使ってダンジョンを調べたり、モンスターを調べることができる。また、同じ魔道具を持っている者同士で通信することも可能。

要するにダンジョンで使えるスマホ。

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