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都会の都市ダンジョン⑦呆気ない幕切れ

 DSGDからマヌケな声が漏れる。

 空を悠々と飛んでいたDSGDの羽ばたきが止まり、完全に停止する。揚力を失ったDSGDが自由落下に入る。程なくして、地面に激突し、辺り一面に重低音の激突音が鳴り響く。


「拘束時間はそう長くない。全力で攻撃して、可能な限り体力を削れ。停止中は全く動かなくなる、月城も攻撃に参加してくれ」

「わかったねー。じゃあ【獄哭破断】いっくよー」

「そいじゃ、こっちも本気を出しますか。【驟雨千矢】」

「仕方ない、仕事しますか。【バーンインパクト】」


 止木が剣に地獄の力を集約し、禍々しくも強力な一撃を放つ。

 神倉が上空に矢を放つ。放たれた矢は無数に分裂し、DSGDに土砂降りのごとく矢の雨を降らせる。

 月城は強力なただのパンチをDSGDにお見舞いする。


「おいおい俺にも見せ場を寄越せよ。【刃葬】」


 蘇鳥はモンスターを刃で葬り去るスキルを使用する。


「まだ、ドラゴンは動かないぞ。もっともっと攻撃しろ」


 各々が魔力の限りスキルを放つ。DSGDはまったく動かないので、スキルが外れることはない。その上、防御を気にする必要がないので、威力を高め放題。

 もしこの世界に体力バーが存在したら、ゴリゴリとバーが削れる様子を確認できたことだろう。


「もうDSGDの体力はミリだ。決めてしまえ、咲華」

「オッケー、決めるねー。【氷滅剣】」

「フィニッシュ……だな」


 後半、DSGDは一切の見せ場もなく光の粒子となって消え去る。呆気ない幕切れだ。

 これも魔道具のおかげ。


「おいおい、そんな便利な魔道具があるなら、最初から使えよ。もったいぶる必要なんてなかっただろ」

「そうは言うがな、切り札は簡単に切れないから切り札なんだぞ。これを見ろ」


 蘇鳥は手に持っている壊れた懐中時計を見せる。元々針が動かず壊れている懐中時計が崩壊する。

 表面が割れ、蓋が割れ、ガラスが割れ、竜頭が割れ、ベゼルが割れ、最終的には全部割れてしまう。


「この魔道具はな、消耗品。使い捨てなんだ」

「……そうか、それは悪かったな。」

「いいさ、道具は使うためにある。それに、使わなったら、命の危険もあった。使わずに死ぬのはアホくさい。それより、DSGDのドロップを確認しようぜ」


 失ったものは戻らない。過去のことを振り返るより、これから先に手に入るものを確認したほうが健全だ。


「おっきな魔石が落ちたよー。それと、ドラゴンの鱗もドロップしたみたい。あとは……魔道具っぽいものがあるね」


 モンスターを倒すと一定の確率で魔石やアイテムをドロップする。しかし、ボスモンスターは必ず魔石をドロップし、アイテムや魔道具を高確率でドロップする。

 アイテムや魔道具を狙うのならボスを討伐するのが手っ取り早い。……勝てるのなら。


「魔道具だって!? 早く見せてくれ。…………これは、電脳龍製小型汎用計算機じゃないか?」

「それってすごい魔道具なの?」

「すごいってもんじゃねぇぞ。これがあると写真が撮れたり、動画が撮影できたり、通信ができるんだ」

「それって、ただのスマホじゃんか?」

「その考えは間違っていない。簡単に言ってしまえば、スマホだよ。でもこれは、ダンジョン専用のスマホだ」


 電脳龍製小型汎用計算機は魔道具ということもあって、ダンジョン調査で重宝される。ダンジョンのことを調べたり、モンスターのことを調べることが可能だ。

 まさに蘇鳥のためのアイテムだ。


「なら、蘇鳥が貰うといい」

「そうだな。今回のMVPは壊れた懐中時計を使った蘇鳥だ。その魔道具は蘇鳥が持っていていいだろう」

「うんうん、そうだね。輪ちゃんに相応しい魔道具だと思うよ。…………あれ?」


 止木は蘇鳥が喜ぶのならと魔道具を譲ることを了承するが、本来の目的とは噛みあっていないことに気づいた。

 止木の目的は蘇鳥の冒険者復帰。しかし、手に入れた魔道具はダンジョン再生屋の仕事で活躍する魔道具だ。


「ま、輪ちゃんが喜ぶのならいっか」


 止木は深く考えることを辞めた。


 魔道具は満場一致で蘇鳥のものとなったが、DSGDがドロップしたのは他にもある。ゲーミングソード、ゲーミングランス、ゲーミングシールド、ゲーミングマントをドロップしている。これらのアイテムは他の三人で山分けだ。


●●●


「ふぅ~~~、ようやく帰ってきた……」


 華鳥楓月の面々はDSGDを倒した後、すぐにダンジョンから引き揚げた。さすがに予想外のボスを討伐した後にダンジョン探索を続ける余裕はなかった。


「まったく、生きた心地がしなかったな」

「でも楽しかったでしょ?」

「そう言えるのは止木くらいだろ」

「そうだぞ咲華、誰も彼もがダンジョン探索を楽しんでいる訳じゃないからな。もう、予期せぬボスとの遭遇はこりごりだ」


 蘇鳥は今回のダンジョン探索で改めて自分の意思を確認した。モンスターとの血沸き肉躍る戦いより、ダンジョンを調べたりするほうが楽しいと感じた。

 止木による蘇鳥の冒険者復帰作戦は完全に失敗したと言えるだろう。


「でも……」

「ん、何か言った?」

「なんでもない」


 蘇鳥はダンジョン再生屋の仕事で有用な魔道具を手に入れたのは間違いないが、今回使った壊れた懐中時計の値段を考えるとマイナスだ。

 しかし、ダンジョン再生屋の仕事が捗ることを考えれば、大きなプラスになることは間違いない。


(それにしても、次はいつダンジョン再生屋の仕事でダンジョンに来れるか。実績が欲しいぜ)


 蘇鳥のダンジョン攻略は終了した。次からはダンジョン再生屋の仕事の再開だ。……再開できるといいな。


「お前ら、これから打ち上げ行くぞ。準備しろ」


 華鳥楓月の面々は打ち上げで盛大に飲んで食べて騒いだとさ。


TIPS

壊れた懐中時計

錆びてしまった懐中時計。元々は銀色の美しい外装だったと思われる。

使用すると、対象の動きを封殺する。まるで時が止まったかのように。

一度使用すると壊れてしまうので、強力な効果を消耗品。効果が効果なので、高価な商品となる。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

「ブックマーク登録」や「感想」、「評価」をよろしくお願いします。


都会の都市ダンジョン編は今回でおしまいです。

次回の更新は11日(予定)です。

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