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都会の都市ダンジョン⑥ドラゴンって意味不明です

華鳥楓月の面々が吹き飛ばされた蘇鳥を心配するが、心配ばかりもしていられない。DSGDは今だ健在。一瞬の油断が命取りになる。DSGDから目を離させない。

 こういう時、頼りになるのが月城だ。


「す、すまん」

「喋らんでいい、今すぐ回復する。【グレートヒール】」


 地面に崩れ落ちる蘇鳥は駆け寄ってくる月城に謝る。DSGDの攻撃は並大抵ではない。鉄の街に叩きつけられた蘇鳥は全身骨折状態。

 スキルを使って身体能力が上がっていなかったら即死していただろう。魔力様様だ。


「よし、終わりだ。余計な手間をかけさせるなよ」

「助かった。いつの間に、【グレートヒール】が使えるようになったんだ? 昔は使えなかったよな」

「ふん、冒険者を続けていれば、使えるスキルが増えるのは当たり前のことだろ。お前とは違うんだよ」


 【グレートヒール】は対象の一人を超回復させるスキル。対象が一人かつ魔力を大量に消費するということで、回復力は他の回復系のスキルに比べて大きい。

 今にも死にそうな状態だった蘇鳥はたった数十秒で元通りなる。

 魔力を使えば鋼鉄よりも硬いモンスターを一撃を葬り去ることが可能だ。反対に、そのような攻撃も魔力があれば防げる。そして、その攻撃を食らっても、魔力があれば一瞬で回復することも可能だ。

 ダンジョンの中は地球とは違う世界だと認識させられる。


「お前はブランクがあるんだ、あまり無理はするなよ。【オールアップ】【オールアップ】」

「無理するなって、それこそ無理だろ。DSGDを倒すには、多少の無茶は必要経費だ」


 バフスキルを受け取った蘇鳥は、戦場に舞い戻る。どれだけ活躍できるかは不明だが、多少は足しになるはずだ。


「グギギ」

「おいおい、戦場に戻った途端、ドラゴンさんがスキルを使いそうじゃねえかよ」

「ねぇ、どんなスキルが来るの?」

「おそらく【データブレス】だ。情報を圧縮したブレス攻撃だ。触れると脳内に膨大な量の情報を送られることになり、脳の処理能力がキャパオーバーする。脳のリソースを全部持っていかれて、数十秒棒立ちになるぞ」


 DSGDもドラゴンだ。ドラゴンの代名詞とされるブレス攻撃も使える。ただし、火とか氷とかを吐き出すのではなく、情報を吐き出す。

 一般的なドラゴンのブレス攻撃とは異なるが、れっきとしたブレス攻撃だ。


「凶悪なスキルだね、こういうのは避けるに限るねー」


 戦場に復帰した蘇鳥と着実にダメージを与えていた止木がDSGDから距離を取る。


「ゴオオオオオ」


 DSGDの口から圧縮された情報のブレスがまき散らされ、DSGDの周囲に情報が溢れる。少しでも情報に触れると脳のリソースを持っていかれるので、近接戦闘は不可。遠距離でチクチクとダメージを与える。


「これじゃ、埒が明かないな。さて、どうすーーヤバい、新しいスキルが来るぞ」

「ええーー、またなの。ドラゴンって厄介だねー」

「次のスキルは【クラスタリングバスター】だ、と思う。範囲は狭いが、光速のレーザーが来るぞ。威力はバカみたいに高いぞ。上級の冒険者が全力で防御しても、防げないらしい。一瞬で蒸発するらしい。でも安心してくれ、一直線だから、躱しやすい、と言われてるそうだ。……まあ、あくまで比較的、だがな」

「まったくどうなってんだよ、ドラゴンって存在はよぉ」


 【データブレス】は直撃しても死ぬことはない。動けなくなることはあっても、直接的な死はない。攻撃を受けても仲間に助けてもらえる可能性がある。

 しかし、【クラスタリングバスター】はダメだ。掠っただけで、肉体が持っていかれる極悪なレーザーだ。絶対に当たってはいけない攻撃の一つとなる。


「ホーーーーーー」


 意外にも【クラスタリングバスター】は静かな攻撃だった。その強力な威力とは裏腹に、優しく世界を破壊する。

 冒険者がいくら攻撃しても破壊するには至らない鉄の街が、【クラスタリングバスター】のレーザーが当たった場所から崩壊する。


「おいおい、見た目の落ち着いた雰囲気とは打って変わって、威力が無常すぎんだろ」

「見惚れて、ポカするなよ。ーーちっ、こっちに来やがった」


 【クラスタリングバスター】のレーザーで狙われたのは月城。しかし、蘇鳥が事前に忠告していたこともあって、余裕で攻撃を避ける。掠ってもアウトなので、安全を取るために大きく距離を取る。


「……ふぅ、危なかった」

「ホントかよ。余裕で躱してたじゃねぇか。【クラスタリングバスター】は大技だ。スキル後は反動で動けなくなる。攻撃のチャンスだ」

「了解だよ」


 鉄の街を破壊しつくしたDSGDの【クラスタリングバスター】が終わる。その代償は大きく、DSGDの足取りが覚束なくなる。

 だが、これは一時的なもの。少ししたら、足取りも元に戻る。万全になる前に叩く必要がある。


「いっくよねー、【獄哭破断】」


 ドラゴン戦の前、アーバンゴブリンを真っ二つにスキルがDSGDに向かって放たれる。その威力はアーバンゴブリンに打った時とは大幅に上昇している。


「……グゥルルルル」


 いくらかダメージを与えることに成功するが、まだまだドラゴンは壮健だ。

 このままではいずれ【アナライズ】を使用され、不利になるのが目に見えている。


「ジリ貧だな。切り札を使うか」

「切り札? そんなのがあるのか?」

「ああ、最近思うことがあってな。切り札を持つようにしたんだ」


 蘇鳥はここ一年で色々と思うところがあった。

 一番大きいのは左足を失った大怪我だ。ダンジョンでは何が起こるか分からないことを痛感させられた。

 また、絵似熊市ダンジョンでは予想外の強敵と戦うことになった。

 そして、止木が部屋に来てからはこうしてダンジョンを探索するようになった。

 ダンジョンでは、いつどこで強敵モンスターと出会うか分からない。そのため、切り札を持とうと考えた。強敵と邂逅しても逃げられるような切り札を一つくらい持っても損はない。

 今までも何度か切り札を持とうと考えていた。しかし現実問題、お金がなかった。ダンジョン再生屋の仕事が少なく、切り札を買えるようなお金がなかった。

 お金の問題で切り札の購入を先送りしていた。

 だが、それも少し前に大きく状況が変化した。

 絵似熊市ダンジョンでダンジョン調査に大きく貢献した結果、大金が舞い込んだ。それこそ、切り札を購入できるくらいの金額だった。

 ダンジョン調査だとしても、何が起こるか分からない。思い切って切り札の魔道具の購入に至った。

 もちろん今回のダンジョン探索に持ち込んでいる。切り札は準備してこそ意味がある。


「……って、ドラゴン君、また新しいスキルを使おうとしているみたいじゃん」


 蘇鳥が少し思考に耽っている間にドラゴンは次の準備を着々と進めていたみたいだ。

 DSGDが使用したスキルは【アンチエラーフィールド】。周囲一帯の空間に効果があるスキルだ。

 その効果は範囲内のミスを許さないというもの。範囲内で攻撃や防御、サポートにおいて失敗するとダメージを負う。しかも範囲が広いので、範囲外に逃れるのも難しい。

 意味不明だが、強力なスキルであることに違いはない。


「範囲内で何かしらのミスをすると、ダメージを負うぞ。慎重に行動するように!」


 華鳥楓月の面々はいったん立て直すために、DSGDから距離を取る。


「ミスしたら、ダメージを負うってどういうことなの?」

「理屈は分からんが、攻撃なり防御なり、ミスしたらダメージを負うんだ。しかもミスした度合いによって受けるダメージが違うみたいだ。ケアレスミスなら小ダメージ、重大なミスなら大ダメージを受ける。意味不明だろ」


 【アンチエラーフィールド】にはもう一点意味不明な効果がある。


「でもって、【アンチエラーフィールド】の効果はDSGDにも有効だぞ」


 対象を指定するタイプのスキルではなく、空間に作用するスキルである。そのため、範囲内にいるのならDSGDだって対象になる。

 DSGDがミスをすると、DSGDがダメージを負う。

 ミスを誘発させる戦法もあったりする。ただし、一朝一夕で実行できる戦法ではないので、華鳥楓月が採用することはない。


「輪ちゃん、ドラちゃんがまた何かしようとしているよ?」

「え? あれは……多分【オブジェクトワープ】だな。瞬間移動のスキルだ」

「あいつ、空に逃げたぞ。何をされるか分からん、撃ち落とせ」


 頭上を見上げると、空を悠々と泳いでいるDSGDの姿が確認できる。空のモンスターに対抗する手段がないと一方的に攻撃される。


「了解。【ペネトレイトショット】【ペネトレイトショット】【ペネトレイトショット】」


 神倉の強力な一矢がDSGDに当たるが、距離が遠く威力が減衰している。ダメージを与えるにはいたらない。そんなDSGDの目が光る。

 一番使われたくないスキル【アナライズ】の兆候だ。


「くっ、ダメだ。阻止できない」


 DSGDの【アナライズ】が成功する。一回二回成功されただけでは少し不利になるくらいで済む。即座に詰むことがないのが救いだ。だが今後、DSGDとより戦いにくくなることは間違いない。


「悠長にしてられないな。もう、切り札を切るしかないな。みんな聞いてくれ、魔道具の壊れた懐中時計を使う」

「それってどういう効果だ? 戦闘を有利に進められない魔道具だと問題外だぞ」

「安心しろ、効果は覿面だと保証する。こいつはな、対象の時間を止める魔道具だ」


 魔道具・壊れた懐中時計は近くにいる対象を拘束する効果がある。

 まるで時間が止まったかのように対象を拘束することができる。そう、針が進まなくなった時計のごとく。


「壊れた懐中時計、発動!」

「ぐお?」


TIPS

【データブレス】情報を圧縮したブレス攻撃。触れると脳内に膨大な情報を送られる。一時的に脳のリソースが全部持っていかれる。

【エクスプローラーアナライズ】冒険者の情報を読み取るスキル。使用されると冒険者の特徴を掴まれる。解析が完了する前に攻撃をして、中断させるのが得策。

【クラスタリングバスター】光の粒子のレーザーを撃ち出すスキル。範囲は狭いが、当たった瞬間に蒸発するレベルで威力が高い。

【オブジェクトワープ】瞬時にオブジェクトを遠くに跳躍させるスキル。その対象は、ドラゴン自身も含まれる。

【アンチエラーフィールド】攻撃や防御行動でミスをすると、ダメージを受ける空間を作るスキル。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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