都会の都市ダンジョン②旧交を温める
華鳥楓月のメンバーは、蘇鳥輪火、止木咲華、神倉楓斗、月城の四人だ。それぞれの名前から一文字ずつ取って花鳥風月をもじった、華鳥楓月とした。割とノリと勢いで決まった名前だったりする。
「みんなと一緒なら、絶対楽しい冒険になるよねー」
蘇鳥の冒険者活動は基本的にこの四人で行われていた。
止木の今回の作戦は単純明快だ。皆で一緒に冒険すれば、冒険者の楽しさを思い出す、というもの。
蘇鳥の冒険の大半は華鳥楓月の四人で行われていた。一人で冒険するより、四人で冒険したほうが楽しさを思い出すに違いない、と考えた。
(一人でやるより、確かに楽しいだろう。でも、楽しくても、冒険者に戻る気はないんだがな)
ダンジョン探索が楽しいのは蘇鳥とて承知している。それでもなお、冒険者に戻ることを拒否しているのだ。止木が頑張って作戦を立ててくれるのはありがたいが、結果は既に決まっている。
蘇鳥が心変わりすることはない。天地神明に誓って。フラグではない。
「……さてと、改めて、久しぶりだな、神倉、月城。元気そうで何よりだ」
蘇鳥は部屋に入り、椅子に座る。旧交を温めるためだ。
「ああ、そっちこそ、元気みたいだな。にしても、止木から連絡が来たときは何事かと思ったが、まさか華鳥楓月を再結成することになるとはな。お前が怪我してから、この日が来るとは夢にも思わなかったぞ」
神倉は高校時代のクラスメイト。仲がよくなったので、そのまま冒険者に誘って一緒のパーティを組んだ。しかしそれも、蘇鳥が怪我するまでの話。
連絡自体はたまに取っていたが、顔を合わせるのは久しぶりとなる。
「そうか、神倉は変わらないな」
「そんなに時間も経ってないからな、そう変わらんだろう」
そっかそっか、と蘇鳥は納得する。それなりに付き合いが長いので、返事は適当だ。
「で、月城のほうは……眼鏡をかけるようになったのか?」
蘇鳥の記憶では月城は眼鏡をかけていなかった。しかし、現在は眼鏡をかけている。
「何を言っている? 以前から眼鏡をかけていただろ。まさか、耄碌したのか? その年で、耄碌するには早かろう。怪我したのは足と腕だけでなく、頭もだったか」
嘆かわしい、とばかりに月城は肩をすくめる。
「口の悪さは顕在か。でもまあ、言われてみれば、前から眼鏡をかけていた気がするな。そうだったそうだった、メガネキャラだったな」
月城との付き合いは冒険者になった頃。四人はほぼ同時期に冒険者になった。同期ということで、一緒に冒険するようになり、いつしか自然とパーティを組むようになった。
月城は秘密主義のため、名前を教えてくれない。それなりに長い付き合いがあるが、名前は知らない。そもそも、月城が本名なのかさえ不明だ。他にも、住んでいる場所や年齢も杳として知れない。
しかし、冒険者としての実力は確かなもので、ダンジョン探索の際は頼りになる仲間だ。
四人は他愛もない会話で旧交を温めながら、冒険の準備を進めるのだった。
「そういや、卒業前に金を貸したが、いつ返してくれるんだ」
とか。
「最近、いい魔道具を手に入れたんだ」
とか。
「弓を新調したんだ」
とか。
「お前らには期待していないが、面白いデザインの眼鏡を探しているんだ」
とか。
「牛肉のタリアータを作ったらとっても美味しかった」
とか。
本当に他愛のない話に花を咲かせた。
TIPS
神倉楓斗
蘇鳥の高校時代の同級生。
蘇鳥に誘われて冒険者となった。最初は付き合いだけのつもりだったが、いつしか冒険者が楽しくなり、ダンジョンに引き込まれていた。
華鳥楓月が解散してからは別の冒険者とパーティを組んで、ダンジョンを探索している。充実した冒険者ライフを送っている。
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