表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/53

都会の都市ダンジョン①再結成するみたいです

 さらに翌週の日曜日。

 蘇鳥と止木の二人はまたダンジョンに来ていた。先週の狭霧の竹藪ダンジョンとは別のダンジョンだ。

 その名も都会の都市ダンジョン。

 ダンジョンランクは4。そんじょそこらの中級者はお断り、上級の冒険者が行くダンジョンとなる。一つのミスが命取りとなる超危険なダンジョンだ。このランクになってくると、蘇鳥程度の冒険者では歯が立たない。


「おいおい、マジでここに行くのか? 移動している時から察してはいたが、都会の都市ダンジョンはさすがに厳しいぞ。俺じゃ、モンスターに瞬殺されてもおかしくない。もしかして、今日が俺の命日か?」

「ちゃんと考えがあるから安心してね。大丈夫、大丈夫。輪ちゃんは死なないから」


 止木は大丈夫と口にしているが、蘇鳥は不安でしかない。ダンジョンランク3の狭霧の竹藪ダンジョンでさえ苦労していたのだ。ランクが一段階上がる都会の都市ダンジョンでは苦労で済まないことが確定的だ。

 はたして、止木は何を考えているのだろうか。蘇鳥には心中を察することはできなかった。


 都会の都市ダンジョン。このダンジョンに入ると、そこには巨大な都市が広がっている。一階層は木造の街、次はレンガの街、その次は石の街、コンクリートの街、鉄の街というように階層を進むと、街を構成する素材が硬くなっていくダンジョンだ。

 一軒家、マンション、お店、ビル、コンビニ、カフェ、レストラン、役所、交番、学校、駅、ガソリンスタンド、工場、倉庫など、本物の街と見まがう景色が広がっている。そして、建物は破壊することができる。木造の建物は簡単に壊せるが、鉄の街ともなると壊すのは容易ではない。

 ただ、壊したところで時間が経過すると勝手に修復される。

 モンスターだが、ダンジョンランク4ということもあって、かなり強力なモンスターが出現する。だが、報酬は美味しい。

 ここも稼げるダンジョンとして知られているが、上級の冒険者じゃないとモンスターに勝てない。狭霧の竹藪ダンジョンに比べると冒険者の数はかなり少ない。決して人気がないというわけではなく、単純にここに来れる実力者が少ないという話だ。

 過疎は過疎でも、蘇鳥がいつも行っている過疎なダンジョンは意味合いが大きく違う。


「稼げるダンジョンと言えど、ロビーにいる冒険者も数が少ないな」


 迷宮省がダンジョンの隣に用意している施設に入った蘇鳥は率直な感想を漏らす。

 稼げるダンジョンは漏れなく、冒険者のための施設が併設されている。もちろん都会の都市ダンジョンもそうだ。魔石やドロップアイテムを買い取るためのカウンター、冒険に使う道具を販売する売店などがロビーに用意されている。


「ここはいつもこんな感じかなー。職員さんはかなり暇みたいだね」

「……もしかして、ここの常連か?」

「まあ、それなりに来てるかな。結構稼げるし、いい情報も貰えるからね。そうそう、リ・バースポーションの情報もここの職員さんから教えてもらったんだよ。仲良くなってよかったよ」


 つまり、蘇鳥の左腕が動くようになったのは、都会の都市ダンジョンに勤めている職員のおかげらしい。だが同時に、このダンジョンに来る原因でもある。リ・バースポーションがなければ、蘇鳥の左腕が動くことはなかった。そうなると、ダンジョンに来るのは夢のまた夢の話。止木もダンジョンに連れて来るという考えを持つことはなかっただろう。

 蘇鳥は感謝を伝えたいような、恨み言を言いたいような気分になるのだった。


「ダンジョンに行く前に二階で準備するよ」

「二階? 二階に何かあるのか?」


 蘇鳥はダンジョンに詳しい。過疎っているダンジョンに限らず、人気のダンジョンの情報も抑えている。しかし、ダンジョンに併設されている施設にまでは詳しくない。こういうのは実際に使っている人しか施設を理解していないことが多い。


「二階にはねー、個室があるんだよ。パーティで作戦会議をしたり、準備をしたりするんだよ」

「へぇ、そうなんだ。……(でも、行く意味あるのか?)」


 冒険者装備に着替える更衣室は一階に用意されている。蘇鳥には二階に行く理由が思いつかなかった。二人ならわざわざ作戦会議する必要がない。

 止木はカウンターで名前を告げて、部屋の鍵を受け取る。部屋には限りがあるので、予約制となっている。もちろん、他の人が使っていたら、利用はできない。また、少額だが利用料もかかる。迷宮省も慈善事業ではない。


(止木も、準備を整えたいってこと、なのか? さすがにダンジョンランク4だと準備なしに挑むのは無謀だよな)


 二人は階段で上に行き、予約した部屋の前に来る。


「予約した部屋はここだよ。先に入っていいよ」

「ああ、分かった。それじゃ、早速入らせてもらうか。実は、こういった部屋に入ったことがないんだよな。ちょっとだけ楽しみだ」


 普段の蘇鳥は不人気なダンジョンにしか行かないので、隣に施設が併設されているダンジョンとは無縁だ。かつては冒険者をしていたが、そこまで稼いでいなかった。お金を払ってまで、部屋を借りる理由がなかった。作戦会議など、ダンジョン前で十分だった。

 少しワクワクしながら、蘇鳥は扉に手をかける。


(あれ、さっき止木は部屋の鍵を受け取ってたよな。だったら、鍵がかかってーーないな)


 扉に力を込めるとすーっと扉が横にスライドする。どうやら扉に鍵はかかっていないようだ。


「ーーえっ!?」


 扉のその先に、二人の人物がいた。それを見た瞬間、蘇鳥の時間が止まる。

 見知らぬ人がいたわけではない。むしろその反対、よく知る人物がいたからこそ、時が止まったのだ。


「え? ええ? ええええええええ!!!」


 一瞬の静寂の後、階下まで届く蘇鳥は驚きの声を上げるのだった。職員が一瞬ビクッとなったのだが、蘇鳥が知る由もない。


「どどど、どうしつぇ、神倉と月城がこここにいるんだ?」

「どうしてって何も、なぁ」

「ああ、理由など考えるまでもなく明白だろう」


 ここはダンジョンの横に併設されている冒険者のための施設。答えなど最初から分かり切っている。それでも真意を確認するべく、蘇鳥は止木に顔を向ける。


「一緒に冒険しようねー」


 止木は軽い調子で言うのだった。

 どうやら、かつての冒険者パーティ華鳥楓月を再結成するみたいだ。


(このためだけに、咲華は受付で一芝居打ったのかよ。ご苦労なこって)


TIPS

都会の都市ダンジョン

街が広がっているダンジョン。ダンジョンランクは4。

道路、一軒家、ビルなど、街が再現されている。建物の中に入ることも可能。

最初の階層では木造の街が広がっている。階層が進む度に、煉瓦、石、コンクリート、鉄など、どんどん硬くなっていく。

街は破壊することが可能。壊れても時間経過で自動で修復される。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

「ブックマーク登録」や「感想」、「評価」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ