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白のダンジョン②リ・バースポーションはすごいです

リ・バースポーションは回復薬の一種。怪我を治す効果がある。

 それこそ、動かなくなった腕を動かせるようになるくらいには、効果が高い。

 回復薬で一番効果が高いのはエリクサーだ。エリクサーなら失った手足を生やすことも可能だが、リ・バースポーションではそこまでの効力は望めない。しかし、そこら辺のポーションに比べたら圧倒的な効力を持つ。

 なので、値段も相応に高い。それこそサラリーマンの年収は優に超えてもおかしくない。


「よかったねー」

「いや、リ・バースポーションを飲ませておいて、よかったねーの一言で済ますんじゃねぇ!」

「まあまあ落ち着いてね」

「これが落ち着いていられるかっ!」


 現代医療でも治せなくて、動かなくなった腕が動くようになったのだ。奇跡に等しいことが目の前で起きているというのに落ち着いているほうがおかしい。

 たとえリ・バースポーションの効果を確信しているとしても、まったく驚かないのはどういう了見だろうか。


「それでー、どれくらい動くようになったのー?」

「……はぁ、難しく考えるのがアホらしくなってきた。で、どれくらい動くかって?」


 蘇鳥は左腕を回したり、縮ませたり、伸ばしたり、捻ったりして可動域や反応スピードを確認する。


「そうだな、リ・バースポーションを飲む前が5%だとしたら、今は80%くらい動くかな」

「そっかそっかー。うん、十分だねー」


 一人納得する止木。


「で、どうして俺にリ・バースポーションを飲ませたんだ?」


 リ・バースポーションは決して安いものではない。お金を用意するのも大変だし、そもそも市場にないこともある。手に入れようとしても手に入るものではない。簡単に手元に持ってこれる品物ではない。

 わざわざ蘇鳥の家まで押しかけてきたのだ、生半可な理由ではないだろう。


「輪ちゃんは、冒険者をするべきだね」

「冒険者……か」


 現状、蘇鳥は冒険者活動をしていない。籍を残しているとはいえ、大怪我を負ってから冒険者は事実上の引退状態。

 そんな蘇鳥に冒険者をして欲しいと言っている。


「輪ちゃんが活き活きしていたのは冒険者やダンジョンの話をしている時だった。何より、冒険者活動をしている時が一番輝いていた。だから、もう一度、冒険者に戻って欲しい」

「そのためのリ・バースポーションだと」

「うんっ!」


 満面の笑みで応える止木。よほど蘇鳥に冒険者として復帰して欲しいらしい。左足を失い、左腕が動かなくなってから、蘇鳥は冒険者から離れてしまった。それを戻そうというのだ。


「今はリ・バースポーションしか用意できないけど、今後はもっといいポーションを用意するからね。ポーションがなくても肉体を再生するスキルも探すよ。もしものために冒険に耐えられる今以上の義足も準備しないとね。お金がいくらかかっても治してみせるね」


 蘇鳥の左腕はリ・バースポーションで改善したが、完全に回復したわけではない。効果の高いリ・バースポーションといえども限界はある。

 しかし、ダンジョンには肉体を治す魔道具があるし、肉体を再生させるスキルが存在する可能性がある。

 止木は蘇鳥を冒険者に戻すためなら、どんな投資も惜しまない。


「だからさ、一緒に冒険に行こうねー」

「一緒に、か。そういや咲華はずっと冒険者を続けていたのか?」


 蘇鳥は少しだけ話題を変える。冒険者として復帰する気が皆無だから、徐々にフェードアウトしていく作戦だ。


「そーだよー。これでも冒険者として頑張っているんだからね。コツコツ頑張ったおかけでリ・バースポーションも買えたよ。でも、急ぎだったから少し足元見られちゃったね」


 リ・バースポーションは値段もさることながら、常に市場に出回る品物ではない。市場に流れた時、最新情報をキャッチする必要がある。

 その情報を握っているのは迷宮省だ。迷宮省はダンジョンから産出される魔石や魔道具の情報を管理している。

 要するに、ダンジョン探索をコツコツ頑張った結果、迷宮省からの覚えがよくなり、リ・バースポーションの情報も流してもらえたようだ。

 しかし、リ・バースポーションを強く望んでいることが相手にバレたのか、相当ふっかけられたみたいだ。


「お金いっぱい稼いだね。だから、大丈夫だった」


 止木は昔から冒険者の才能があった。それこそ実力派上級の冒険者に片足どころか、両足を突っ込んでいる。

 上級冒険者の稼ぎは末恐ろしい。確定申告が大変になるくらいには稼ぐ。その分、出ていくのも多いのだが。

 ともかく、止木はお金に困っていない。ふっかけられたとしても貴重なリ・バースポーションの入手機会を逃すほうが問題だ。

 というより、蘇鳥の周りにはどうして才能のある冒険者が集まるのだろうか? もし、その才能の一部でも蘇鳥にあれば、現状は大きく違っていたかもしれない。

 あくまで仮の話。実際には才能の譲渡はできない。


「だから、ダンジョン行こ」

「ダンジョンに行く気はない。正確に言うなら、冒険者としてダンジョンに行く気はない」


 ダンジョン再生屋の仕事としてダンジョンに入ることはあっても、冒険者としてダンジョンに入ることはない。

 蘇鳥は既に冒険者には見切りをつけている。今更、ダンジョンを探検する気はない。ダンジョンに入るのはダンジョンを調査する時だけだ。


「リ・バースポーション、高かったんだけどねー」

「うぐっ」


 勝手に飲まされたとはいえ、高価なポーションを飲んだことに違いはない。その素晴らしい効果も実感している。


「久しぶりに会ったから、一緒に冒険したいよねー」

「……それは、そうだが」

「昔は毎日料理を作ってあげてたよねー」

「…………とても助かりました」

「いっつもダンジョンの話を聞いてあげてたよねー」

「………………その節は、大変お世話になりました」

「冒険、一緒に行こ」

「……はい」


 幼馴染みというのは一長一短だ。昔から知っている分、阿吽の呼吸で連携することもできれば、弱みも掴まれて脅されることもある。

 冒険者復帰計画を阻止することができず、最終的には蘇鳥が折れた。

 この直後、二人はダンジョンに向かうのだった。


TIPS

リ・バースポーション

生まれ直しの薬。人体の怪我や異常を治す効果がある。エリクサーに比べると値段は安いが、それでもサラリーマンの年収を有に超える金額で取引される。

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