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水海村ダンジョン⑦魔鉱石って何?

「それにしても魔鉱石があそこに眠っているだなんて、思いもよりませんでした」

「確認したのは私だけではありません。氷織にも確認してもらっています」

「うん、確認した」


 魔鉱石とは魔力を含んだ鉱石のこと。水海村ダンジョンで採掘できる鋼類のことだ。

 冒険者にとっても魔力は大事な存在だ。魔力を含んだ素材もダンジョンを進む上で重要となる。

 特に魔鉱石と呼ばれる素材で作ったアイテムを使うと、スキルが強化される。

 たとえば、紅蓮鋼を使った武器で炎系のスキルを使うと、スキルの威力が強化される。同じ魔力量でも威力が強くなるので、冒険の手助けアイテムとして珍重される。

 普段より少ない魔力でスキルを使っても威力は普段と同じになる。魔力の節約にも向いている。

 水海村ダンジョンの三階層には氷系のスキルを強化する氷河鋼が眠っている。そのため、氷織が使ったアイスボールの効果が強くなった。

 仮に氷織が六階層で使用したアイスワールドを三階層で使用すると、巨大冷凍庫が出来上がるだろう。魔鉱石のスキルを高める効果はとんでもない。

 同じく、雷鳴鋼では雷系、颶風鋼では風系のスキルが強化される。

 武器や防具では使える魔鉱石の量も限られてくる。その分、効果も弱まるが、それでもありがたいことには変わらない。少量でも冒険者の補助になる。

 多くの冒険者が魔鉱石を求めて水海村ダンジョンにやってくるだろう。


「どうしてそんな貴重な素材が眠っているのに、今まで誰も気づかなかったのでしょうか?」

「誰もがダンジョンについて詳しいわけではありません。一般的な冒険者が調べる情報は、出現するモンスターやトラップについてです。既に入手できる素材についても調べることはありますが、自分から新たにダンジョンを調べることはありません」


 もしかしてこのダンジョンには未知のお宝が眠っているかも、と考えてダンジョンを攻略する冒険者は少ない。既に判明していることから攻略を組み立てる。

 新しく発見されたダンジョンだと、隅々まで観察されるが、既知のダンジョンをつぶさに観察して攻略することはない。一度見逃されると、ずっと見逃されることが多い。

 だからこそ、蘇鳥のダンジョン再生屋という仕事が成り立つのだ。皆が見逃している貴重な情報を発見することで生計を立てられる。簡単に見つけられないから、専門家が必要になるのだ。

 そんなダンジョンを調べる専門家は簡単に増えることはない。ダンジョンを攻略するのとは違った知識が必要になる。知識がなければ、何が素材で何がゴミか判別できない。

 ということなので、蘇鳥の食い扶持は当分安泰だ。問題は蘇鳥の認知度が低いことだ。ダンジョン調査の依頼はいくらでも存在するが、蘇鳥が知られていないので依頼がない。

 当面の問題は、蘇鳥の認知度を上げること。


「言われてみたらそうですね。一度入ったダンジョンのこと、後から調べることってないですよね」

「迷宮判定員は?」


 氷織から素朴な疑問が問われる。

 迷宮判定員とは、ダンジョンのランクを決める人員のことだ。

 新しくダンジョンが発見されると迷宮省から人員が派遣され、ダンジョンの危険度が決められる。危険がなければ無害認定されるし、危険があれが危険に応じてランクが与えられる。

 ダンジョンランクを決めるのは迷宮省の大事な仕事の一つだ。もし、適切なランクより低いランクをつけてしまうと、冒険者をいたずらに危険にさらす。適切なランク設定をミスって死人が出ようものなら、迷宮省は批判の的だ。

 慎重にダンジョンを調査する仕事だ。

 氷織としてはダンジョンことを調べるのだから、その時に素材についても調べるのではないか? という疑問が浮かんだわけだ。


「迷宮判定員の仕事はあくまでダンジョンの危険度を調べること。そこに貴重な素材が存在するかどうかを調べるのは含まれていない」


 迷宮判定員が見るのは主に出現するモンスターとトラップ。冒険者が危険にさらされる情報を調べる。

 冒険者のお金になりそうな情報や、貴重な素材の情報については管轄外だ。

 迷宮判定員に余裕があったり知識があったりするとその限りではないが、基本的に調べることはダンジョンの危険度のみ。

 ダンジョンの稼げる情報は冒険者が調べるしかない。


「へぇ、そうなんですね」

「知らなかった」


 氷織はともかく、鯉登が知らないのはどうなんだろうか?

 水海村のダンジョン担当として、知っておくべき情報ではないだろうか?

 いや、知らなかったからこそ蘇鳥に仕事が回ったきたのだ。迷宮判定員が調べているのに何もなかった、そう報告されたのを鵜吞みにして、先入観により自分で調べることを怠った。

 このようなうっかりさんがいるから、蘇鳥がたまの仕事にありつける。担当者が無知、というのはある意味救いだ。


「鯉登さん、感心しているところ悪いですが、報告はまだあります。私たちは、六階層までダンジョンを進みました。その結果、六階層では魔鉱石とは異なるものが採れることが判明しました」

「もしかして、魔鉱石以上のものが眠っているのですか?」

「はい、ある意味では、その通りです。水海村ダンジョンの六階層には…………深淵銀が眠っています」

「……っ! 深淵銀ですか。そう、深淵銀ですか」


 鯉登は素材の名前を聞いて息を飲む。

 深淵銀、いい意味でも悪い意味でも貴重な素材だ。


TIPS

魔鉱石

魔力が含まれる鉱石の総称。紅蓮鋼、氷河鋼、雷鳴鋼、颶風鋼などが該当する。

武器や防具にするとスキルの威力を高めてくれる。冒険者垂涎の素材。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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