ひとりごと
突然だが、俺のひとりごとを聞いてほしい。
生まれつき、俺は他と違った。それでも普通であった。
どちらの親とも違う髪も目も、綺麗と言われてうれしかった。
リンゴみたいな赤い瞳も、つややかな金髪も、どちらも褒められ続けて育ってきた。
虐げられず、幸せで、朗らかな日常。
俺にとっては、それが、何よりも守りたいものになっていった。
16歳の時、それが突然奪われた。魔王の軍勢が村を襲ってきた。
なくなった村を覚えているのは自分だけだった。
それほどに、小さな村だった。
それからこの目は血の色になった。この髪からつややかさは失われた。
魔物を殺した。魔族を殺した。殺して、殺して、殺した。
横腹を裂かれた。痛かった。片目を潰された。痛かった。
痛みで涙があふれ出した。苦しみで吐き戻しそうになった。
それでも、死ぬわけにはいかなかった。
いつの間にか、俺は目的が、分からなくなっていった。
鮮やかに覚えているためなのか、鈍色に生きる為なのか。
はたまた、どす黒い復讐のためなのか。
そして、俺は王都にいた。
王都で俺は、その功績を称えられた。勇者と認められた。
黄金色の髪と赤色の瞳は、勇者の証だそうだ。
そして俺は、仲間とともに魔王を倒す旅に出た。
NOble、TRInity、Astral。
名前に恥じない、生き方のために。
そして、1年の巡礼の旅が始まった。
魔法使いが死んだ。罠にかかった。毒ではないのに気づけなかった。
戦士が死んだ。魔王の側近に殺された。胴体に巨大な穴が空いた。
僧侶が死んだ。俺をよみがえらせるために死んだ。魔王は倒れた。
魔王は倒せた。犠牲は大きかったが、平和になる。
──平和になる、はずだった。
人は愚かしかった。人は恐ろしかった。
そこまで強くなった俺を、兵器として扱おうとしていた。
人間が、人間を、「使おうとしていた」。
それが、どうしようもなく恐ろしかった。
逃げて、逃げて、逃げ続けて、旅を続けた。
5年の逃避行。平和なんてなかった。
人と魔物の争いを止めたら、人同士の争いが始まった。
醜い戦争は、ずっと連鎖していた。
苦しかった。痛かった。辛かった泣きたかった逃げたかった。
それを我慢して頑張ってきたのに。
何が正解だったのか。どこから間違えていたのか。
俺は、自分は、私はわからない。
わからない。わからない。わからない。
魔王。彼が遺した手記。彼の魔導書。
俺は、それを、ひも解いて・・・
知ってしまった。私は、初めから、間違っていたのだと。
なればこそ、やることは一つ。
私は、私は、私は──
過ちを、食い止め続けよう。