国立何でもあり学園
俺は今日、この国立何でもあり学園に転校してきた。噂によると、この敷地内に入った途端、何でもありになってしまうそうだ。俺は校門をくぐる。
「ようこそ転校生くーん!」
「うわ!」
いきなり、ほうきに乗った少女が空から飛んできた。そのまま俺の耳元ギリギリを通過し、後ろに飛んで一回転する。
「やばーい、制御効かなーい!」
ぐえっ! 少女が飛んできて、ほうきの柄の先が腹にぶっ刺さる。少女につき押され、玄関窓をパリンパリンと割って、階段の上を飛び、天井を突き破り、教室に入った。背中ドン、頭ゴツン! いてー!
眼下には女子生徒たちがわんさかいる。注目されている。わあ、きゃあ、おお、……など、反応は様々だ。
「ごめん、てへぺろぺろ」
下手くそなウインクをした少女が頭をかいてべろを出して謝ってきた。俺ははがれ落ちるシールのように天井を離れ、床にふんわりと着地した。
「いたたた……。言葉もないぜ……。一体どうなってんだよここは」
とは言いつつ、やっぱり噂通りの場所なんだ。魔法使いのように飛ぶ少女、天井から無重力のように着地させる技術。ここは、何でもあり学園なのだ。
体中が痛い。ガラスや壁を突き抜けた背中や、ほうきの柄を突き刺された腹が痛すぎる。思わず吐血してしまう。すると、
「大丈夫? 今治してあげるからね」
さっきとは別の少女が俺の負傷箇所に手を当てる、わけではなく、指パッチンをした。すると怪我も服も、ついでに天井も床の穴も治ってしまった。
「え」
本当に何でもあり、なんだな。すごい。理屈なんか一ミリもない。
「よーし、転校生を紹介しようか」
後ろにいた先生が、バズーカを肩に担いでいた。え、まさか。銃口はこちらを向いている。
ドカーン!
凄まじい爆発音に、耳がイカれる。尻もちをついてしまった。だが弾はまだ飛んでこない。いや、飛んでは来ていた。信じられないが、とにかくスローモーションでこちらに向かってきている。なるほど、重力なんてものはこの学園にはないに等しいということだ。
「ちなみにそれに触れると、大爆発するぞ」
教室中がざわついた。だがそれは驚きや恐怖ではもちろんなかった。来ました先生名物転校生ビビらせバズーカ砲! これ毎度の楽しみなんや! 素晴らしい海について今、今こそ語り合おう! は?
どいつもこいつも美少女ばかりだ。まるで夢の国。でも俺は、俺は……。
「こんな学校は嫌だ!」
もう嫌だ! 帰りたい! いや、大喜利ではないんだ。こんな大声出したのは久しぶりだった。喉がこんなに痛むとは。とか感じている間に、一人静かに本に意識を奪われている少女の頭にスローバズーカ砲の弾が当たった。
ぼっかーーーーーん!
教室中の窓ガラスやドアがはじけ飛び、机や椅子も一瞬にして爆散してしまう……そんなオチを想像した俺がバカだった。
「うえほっ」
「げほげほ」
チャンチャン。
と、曲が流れるように、全員がなぜか実験失敗した博士のアフロ髪になってしまっていた。
「先生、退学ってできますか?」
すすを口から吹き出しながら聞くと、教室中を黒焦げにした教師が割れた丸眼鏡を復元してからニッコリ。
「できないよ?」
この先どうなることやら……。こうして俺の意味のわからない学園生活が始まった。
了
はじまったけどおわりです