Episode.0001
2052年 石油が枯渇する。
2055年 世界の人口の急激な減少が始まる。
⇒これを踏まえて21世紀は「後退世紀と呼ばれる。」・・・・・
―――2110年、日本、東京、新多摩川第二高校1年A組
本日の授業終了まで残り10分。
歴史教師の藤沢(五十代男性)が、黒板に板書をしている。こんな過去のこと学んでどうするんだ、のような愚痴を後ろの席の品川と喋っている。隣の席の川崎は寝ている。
「おい、日下と品川!」
藤沢の声で僕は品川と話すのを止めた。
「はい、すみませーん。」
品川が適当に謝った。
しばらくの間、軽くノートをとっていると終業のチャイムが鳴った。
「あー、これで終わったー。」
それまで寝ていた川崎が急に元気を取り戻す。
「おい、日下。後で職員室に来てくれないか。」
僕は藤沢にそう言われた。何かまずいことでもしたのだろうか。授業中に喋っていた程度でわざわざ職員室で説教をするほど藤沢は心の狭い人じゃない。
―――職員室。
「タチバナさん。日下を連れてきました。」
タチバナさん、とよばれた人が僕の目の前に来た。
「あなたが、日下史直君ね。」
タチバナさんはそう言って、椅子に腰掛けた。
「先生は少し席をはずしてくれませんか?」
タチバナさんが藤沢にそう告げて、藤沢は自分の机の所に行った。
「日下君。私はこういう者だけど。」
タチバナさんは、そう言って名刺を僕に渡した。見たところ、17~8歳位にしか見えないが高校生にしては少し大人びた雰囲気のタチバナさん。名刺には、
Der |Wissenschaft Verband Japan Branch Schwarz |Kommandierender General
Ami Tachibana
そう記されていた。見たところ、ドイツ語らしいが意味を尋ねると、
「科学協会日本支部黒司令官の橘亜美よ。長い名前だから普通は、亜美って呼ばれてる。」
と答えた。
「で、僕に何のようですか?」
「あなたに|Wissenchaft Verbandに協力して欲しいの。」
僕は動揺した。訳の分からない組織に協力しろと突然言われてもどうすればいいのか、皆目見当が付かなかった。
「あの、しばらく考えさせてください。」
僕はそう答えるしかなかった。