4 しっぽをふると竜巻みたいな水流が
ワニコがしっぽをふると竜巻みたいな水流が起こる。
僕は、はじきとばされないようにしっかりとつかまった。
船のスクリューが見えてくる。
恋人のリボンと僕の距離がどんどん近づいてくる。
「僕の一族はね、」
僕は話し始めた。
僕の一族、カクレくまのみは古風な一族だ。若いうちにイソギンチャクの家を見つけ、一生、妻は夫を愛し、夫は妻を愛す。そして、家族を守って生きていく。
ポップカラーの小さな体で強い魚にも体当たり。エンゼルフィッシュやスズメダイもびっくりのバカ度胸。
だからなのだろう、人間は、カクレくまのみを恋のシンボルにした。
人間たちの花言葉ならぬ魚言葉で、カクレくまのみは
「ハッピーエンドはゆずらない」
ぶふっ。照れちゃう。
そして、人間は、勝手に、カクレくまのみには恋を叶える力があると信じて、僕らを捕獲し始めた。
特に狙われたのは、ピンク色のくまのみ、ピンくまだ。
「は?ピンクのくまのみ?聞いたことないぞ。」
ワニコがびっくりして言う。僕の乗っているワニコのこぶだらけの背中が揺れた。
僕は答えの代わりに続きを話した。
ふつうはオレンジと白のしましまだろうって?その通りだ。だけど、ごくごくまれに、ピンク色のくまのみが現れるんだ。
僕たち一族の伝説では、ピンク色のくまのみは、特別な強大な全世界を覆す力があるといわれている。
だけど、それが何か、僕ら自身にもわからない。
本当にあるのか、それとももっともっともっと想像もつかない恐ろしい力なのか、それっすらもわからなかった。
リボンは、いつも僕に言っていた。
「私を守って」
と。リボンは、僕と恋に落ちた時、ピンくまになったから。
このピンくまの悲劇?の話を聞いて、ワニコはもっと悲劇的な難しい顔で言った。
「フックは恋をしているのか。」