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HANDle my love  作者: 宍井智晶
3/36

3 「見ればわかるだろ。」

 そう、ふつう、くまのみは恋人といつも一緒にいる魚。夜はイソギンチャクのベッドで折り重なって眠る。素敵だろう。だけど今は、


 「見ればわかるだろ。」


 一撃をまともにくらった僕は、涙がこぼれないように、わざと怒って言った。

 「恋人は持って行かれちゃったんだ。」


 あの日、小さな珊瑚礁に海賊があらわれた。

 イソギンチャクや岩の中まで、のぞきこみ、ひっかきまわした。

 白い埃をまきあげた。

 そして、僕の恋人のリボンだけを連れ去っていった。

 リボンは海賊の手の中に閉じこめられ、僕は、その指に喰いついたけれど、小さな隙間さえつくることができなかった。

 海賊たちの乗り込んだ小船には、海賊フック船長の旗印が揺れていた。大きな影になって。



 「僕は、恋人を守れなかったから、だからここにこうしているんじゃんか。」

 リボンに会いたいなあ、そう思ったら悔しくて泣けてくる。


 「リボンに会いたいなあ。」

 いつも心にあった言葉を口に出してみたら、涙がでてきた。


 「だけど、ほら、追いかけてきたフック船長の船はどんどん遠ざかっていくよ。そして、僕はあんたに食べられてもうすぐ死ぬんだよ。お・わ・り、だよね。」


 ワニコはしばらく黙っていた。何を考えているのか、相変わらずよくわからない。

 薄く開いた口は、何か言いたそうにも、にたにた笑っているようにも見えた。

 僕が涙をこらえるのに必死になっていると、ワニコからやっと言葉が返ってきた。


 「モネ、背中に乗れよ。俺もフック船長の船をおいかけてる。」


 あっという間だった。ワニコは、そう言うと、太い尻尾で僕の体を引き寄せ、ふんわりと背中に乗せる。そして、フック船長の船に向かって、力強く滑らかに泳ぎだした。

 ワニコの考えていることはまだよくわからないけれど、ただの意地悪で怖いワニではないみたいだと思った。僕を背中に乗せるときとても優しかったから。


 僕は言った。

 「どういうこと?」

 「なにが」

 「フック船長の船をおいかけているって。」

 僕はまた調子に乗ってききだす。

 ワニが、アマゾンの河から海へひとりで出てくるほどの理由は何だろう?と思った。けれど、ワニコは僕の質問を無視して言う。


 「おまえはいいな。わかりやすくて。」

 「どういうこと?」

 僕がきくと、ワニコは

 「ほめているんだ」

 と、しみじみと言う。そして、

 「愛し合ってる恋人がいる、恋人を助けに行く、だからここにいる。わかりやすい。」

 とワニコは言った。そして、

 「人のことを知りたいなら、まず自分のことを話せ。」

 と、言った。ワニコは自分のことをはぐらかしたれど、怒られるよりいいかな。

 

 「知ってる?ピンクくまのみの話。」

 僕は、話し始めた。

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