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HANDle my love  作者: 宍井智晶
28/36

28.着岸する、なんとしても。

やっと出てきたよ!

 地図にないネバーランドへ、方位磁針の代わりに、子ども達の“勘”だけを信じて航海する。

 子ども達が、「あの星」と指差す方へ、舵をとる。とり続ける。信じ続けて。

 遥かな、静かな海。

 水平線に突起は現れないまま、太陽は幾度も沈んでいった。

 

 ある時、海賊たちは、目指す星の光が変化していることに気づく。

 強く大きく、ますます白く。

 船が近づいていくと、星は、ひょいとかわすように揺れ、にじむように消えた。


 あれ、と思って望遠鏡をのぞいた海賊、黒猫、は、驚いて叫ぶ。

 「船長、あれ人です」

 なんだって、と隣のレオの首の望遠鏡を奪い、自分もそれをのぞくフック船長。

 見えたのは、空を飛ぶ影だった。

 それが、ぐんぐん近づいてきて、男か女か、大人か子供か、曖昧な人影になり、

 凝視している間に、少年らしい手足と首筋が、くっきりと現れ、

 風の中で、真っ黒い髪がなびき、真っ黒い目が光り、薄い唇の端があがり、


 すんっ


 という音がして、フックが望遠鏡を外したら、目の前に、いた。


 空から、船の欄干に降り立った少年は、望遠鏡で眺めたのと同じ顔をして、こちらにウィンクを飛ばしてくる。


 「なんなんだお前は」

 フック船長が、できるだけ冷静に、と思いながら問うと、

 船長の背後から走り出てきた子ども達が、彼の名前を呼んだ。

 「ピーター・パン!」


 「おまえが、ピーター・パンなのか?」


 空から降りてきた少年は、船の縁にたち、見渡して言う。

 「大きな船だな。よく浮くなあ。」


 そして、駆け寄ってくる子ども達に、あっというまに囲まれた。目をきらきらさせた子ども達の腕が彼の体にからみつく。

 「ピーター・パン、迎えにきてくれたんだね!!」


 ピーターは子ども達をみて、驚いて言った。

 「あれ、おまえたち何してんの、こんなところで!すげ-な!この船、おまえたちの船だったのか」


 子どもたちは口々に言う。

 「うん、そうだよ。ピーター、遊ぼうよ」

 フックは言った。

 「ちがう-!(俺の船だ)」


 ピーターは、今までのところ、フック船長の言葉をすべて無視している。

 「いいよ、なにやる?あれやる?」

 「あれやろ-!」

 「じゃあ、早くネバーランドへ行こうぜ」


 そう言うと、ピーターは、船の縁から後向きに、ちょちょっと飛び降りた。

 そして、舳先に取りつく。

 むぐぐぐぐぅ。

 ピーターは背中をまるめて、力の限り、船をひっぱっり始める。

 舳先の飾りが、ばきっと音をたてて取れそうになった。


 「何するんだー」

 と海賊たちはおもう。やばいことになりそうな気がしてたまらない。

 …まさか…とフック船長が思ったとき、船はぐぅっと動きだした。



 風や波を無視して、船は、そのまま直線に加速。

 海賊たちはおののいて言う。

「船長、このままだと、浅瀬にぶつかり座礁します!」

 そして涙声で、

「船長、先端のぶっ飛んでる奴、殺していー?」

 と悲鳴をあげる。


 まて、と言うと、フックは、舳先の欄干に飛び乗り、海に突き出た梁を走って、ピーターの真上に立った。(真下の海が怖くて震えがくる)


 「そこのきみ!!」

 フック船長は、無視される。

 フック船長は、辛抱強く、もう一度言う。

 「ピーター・パン殿。俺の話を聞け。五秒だけでもいい。」

 ピーターは顔を上げる。フック船長と目があった。フック船長はすかさず言う。

 望遠鏡で、少年の背後の海の彼方をさし、


 「海の色をよくみろ、薄いところは底が浅い。このままじゃ座礁しちまう。」

 「ざしょー?」

 「壊れるんだよ、船が」

 「もったいないかも」

 「そうだ、だから!」

 「どうすればいい?」

 フックは、これ以上ないくらい明確な言葉を、ピーターに伝える。

 「今すぐ船を右に寄せろ」

 「みぎ?」

 「ちがう、俺からみて右、あんたからみて左、」

 「?」

 「こっち!」

 フックは、右手を大きくふりかざした。

 ああ、とピーターはいって、体重を左へ傾けた。船もぐらん、と揺れる。

 「右へ!」

 「左」

 「もっかい左へ」

 ネバーランドの沿岸は、ベニス港のあるアドリア海みたいに入り組み、まるで、迷路のようだった。

 少しでも気を抜けば、船底に穴があき、水が、鰐が、浸みこんでくるだろう。

 必ず死ぬだろう。


 「おもしろいな。次は?」

 「すぐ左!!」

 フック船長は叫ぶ。

 着岸する、なんとしても。


しばらく、間があいてしまって、すみませんでした。

ここまで読んでくださっているかた、もしいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます!!

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