20 星を食べてしまった熱
僕は、ワニコが僕みたいな初対面の相手に、くわしく話すことにびっくりしていた。
ワニコはフック船長が落とした懐中時計を食べたという。金色の星みたいだったそれを。
「本当に星をたべたの」
ワニコは、うん、とうなずいた。そして僕に、
「俺の腹の下に入ってみ」
と言った。
「聞こえるだろう?」
とワニコは言う。僕は、ワニコの腹に体をつけて耳をすます。ワニコは僕に向かって白い腹を突き出して反りかえる。
「な?」
と、ワニコは言う。僕は、うーん、と思う。たしかに、ワニコの柔らかい腹の肉を通して、何かが動いているような、気がした。
「なんかある。」
と僕は言った。ワニコは嬉しそうに
「これな、俺の子どもだ。まだ生まれてこんけども。」
と言った。そして、
「鳴ってるうちは、まだ頑張らなくちゃならん。」
と言った。
「何を頑張るの。」
と僕が聞くと、ワニコはそれには直接答えず、話の続きを始めた。僕は、心配になった。ワニコの瞳が不吉なほど、熱っぽかったからだ。僕の恋人のリボンが星を食べてしまったらどうしよう、と思った。
それにしても、ワニコが言っていた、「好きな男」っていうのは、いつ話にでてくるんだろう?それとも、まさか、もう出てきているのだったらどうしよう?なにも頑張りようがない気がするよ、と僕は思った。