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HANDle my love  作者: 宍井智晶
19/36

19 タイムオーバー

 タイムオーバーだった。

 それは気迫の差だった。レオが完勝した。

 肩で息をするレオは、さっと顔をあげ、空を見る。

 涙がこぼれないように。

 起ちあがると、レオは、フック船長からもらった銃をとって頭にあてがった。

 なんのためらいもなく。

 そして、爆発音。


 みんな耳をふさぎ目を閉じた。墜ちてきた闇に埋まり窒息する。


 けれど、レオは立っていた。二本の足で。

 心臓は、まだ、バスドラムみたいに鳴り響いている。

 呆然と手のひらを見つめた。

 指にざらつく金属の破片。

 手の中には、砕けた銃があった。


 レオが視線を感じて振り向くと、フック船長が狙ったままの姿勢で立っていた。

 銃を弾き飛ばしたのはフックだった。レオの銃をとっさに撃ち抜いたのだ。フックの見開かれた目、荒い息、どれもレオより勝っていた。


 場を読めない誰かが、口を尖らせていった。

 「え。お咎めなしなしですか。」

 フックは、叩きつけるようにいう。そいつのお陰で逆に生き返ったみたいに。

 「文句あるか?こいつの勇気生かしといてあまりあるだろうが。おまえら文句あるなら1対1でこい。情けねえ。」


 フック船長の懐中時計はまだ鳴っていた。

 時計は、フック船長の罪とレオ君の恥と、船の錆とを嘆き続けている。船長の心臓に一番近いところで。

 「この時計はもう、いらないな」

 フック船長は、懐中時計を海に捨てた。



 船の欄干からさしだされた、フック船長の蒼白な手。長い指先から、すべり落ちる金色の星みたいな懐中時計は、光の線をすーっとひいて墜ちてきた。ワニコはそれを、口をめいいっぱいあけて受けとめた。

 

 星を食べてしまった。

 

 そのとき以来、ワニコの体には、二つの心臓が宿ってしまったようなのだ。

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