18 懐中時計がぎりりりり
海賊たちは、潮が引くように逃げ出した。
殺される理由があると思っている、みんながみんな。
見てただけのやつも、手をくだしてたやつも、どいつもこいつも。
レオは、全気力を振り絞って、一人の年上の少年の前に立った。
隣の少年が間に入って邪魔してきたのを一拳でぶちのめしたのも、レオ本人は意識していない。
他の奴は目に入らない。
レオは、銃を真っ直ぐにそいつの頭に向ける。
いつも、裸に剥いて射的にしてくれたそいつに。
「おい、助けろよ」
そいつは言うが、いつもの取り巻きたちは後ずさる。
レオは、眼をつぶり大きく一度息を吐き出した。
そして、腕を下ろすと、言った。
「剣を取れよ。1対1で勝負しろ。」
レオは、そういって、銃を捨て、剣を抜く。
相手は、拾った剣で、おずおずと受けてたった。
レオの赤い眼に突き刺され、震えて距離をとろうとする相手。
それに構わずに、レオは間合いに踏み込んでいく。
耐えられなくなった少年は、剣を振りかぶった。
レオの鼻先に微かに剣が触れる。
レオの眼光はそのまま、相手を捕らえていた。
相手の胸板に額をつけ、瞬間。刀背でえぐるように鳩尾を突いた。
突かれた方は、轢かれた猫みたいにふぎゅると鳴いて、身を屈めた。
レオは、そいつの顎を蹴り飛ばす。
二度、三度。
顔中の穴から流れ出た血が、そこらじゅうに飛び散った。
レオは仰向けに倒れた少年の上に馬乗りになり、いっきに両手で剣をつきたてる。
剣は、首筋をかすめた。
剣の半分が甲板に埋まり、相手の髪がばっさり切れた。
その時、フック船長の懐中時計がぎりりりりとなった。