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HANDle my love  作者: 宍井智晶
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15 ひらひら落ちてくる

 そういうわけで、ひらひら落ちてくる白い蝶、いつも脱がされてポイされるレオの下着は、人間のものじゃなかった。


 人間の形をしているけど、一人だけ違う。

 中味の無い、輪郭だけ存在するやつ。


 でも、必要なのだ。この祭りを毎日続けるためには誰かが担わないといけない役目なのだ。お祭りは、破壊と同時に、生命を鼓舞する。世界が失ったものを甦らせる。光を引き寄せる。力は血から。世界の一員として参加しているっていう実感。この輝きの前では、誰かが担う傷もかすむ。


 この役は、星まわりみたいに偶然に指名される。持ち回りだから、季節が変わればこの役は別のところへ行くことを、誰もが口にはしないけれどわかっている。次は自分なのかも。でもそのことには刹那の欲望と恐怖のために目をつぶる。そんな日常だった。レオが担っていたのは、そういうハズレモノの役だった。


 けれども、本物のお祭りと違うのは、全て幻覚で、本当は何も豊穣にしないことだ。世界を知るために、神とつながるために、屠られる星、生贄じゃない。退屈な日常を何の努力もしないまま満足しようとして行われる、イジメだった。


 それは、一瞬の役回りだとしても、全世界から否定される経験を通過する時、破壊されつくすから、一生続くのと同じ。コワレモノになる。


 イジメられていたレオ君は、プライドが高くて、まじめだった。

 まじめというのは、自分にとって身近な誰かへの憧れや、目に見える成果をだす目標を心に強く抱いているということだ。そうやって生きてきた彼は、この役をあえて堂々と引き受けたかった。馬鹿みたいに誇り高く。でもできなかった。できないまま引き受けていた。だから恥だと思っていた。理由なく選ばれたことはわかっていた。でもだからこそ、選ばれた自分がわからなくなったし許せなかった。自分がこの世に生きる場所はないと思えた。


 ナチスが、ユダヤ人を連行して収容所から収容所へ移動するとき。

ユダヤ人の数が多すぎて、めんどうくさくなった将校が、てきとうに選んで殺して減らした。そんな日常だった。


 兵士から体をごつかれて、長い列から一歩踏み出て銃のまえに立った少年は、そのとき恐怖や悲しみよりも恥ずかしさのために顔を赤らめたという。


 「この意味のわからない死を、受け入れるのは僕だっていうんですか?神様?」


 






作者から:しばらくダークなのが続いています。この先新展開あります・・・ご容赦ください!

 

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