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第七章5

 ■


 口に直接嵌めてるから涎が付いちゃってるのは勘弁してね。

 ほら。これ、マスクの裏側にマウスピースみたいなのくっつけてんの。あのボクシングとかで選手がよく嵌めてるやつね。

 あはは。実はこれ、通販で買ったSMグッズの口枷をちょっと工夫してこうやってくっつけてるんだけどさ。こう、紐に引っ掛けて。

 礼二――中学の同級生ね? 今はもう別の学校行っちゃったけど――には、笑われたなー。俺の味方してくれた友達だったんだけどさ。流石に私立はね。仲良かった奴らでもなかなか行かないっつー。ああ、ごめんごめん。俺、自分の話に興奮すると途中で話見失っちゃう癖あるんだよね。気づいてた?

 で。なんだっけ?

 そうそう。拘束具だ拘束具。喋るなら口を塞げばいい。言うだけなら簡単だよな。

 でも、大変だったんだぜー。これに行き着くまではさ。ガムテーブ貼ってみたり、セロテープ貼ってみたり、養生テープ貼ってみたり。痛いわ、口元荒れるわでさ。俺なんでこんなことやってんだろーって毎日枕を濡らす日々よ。

 学校でもやってたわけで。

 喋っちゃうからさ。

 当然、んなことやってりゃ俺をイジメてる連中からすれば、格好の餌だよな。何やってんだこいつってなもんで。あはは。そんでマスク外されて、口元見られて剥がされて……。

 じゃあ、これで口塞いでやるよ、なんて言って、瞬間接着剤取り出して来る奴とかいてな? 唇に塗られて、手のひらに塗られて、それで口塞がれて――。

 あれマジで剥がれねーのな! お湯とか除光液で取れるらしいんだけど、俺当時そんなこと知らなくってさ! カッターで切ったの。もう顔面血だらけ。やった奴らもドン引き。その顔見てせいせいしたけど、いてーのなんのって。

 ……度々そんなことが起こった。

 ……ボロボロだったね。マジで。

 精神的にも。肉体的にも。

 ……それでも喋っちゃう俺! あはは。ははは……。

 たまにさ。思うのよ。テレパシーってあるじゃん? テレビでも漫画の能力でもいいけど。あんな風に心を読まれたり、自分の心が垂れ流しになったり。だいぶ前にそんな映画流行ったよね? そういうのみたいだったら、まだ良かったのにってさ。

 どれだけ良かったかってさ?

 だってさ。そっちの方が、被害者っぽく見えるじゃん?

 心を読まれるってのと、自分の本心を自分で口にしちゃうのは違うでしょ。

 誰かを傷つける言葉を不意に思ってしまう。その言葉を自分で言ってしまう。どっちが悪く見えるかって言ったら後者なわけで。

 それからだね。

 いや、もっと後か。隔離――一人暮らしを始めた頃だ。

 身も心も綺麗になろう。

 清廉潔白で、誰も傷つけない存在になろう。

 世の中を心の底から愛せるような、そんな愉快な奴になろう。そう思った。

 そうじゃなきゃ――

 思っちゃうじゃん? 言っちゃうじゃん? 自分と、自分の大事な人を傷つけたり、悪く言うような奴らにはさ。そうじゃなくっても、ちょっとの弾みで暗くなっちゃうことは誰しもあるでしょ? 死ね! とか。殺してやる! とかさ。はあーあ。

 明るく、楽しく、馬鹿な方が……その方が俺にとっては都合が良かったんだよ。心の底からピエロになろうってね。思ったね。

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