表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/40

彗星絵里

 やはり違う。他の男とは違う。他の誰とも違うんだ。

 好きで好きでしょうがなくて。抑えられなくて。ダメとは理解っていても、付いて行くだけなら。言葉を交わすでなくても、せめて、声を聞くくらいならば。

 あの、自分だけの声をもう一度――。


 鬱屈していた想いは、彼に会った途端、狂い咲くように抑えられなくなっていた。

 長い間引きこもりがちだった絵里にとって、彼は世界の全てと言ってもよかった。それは、良い意味でも悪い意味でもそうだった。

 あんなことがあったのに。

 あんなひどいことをされたのに。なのに。

 でも、だからこそ、離れなければ、距離を置かなければお互いに良いことなど何も無いと理解っていながらも、同級生のその話を聞き、親友のその提案を聞き、居ても立っても居られなくなってしまった。ダメだと頭では理解していても、どうにもならなかった。

 こういうのはなんて言うのだろうか。

 ――禁断の果実。

 深く、息を吐いた。情けない。自分で自分が嫌になる。

 結果がこれだ。

 やはりこうなってしまった。やはりそうだ。彼に関わるとろくなことがないのだ。

 でも。

 割れたレンズをすっと撫でる。彼に貼ってもらった絆創膏をじっと見る。彼が力強く手にとってくれた左手首を、絆創膏の付いた右手でぐっと抑える。

 吐息が、思わず漏れる。

 彼の付けた傷、跡が自分の体に付いている。

 彼の証しが――、遠い昔のことのように感じていた体の疼きが、まるであの頃のように蘇っている。

 胸をぎゅっと上から押さえる。

 下腹部に手を伸ばす。

 絆創膏を貼ってもらった右手を、さらにその下へと伸ばす。

 そこには彼の証しが、今正にそこにあるかのようで――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ