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第四章4

 ★


 エントランスの壁面にあるテンキーに数字を入力する。程なくして、横のスライドドアが音もなく開く。部屋は七階だ。エレベーターを使うべきなのは分かっているが、今は疲れたい気分だった。学校を中抜けしてきた為、元気が有り余っているのかもしれない。いや、そうじゃない。気分が悪いのだ。気分が悪い時は動くに限る。一段飛ばしで階段を駆け上がる。三階まで上がったところで、見知らぬ誰かとすれ違う。無視。マンションの良い点は挨拶しなくて良いところだ。田舎ってのは、なんでこう、同調圧力が強いのだろう。うちの周辺なんかは、どうしても家がブロック毎に固まっている為、その周辺での仲間意識みたいなのが特に強い。朝は挨拶。学校から帰ってきても挨拶。挙げ句、話し込む。日々、その繰り返し。

 その点、集合住宅は良い。みんな知らない。誰も知らない。

 中三の……いつだったか……ここに来るまでは知らなかった。そんなこと知るのはもっと先だと思っていたのに。コミュニティとか社会とか。そういう差異は。

 独り立ちとか。大学生とか社会人とか。そのくらい先のことで。

 家に帰りたい。

 家族に会いたい。

 みんなと話したい。

「はっ……はっ……」

 角を曲がって折り返す。七階まで後十三段。口元が蒸れる。息が苦しい。気持ち悪い。早くこれを外してしまいたい衝動に駆られる。だけど外すわけにはいかない。

 ゆっくりと、一歩一歩確かめるように歩を進め、七階まで到着する。

 七〇四号室。四と九は縁起が悪いから部屋番号だと飛ばされやすいと聞く。オーナーの考え方次第だそうだ。馬鹿らしい。このマンションのオーナーはそういう噂に流されない合理的な考えの持ち主だということだ。一度話してみたい。

 カードキーを差し込む。ピッ、と音がして扉が開く音。玄関で靴を脱いで、鞄を玄関脇に放り投げ、ダイニングに入り、マスクを外し、リビングへ。

 広すぎる部屋。

 高校生の一人暮らしには勿体ないくらいの間取り。

「だけど、こ~こが今の俺の城~。は~あ~。ただいま~。もう聞いてよ~」


 仲間たちが出迎えてくれる。

 だから俺は、なんとかやっていけてる。


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