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マモノ飯ダンジョンズ 風水パワーで異世界攻略  作者: ミルおっさんと家主
フレイとの出会い
2/3

街へ行こう!

昨日は結局最後まではキャンプをせず雨が止んだ後にフレイを担いで家に戻ってきたのだ。フレイのケガの事もある。なんとか荷物を倉庫につめて家で寝た。寝床が足りないのでフレイにはソファを貸してあげた。


そして一夜明けたのだが驚愕の事実が判明したのだ。

違和感というか目の前で起きていることがまるで夢のようで思わず頬をつねるが痛いだけだ。夢じゃない。


「フレイあなたどうして、ケガがなおってるの!?」


どういうことなのかは全くわからない。だが昨日のケガは嘘でした!と言わんばかりにフレイはピンピンしているのだ。深い切り傷や体のアザもきれいに消えている。


フレイは驚いているわたしの顔を見て察したらしくふよふよと浮かびながらこっちに近づいてきた。


「自然から力を借りればすぐ治るが、昨日はそれすらままならなかったからな。休ませてもらったおかけで力も出てきたし、この程度ならすぐに治せる」


そう聞いて納得した。そういえば精霊の世界からやってきたと言っていた。

ぶっちゃけ精霊だなんて若干信じ切れていない部分もあったがもはやそういう物と認めている自分もいて全く我ながら環境適応に早いなと思うばかりだ。


「精霊ってすごいのね」


するとフレイは得意げにこうも答えた。


「ああ!なにせ私は精霊の王だからな!」


……。

いまなんて?王様といったかしら?

流石に空耳よね?


「えっと…王様っていった?」


「王様は王様だぞ。なんだ信じられないか?私は精霊世界の創造主であり精霊界の王!マグナ・フレイだ。これがその証だ。」


額にある宝石のようなものを指さしてフレイが豪語する。


「も、もういいわ……とりあえずはね」


信じられない。だけど、なんとなく説得力がある雰囲気だ。でも今はもう流石に頭がいっぱい。額の宝石が何だろうがいったんおいておくことにしないと持たない。よしここは話を変えよう。


「……そういえば、あなたこれからどうするの?昨日も話してくれたけど……元の世界に帰れなくなったんだよね?」


訪ねるとフレイは尻尾をだらりと垂らし静かに目を伏せながら落胆した。


「む、うむ、認めたくないが祠がこちらにない以上……帰れなくなったという事だろうな……」


話題選び下手か私は!話を変えて自ら振った分余計にいたたまれなくなる。溜息を一ついて尋ねた。


「うーん、それだったら私の家に住まない?」

「いいのか!?」


フレイが勢いよく顔をあげ私の方を見つめてきた。


助けてしまった手前放っておけないという事もある。

……本音は話相手がほしかっただけだ。最近は人とほぼ話していない。そういう生活には慣れてしまったが時々無性におしゃべりがしたくなる。フレイがいれば話す相手もできる。それに無駄に家が広いので場所に関しては一人ぐらい住人が増えても差し支えはないのだ。いい話し相手ができたと思うことにしよう。


「ええ、いいわよ!」

「ありがとう、恩に着る!」

「気にしなくていいわ。それよりも、もう一回街に行って買い物しないとね」


急遽フレイが住むことになったので今家にある食べ物の量ではフレイの分も考えると少し心もとない。もう少しだけ買い足しに行こう。


お金は…結構セールだからといって買い込んでしまったので余裕がない。

でも大丈夫だ。部屋中にコロコロと転がっているお母さんのガラクタを売り払って工面することにしよう。こういう時に整理も兼ねて臨時の収入にしている。いままで文句が言われたことはない。たぶん忘れているのだろう。だからこれからも大丈夫。

私は適当に転がっているガラクタをリュックに詰め込んでフレイと街へ向かった。


そして街へ着き私とフレイは当然街へ入ろうとしたのだが。

そこでやっと気が付いた。仲良くなりすぎて頭からすっかり抜け落ちていたのだ。


「ちょっとまってフレイ!」

「むっ?なんだ?」


よく考えればこのフレイという生物。

ここらあたりにはいない見た目…というか分類はバケモノの類だろう。

見た目こそかわいいが…大騒ぎになることは必至だろう。


「よく考えたらあなた、街に入れないわ……」

「何?どういうことだ?」

「どういう事って……あなたここ当たりじゃ全然見ない姿してるから……騒ぎにならないかしら?」


しかしフレイは意外にも落ち着いている様子だ。


「ん?なんだそんなことか。気にすることは無いぞ!それよりも早く行こう!」


フレイは私にそう言うとズンズンと中へ入って行ってしまう。


「ちょ、ちょっとまって!フレイ!!」


私は慌ててフレイを引き留める。

しかし、フレイは大丈夫だと言わんばかりにどんどん進んでいく。

そしてあろうことか一番人通りが多い商店街の方へ向かっていってしまったのだ。


「フ、フレイ!そっちはダメよ!……だいぶ手遅れだけど……騒ぎになる前に捕まえなくちゃ……!」


背中の重いガラクタのせいでうまく走れず息を切らしながら商店街に着くとフレイが私を待っていた。


「おお、遅かったなフーカ」

「お、おそかったなじゃないわよ!…フレイ、早く隠れてよ!大騒ぎになっちゃうじゃない……」


そこまで言って周りの冷ややかな目線に気が付いた。違和感がある。

そうだ…まったく騒ぎになっていない。

それどころか、私が注目を集めてしまっているぐらいだ。


「えっ…どういうこと」


そうつぶやきながら落ち着くためにおずおずと近くのベンチへと座る。


するとフレイが答えた


「実はお忍びで遊びに来るために魔法が私に掛かっていてな。私が心から信頼した人間にしか見えないようになる魔法をかけているのだ」


私はひどく赤面した。それって私が一人で叫んで走ってる人ってことじゃない…


「そ、そういうことは先に言いなさいよ!」

「あれ?言ってなかったか…それはすまない事をした」


もう勝手にしたら!と投げやりになりそうになった時。

フレイの顔が何か聞きたそうな表情へと変わった。


「そういえばフーカは魔法と聞いて驚かないのだな?」


若干まだ顔が熱い。しかし不意の質問で少し気分が変わった。

話を変えるのが上手いなと少し感心しながらも答えてあげることにした。


「魔法はすでに一般的なものになったのよ」


そういうとフレイが驚愕する。


「何っ!?どういうことだ!?魔女や精霊でなくても魔法が使えるというのか!?」

「ええ、そうよ」

「昔は魔法と聞いただけで皆、気味悪がっていたというのに……どういうことだ?」


フレイは不思議そうに頭をかしげた。


そう言えば、何となく記憶にある。

お母さんが、昔は魔女と言うだけで気味悪がれた時代があって森の奥に隠れて魔法の研究をしていたとぼやいていた。でもそんな話500年前の話。いまや歴史の教科書に載るレベルだ。どうやらフレイが前に遊びに来たというのははるか昔の事らしい。


今度は少し勝ち誇った気持ちで答える。


「なるほどね。心配しなくていいわ。そんな時代はもう来ないわよ。なにせみんなが使えるんですもの」


するとフレイはまだ納得ができないのか私に尋ねてきた。

「しかし、普通の人は魔法が使えないはずでは?」


「エーテルを吸収できる食べ物が見つかったの。だから魔力が無い人も魔法が使えるようになったのよ。まあもともと本物の魔法使いもいるんだけどね?うちのお母さんとか。火を出したり、水を出したり便利になったものよね……」

「じ、時代は変わったな……。まさか、一般的になるとは……」

「まあ、詳しい話はまた今度してあげるわ。とりあえずこのガラクタをお金に換えてくるからここで待ってて」

「う、うむ。わかった。」


昔の事に思いふけるフレイにそう言い残し私は古物商へ向かった。


古物商へ着くと私はリュックのガラクタを取り出し店へ売り払った。

すると珍しくいつもより高値で買ってくれたので少しお金に余裕ができた。


「思ったよりも高く売れて助かったわ。これなら少し遊びに行けそうね……。

フレイにどこか行きたいところでも聞いてみようかしら?」

私はそう決め、フレイのところに戻ることにした。


「お待たせ!思ったより高く売れて余裕ができたからさ。どこか遊びに行かない?」


フレイは尻尾をぶんぶんさせて喜んでいる。


「おお!それはいいな」

「じゃあ決まりね!でもどこに行こうかしら?」


そう悩んでいるとフレイが看板に指をさした


「ふむ……では、そこの店に行ってみたいのだが」


フレイが指を指した店の看板を見ると”的中率100%””絶対当たる!超占い!”と書かれている。あからさまに怪しすぎるのだが……ここまで怪しいと逆に行きたくなってくるものだ。


「いいわね。逆にそそるわ行ってみましょ」

私たちは看板の案内にしたがって建物の間の細い小道へ入っていった。


しばらくすると見た通りの占い屋という感じの店が見えてくる。

群青色の星空の様な小さなテントだ。ここの主人はきっと形から入るタイプなのだろう。八角鏡やら曼荼羅やら星座を模したオブジェなどそれっぽい物ばかりだ。

だが、まとまりがなさ過ぎてやっぱり胡散臭い。


「……とりあえず入ってみましょうか、ここまで来たんだし」

私たちは、胡散臭いとおもいつつ好奇心に駆られ中に入ってみることにした。


中に入るとお香が焚かれ紫の煙が立ち込めており水晶は怪しく光っていた。

そして、占い台の向こうには黒髪の女が座っている。

こちらに気が付いたのか女が声をかけてきた。


「いらっしゃい」

「ど、どうも」


黒髪の女は私を見る。


「あなた、名前は?」

「私はフーカ、よろしくね。こっちはフレイって……あ、そうか見えないんだっけ……」


あぶないあぶない。また恥を描くところだった。


「……?どうかしたのかしら?」

「いえ、なんでもないわ。気にしないで」

「そう?何でもないならいいけど……」


黒髪の女は不思議そうにこちらを見る。


女は一呼吸ほど、間を開けた後、私に質問してくる。


「あなた、もしかして精霊とかに憑かれてない?」

「!?……」


憑かれているわけではないけど、私はフレイの事だと思い一瞬驚いてしまう。


「ふーん、図星ね。そこにフレイさんが居るってことか……」

「あ、あなた?一体何者なの……?」


フレイは他人には見えない。

この女の人も確かに、見えていないはずなのだ。

もし見えているならこんなに変わった風貌のフレイに驚かない訳がない。

この人は見えていなくても、フレイの存在を認識しているのだ。


「大丈夫よ、そんな真剣な顔をしないで?何もしないわ。

ただ、そこにいるのね?って聞いただけよ」


黒髪の女はクスクス笑いながら自己紹介してくれた。


「私はティル。天気予報士よ。趣味は占い」


趣、趣味?あんなに看板にでかでかと書いてたのに?


「占い師じゃないの?」

「みんな言うわ。自分で言うのもなんだけどでも腕は確かよ。そこに座って頂戴」


そういわれるがままに椅子に座らされる。

とんでもないところに来ちゃったな…


「ちょっとまってて準備するから」


そう言ってティルはテントの外に出て行ってしまった。


すこしだけ静かな時間が訪れた。

暇になったので少し疑問に思うことをフレイに尋ねる。

よく考えればなぜ私はフレイが見えているのか。先恥をかかされたときにふと疑問に思ったのだ。


「ねえ、フレイ。なんで私にはフレイが見えているのかしら?フレイの魔法は、私にも例外なく効果が出るはずなのよね?」

「……そのはずなんだがな。実は私も良くわかっていないのだ」

フレイはそういうと顎に手を当て考え始める。


そして呟くように答えてくれた。


「何故かフーカは私を私をみつけ看病してくれた。普通は声さえ聞こえないというのにだ。……つまり、フーカは精霊を見る才能があるんだろう。稀に居るんだよ精霊と親和性が高い人間が」

「ふーん……」


そんなもんか。と腹に落ちた。

でもなぜか結構いい気分。

普段褒められることってないしなんか特別な能力っぽくてかっこいいし!

ちょっとだけにやけちゃうわ。よくわからない才能だけど。


そう思っているとティルが奥から帰ってくる。どうやら占いの準備ができたようだ。


「おまたせ!今から占いを始めるわ!」


ティルはそう言うといい感じにカードをシャッフルしてカードを選ばせてくれた。

私は勢いよく引いてマークと数字を確認する。


「カードの柄は…ダイヤ。数字は7ね」

「なるほどね。7か。あんたになにか良いこと起ころうとしてるね。ただあんたが思ういい事というわけでもないよ。それが世の中さ」


ティルの診断はなんというか怪しいが…それでも逆になぜか信頼できた。ほめちぎるだけの占い師ではないのが気に入った。


「ありがとう!なかなか面白かったわ!また来るわね!」

「ええ!またいらっしゃい!」


少しウキウキ気分でテントを潜り外に出た。


すると外に出て一通りのない裏路地まで移動する。

誰にも使われていなさそうなベンチへと腰を下ろして休むことにした。

座って少しすると、風で何かが顔に張り付いて急に視界が真っ暗になった。

「うわっ!?何!何が起きたの!」


あわてて顔に張り付いた何かを引きはがす。どうやら号外の新聞が顔に飛んできたようだ。ムッとしつつ新聞に目をやると気になる記事が書かれていた。


【号外! 先ほど街はずれの家近くの草原に突如現れた巨大な遺跡!見たこともない文明の跡があり大きな発見が期待される。近いうちに地域の調査団が調査を開始する模様。】と書かれている。本当に急いで発行したらしく簡単な文章と汚い挿絵の簡単な記事だ。


そういえば遺跡だったか祠だったかが…フレイが言っていた気がするような……?


「フレイ?なんだか遺跡が急に出てきたとか新聞に書かれているんだけど?」


フレイにその記事を見せる。するとフレイの様子がみるみる変わっていった。


「何?遺跡?いや、祠のはずだが…………いや!まて!これは…試練のダンジョン……?どういうことだ!?」

「ど、どういうことって言われても」


めちゃくちゃ困る。まあ祠程度で予定されていたものが遺跡サイズで出てきたというのが記事とフレイの態度から読み取れるが…なぜこうなったのかがわからない以上困惑するしかない。でもとりあえず帰れる可能性が出てきたってことでいいのかしら?


「もしかして帰れるんじゃない?」

「いや、まあそうなのだが…」


尋ねてみると若干顔が青いが帰れるらしい。

よかったじゃない。


「だが…まずいことになった。どうやらなぜかわからないが…試練のダンジョンを生成してしまったらしい」

「し、試練…?」


試練と聞くと物語でもよくある通り禄でもないものが多い。

私の頭の中は往年のオールドファンタジーを思い出した。


「あんまり聞きたくないけど、どういうことか聞かせて頂戴」


フレイは苦虫をつぶしたような顔で答えた。


「私が普段使っている祠はいわゆるただのトンネルだ。今回事故で生成してしまった試練のダンジョンとは。精霊術師を認めるためのダンジョンなのだ」

「な、なるほど…?」

「試練とはこのダンジョンの最奥まで私を連れて行くことだ。そして最奥に連れて行った時点で私は元の世界へ帰れる。到達者にはなんでも一つ願いをかなえてくれるというおまけがある。」


ずいぶん蠱惑的な話も聞こえた。願いをかなえてくれる。

しかもなんでも?ちょっと心が揺らぐ。


「願いをかなえてくれるの?」

「……だが、途中で大体リタイアする奴が多いけどな」

「リタイアって」

「それはもちろん……死ぬ」


微妙な雰囲気の沈黙のあとフレイはちらりとこちらを見てきた。

めちゃくちゃ嫌な予感。


「たのむ!!我を最奥まで連れて行ってくれぇ!」


今までの態度と打って変わり泣きじゃくりながら縋り付いてきた。

流石にこれには抵抗させてもらう。


「いやよ!!死にたくないもの!!」


「頼む!本来であれば試練の場合私は手を貸してはいけないルールがあるのだが緊急事態ということで全力サポートするから!!めっちゃ簡単だから!!」

そういわれて少し体が固まる。


「ね、願いは?」

「もちろん!!なんなら二つ…かなえてやってもいいぞ!!!」


うっ……大分揺らぐ。簡単にダンジョンの最奥に行けて願いもかなえてもらえる…ならあり…かな…?いや!命かかってんのよこっちは!!


「も、もう一声!!」

「じゃあ3つ!!願いは三つかなえてやるから!」


その言葉を聞いて私はうっかり言葉を滑らした。


「のったぁ!!!」


私の叫び声が辺りに大きく響き渡る。


「こうしちゃいられない家に帰って早速準備よ!」

こうして私たちは意気揚々と街を出て遺跡へと入る準備を始めたのだった。

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