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マモノ飯ダンジョンズ 風水パワーで異世界攻略  作者: ミルおっさんと家主
フレイとの出会い
1/3

不思議な出会い

【01】不思議な出会い【マモノ飯ダンジョンズ】


「えっ……?もう食料がないの」


倉庫の中にぽつりと言葉が響く。

何ということはない。昨日は頑張ったから、今日は頑張ったからと毎日食べすぎただけなのだけど…予定より3日ほど早く食べきったのはさすがに反省。


しかしまあ、買ってくればいいだけなのだけど…

とても面倒くさい。

町へ行くにはだだっ広い草原を歩いて小一時間ほどの街へ行かないといけない。


「しょうがないわ。…買い物に行きますか」


前にどうしても面倒になってしまい買い物をサボって野草やキノコで飢えをしのいでみたんだけど…もう二度とやるもんじゃないなと思ったわ。


倉庫から出てしぶしぶと街へ向かう。

少し雨が降りそうな気もするけど……まあ大丈夫でしょう。


小一時間歩いて隣町に着く。

すると何やらにぎわっているのが見えた。市場のゲート入口にある看板を見てみると、どうやら今日はこの街100周年の記念セールを開催しているらしい。そして今日はその最後の日みたいだ。これには思わず心の中で小躍りしてしまう。


「やった!今日を逃したらダメよね!いっぱい買いこまないと」

私はさっそく市場を巡り普段買い控えている嗜好品や食料をここぞとばかりに買い込んでいく。それはさながら自分の息で布袋を膨らませる勢いだったと思う。気が付けばリュックがパンパンになってしまっていた。


……明らかに買いすぎだ。


もちろん途中で気が付きはしたけども!安い、旨いとなれば買ってしまうというのが人情じゃない!仕方がない事なのよ!そう自分に言い聞かせ重くなったリュックを背負い街を出た。


街を出てからはだらだらと歩く事にすることに決めた。自業自得とはいえリュックがかなり重い。下手に急ぐと体力がもたないかもしれない。反省しながらもゆっくりと足を進めることを心に決めて歩き始める。


街の外に広がる草原を少しづつ進んで家に戻る。普段はこんなにゆっくりと帰ることはないけどこうして帰ると普段は気にも留めないようなことが目に入ってきて新鮮だわ。


ゆっくりと歩いて草原の中間ぐらいに差し掛かったところで天気が崩れ始めた。

こんなに買い込む予定ではなかっただけに少し焦り始める。

「雨が降る前に雨宿りできる場所を探さないと」


すると割と近場の小高い丘に大きなブナの木が生えているのが見えた。

「とりあえず、あのブナの木の下でしのげそうね……」


私は慌ててリュックを背負い直しブナの大木まで早足で急ぐ。だが重い荷物が背中で左右に揺れて足が思うように運ばない。何としてでも食料を雨にぬらすわけにはいかない。急いで木の下へと向かう。


パラパラと降り始めた雨を少し体で受けながらなんとか上り切ると一安心だ。

「はぁっ…はぁっ…危ない…何とかついたわ」

一息入れる。

たどり着いたころには雨は本降りになってしまっていたがブナの木だったおかげで辺りはさほど塗れておらず一休み出来そうだった。


大きく深呼吸をして木にリュックを寄りかからせる。

少し寒いのでたき火を焚こう。

木々を少し集めて火をつける。幸いそんなに湿ってないので簡単に火はついた。火を見ていると少し落ち着いてくる。このパチパチとした薪のはじける音が心地よい。


落ち着いてきて一息ついた時だ。

ガサリと音が鳴る。一瞬驚いた。

何か……いる?

雨の音に混ざって何か声らしき音が聞こえたような気がした。


「……気のせいかしら」


視線をたき火に戻す。

幽霊だったら怖い。

今すぐここから走り去りたい。

「グ……ググ……だれか…いるのか…?助けてくれ……」


かすれた声が聞こえてきた。

助けて…?助けてほしいってこと?

あれ?まって助けを求めてきてる!?


私はあわててその声の主を探す。

とりあえず木の周りを一周してみる。

しかし、人の影は見当たらない。

「ん?……あれ?いないじゃない……?」

訝しげに思いながらひとまずたき火の前へと戻った。


ドサリ

重みの音が真後ろで聞こえてくる。


「ひっ!?なにっ!?」

私はドキドキしながら後ろを振り返って下を確認する。

生物のような音だ。何かが落ちてきた。


頭の中で反芻しながら恐る恐る落ちてきた音の方向へ目を向ける。


「な、何この生き物…?」

するとそこには謎の生き物が横たわっていた。

……驚きを隠せないけど、どう見てもこいつが助けを求めていた声の主だ。

体は赤く尻尾も生えてる……まるで伝説上のドラゴンみたいだけど人っぽい気もする。


………。


って、冷静に分析してる場合じゃない!

よく見ると、なんてひどいケガなのかしら!早く手当しないと!

今日は食料のついでに医薬品も買い込んできたからタイミングが良かった。

少しホッとしつつも鞄から包帯と消毒液を取り出して手当をした。


「ふう、これでよし……」


なんとか手当ができたので次は謎の生物を塗れていない地面を探して横に寝かせることにした。かなりひどいケガだ。安静にさせた方がいい。


ということは…今日はここから動けないということ…?

なんてついてないと思いつつ、けが人?見て思いなおす。


「うーん仕方ない。今日はここでキャンプしますか……」

ひとり呟いてキャンプの設営を始めることにした。今日は色々なものを買いこんだからキャンプ用品のようなものまであるのは幸いだった。


いそいそとスキレットをリュックからとりだしてメニューを思案する。

うん、何を食べようかな……。新鮮な卵とベーコン……。

ベーコンエッグがいいかしら?

焼くだけで食べれるし!そう思いベーコンエッグを作ることに決めた。


スキレットを焚き火の上に置き温める。そして、いい感じに火が伝わった頃、

リュックから油ののったベーコンを取りだしフライパンに敷く、ジュージューと油の弾ける音が私の胃袋を直撃する。


正直このまま食べてしまいたいけど、まだ我慢。次にその上に卵を二つ落とす。黄身は半熟の方が好みなので慎重に焼いていく。ベーコンと卵を焼くパチパチとはじける音が雨音と混ざり合って非常に心地が良い。その音とともにあたりに香ばしい匂いが広がっていった。


「カリカリのベーコンもいいけど、半熟卵も捨て難いわよね。おいしそう!」

わたしは思わずよだれをこぼしそうになる。辺りにおいしそうな匂いが広がった頃、先ほど助けた謎の生物の声が聞こえてくる。どうやら気が付いたみたいだ。


「……なんだ?この匂いは……?ウグッ……!?イタタタ!」

なんだか混乱しているらしい。


というか……良く考えると怪我人の隣りで料理ってなんかごめん。私はその生物の方へ目を向けた。すると謎の生物がこちらに気が付いたらしくお礼を言ってきた。


「……お前が私を助けてくれたのか?ありがとう、助かったよ。私の名前はフレイという者だ。」と自己紹介された。


人間が理解できる言葉を発しているだけでも驚愕なのにまさか自己紹介までされるとは思ってはいなかった。おかげで自分でも驚くほどやけに冷静になった。

ホムンクルスのような魔法生物も見たことがあるだけに姿には嫌悪感を抱かなかったが知恵があるかだけが心配だった。

しかし、失礼な話だけど少なくとも話している時点で野生動物のように知恵がない訳ではないみたいで安心した。礼儀もしっかりしているし。とりあえずあいさつされたから私もあいさつを返しておこう。


「私はフーカ。あなた何者?どうしてこんなところに倒れていたの?」


フレイの様子は私の質問に話すか話さないか決めかねている様子だ。

もしかして警戒されてる?……ってまあ…よく考えると当然だわ。

助けてあげたとはいえ出合ったばかり身の上話をいきなり聞こうとするこちらにも非はある。


「話したくなければいいわ。ごめんなさい。なんで傷だらけで木の上に引っかかってたのか気になってつい聞いちゃったけど、余計なお世話だったわね。」


するとフレイはハッとした顔をしてこちらを見てきた。

「いや……すまない。気をつかわせてしまったようだな。話してもいいんだが……どこから話せばいいかわからなくてな……長くなるが………いいだろうか?」

そういうとフレイはポツリポツリと話し始めた。


フレイは異世界からこちらに遊びに来たというのだ。それも精霊の世界から。異世界を超えるときに自ら魔方陣を描いてこちらに移動してきたらしい。


その際こちら側には祠の様な物が生成されこちらとあちらをつなぐ洞窟みたいなものができるとのことだが、何らかの事故でこちらに祠が生成されずに時空の狭間を彷徨う事になったと説明された。


そして、その時空の狭間という場所は常に不安定な状態で空間が何かの拍子に崩れてしまうと自分も死んでしまうという恐ろしい所なのだそうだ。そこで狭間が崩れて無くなる前に全力で暴れて時空の狭間に穴を開けてなんとか外に出ることはできたものの、暴れたせいで力を使い果たした上に飛び出た場所が空中だったらしくそのまま落っこちて木に引っ掛かっていたということだった。


何を言っているかわからないし信じられないような話だけど……

現実に目の前に人ならざる者がいる。信じざるを得ない。


ただ……けが人ということは変わりない。一応意識が戻ったことだし家で安静にさせた方が良いだろう。

「……とりあえずうちに来れば?怪我してるし」


そういうとフレイは顔を上げた。

「本当か!ありがたい。……正直どうすればいいのかわからなかったところだ。お言葉に甘えさせてもらおう」


「でもその前に腹ごしらえね!ベーコンエッグ!食べましょ!」


「ふむ?ベーコンエッグとはなんだ?」


「え、知らないの?食べてみて、おいしいわよ!」


二人(?)で食事をしながらフレイから異世界の話を聞いたり、どんな生活をしているのか。そんなたあいもない話を続ける。ゆっくりと時がながれ、気が付けば、雨は上がり星が光っていた。

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