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送り船

第15回 文藝マガジン文戯杯「船」

投稿作


文藝MAGAZINE文戯15 2021 Summer


第15号 2021年6月10日発売予定 に掲載予定


 ある意味で、ここがリアルなこの世とあの世の狭間と言えるだろう。

 僕と年老いた両親の三人は、係の人が押す棺の乗ったストレッチャーについて行く。

  荘厳で厳かな空間。

 そこにいる誰しもが無口で言葉少なく、深妙な面持ちでいる。

 その中を、まるで凪いだ水面に浮かぶ船の様に、棺は静かに滑らかに、小綺麗な大理石の床の上を進んで行った。

 特に儀式めいた読経やら最後の別れも無く、火葬場の竈の中に棺は収められ、扉は閉められた。

 焼き場に着いて五分で火葬。

 まるでアダルトビデオのタイトルの様な言葉が頭に浮かび、僕は思わず不謹慎にも笑ってしまいそうになった。



一月ほど前、 仕事終わりにスマホを見ると、親父からの着信が六件ほど溜まっていた。

 嫌な予感しかしない。

 親父からの連絡が来る場合は大抵の場合はメールであり、それなりに重要な場合でも一、二回の着信で終わり、後は僕が家に帰ってからでいいかと諦める場合が多い。

 それが前にスマホを確認してから数時間の間に六件である。

 もはや最悪の状況を想定せずにはいられなかった。

 

 「何かあったの?そんな苦い顔をして」

 

 話しかけてきたのは遅番の僕から引き継ぎを受けたばかりで、夜勤の業務に入ったばかりの山田さんだった。

 特別養護老人ホームで介護士になって一年の僕に、勤め始めの頃、指導担当についてくれた五歳上のお姉さんだった。

 

 「嫌な感じで、親父からの何度も着信がありまして……」

 「すぐに折り返しなさいよ」


 山田さんの勧めもあり、気乗りしなかったのだけど折り返すとすぐに親父が出た。


 「なんかあったの?」

 「……あった。良い話じゃない。帰ってきたら話す。今日は帰ってくるんだろ?」


 そこに住んでいるのだから帰るのは当たり前なんだけど、などと思いつつ、すぐに帰ることを伝えて通話を切った。

 

 「どうだったの?なんかあったの?」

 「良い話じゃ無いことがあったそうで、家に帰ったら話すと言って内容は言いませんでした」

 「怖いね。何があったんだろうね。想像つくの?」


 山田さんに言われて思いつく事はいくつかある。


 ■親父が仕事をクビになった。

  親父もすでに七十三歳である。個人事業主の大工であるとは言え、元請けの会社から、もう来なくて良いと言われればそれまでである。転職してまだ一年の僕の手取りは夜勤をして十七万。親父の収入がなければ暮らしていけない。


 ■弟が死んだ。

  糖尿病の持病を持ち、合併症で心不全と網膜剥離を患う二つ下の弟がいる。昨年末にはコロナに感染して入院した。親とは絶縁しているので病院からの電話が僕のところに来て、いろいろ対応しなければならなくなったと言う面倒な弟。その時に医者から最悪の場合を考えて、延命治療をしますかと聞かれ、何もしなくて良いですと私が答えたのに、死にたくは無いので延命治療をお願いしますと医師に伝えたらしい。その弟の持病が悪化して死んだというのは考えられる。


 ■引きこもりの甥っ子。

  小五から不登校になり、中学を一度も通わずに卒業した甥っ子と同居している。七つ年上の姉の子供なのだが、中学校を形式的に卒業した三日後に姉が失踪。それ以来十一年間、親父が面倒を見ているが、理屈ぽいところがあり、時折に僕の母親である祖母と口論が絶えない。その甥っ子が何かしらの問題を起こしたことも考えられた。祖母を怪我させた。自殺した。家出した。など。


 ■母親

  七十七歳で高齢であり、ここ数年で特に衰えた様に思う。僕が働く特別養護老人ホームで暮らすもっと年上の入居者様達より老けて見える。悲観主義者で強情張り。人の話は聞かず、自分の話したいことを話し、人の話を自分に都合良く曲解する。目も耳も悪くなり、具合が悪いと言いながら、数キロ先のパチンコ屋まで歩いて行き、閉店まで売っているパチンカスである。転倒することも多くなったので、救急車で運ばれたとかとか、何かの病気で倒れたとか、親父が仕事から帰ったら死んでいたと言うことも想像できた。


 「キツイね。問題だらけだね。まともなのは押利さんとお父さんくらいじゃない」


 山田さんがそう言ったが、僕も数年前にパチンコで作った借金で任意整理しているので、まともだとは言えないと思ったが、それは口にしなかった。


 山田さんには事の詳細がわかったら連絡する事を伝え職場を出る。

 今の職場を選んだ理由は、自宅から近い事だったので、車で五分も走れば家に着く。

 

 「帰ってきた」


 自宅に入るなり僕の顔を見た母親が、奥の部屋で横になっている親父を呼びに行った。

 部屋から出てきた親父が言った。


 「良子が死んだ」


 意外な所から出てきたなと思った。

 こういう事態になる事を予測していなかった訳では無いのだけれども、なぜこのタイミングで死ぬかなぁ、姉ちゃん。

 十一年間の沈黙を破った死亡通知である。


 「いつ死んだの?コロナ?」

 「分からん。母さんが警察からの電話に出たらしいが、耳が遠いし、自分の話したい事しか話さないだろ?わかっているのは死んだと言う事だけで死因もどこで死んだのかもわからん」

 「私も買い物から帰ってきたら郵便受けにメモが入ってて、連絡してくださいと言う警察からだったから、電話したんだけど、何を言っているか良く聞こえなかった」

 

 そんな訳で話がよく見えず、僕が警察に電話する事になった。


 警察に電話すると担当者はすでに帰っていたが、引き継いでる人から話を聞けた。

 借りていたアパートで亡くなった。

 事件や事故で無い。

 亡くなったのは二月の上旬らしい。

 それまでは滞納する事なくきちんと振り込まれていたのに、一月末に振り込まれるはずの家賃が振り込まれず、連絡も取れないので管理会社に人が警察官と部屋に入り、部屋で倒れているのを見つけたのが昨日のことだと言った。

 さらに詳しい話は担当者が把握してるので、担当者が明日に出勤してから電話しますとのことだった。

 警察から言われたのは、遺体を引き取ったらすぐ葬儀ができるように、葬儀会社を見つけておいてくださいと言われる。

 めんどくさい事になった。

 それが正直な感想だった。

 最近ヒットした「うっせえな」の替え歌で「めんどくせぇな」が頭の中でリフレインしている。

 兎にも角にも担当者と話をしなければ詳しい話はわからない。

 午前零時を過ぎて家族会議はお開きになった。

 とは言っても、葬儀屋とかこれからの手続き関係など調べる事は沢山ある。

 スマホを駆使して訳有りの葬儀を請け負ってくれる葬儀屋をネットで検索したらすぐに見つかった。

 直葬コミコミで十万を切っており、警察署からの遺体引き取りも万全の体制であった。

 一番の問題は住んでいたアパートの解約である。

 遺体の状況次第では、損害賠償が発生しかねないと考えたからだった。

 現状回復に数百万がかかると言われれば、相続放棄と言う手段を取るしか無いのだが、相続人は親族一同までかかるならば、それはそれで大問題である。

 親類縁者にも相続放棄をしてもらわなければならないのか?それは一体何親等まで及ぶのだろうかと考えれば、寝るに寝られなくなる。

 そう言った面倒な死に様を見せた死者の死後手続きも相談に乗りますよ?と言う葬儀屋を見つけたのである。

 朝が来て、勤め先の上司にLINEで事の次第を送り、とりあえず三日間の休みを貰った。

 シフト勤務であるので、同僚及び先輩など関係各所に詫びの連絡を入れる。

 私がかって勤めていた印刷業会とは違い、超絶ホワイトな職場なので快く受け入れてくれる方々ばかりだったのだが、それ故に申し訳なさが倍増してくる。

 かっての職場なら親兄弟であるならば、さすがに嫌な顔するくらいで休みを貰えただろうが、その後は数年に渡ってあの時はお前のせいで徹夜したなどと言われるのは間違いなく、三親等を超えようものならお前が葬式に出なくたって良いだろうと言われる事は間違いなかったはずである。

 むしろそれくらい理不尽な方が負い目なく休めるものである。

 そんなこんなを考えているうちに朝が来て、とりあえずネットで見つけた葬儀屋に電話する。

 慣れたもので価格説明と、手続き上必要な死体検案書をどこからもらえる事になるか確認してほしいと伝えられる。

 通常ならば死亡診断書であるのだけれど、こういう警察が介入している場合は死亡検案書になるのだと言う。

 ちなみに死亡診断書ならば数千円で済むらしいが、死体検案書だと数万円〜十万になる可能性があると言う。

 相場は四万円位らしいが、あくまで状況次第であるらしく、それでも葬儀屋の話では六万円以上になった経験はないらしかった。

 とは言え金がない我が家では高額の痛い出費であるのは間違いない。

 と言うわけで、直葬を依頼する。

 警察署からの遺体を引き取ったらそのまま火葬場に行き、荼毘に伏すのである。

 正直に言うならば十一年も失踪状態であり、子供は捨てた状態の姉はもはや他人のレベルであって、社会通念上仕方なく遺体を引き取るわけであるから、無駄な出費は抑えたいと言うのが本音である。

 細々とした決め事は、警察からのいつ遺体を引き取れるかと言う事になり、とりあえずは葬儀屋と話す事は無くなった。

 後は警察との話し合いである。

 警察からの電話は葬儀屋の電話を切って三十分後にかかってきた。

 声からすると定年間際の老刑事と言ったところが適切だった。

 どう言うわけか知らないが、子供に話すような口調で姉の死亡経緯を教えてくれた。

 

 姉は一人で生活保護を受けながら暮らしていた。

 一月末に家賃が振り込まれなかったので、管理会社が何度も連絡を取ったが半月経っても音沙汰がない。

 これはと言う事で警察官立ち合いの元にアパートの部屋に入ったら、倒れているのを発見された。

 死後どれだけ立っているのかは分からなかった。

 死因は低栄養による多臓器不全。

 姉は躁鬱病で通院しており、鬱になると食事が取れなくなる傾向にあったと言う。

 本人確認のために警察官が遺体写真を持って家に来ると言う。

 とりあえず僕が写真を見る事になった。

 一時間後に私服の刑事さんがやって来て写真を見せられた。

 正直な感想を言わせて貰えば、十一年も会ってないのだから、姉弟という関係でも記憶は薄っすらとしたものであるので、確定の判断をするには至らない。

 もともと痩せた人ではあったのだが、餓死するほど痩せこけていると言うこともあるし、化粧もしていなければ、死んだ事による筋肉の弛緩などで絶対にそうだとは言えなかった。

 目は全てを諦めたような半開き、唇はカサカサ。

 指先はドス黒く変色していた。


 「お姉さんですか?」


 と刑事さんに聞かれた。


 「正直、絶対にそうだと言えません」


 というわけで、警察は他の方法で本人確認をすることになったのだが、それも不調に終わり、最後の手段のDNA鑑定となり、母親から唾液を採取する事になる。

 結果が出るのは早くてひと月、手間取れば二ヶ月ほどかかると言われた。


 せっかく取った三日間の休みは何もできないままで終わり、身元確認ができるまで待ちぼうけと言う事になった。

 僕は仕事に戻り、山田さんにも事の経緯を報告した。


 「正直めんどくさいです。何もかもがめんどくさいです」

 「びっくりだね。お祓い行って来なさいよ。墓参りも行きなさい。こう言うのは墓参りが大事よ」


 山田さんが妙にオカルトな事を言い出すなと思ったが、よく考えればママ友に健康に良いからと三十万の浄水器を薦められていたのを、水は結局の所で水でしかないですよとかなり言って止めた事があったのを思い出したので、適当に話を合わせてスルーした。

 

 結局のところで今回の遺体は姉で間違い無いとは思っているのだけれど、どこか心の中ではこのままあやふやな状態が続き、のらりくらりと数年くらい経たないかと思ったのだが、現実はそうはいかず、一月経ったところで警察からの連絡が来た。


 「DNA検査で親子の証明が取れました。いつ遺体を引き取りに来られますか?」

 「死体検案書はどこでもらえるのですか?それを市役所に持っていき、火葬許可証を取らなければいけませんし」

 「こちらはいつでも構いませんよ。死体検案書はこちらで渡せます」


 死体検案書を貰い、役所に行き火葬許可証をもらうなどの手続きで一日潰れるのを考慮して、遺体の引き取りは翌々日にすることにした。

 すでに有給は使い切っているので単純に仕事を休まなければならない。

 手取り十七万から引かれていくのは辛い。

 

 翌日に朝から警察署に行き、死体検案書を受け取る。

 死体検案書の作成に一万ほどかかったが、予想よりもだいぶ安く済んだと言えるだろう。

 そのまま区役所に行き火葬許可証を受け取る。

 姉の住んでいたアパートの管理会社に連絡を取り、アパート荷物の引き取りなどの話をした。

 姉の借りていたアパートの物件は生活保護を受けている人向けの物件だったので、保険に入っており、基本的にはこちらに何の負担もかからない事がわかった。

 アパートの現状復帰や賠償が最大の懸案事項だったので、それが解決した事で少し心の余裕が出る。

 その日はそんな事をしているうちに一日が終わった。


 遺体引き取りの当日になった。

 警察署前で葬儀屋と待ち合わせをして警察署に入る。

 窓口で問い合わせるとすぐに刑事さんが来て、葬儀屋の人は遺体の状態を確認しに行き、僕は受け取りの書類に記入する。

 遺品である部屋の鍵とiPhoneを受け取った。

 当然ながらパスワードはわからなかった。

 葬儀屋が準備ができたと言うので、火葬場に向かうべく警察署を出た。

 遺体の状態が悪く、見ない方が良いですと葬儀屋が言った。

 別に見る気も無かったので、全然大丈夫ですよ、もう行きましょうと言う。

 ここで料金である十万を払い、葬列はハイエースと軽自動車二台の葬列は火葬場に向かって走り出した。


 話は冒頭に戻り、小一時間ほどで姉は骨になった。

 僕と両親の三人で遺骨を拾ったわけだが、人数が少なくて施設の職員が手伝ってくれた。

 これが喉仏ですと言われたかどうかは覚えていない。

 

 葬儀屋とは現地解散をして、とりあえず僕らはそのまま姉が住んでいたアパートに向かう。

 アパートの管理会社に許可は取ってあり、何か引き取りたいものがあったらもっていって良いと言われていた。

 後は保険を使ってゴミとして処分する事になると言う話だった。

 向かっている途中車内で姉のiPhoneの話になった。

 

 「パスワードは生年月日だろ。あいつ馬鹿だから」


 親父がそう言うので入力してみると一発で解除できた。

 携帯料金が勿体無いので、契約を解除しており、連絡はWi-Fiを使ってLINEだけの仕様になっていた。

 通話記録も写真もメールも残っていなかった。

 ただLINEには姉との連絡が取れなくなった人からいくつか連絡が来ていた。


 「良子は死にました」

 などと送り返そうかと思ったが、面倒なのでやめる。

 残っていたログから予測すると、躁鬱病がひどくなって働けなくなったらしい。

 以前の仕事はソープランド嬢をしていたらしいと、連絡先に残っていた店に名前から判断した。

 チャットが大好きだったようだが、そこでも人間関係の構築に失敗しているようだった。

 LINEに残っている友達もほぼチャットで知り合った人と見られる。


 「両親は嫌い。でも弟とは仲が良くて連絡を取ってる」


 と言う姉の書き込みを見つけたが、僕はこの十一年間一度も連絡は取っていない。

 後に弟にも確認したがそんな事はなかった。

 

 男の影もあった。

 ただ現在は服役中らしく、二年後の出所を待つとあった。


 見なかった事にしようと思った頃に、親父が運転する車は姉が住んでいたアパートの前に着く。

 駐車場がなかったので僕一人で部屋に入った。

 電気は止まっており薄暗い。

 しかし死臭が漂ってると言う事はなく、床に人型で白線が引かれていることもなかった。

 部屋は昔ちょっとヤンチャしていた初老女性の独り暮らしの部屋と言ったそのまんまの印象。

 ただ病院の薬袋が山のようにあり部屋の一割を占有している。

 財布を見つけたが千円札が二枚と小銭が少し入ってるだけで、後は病院の診察券でパンパンだった。

 レシートが入っていたので見てみると、遺体が発見される一月前の日付で、サーモンの刺身とカップ麺、そして缶コーヒーを買っていた。

 それ以降に買い物した様子は無い。

 そこから体調が悪化したと予測するべきだろう。

 床に倒れてから命尽きるまでの何日間をあの遺体写真の表情で過ごしたのかわからないが、もういいいわと言う声が聞こえて来そうな気がした。

 部屋には他にコンドームが二個とカリスマホストで有名なローランドの書籍があったくらいで、特にめぼしいものは無い。

 マイナンバーカードが出て来たが、そこに写っている姉の近影は世の中を呪ったようなキツイ化粧をしていて、後で遺影をどうするかと言う話になった時に、写真が無いのでそれを使うかと親父が言ったが呪われそうなので却下して約三十年前のピンボケした写真を遺影にしたほどである。

 部屋を出て鍵を閉める。

 もうこの部屋に入る事はなく、管理会社に鍵を返却するべく連絡したら、保険の書類を送るので、送り返すときにその中へ入れてくれと言われた。


 後は書類だけ。

 それはそれで戸籍謄本取ったり、未払いのガスや電気代の支払いがあるのだけれど、それは特別急ぐものでも無いのでやっと解放された気分になったのである。



 その夜、こんな夢を見た。

 病気が重くなった姉が家に帰って来た。

 折り合いの悪い母親とはうまくいかない事は確定だったので、親父は姉が通う病院の近くにアパートを借り、そこに姉と面倒を見るために住む事になった。

 母親は余計な金がかかる事になったと怒り、その対応は僕に全て振りかぶって来た。

 幼い頃から姉は母にボコボコにされて泣き叫ぶ日々だった。

 今でなら虐待で、警察に通報されるレベルだったと思う。

 そんな日々を幼い頃から過ごしてくれば、まともに育つ方が難しい事だってというのは今なら理解できる。

 姉の結末は母親の責任によるところがだいぶ大きい。

 しかしその後の人生をどう生きるか決めたのは姉自身であり、子供を捨てて出て行った事を責められない理由にはならないのは確かだ。

 姉の部屋に行った時、僕は姉に言った。


 「理解はできるけど、自分が迷惑かけられる事に納得はしていない」


 水面に浮かぶ舟に乗った姉は、申し訳そうに卑屈な笑顔を見せるだけだった。

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